ビジネス書大好きMBAホルダーが教える私の学びシェア

本を読んでそこから新しい知識を得たり、学んだりすることが大好き。学びたい、成長したいという意欲のあるビジネスマンの皆さん、一緒に成長しましょう。

10年後、動画に関してIPTという概念を明示した古典として語られる名著なんじゃないかな。明石ガクト/動画2.0

来るべき動画の世界の最前線を走っている明石ガクトの著作。
もともとadtech九州でお話聞いて面白いなーと思ってたところで著作が出たので迷わず購入。

そもそも映像と動画は違うっていう話が素晴らしかった。
それは情報の密度が違うということ。
彼はこの本ではそれをIPT(Information per time)と表現している。
時間あたりの情報の密度、だ。

動画はその密度が圧倒的に濃い。
動画になれた子供たちがテレビを退屈に感じるというのも
すべてIPTの問題。

IPTが薄いコンテンツを、若年層は忌避する。この流れは、何も映像に限った話ではなくて音楽や雑誌、漫画、あらゆるところで発生している現象だ。
P.73

ここまで明確に定義してくれるととてもわかりやすい。

そして明石さん自身がクリエイターであるからなのか、
とにかく語りがうまい。
彼自身がストーリーテラーなのだ。

動画2.0 VISUAL STORYTELLING (NewsPicks Book)

動画2.0 VISUAL STORYTELLING (NewsPicks Book)

アフォーダンス理論

「ガラスが割られるのは、そもそもガラスが割られたがっているように見えるからだ」という内容で、目に見えるものは何らかの行動を喚起させるシグナルを送っている、という理論。
P.8

良いデザインはこれと矛盾しないようにできているわけ。
むしろよりわかりやすくシグナルを増強しているとも言える。
それがデザイン。

その辺に関しては、『誰のためのデザイン?』が超良書。
デザインする人で読んでない人は信用ならんくらい古典的名著。

digima.hatenablog.jp

目に見えるものがすべからくシグナルを発しているのだとすれば、
人もまた同じであろう。

人のシグナルを読み解くことは物事を円滑に進める助けになるだろうし、
自らがどのようなシグナルを発しているように見えるのかを自覚することは有意義。

この場合、自分がどのように見えるのかが重要。
自分がどうしたいか、どのように見られたいか、何を発しているつもりか、ではなく、
意志と見え方のギャップに自覚的であれと思う。
マーケティング的にはパーセプションが全てだから。
どのように受け取られるか、それがすべて。


Me at the zoo

You Tubeに初めてあげられた動画。
あげたのはジョード・カリム、You Tube創業メンバー。


Me at the zoo


大勢で観る?一人で観る?

シネマトグラフとキネトスコープ、デバイスの特性がこれからのコンテンツにどんな影響を生むのか考えてみよう。
シネマトグラフ方式の「大勢で観る」という指向性と、キネトスコープ方式の「一人で観る」という指向性の違いが最も重要なポイントになってくる。
「大勢で観る」ことはつまり、皆で同じものを見て盛り上がれるようなコンテンツと相性がいい。(中略)
一人で楽しむメディアとして、忘れてはならないのがラジオの存在だ。「テレビの前のみなさん」とアナウンサーが表現する一方で、ラジオのパーソナリティは「ラジオの前のあなた」と表現する。
エジソン的回帰時代のコンテンツは「あなた」のためであって「みなさん」のためではない。
P.95

スマートフォンという画面で楽しむコンテンツは一人で観るもの。だからコミュニケーションの質がラジオ的なものが良いというお話。
これは真理だと思うし、こんな素晴らしいことをしれっと教えてくれるなんてとても素晴らしいことだ。
本質的にパーソナルなコミュニケーションなんだね。

Instagramのフィルター

こういう雑学的な情報かつ複数の課題を解決するアイデア、大好物なんだよね。

Instagramで写真をUPする時にかけるフィルターは写真のデータを軽くするという目的がきっかけで考案されたアイデアだ。個性的なフィルターをかけることで、画質が多少落ちてもわからない状態になる。それにより、サーバにあげる写真のデータを圧縮することができた。
P.99

ユーザーが喜ぶサービス(自分が撮った写真の見栄えを良くしたい)でもあり、事業者側の課題の解決(最新のスマホの画像データがでかいから少しでも圧縮したい)にもなっている、こういうお互いの課題をいっぺんに解決してしまうのがアイデアの力だと思う。
強いアイデアは複数の課題を解決する。

昔、ある人が主人公とは何か?という話をしてくれたことがある。
A or Bを選ばなければいけない状況の中で、Cという選択肢を提示できるのが主人公。
これもアイデアの話に通じるものがあるんだよね。


