ビジネス書大好きMBAホルダーが教える私の学びシェア

本を読んでそこから新しい知識を得たり、学んだりすることが大好き。学びたい、成長したいという意欲のあるビジネスマンの皆さん、一緒に成長しましょう。

小笹の羊羹の話は良い話。 三浦崇典/殺し屋のマーケティング

天狼院書店という書店がありまして、個性的な書店として
業界内ではそこそこの知名度を誇っております。
で、そこの店主が自らのマーケティングメソッドを小説仕立てで本にしたのがこれ。

殺し屋のマーケティング

殺し屋のマーケティング


「殺し屋」という営業も広告もPRもできない商売で
世界一を目指すにはどうすればいいのか、という設定の物語。

最強のマーケティングメソッドがここにあるという触れ込みなのだけど、
本書で紹介されている7つのメソッドは綺麗なフレームワークになっている気がした。

本書の良いところは誰でも工夫次第で真似できるよってところ。
天狼院書店自体、資金潤沢な大企業というわけではないし、
あくまでも中小企業でリソース限られてても知恵でカバーできるよ、っていう
身の丈にあった話になっている印象があって、
その地に足のついてる感はすごく良い。

殺し屋のマーケティングはさておき、
7つのメソッドを用いて小笹の羊羹を分析するくだりがあるのだけど、
そこが本書の肝なんじゃないか。

日にわずかしか製造できず、すぐに売り切れて毎日行列ができる小笹の羊羹、
これが小笹のブランドを形作っていて、収益の大半は量産可能な最中であげている、という話。

これには確かにいろんなヒントがつまっているよな。


殺し屋のマーケティング

殺し屋のマーケティング

すごく昔から、当たり前のようにこういうことをやっていた人たちがいたんだってこと。 デイヴィッド・ミーアマン・スコット、ブライアン・ハリガン/グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

結構前に出ていた本で頭の片隅で気になってはいたのだけど・・・
書店でやってたコルク佐渡島さんの本棚、みたいな企画でこれが並べられていて、
いよいよ読むかと思った次第。

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

結局グレイトフル・デッドというバンドがしてきたことは、
ファンを大切にして、ファンと共に活動し、ファンとのコミュニティを作り上げたってことなんだな。

だから今、コミュニティやオンラインサロンと言ったものが
注目されている時代の中で、昔から実践してる稀有な存在として
再度、注目されそうな雰囲気。

まぁ、これは昔からやっていたことであり、彼らにとっては当たり前のことなんだろうけどね。

このバンドは、昔からライブの録音は自由。
ファン同士が録音したテープを交換したりする文化があったりする。
そう言うのがフリーミアムと言う文脈で語られたりしてるわけ。

しかしまぁ、本当にただファンのことを考えて共に活動しているって言う原理原則に
忠実なだけなんだよな。
録音する人が増えて録音用マイクが増えて他のお客さんの邪魔になってきたら、
録音したい人専用の場所をライブ会場に設けてあげたり、とか。
チケットも直販してファンに良い席が渡るようにしたり、とか。

そしてデータベースなんてなかった頃からファンの管理して
顧客データベース作ってたと言うからまぁすごい。

コミュニティとしてのグレイトフル・デッド

ライブは、ファンが自分を表現しリラックスし、祝い、踊り、交流し、楽しむことを許してくれる場だった。そして、ファンにとって最も重要なのが、自分と考え方の似た人々が集まる場の居心地の良さだった。
P.132

この居心地の良さってまさにコミュニティの基本として今も声高に言われているようなこと。

顧客への敬意と配慮

定期購読している雑誌や契約しているケーブルテレビの会社が、新しい顧客を獲得するために割引価格をつけることは多い。すでに定期購読している忠実な客が年間29.95ドルも払っているというのに、同じ雑誌を新たに定期購読する場合は9.99ドルで良いというのは、どう考えても道理にかなっていない。ケーブルテレビも、最初の3ヶ月を無料にしたり、割引料金にしたりしているが、その後契約を継続すると料金が上がるのである。これも変な話だ。こういった割引を提供する企業は、忠誠心のある顧客を遠ざけてしまう。
P.159 - P.160