コンテンツとメディア

コンテンツが積み上がって、日々コミュニケーションが生まれて、そうやって初めて視聴者や読者が付いてくる。メディアになりたかったけど、そのためにはコンテンツ量が大事だということに気づいた時には、会社のキャッシュがなくなりかけていた。僕らは食いつなぐために受託で動画制作の仕事をやることにした。
P.178

こんなに成功しているように見える人たちも、とんでもなく苦労して、努力している。
きっとこれからますます成功して行くんだろうけど、潰れかかってたなんて想像つかないんだろうな。
皆、見えないところでもがき、努力している。

さて、
コンテンツ制作とメディアになることは別物なんだよな、と常々思っている。
そしてコンテンツは作っただけでは流通しない。
YouTubeというプラットフォームは流通プラットフォームデアはあるが、
コンテンツは生まれた瞬間、無数のコンテンツに埋もれる。
砂漠の中の砂つぶの1つ。
メディアになるということはユーザーにコンテンツを流通させる力を持つこと。
両方できると最強だけど、クリエイターとしてコンテンツ制作とメディア運営はまた別物だから、
両立はとんでもなく難しいと思うのだけど、真のメディアとは制作能力とセットになっている。

NewsPicksもキュレーションだけではなく、オリジナルのコンテンツを急拡大させて初めて真のメディアになった気がする。
今や落ち目だけど、昔は雑誌もコンテンツとデリバリーの両方を兼ね備えていた。
今は出版流通という既存のデリバリー構造がぶっ壊れているイメージ。

いや、しかし本当に動画に関する考察やノウハウをここまで開示している本は無いと思う。
10年後、IPTという概念を明示した古典として語られる名著なんじゃないかな。

動画2.0 VISUAL STORYTELLING (NewsPicks Book)

動画2.0 VISUAL STORYTELLING (NewsPicks Book)

短期的なPLをよくすることが目的化しているPL脳から脱却せよ! 朝倉祐介/ファイナンス思考

日本企業を蝕むPL脳、それは短期的なPLの数字に囚われて、
長期的な成長を描けなくなる病。

企業価値を向上させることはPLをちょっぴりよくすること、ではない。
経営者も、投資家も目先のPLばかり見ているからダメなんだと言う話。

例えばGAFAの場合

・短期的なPLの既存を厭わない
・市場の拡大や競争優位性の確保を重視し、極めて大規模な投資を行う
・投資の目線が長期的で未来志向である
P.24

投資が短期的な回収と言う目線ではなく、競争優位性の確保、企業価値の向上に向けて投資される。
来期のPLがそれで悪化しようと構わない。
ただ、日本の企業だと、PLに傷つけるな、となる。そっち優先じゃないでしょ?ってこと。

会社の意思決定の中には、会社の価値向上ではなく、
実は、目の前のPLを最大化することを目的とした近視眼的な内容が紛れていることが珍しくありません。
P.26

四半期ごとの増収増益を作ることが目的化されてしまうと本質的な投資は行われない。
これをPL脳と呼んで、警鐘を鳴らしている。
お説ごもっともで、会社の中ではPL脳的な議論が繰り返されているなぁ、と実感する。

会社の成長ステージに応じた「経営者」

経営者とは職種で、別に出世してなるものでもない、と言う感覚が日本にはない。
マーケターとか研究開発と同じ、職種、なんだよ、本来。
そして経営者の中にもいくつかのタイプがあって会社のステージによって最適な経営者というのは変わる。

P.68 -P.69のをざっとまとめると以下の感じ。

創業期:「起業家」
→0から1を産み出す、立ち上げ段階、視点はあくまでもプロダクトの作り込み

成長期:「事業家」
→立ち上がったプロダクトから継続的な利益を創出するビジネスへ。規模拡大とオペレーションの洗練。

成熟期:「経営者(狭義)」
→自社事業が10まで育った会社を100まで持っていく。既存事業のほかに複数事業を並行稼働する組織運営。
 資産が使える。ファイナンス思考超重要。

経営者を職種として捉える考え方はほとんど浸透していない。
プロ経営者という方がちらほらいるけれど、絶対数はとても少ないし
世間一般からは認知されていない。

社長=会社のオーナーであるかのようなイメージがつきまとっているのもよくない気がする。
株式会社は誰のものか?
株主のものです。
社長のものってわけじゃない。

経営者は、株主から経営を任されているだけ。

所有と経営を分離した仕組みが株式会社というイノベーションなのだけど、
このことを一般の人たちがほとんど理解していない。

売上至上主義の罪

PL脳の最たるものが売上高至上主義だ。
売上高の成長が最優先されると、どんどん採算性は低下していく。
例えば、同じ100万円の売上でも
単価100円*10000個なのか、単価1000円*1000個なのかで意味が違う。
製造コストは10000個の方が低いだろうが、営業コストやマーケティングコストは高くなる。

どっちがいいかはトータルのコストで考えないとダメということ。

上場企業を蝕む短期主義

決算は1年や四半期といった期間によって区切られ、会社はその期間の結果によって評価されます。
したがって経営者は、どうしても目の前の決算内容をよくしたい、PLをよく見せたいという動機をもつものです。
P.212

これは日本の企業の成長にキャップをかける要因にもなっている。
四半期や1年での決算をよく見せることが気になるって、PL脳を社会全体で推進するような構造。
経営者の任期が短いことも長期的なビジョンで投資できない弊害が指摘されている。
そんな文脈の中で非上場企業やファミリービジネスが再び注目を集めている。

資金需要がなければそもそも上場する必要ないし、
上場以外の資金調達手段もある。

資金調達コストを低く抑える中での選択肢の1つでしかない、上場なんて。

理、心、運

朝倉さんの前著の話。

理と心と運の影響度合いは「1:4:5」くらい。
でも運は理と心を尽くしていないところには降りてこない。
理と心は必要条件なんだ、というの実によくわかる。

本田宗一郎は「理念なき行動は凶器であり、行動なき理念は無価値である」と述べています。
(中略)
もちろん、いくら正論を振りかざしたところで、現実がままならないことは、自身の経営経験を通じ、骨身にしみて実感しています。正論と現実は、得てしてかけ離れているものです。
ですが、だからと言って、「現場感」や「リアリティ」といった名の下に現状を肯定し、追従しているようでは、進歩は望めません。理想と現実の乖離を理解したうえで、思い描いた理想を100%は実現できないにしても、ままならない現実を少しでも「あらまほしき世界」に引き寄せる。数多上げることが出来る「できない理由」を少しでも多く潰す。ことを成すには、こうした不断の努力が必要です。
P.260

そういうものなんだ、という覚悟を決めるしかない。
それでもがくしか無いんだと思われる。
励まされる一節だった。


仮説と検証、結果からまた仮説構築、検証というサイクルをひたすら回すのだ!! 福島良典/センスのいらない経営

Gunosyの創業者である福島さんの著書。
地味な出版社から地味に出ているんだけど、
結構良い本だと思うの。

なんでもっと話題にならないんだろうと思うが、
本なんてそんなもんで、
だからこそ良書と出会えることはとても大切。

センスのいらない経営

センスのいらない経営

目的設定の重要性

機械がプロに勝った象徴的な事例である、囲碁AlphaGoの開発過程の話。

囲碁は「相手との目数の差」が多いほど有利ですから、開発当初は「目数の差を大きくする」という目的が設定されていたそうです。ところが、それでは思うように勝率が上がりませんでした。そこで、目的を「勝つこと」に設定し直したところ、劇的に勝率が上がったそうです。
P.72

解くべき課題の設定がいかに大切かということ。
間違えた問題に対する正しい答えほど厄介なものはない。

マネジメントにおいてもチームに適切な課題を与えてあげることがとても大切。
安易にコンバージョンを追い求めると短期的費用対効果だけ追い求めて崩壊したりする。
何を取り組むべき課題とするか、そこを考え抜くのがマネジメントの大事な仕事。


グノシーのダウンロードが伸びたコミュニケーションとは

最初はグノシーの特徴を覚えてもらうためのCMを流していた。認知は上がったけど、ダウンロードは伸びない。
なぜか??

必要なのは使いたいと思わせるCMだ。ようやくそう気づいて、使い勝手の良さやおトク感を前面に出した内容に作り変えたのが、先ほどのCMです。
P.102

これも先ほどの課題設定の話と似ている。
何のためのCMなのか、どうしたいのか、という目的設定がとても重要。
サービスを知ってもらいたいだけなら、以前のCMでも良かったのだろう。
ただ、本当の目的は知ってもらうことではなく、ダウンロードして使ってもらうこと。
だとすると、使いたいと思わせるCMじゃないといけなかったという話。
目的は何なのか。その目的は本当に適切か。ここがずれてると成功しようがない。

結局、目的自身も見直しながらPDCAしまくっているというのがこの本。
とにかくそこから逃げなければ何も怖くない、と。
うまくいくかな、どうかな、と不安がる意味は全くなくて、
仮説と検証、結果からまた仮説構築、検証というサイクルをひたすら回せばよくなっていく。
徹底的にそこにこだわるべきなんだな、と気づかされる。

徹底的にPDCAに取り組む組織文化の醸成こそが肝ってことだと理解した。

特にソフトウェアはリリースした後の改善が肝ですから、社員たちの間で「トライ&エラー」を繰り返すことにインセンティブが働くようにする必要があります。たくさん実験し、たくさん失敗し、たくさん学習することを良しとする。そうした会社の姿勢を示すことで、「ナイストライ文化」を行き渡らせています。
P.180