これは、本当に世の中に溢れている既存のお客さんをないがしろにした施策。
獲得に効果あるんだろうけど、失ってるものもあるんだってことね。
これは考えさせられてしまいます。

お客さんと直接つながろう

インターネットのおかげで、消費者と直接繋がれるようになった。
ダイレクトマーケティングが簡単にできる。
中間業者を排除して消費者に対して透明性を向上させることもできる。
確かにそういう時代。今から何かを始めるなら、直接顧客とつながることを前提にしたほうがいい。
古い流通の業界ほど、チャンス。

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

「ゲームの文脈における発想の進化の道のり」の歴史。 多根清史/教養としてのゲーム史

教養としてのゲーム史ですぞ。
そう、もはやゲームについて最低限の歴史を押さえておくのは教養なのです。

ゲーム史といっても網羅的な通史ではなく、
「ゲームの文脈における発想の進化の道のり」の歴史。

新書なので画面イメージが乏しいのが残念ではあるのだけど、
単なる通史ではない切り口を持った歴史は懐かしいだけで終わらない価値を出せてる。

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)

そもそもゲームに関して

優秀なビジネスマンの皆さん、ゲームしてますか。
任天堂switchは買いましたか?
ゼルダやりましたか?僕はまだできてません。。。

でも Nintendo Laboは買って、子供が夢中になってます。
まぁそんな事はさておき、ゲームやらない人って鈍臭い人多いよねって話が
友人と話していたら出てきて、確かにねーと思ってしまったのです。

確かに、段取り、効率、発想、いくつかの面でゲームは確実に脳を鍛えてくれる気がする。

というわけで、もっとゲーム好きだって公言するエリートビジネスマンが現れてもいいと思うんだよね。
マンガは随分と解禁されてきた気がするけど、ゲームはまだ表舞台で語られない。

勝間和代さんなんかはゲーム肯定派としてポジティブな主張をしているイメージ。

blogos.com

そして私も勝間さんの主張に全面的に賛成!

歴史において何が画期的なのかを語ることの面白さ

レガシーなゲームももちろんたくさん紹介されている。
インベーダーゲームとかパックマンとか。

裏話的なところで面白かったのはインベーダーが全員揃ってる序盤はゆっくりだけど、
数が減ってくるにつけ早くなったのは演出というよりもマシンスペック的な側面が大きかったって話。
でもそれが結果オーライな演出なわけだよね。
昔のゲームって容量や処理能力という制約の中で知恵を絞っているから、
そこにはとてもピュアな人の創意工夫が詰まってる。

スタート直後にインベーダー軍団が一匹もかけていない状態では、描き込むドットの数が多い分だけシステムの負担も大きく、動作も重い。が、インベーダーが倒されて数が減ると、処理能力にも余裕が生じて、移動スピードや攻撃も速くなる。ハードの弱点となるはずの特性が、逆に展開にスリリングな緩急を与えたのである。
P.28

創意工夫の純度が高いんだよね、今は別にそういう制約がシビアじゃないから
作るときの頭の使い方が違う気がする。
それでも任天堂は常に原点回帰の気持ちで頭使ってるイメージだけど。

そして、パックマンの革新性がとてもわかりやすく書かれていたのが個人的にはとても印象に残った。
ただのゲームとしてではなくて、構造的な革新性とかを整理できるかは、対象が何であれ重要なこと。
こういう視点で見られるかどうか、できない人は何に対してもできない。

パックマンって漠然と敵を食べるイメージだったけど、あれはあくまでも「パワーエサ」を入手すると発動するモード。
それまでは敵から逃げるゲームなんだけど、アイテム入手を機に追いかけるゲームへ転換する。