センスのいらない経営

センスのいらない経営

戦略というものを構造的に捉えて、言語化しているマーケター必読の書。 音部大輔/なぜ戦略で差がつくのか

マーケティング界隈で活躍しまくっているP&Gマフィア。
彼らはP&Gの卒業生。

そんなP&Gマフィアの筆頭ともいうべき人が音部大輔氏だ、

戦略とは何か?
わかっているようでみんなわかっていない。
戦略をちゃんと定義できていなければ、戦略なんか立てようがない。
本書は戦略とは何か、どう考えるものかを丁寧に解説した本。

戦略にフォーカスして、どのように考えていくかを噛み砕いているので、わかりやすい。
最も、膨大なデータと予算が必要そうな印象も抱いてしまうのだが、
弱者の戦略というよりは王道の戦略論。

優秀な人は言語化能力がすごい。

戦略というものを構造的に捉えて、言語化してるのでマーケター必読の書だと思う。


戦略とは何か

一言で言うなら「目的達成のための資源利用の指針」である。

なぜ戦略が必要なのか?に対する答えは、「達成すべき目的があり、かつ資源が有限であるから」である。目的がなければ戦略は必要ないし、資源が無限であれば戦略は必要ない。
P.27

目的を常に意識することは戦略とはまた違う次元で重要だ。

このサンプリングの目的はなんですか?と言う質問に対して、「1人でも多くの利用者に製品を渡すことです」と回答されたことがある。会話になっているように聞こえるが、これではサンプリングという行動の記述に過ぎない。カテゴリー(製品分野)の被使用者にカテゴリーの体験をしてもらいたいのか、ブランドの使用者に新しいアイテムを追加しようしてもらいたいのか、競合ブランドの使用者に製品体験を通して自ブランドの優れた点を認識してもらいたいのか。目的によって最適なサンプリングの仕方は異なるだろう。
P.25

この何のために?という目的を浸透させることは非常に重要だ。
目的の認識が間違っていると、とんでもない結果を招きかねない。
間違った課題に対する正しい答えほど手に負えないものはないからだ。

良い目的を設定するために

目的は解釈の余地がない、誤解の招きようがない表現で設定されなければいけない。
そのための要素がSMACだ。

SMACというのは、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Consistent(一貫性がある)をつなげた単語だ。
P.44

達成可能性をどう捉えるか、ということに関しては、
確実に達成できるというよりも、確実に達成できないことを排除するイメージ。
既存のデータと仮説の組み合わせで構築していく。
ロジカルな仮説思考が求められるということ。


資源を解釈し直す

「目的」に並ぶもう一つの需要な構成要素が「資源」である。戦略における残り半分の創造性は、資源を解釈し直すことにある。目的の再解釈に創造性が必要であったように、ここでも戦略は創造性を要求する。(中略)
目的を達成できなかったり、成果がはかばかしくなかったりといった場合に、資源の欠乏を理由とされることはよくある。(中略)すべての問題を資源の欠乏に帰結させてしまうという姿勢自体も、戦略的に思考できていないことが原因かもしれない。
P.86-P.87

自分たちの資源に、自分たちがどれだけ気付けるか。
組織の中には顕在化していない資源も隠れている。
当たり前だと思っていたことが非常に強力な資源になることすらあり得る。
気づけていない隠れた資源はないか、資源の組み合わせで相乗効果が発揮できないか、
資源になりうる要素をとことん洗い出して整理しなくてはいけない。

ブリーフィングの重要性

ブリーフをいかにわかりやすく、かつ、彼らの専門性を鼓舞できるように書くか、というのはとても重要な工程である。自分たちが提示した目的や戦略が十分に理解しやすいもので、代理店担当者を鼓舞し奮起させるものになっているだろうか。もしクライアントとしてよくわからないのであれば、彼らに直接確認してみるのもいいだろう。
P.118

代理店活用に際してのブリーフが重要だというお話なのだが、
これは代理店のみならず、あらゆる関係者を巻き込み、予想や期待を超える結果を出してもらうための技術。
目的や戦略を明確にした上で、やる気を引き出す伝え方をする。
チームで仕事をする際の要諦でもある。

人は一体どういう時にやる気になるのだろう。
やはり自分が貢献できそうだ、という感触や、自分の働きへの期待が伝わる時なのではないか。
そう考えるとブリーフィングは細部まで規定されたものでは逆効果になる気がする。
それぞれの専門性を持った人材が、創意工夫する余地、余白みたいなものもあるべきだ。


最悪を回避する思考実験

「今日は、計画実行から半年後である。叡智の限りを尽くして組み上げた戦略と、それに基づく計画を、全員が全力で遂行した。誠に残念ながら、我々の試みは完全な失敗に終わった。さて、なぜ失敗したのか」
P.284