「パワーエサ」はただの量的な「パワーアップ」とはわけが違う。敵を撃ち落とすシューティングにおける「パワーアップ」は、単発だった射撃が二連装に、弾丸が貫通力のあるレーザーとなって単位時間あたりに倒せる敵の数が増えるーーと「量的」な変化にとどまる。使用前・使用後で「撃つゲーム」という本質は揺るぎもしない。
だが、パワーエサを食べる前は「追いかけられる」ゲームだったのが、使用後は「追いかける」ゲームに転じている。
P.47-P.48

そして本書を読んでいたら、無性に昔のゲームがやりたくなってしまって、
とりあえずニンテンドークラシックミニが欲しくなった。

それぞれファミコンスーファミのミニチュアサイズの筐体で、代表的なソフトが数十本内臓。
HDMI端子でテレビにつなぐだけで遊べるという代物。
ファミコン版はあっという間に売り切れたけど、2018年再生産の予定との噂。
ただ、コントローラーもミニチュア化されてしまったため捜査はしづらいという難点があるのがファミコン版。
ここが改良されたバージョンが出ることを期待してファミコン版は様子を見ている。

スーファミ版はコントローラーだけは原寸大で製作してるので問題ないらしく、
迷わず購入してしまった。子供達と一緒にレトロゲームに興じてみるのも面白そう。

ゲームの歴史

他にもゲームの歴史的な本、
読んでない本多数だけど、かなり出始めていて気になってる。

家庭用ゲーム機コンプリート ガイド

家庭用ゲーム機コンプリート ガイド

現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から

現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から

任天堂コンプリートガイド -玩具編-

任天堂コンプリートガイド -玩具編-

僕たちのゲーム史 (星海社新書)

僕たちのゲーム史 (星海社新書)

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)

マーケターは「ことば」にも敏感であれ。インサイトを落とし込んだ「ことば」が欲望を顕在化させ、市場を生み出す。 嶋浩一郎・松井剛/欲望する「ことば」 社会記号とマーケティング

本書は、広告業界のクリエーターとしても著名で、博報堂ケトルのCEOでもある嶋さんと、
一橋大学ビジネススクールでことばが市場を作るプロセスに関して研究してきた松井さんの
お二人が、実務家と研究者それぞれの立場から社会記号に関して語る本。

社会記号なんて言われると小難しそうに感じるけれど、なんてことはない、
皆が日常的に触れている「ことば」たちのこと。
例えば、加齢臭、草食男子、女子力、イクメン、などなど。

生まれた時には辞書に載っていないのに、社会的に広く知られるようになり、テレビや雑誌でも普通に使われ、見聞きするようになることばのこと。
P.6

言わば、消費者のインサイトを見事に表現した「ことば」のこと。



欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)

欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)

インサイトを見つけることの難しさと雑誌の力

インサイトを見つけることが重要なことは言うまでもないことだけど、
じゃあどう見つけるのよっていうそこが問題。
だって、インサイトを見つけることはとても難しいことだから。

なぜ難しいのかと言うと人は自分の潜在的な欲望をそう簡単には言語化できないから。
そのくせ、今までなかったようなものでも、目の前に現れた途端、そう、これが欲しかった!ってなるのです。

なので、いわゆるアンケート調査のようなもので、消費者の真のニーズが見えるかと言うとそう単純な話じゃない。
潜在的な欲望はなんとなく感じている暗黙知なので。

でも、そういった暗黙知を言葉に落とし込むのが上手い人たちがいる、と。
それが雑誌の編集者たちなんだよ、と嶋さんは言う。

確かに女性誌は時にその軽薄な紋切り型を揶揄されながらも、
イクメン、イケダン、シロガネーゼ、美魔女、などなど数々の「ことば」=「社会記号」を生み出してきた。

確かに部数は落ち続け、雑誌=オワコン、みたいなイメージがあるけれど、
実際、優秀な雑誌編集者は一流のマーケターですよ、と。
それはターゲットメディアとしての読者層の変化に敏感だから気付きやすいんじゃないか、と。