これから遂行するプロジェクトを未来から振り返る。
なぜ失敗したのか。
これは遂行の精度をあげる重要な思考実験だ。

個人的には常に意識してる思考実験。
イデアを考えるときはポジティブに広げていくが、ある程度アイデアがまとまってきたら、
一度自分ですべてを否定してみようと試みる。
どうしたら失敗させることができるか。
そのネガティブチェックによって思いついた穴が、
失敗を回避するために対策しなければいけないポイントだったりする。


ポジ、ネガを交互に繰り返し、穴を埋めていく脳内ディベートこそ、
思考を深めるのに有効な手段だと思うのだがこれをやらない人が多すぎる。

これに慣れてくると、一人でいつでもどこでも、思考できるようになるし、
大抵の質問には即答できる。
とにかく思考し続けることは大事。

小売業も単なるモノ売りから顧客との関係づくりに変化してきている。 アン・H・シャンザー/サブスクリプション・マーケティング モノが売れない時代の顧客との関わり方

所有から利用へ。
モノからサービスへ。
販売から関係づくりへ。

小売のサービス化が進んでいく中で、
その中心にあるのがサブスクリプション型のサービスだ。

サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方

サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方

サブスクリプション導入の注意点

これはどの企業にも起こりうる話。
まずは試験的に導入してみようというやつ。
ただ、この試験的導入というのには大きな落とし穴がある。
本気にならないのだ。

これはテストだから、と関係者がベストを尽くさない。
お試しだからこそ、お試し期間は持てるリソースを全て突っ込むくらいの勢いで
トライしなければいけないのに。

テストがうまくいかない本質的な理由がここにある。
どうせこれはテストだから、という意識を払拭させることが、
正しいテストの第一歩。

これはリスクの比較的低い手法のように思えるが、コミットメントの欠如から失敗に終わることも考えられる。現在の売り上げが減ることを恐れて営業担当者はサブスクリプションを売り込もうとしないかもしれない。マーケティングチームはこれを試験的なものと考えて、理想的な顧客を求める十分な努力をしないかもしれない。顧客を成功に導くしああ署の段階で力を入れなければ、契約の更新離されず、チャーンレート(解約率)が高くなるかもしれない。
P.43

数字でとらえる

これはサブスクリプションに限らず、今の時代のマーケティング・スタンダードだと思うんだよ。

・顧客を1人獲得するための平均コストはいくらか。制約に至るまでのマーケティングや営業にいくらお金がかかるのか。
・契約者1人あたり収益はいくらか。
・顧客を維持するのにかかるコストは。
・顧客の獲得に要した費用を回収して利益を得るまでにどれだけの時間を要するか。契約更新が何回必要か。
・平均的な顧客はどれほどの期間サービスを利用し契約を更新するのか。現在のチャーンレート(解約率)はいくらか。
P.59

獲得と維持にかかる費用をどれくらいの期間で回収するか、その設計ができれば実行するのみ。

サブスクリプションモデルは一方通行のファネルじゃない

サブスクリプションモデルはいわゆる漏斗状の一方通行のファネルではない。
購入後の顧客をいかに満足させ、継続させるかという視点が重要になる。
したがって購入後のユーザーが再び見込み客になるようなフィードバックループが組み込まれていると考えられる。

・既存顧客を育成して契約更新につなげる。
・既存顧客にアップセルをかける。
・顧客の口コミによって新しい見込み顧客を創出する
P.69

ただ、これはサブスクリプションモデルに限ったことではない。

例えばファンベース的な考え方でコミュニティを育成していく時もこの考え方は有効だろう。

digima.hatenablog.jp

通販会社の高度なCRMもこの考え方が前提とされている。
結局、顧客との関係性の維持、という視点を持つと必然的にここに行き着くのだ。

個人的には伝統的なカタログ通販会社などがもっているCRMのノウハウはものすごく有効だと思っていて、
そのノウハウこそ、カタログ通販以外の業界が求めていると思うんだよね。


支払いという苦痛

サブスクリプションモデルはつどつど支払いという意思決定をする必要がない。
先払いで後は楽しむだけ。最初のハードルさえクリアすれば後はいかに満足してもらうかだし、
消費者のマインド自体が後は楽しむだけ、となるので満足感を与えやすい。

支払いという苦痛を体験してしまえば、あとはテニしたものを存分に楽しむことも認知科学でわかっている。(中略)先払いをした後で消費すると多くの喜びが得られる、と述べている。
P.79