確かにそう言われると、「社会記号」を生み出す巧みさは雑誌の方がテレビなどよりも勝る部分がある気がする。


サピア・ウォーフ仮説

われわれは、生まれつき身につけた言語の規定する線にそって自然を分割する。
P.99

これは要するに、世界の認識は言葉に規定されると言うこと。
人は名付けられることで認識できる、名付けられないものは認識できない。

例えば虹が7色なのは、虹を赤橙黄緑青藍紫の7色と日本語では認識しているから。
エスキモーは白の表現が多様と言うのも彼らは雪の中で多様な白を名付け、認識仕分けているからで、
僕らにはそれが全て白としてしか認識されない。

だからこそ、暗黙知的な潜在欲求も、名付けられることで一気にフォーカスされ、顕在化され、
「ことば」によって市場ができていく。
これがインサイトをうまく「ことば」に落とし込めた時に起きている現象。

こうしたインサイトの発見の重要性はマーケティングの研究においても指摘されていて、
松井さんはマーケティング研究の大家、石井淳蔵の言葉を紹介している。

定量は過去、定性は現在、予兆は将来
P.187

ちなみにこの有名な一節が含まれているのは『マーケティングの神話』と言う本。

マーケティングの神話 (岩波現代文庫)

マーケティングの神話 (岩波現代文庫)


社会記号の伝播

本書では社会記号がどのように世の中に伝播して行くのか、と言う話もしているのだけど、
メディアがどのように取り上げ、伝えていくのか、その過程の話がリアルで面白い。

メディアは、複数の同じメカニズムを持った事例があると分かったときに、初めて現象として命名するということです。
P.200

だからこそ、社会記号の1社独占は市場を成長させるという観点からはよろしくない。
で、結局メディアにしても、流通にしても、社会記号が担保されているのは実はサラリーマン的な感覚なんじゃないか、と。

メディアの側も、小売店で棚をつくる側も、そうした発想の根底にサラリーマン的な感覚があるのが面白いところですね。メディアの人が現象を報じるときに、上司から「それは本当に流行っているのか?」と突っ込まれないように横並び事例を必要とするのと同じで、流通の側もクラフトビールが売れているから棚をつくってお客さんにもっとアピールしたいけど、一社だけでは説得力が乏しいから、いくつも同じカテゴリーの商品を並べて、「ほら、クラフトビールはいっぱいあるでしょう? 本当にブームなんですよ」とプレゼンテーションする。そういうサラリーマン的としか言いようがない感覚によって、社会記号は担保されているということが分かります。
P.201

マーケターは「ことば」にも敏感であれ

結局、マーケターは数字だけでなく、「ことば」にも敏感でなくてはいけない。
石井淳蔵の名言=「定量は過去、定性は現在、予兆は将来」はすなわち、
マーケターには全て必要だよね、ってことなんだと思う。

定量も定性も、両方できた上で、予兆を掴めるか。

ビッグデータ機械学習、AIと定量的なデータがもたらす未来の話題が
盛り上がっている現在なだけに、それも重要だけどそれだけじゃないぞ、という
基本を示してくれた気がした1冊だった。

欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)

欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)

傑物ぶりが際立つだけに、執拗なマスコミ報道で精神を病んでいく様が恐ろしい。馬場マコト・土屋洋/江副浩正

リクルートが好きかと言われるとあんま好きじゃない。
あのある種独特なリクルートのノリは未だに馴染めない自分がいる。

就活の時も、一応学生複数名で話を聞く会みたいなの言ったけど、
どう見てもあれは選考だったし、そのつもりでものすごく前のめりな人たちが
とにかく鬱陶しかった。

だから個人的にはリクルート嫌いなんだけど、
創業者であり、あの文化がどう形成されて言ったのかということには非常に興味がある。
そこで手に取ったのが本書だ。

辞書みたいに分厚い圧倒的存在感を放つ本書だが、
読み始めると実に読みやすい伝記物という印象。

江副浩正の半生を細やかに伝えてくれる名著だ。

江副浩正

江副浩正

部下に対する圧倒的要求

この人、本当にやりたいこと、やるべきことに対する要求に妥協がないんだな、というのが実に刺激的だった。
できないかも、きついかも、なんて微塵も思っていない。
できるはず、そういう人を採用しているという圧倒的信頼。
たとえ嘘だったとしても言い切れるのはすごいことだよ。