顧客とストーリーを共有する

口コミやレビューを書いてくれとお願いはするけれど、既存顧客がそれを読みたがっているという視点を忘れがち。
自分が購入した行為を承認する効果もあるだろうから、満足度の向上にも寄与する。
自分が買った商品のCMを見るとちょっと嬉しくなることあるでしょ、私、これ持ってるよってなるやつ。

人は常に自分の選択が正しかったのか不安になる存在。
承認されたいニーズが無意識のうちに存在している。
だから、あなたの買い物は間違いなかった、他の人もこんなに喜んでいる、という
エピソードを提供するのは理に適っているんだよね。

マーケティングチームは既存の顧客に体験談を語ってくれるよう依頼をするが、彼らが体験談を聞きたいと思っていることは忘れがちである。ストーリーは、他の人がどのようにして成功を収めたかを雄弁に物語る。ストーリーによって顧客は自分が今どんな恩恵を受けているかを改めて認識するかもしれない。もっと商品、サービスを活用しようという気になることだって考えられる。
潜在顧客を引き寄せ、見込み顧客を創出するために、すでにストーリーは用意されているだろう。それを顧客に届けるのだから、それほど手間はかからない。すでにあるコンテンツを利用するこの戦略は、価値育成の無料お試しと考えてほしい。
・契約を済ませた顧客に適切なストーリーを届ける。
・新しい体験談を公開するときは、既存顧客にも届ける。
・顧客に成功談や、商品、サービスの興味深い活用法を聞かせてくれるよう積極的に働きかける。
P.107

顧客が得た恩恵をデータで示す

実際あなたはこれだけ得してますよ、みたいな情報をデータで示す。

データは、サブスクリプションによってその顧客がどれくらいの利益を得たかがわかるような形で示すとよい。時間をどれだけ節約できたか、どれほど健康的な食事ができたか、何度ブログを更新したか。あなたのビジネスに合えばどんな形でもよい。
P.111

これもまた色んな応用が効く視点。
例えばあなたはこれだけ得してます、を定量的に示す。
例えば通販サービスなら、あなたは年間送料無料キャンペーンでこれだけ得してます、とか。

コンテンツマーケティング

僕は下記の考え方には賛同できない。
コンテンツ・マーケティングは関係性を構築するのには向いていると思うが、
短期的な収益施策としてはよくないと思う。

自分がこういう思考に陥らないように気をつけたい。

ジョー・ピュリッジはこう述べている。「顧客をより長く引きつけ、より満足させる。そして/または、より多くの支払いをさせることが、コンテンツマーケティングの第一の目的である。
P.192 - P.193

エピック・コンテンツマーケティング 顧客を呼び込む最強コンテンツの教科書

エピック・コンテンツマーケティング 顧客を呼び込む最強コンテンツの教科書

↑ちなみにこの本でそういうことが語られているらしい。
賛同できそうにないけれど、読んでみようかな。。。


サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方

サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方

良質な入門書は改めて色々なことに気づかせてくれる。初学者からベテランまでオススメ 逸見光次郎/マーケティング 顧客ファーストの時代を生き抜く新しいルール

オムニチャネルといえばこの人、みたいな感もあるマーケターが書いた入門書。
逸見さんが基本的な要素を整理しつつ、第一線で活躍するマーケターがコラム的に寄稿している構成。

基本と濃い話が絶妙に混じってる。

そしてこういう入門書は必ずしも初学者のためだけじゃない。
基礎であるがゆえに良質な入門書は改めて色々なことに気づかせてくれるから。

主観的に考える

これはスマートニュースの西口さんのコラムの一節。
ロジカルな最適化は早晩AIがやるようになるよ、と。
そうなった時に人間じゃないと出せない価値はなんなのか。
自ら没入し、同化して、主観的に考えることが大切なんだね。

知識を蓄え、そこから論理的に考えるのは、AIが担当してくれます。最も重要なのが、マーケットに身を置いて、主観的に新しい需要やニーズを考えること。ターゲットを客観的に見るのではなく、自らをターゲットとして、非線形的に、これまでにない価値のあるもの、サービス、コミュニケーションを考えてみてください。
P.38

主観ってすごく大切なんだけど、持ってる人以外と少ない気がする。
全然自分の頭で考えてなくて、誰かの受け売りだったり、人の意見に合わせているだけだったり。
真の主観とは他人に何と言われようと自分がたどり着いた思考であり、真実。
自分にとって真実なのであれば、それは真実なのよ、自分にとっては。
それが理解されるかどうかすら関係ない。
そういう自分にとっての真実にたどり着く思考力と、
空気読まない自立心がないと、主観的に考えられないと思うのよね。