「僕の要求するスピードに答えられる才能と意欲を持った人材を僕は採用し続けてきたという自負があります。答えられないようだったら、それは僕の目が節穴だったということ。編集スタッフに今以上の大きな任務を課してください。彼らはきっと応えてくれます。スピードが彼らの秘めた才能を引き出すのです」
P.220

コンビニ流通

儲けの源泉が広告ならば販売売り上げは必要ないという割り切り。
それを小売側に全てあげることで、流通を開拓するという発送は当時としてはとても画期的だったと思う。
実に理にかなった素晴らしい流通開拓だ。

広告収入で利益を確保するリクルートは、定価は書かれているが代金は徴収しない。つまり、売り上げは全てコンビニのものになるのである。各コンビニ本部が「住宅情報」の導入を即決する。
P.230

雑感

リクルート事件の逮捕前、江副氏は随分傲慢なところが出てきていたようだ。
そこからの急落。人間、うまくいっている時ほど謙虚にならねば、と痛感させられる人生。
そして、ちょっとしたボタンの掛け違いが、人生を狂わすこともあるということ。
この本を読むと、そんな運命のいたずらを強く感じる。

そして、これだけの人物が、マスコミの報道や執拗な取材で精神を病んでしまうという事実。
本書にもその過程は記載されているが、いざターゲットになると正気を保つのは至難の技なのだろうね。
自殺しなかったのが不思議なくらいの精神状態に追い込まれている。
自死への誘惑に負けそうになったというのは誇張ではないと思う。

どんなに優秀で強い人間も、ふとした弾みで人生は暗転するし、
どんな人間も、正気を保てない状況というのがこの世の中には存在しているということをまざまざと感じた。


江副浩正

江副浩正

これもっとマーケティングの本として読まれていいと思うんだよね。 佐渡島庸平/WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE

コルクの佐渡島さんによる現代の価値観を読み解きながら、
コミュニティのあり方を解説する本。

彼自身、コルクラボというコミュニティを運営しながらの
気づきと試行錯誤に基づいていて
コミュニティを運営して行く際の重要なポイントが網羅されている。


コミュニティ運営なんて関係ない?

コミュニティの運営と言われると、いや別にそういうのしないし、と思うかもしれない。
けれど、サトナオさんの『ファンベース』のように商品やサービスのファンを重視する視点に立つと、
これから何らかの商品、サービスのマーケティングに関わっていくならば、
コミュニティ的なものとは切っても切れないというか、不可避な要素だと思う。

digima.hatenablog.jp


なので、個人でコミュニティを運営していなくても、
コミュニティ運営の視点を持っておくことは有益な時代。

だから、これもっとマーケティングの本として読まれていいと思うんだよね。

価値観やアイデンティティの変化

僕の、灘高、東大という学歴は、ネット以前のコミュニティだと、非常に高い価値を持つ。学歴は、自分を制御し、社会の要求に自分を合わせることができる、ということのもっともわかりやすい証明書だ。しかし、その価値観は、これからの時代、全く意味を持たない。
P31

わかりやすい学歴不要論なんだけど、学歴不要という人の学歴は皆高いの法則そのまんまだったりする。
言ってることは半分正しいと思うけど、学歴もまたコミュニティなんじゃないの、とも思う。
ただ、学歴なくても、いかようにでも勝負できる時代になってることは確か。

「何を手に入れているか」よりも「何をやっている人か」「なぜやっているか」という理由のほうが重要になってきたのだ。
P.33

これも大きな価値観の変化だと思う。
あれよあれよという間にそういう時代になっていった感じがするけれど、
価値観は変化し続けるだろうし、揺り戻しも来るような気がしている。

確かに、「何をやっているか」「なぜやっているか」といったことが
明確な人の方が共感を得やすい時代なんだろうけれど、
そうやって確立された人もまたいつしかわかりやすい権威として消費される時が来る。
本質的にわかりやすい物や権威の価値に引きづられる人が多いということは変わってない気がする。

これからは、物質の所有やヒエラルキー付き組織への所属ではなく、自分は何を欲しいのか、何をいいと思うのか、それをわかりやすく表明している個人への注目が集まっていく。SNSでフォロワーを多く集めているのは、どんな価値観で生きているかがわかりやすく、ブレない人だ。
P.34

わかりやすいってのは大切だよね。わかりやすくないと共感得づらい。


大ヒットの功罪

ピタゴラスイッチ』や『だんご3兄弟』の佐藤雅彦さんがコルクラボにゲストとして講演してくれた時の言葉が印象に残っている。「大ヒットしないように気をつけている。『だんご3兄弟』は、ヒットしたせいで、新しく好きになる人が減った。他の作品は、今も新しくファンになる人が多い」
P.75 -P.76

このヒットしないように気をつける、ってなんかすごく重要なことのように感じた。
ヒットしすぎると、一瞬で消費し尽くされて、焼け野原になる。
持続可能な成長の機会は失われて、燃え尽きるイメージ。
そこのコントロールは至難の技だと思うけど、ヒットすることの恐ろしさはあるよな、と思う。


熱狂ピラミッド

ファン層をComitter, Acceptor, Liker, Userの4階層のピラミッド構造で理解している、という話。(P.116)
これってとてもCRM的な考え方。階層ごとに取るべきコミュニケーションも変わる。

だからちゃんと個人がどの階層に属しているのかを把握しつつ、
コミュニケーションを打ち分けましょう、というのがCRM的な考え方になるんだけど、
まだそこまでは言及されていない。
こういう階層の人たちという集団をイメージしながら、
Comitterに向けた発信、Acceptor向けの発信、などと打ち分けているイメージなのかな。
個ではなく、グループに向けて投げかけている感じ。

確かゆうこすも、これはどの層向けの投稿、とか意識してやってるって言ってた。
それと近い感覚なのかもしれない。

あと、本書では週刊少年ジャンプがファンのマネージメントをしてきた、と言われているけど、
これには若干の違和感があるんだよなぁ。。
もっと意識してやったら凄そうだな、とは思うけど。


安全と安心

コミュニティには安全と安心の確保が重要、というお話のなかで、じゃあ安全とは、安心とは何かのお話。
コミュニティ運営に限らず、日常的にコミュニケーション上、重要な要素なんだと思う。

安全の意味を細かく定義すると、安全は、客観的に身の回りに危険がなく、危険があったときの準備ができている状態。安心の定義は、イメージがわくこと。文科省が、安全・安心な社会の概念というのを説明しているよくできたサイトを作っていて、その中で安心を「人が知識・経験を通じて予測している状況と大きく異なる状況にならないと信じていること」と定義している。安心の定義は、不安とは何かを考えると理解しやすくなる。
上司から急に「今夜12時に、どうしても話したいことがあるから無理してでも時間をあけておくように」とメールが来たら、たとえどれだけよく知っている上司でも、不安になる人がほとんどだと思う。もしも「緊急トラブルに対応したくて深夜だけど12時から打ち合わせをしたい。詳細は、そのときに伝える」とあれば、夜12時の打ち合わせでもそれほど不安にはならない。そこまで親しくない間柄でも、このメールなら大丈夫ではないだろうか。
p.161-P.162

で、この安全、安心の確保はコミュニティのメンバーが増えるたびに意識する必要があるということ。

コミュニティは、拡大するたびに、新旧両方のメンバーの安全・安心が必ず脅かされる。そのことを理解して、拡大するたびに、新旧両方の安全・安心の確保をする。それだけで、コミュニティは拡大しても崩壊せず、熱狂を持続しやすくなる。
P.172