計画と実行

数字に落とし込んだ明確な目標を作ることがスタート地点。

実行フェイズになったら、現場での販売活動が中心になってくる。商品の確保、店頭への販促物(ポスターやPOP)の掲示確認や各種宣伝など、「実行すると決めた施策」を、「決められたタイミング」で「決められた担当者」がきちんと実行していくことが大切だ。
(中略)
「各施策の実行」と「その数値の見える化・共有化」が両輪で回ってこそ、キャンペーン効果の最大化がはかれるのだ。
P.136

数値を見える化して、公開、皆と共有することで全員当事者意識を持てるようになる。
状況の理解、把握を一緒にしないとダメ。
認識を揃えて皆で考えればいい知恵もわくが、当事者意識を持たないまま考えろと言っても意味がない。

商品勘定から顧客勘定へ

売り上げの計画は商品ではなく顧客で勘定する。

「商品がどれだけ売れるか」という「商品勘定」から、「年間いくら使う顧客が何人いたら予算が達成できるか」という顧客勘定になる
P.152

目標設定した期間で、何人の顧客が、平均何回買って、注文あたりの単価はいくら、例えばこれらがどうであれば目標が実現するのかイメージできているか?
できてないなら、今すぐ計算して明示したほうがいい。
例えば上記の場合、購買客数が少ないのか、購買頻度が少ないのか、単価が少ないのか、どこがうまく言っていないのかを常にモニタリングできる。
分解した指標を持てば、モニタリングできる。モニタリングできれば常に異変に気づけるし、改善アクションの頻度も高まる。

KPIの立て方に気をつけろ

例えばコールセンターは通話時間を短くして業務効率を上げることを目的にするのではなく、応対した顧客が実際に次の買い物をしてくれたかどうかをデータで見える化し、頻度向上を図ることが重要になっています。
P.162

上記はとても良い例。
お客様への対応時間を短くすることがKPIなのと、応対した顧客が次回も買ってくれるかがKPIなのでは行動が変わる。
何が目的なのか、目的とKPIはしっかりと整合しているか、マネジャーはここを死ぬほど考えぬかないといけない。

メッセージは1つじゃない

マス媒体の時代は顧客には共通の1つのメッセージを伝えていればよかった。
でも、もうそういう時代じゃない。

同じ商品・サービスの情報を伝えるにしても、顧客の利用シーンやニーズに合わせて伝えるメッセージを変えていかなくてはならない。
P.182

マネジャーとは何なのかを明瞭に示してくれる伝説の名著。 アンドリュー・S・グローブ/HIGH OUTPUT MANAGEMENT ハイアウトプット マネジメント

田端さんが絶賛していて知りました。
インテルの経営者が書いた本。
マネジメントの要諦というか、生産性を上げるために
どういう視点で見て、考えるのかを具体的に書いてくれている名著。
そしてマネジャーとは何なのかをこれほど明瞭に示してくれる本もないだろう。

朝食工場

コーヒー、トースト、半熟卵からなる朝食を生産する工場に例えて、
生産の肝を解説することからこの本は始まる。

まずやらなければならないことは、取りかかる作業の全体的な形を決める中心的なステップをはっきりと突き止めることである。それを、制約的ステップと呼ぼう。(中略)答えは明らかに卵である。そこで、卵をゆでるのに必要な時間を中心に全体の仕事を計画しなければならない。(中略)
ここでカギとなる大切な考え方は、最も長い(あるいは最も困難な、最も要注意の、または最も費用のかかる)ステップから生産の流れを組み立てて、逆に考えてゆくという点である。
P.41-P.43

ワークフローの中心にすえるべき事柄は最も時間がかかったり、難しかったり、コストのかかること。
要は失敗してしまうとクリティカルなものを確実にこなすフローを中心において、他の作業を周辺に配置する。
この抜き書き部分だけで多くの示唆がある。

生産性を上げるためには、クリティカルなリスクから潰すということ。
仕事は様々な工程、作業によって成り立っているのだけど、どの工程が最もクリティカルな工程なのか、ワークフローを客観的に分析することは非常に重要だし、既存のワークフローの改善もそこからしか始まらない。これは個人の作業に関しても当てはまる。

もう一つは逆算思考。この工程を中心に据えるならば、というところから後はどうであるべきかを逆算していく。
ゴールからゴールに達する道を逆算していく思考はビジネスマン必須のスキル。
個人的には構造化と逆算思考がビジネスマンの基礎戦闘力だと思ってる。これが弱いと、応用きかない。

マネジャーのアウトプット

マネジャーのアウトプットとは何か?判断と意見?指示?部下の育成?計画の立案?
どれも違う。それらはアウトプットではなくて、活動(=アクティビティ)なんじゃないのか、とグローブさんは申しております。
なすべきことではあるが、アウトプットではない、と。

マネジャーのアウトプット=自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット
P.85

くっそシンプルで明確である。
この定義を組織に理解させ、浸透させねばなるまい。

仕事とはチームでやるもので、マネージャーのアウトプットは個人のアウトプットではなく、組織としてのアウトプットを見てやらねばいけない。
組織としてのアウトプットを出すのがマネージャーの仕事。