ファンを大切にすることの合理性を説きながら事例とともにヒントを与えてくれる。マーケターにとって読むと希望が持てる本。佐藤尚之/ファンベース

いわゆるマス型のマーケティングや広告がどんどん効かなくなってきている時代。
どのような変化が起きていて、これからはどう考えていくべきなのか。
それが本書ファンベースに書かれていること。

自分たちが大切にしている価値観に共感してくれる「ファン」をとことん重視せよ、と本書は言う。
その「ファン」を熱狂させられるかどうか。
しっかりと「ファン」を獲得し、熱狂させられるのであれば、結果は自ずとついてくる。
そのことを丁寧に解説した書。

最近、コアなファンのことや、コミュニティといったものに興味を持っていたから、
関心ドンズバな内容で色々と勉強になった。

もちろん、従来も言われていたことではあるのだけど、
それが綺麗事じゃなくてちゃんとビジネスになるんだよ、ってことを
改めて事例とともに整理してくれる。

何よりも、そう言う関係がお客様と成立するのであればそれはとても幸せなことだし、
やってる人たちもめちゃ楽しいんじゃないか。

そう思える、希望が持てる本なんだよね、これ。
なので、全てのマーケターはとりあえず一旦読むべきだと思う。

ファンベース (ちくま新書)

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SONYのαシリーズのCRM

いわゆるマーケティング・オートメーション的なお話の成功例。
こういった個別具体的な事例における数字って、マーケターにはものすごく参考になる。
業界は違えども具体的な数値って1つのベンチマークになるから本当に考えるきっかけにもなるし最高。

彼らは、顧客がαを購入した後に、「P3」と呼ばれるCRMアクション(購入者に3ヶ月に3回以上コンタクトをする顧客施策)をして、購入した商品を使いこなすための情報やサポートを提供している。
(中略)
高度なユーザーから初心者まで、レベルに応じた多様なコンテンツをメールで配信しており、WEBサイトへの誘引率は、一般的なメルマガが1.3%程度なのに対し、P3メールは32%を示している
P.047

選択肢が多すぎると人は買うのをやめてしまう

選択肢が多ければ多いほど人は選ぶのに悩み、選んだ結果が本当にいいのか気にもなり、自信をなくし、結局選ぶのをやめてしまう。
P.058

これは非常に示唆に富む。
今でこそ増えてしまったが、ジョブスも復帰後に製品ラインナップをめちゃくちゃ絞ったのは有名な話。

そしてこれは渥美俊一はもう何十年も前から言っていることだったりする。
これは真理なんだろうなぁ。

選ぶ楽しみと探す苦痛は違う、という話は
この話と全く同じことを言ってる。

digima.hatenablog.jp

それに関しては上記の記事でも書いてるのでぜひご覧あれ。
小売業全てに通じることだね。

東京は別の国

びっくりすることに、検索を活用している人はほぼ東京に一極集中している。
P.067

東京は別の国と思った方がいいくらい、地方との格差は大きい。
検索を使いこなして情報を取りに行く、のは東京などの都市の人々がほとんど。
決してこれはマスではない、ということ。

もちろん、やがてこうなって行く、ということではあるのだろうけど、
東京の感覚だけだと見誤るよ、ということは肝に銘じておくべき。

ユーザーは自信がない

ユーザーは自分が好きなものに対して自信がない。
だからこそ、これは好きと言っていいんだ、褒めていいんだ、
人にオススメして良いんだ、と思わせることはとても重要。

有効なのは他のユーザーの声をアクセスしやすいようにおいておくこと。
あるいは自社のサービスを褒める記事にアクセスしやすくしておくこと。
そう言ったものにユーザーが触れることで、私もこれ好きって言って良いんだ、という安心感につながる。
自信がつくと、一気に発信してくれる。
これ、多分ものすごく重要なポイントなんだろうなぁ、と思うのよ。


ファンベース (ちくま新書)

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