「影響力が及ぶ」というのはいい影響力を与えなければいけないということでもある。

往々にしてマネジャーは、オフィスにいながら、様々な出来事に何がしかの影響を与えるために、様々なことを行う。たとえば、仲間に電話をして意思決定はこんな風にしたらと提案したり、ノートやメモを送って状況に対する自分の見方を示したり、あるいは口頭でのプレゼンテーションの際にコメントを述べたりなどする。このような場合、マネジャーは自分として望ましい解決の仕方を主張はするが、指示や命令を出しているわけではない。しかしやっていることは、単に情報を伝えるというよりは強いことである。これは個人あるいはミーティングを軽くつついて自分の思う方向に進ませようとするので「ナッジング(突っつき、とか一押し)と呼ぶことにしよう。これはマネジャーが常時行う極めて重要な活動であり、確固として明確な指令となる意思決定とは慎重に区別しなければならない。
P.99

そう、マネジャーは意思決定以外にも、周囲にプラスの影響を与え、組織全体のアウトプットが最大化するよう動かねばならない。
歯車も放置しておくと噛み合わない、ということでもあるんだろうな。
しっかりと噛み合った歯車は最高の仕事をするけれど、放っておいて噛み合うわけでもなく。
なので常に自分の見解や意見を伝え、部下たちの方向性を整えることは非常に重要。

権限移譲の肝

マンジャーの時間は、その値打ちに上下があるので、権限移譲がマネジメントにとって不可欠な側面となる。「委譲する人」と「委譲される人」は、どのように問題を解決していくかについて、共通の情報基盤と共通した業務処理場の考え方を持たなければならないが、この点がよく見落とされがちである。
P.109

権限移譲は必須だが、委譲する先とは何を見てどう考えるかの部分をよく擦り合わせておかねばならない。
結局マネジャーはすべての意思決定に関与するには時間がなさすぎる。
一方で、仕事は現場レベルの無数の意思決定の束で出来上がっているから、それらの判断がてんでバラバラではうまくいかないのも道理。

ただ、権限委譲したからといって、自分には関係ない、ではダメ。

最後までトコトン、フォローしない権限委譲は“職務放棄”だという原則をよく考えておいてほしい。マネジャーがタスクからすっかり足を洗うことなどはできない。権限委譲をした後でも、仕事の完了に対してはやはり責任があり、委譲した仕事のモニタリングは、結果を確実にもたらすための唯一の実際的方法である。
P110

マネジャーのアウトプットは組織のアウトプットだからね。
モニタリング、超大切。
権限を委譲しても責任から解放されるわけではない。
委譲しながらも責任の一端を担うからこそ、いざという時には口も出すって感じか。

ミーティングの善悪

ミーティングというと無駄の塊のような、少なければ少ないほどいいような語られ方をすることもある。
実際、それだけ無駄な会議が世の中には溢れているということなのだろう。
ただ、グローブさんはこれに異を唱える。

マネジャーは意思決定もするし、人の意思決定の援助もする。この基本的なマネジャーの仕事は両方とも、膝を交えての話合いのとき、したがってミーティングを通じてのみ遂行できる。だから、ミーティングがマネジャーが仕事を遂行する“手段”そのものに他ならないと、私はここでもう一度主張しておきたい。ということは、われわれはミーティングの存在の当否と戦うのではなく、むしろその時間をできるだけ能率よく使わなければならないのである。
P.126

全くもってその通りで、参加するものを無駄だと断じる前によくすることを考えるべきなのだ。

同僚プラス1

同僚同士だと議論はしても何も決まらない問題というのが起きる。
だから、そういう時には上の立場の人間を1人混ぜる、ということ。
しかし今度はそうなると、皆の発言が歯切れの悪いものになる。

人々が同僚の面前で意見を出すことを躊躇する理由のひとつは、グループの意見と異なる意見を述べることはグループに反対することにならないかと恐れるからである。
P.156

その結果腹の探り合いになって、個人ではなくグループの意見として落とし所を探り出す。
これは、不毛だ。
しかし人は皆、浮きたくないし、嫌われたくない。
だからなるべく、安全、安心を確保してあげないと意見はなかなか出てこない。

マネジャーの評価

組織としてのアウトプットが出ていないチームのマネジャーは、
その上司がどんなに彼は優秀で、悪いのはチームのメンバーだと言っても、評価できない。
マネジャー個人の評価は、彼の組織に与える評価よりも高くすることはできない。
外見ではなく、アウトプットを評価する。

マネジャーのアウトプットとは何か?

マネジャーのアウトプット=自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット
P.85

なのだから。