ビジネス書大好きMBAホルダーが教える私の学びシェア

本を読んでそこから新しい知識を得たり、学んだりすることが大好き。学びたい、成長したいという意欲のあるビジネスマンの皆さん、一緒に成長しましょう。

数学でカジノと株式市場に買った男の物語。エドワード・O・ソープ/天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す

個人はカジノに勝てるか、この命題は長らくカジノには勝てないと言うことが証明されていた。
一定の確率で勝負がつくゲームにおいては資金力の差が勝敗を決することが証明されていたからだ。

ところが、著者はそのセオリーに真っ向勝負を挑む。
例えばブラックジャックで、場に出ているカードを全て記憶して計算すれば、
プレイヤーが確率的に有利になるシチュエーションはあるはずだ、と。
そういった場面にだけ大きくかけて勝負をしていけば、カジノにも勝てるのではないか、と。

その理論を完成させ、自ら実践し、実際にカジノに大勝ちした男。
その男の自伝がこの本だ。

マイクロソフトの日本法人代表だった成毛眞さん(稀代ののノンフィクション本読み)も
絶賛しているので興味を惹かれて読んだのだけど、これがすこぶる面白い。

カジノに買った後は戦場はデリバティブ取引に移り、そこでも勝ち続けている。

天才が金儲けに才能を使うとこうなるんだな、ということに尽きる。
実際彼はクロード・シャノンなんかとも交流があり、
研究者として生きていく道もあった人なのだけど、もう少し金儲けの方に軸足を置いた人。

それと、天才を育てるのも大変だなぁ、というエピソードもちらほら。
子供の頃に爆発物作りにハマってニトログリセリンを作ったことがあるらしいのだけど、
タンスの中からニトロとか出てきて欲しくないなぁ、と思ってしまった。

何れにしても、伝記って自伝でも、第3者でも、面白いもんだね。


AIの活用による新たな産業革命が起きようとしている。そして経済の中心はアジアへ、という話。 井上智洋/純粋機械化経済

著者は駒澤大学の准教授、硬いタイトルと分厚さに躊躇う人が多そうだけど、
予想に反して内容はとても読みやすく平易に書いてくれている。

AI全般のお話とそれが新たな産業革命に繋がると言う見立て。
そして中国経済の爆発的な成長が実現するのではないか、と言う予測に基づき、
中国の経済史も概観しているのでこれだけの分厚さになっていると言うわけ。


リオリエント

ヨーロッパ中心の歴史観を見直そうと言うグローバルヒストリーと言う考え方がある。

ヨーロッパで銃や大砲が戦争で使われるようになったのは、15世紀のことだ。それにもかかわらず、つい最近まで歴史学者の間でさえ、銃、大砲はヨーロッパ人が発明したものと考えられていたのである。
P.43

こういった誤認識を訂正していくことで、ヨーロッパ中心主義からヨーロッパを相対化した上で、地域間の相互関係を世界的視野から見る。
アンドレ・グンダー・フランクの『リオリエント』が紹介されていたのでちょっと読んでみたい。

リオリエント 〔アジア時代のグローバル・エコノミー〕

リオリエント 〔アジア時代のグローバル・エコノミー〕

リオリエントには再びアジアの時代になると言う含意も含まれているのだとか。
アジア(特に中国)は再び経済でも中心に戻りつつある。
本書によると経済面でヨーロッパが中国を凌駕するようになったのは1800年を過ぎてから。
そうなると中国の没落はたかだか2世紀程度の話になる。

日本が後進国

科学技術力が重要なこの時代に、国立大学への研究費交付金は毎年削られている。
一方で優れた研究課題に対して予算を配分する競争的資金は増えているらしいが、何れにせよアメリカや中国の大学に比べ予算の規模が違う。

リゾームは今なお有効な概念

経済の本でドゥルーズの『千のプラトー』が出てくるとは思わなんだ。
ここで提示されるリゾームという概念は、ツリー状の階層構造ではなく、中枢(コア)や回想なしに複数のユニットが相互に連結した構造のこと。
ネットワークはまさにリゾーム的だと言える。

自分の頭の中もリゾーム的なんだなぁ、とこれを読んで改めて思った。
やや強引な感はあるけれど、ニューラルネットワークディープラーニングリゾーム的だというのだけど、
ディープラーニングは層をなしているから階層的なんじゃないかしら、とも思ったけどな。

千のプラトー―資本主義と分裂症

千のプラトー―資本主義と分裂症

千のプラトー 上 ---資本主義と分裂症 (河出文庫)

千のプラトー 上 ---資本主義と分裂症 (河出文庫)

千のプラトー 中 ---資本主義と分裂症 (河出文庫)

千のプラトー 中 ---資本主義と分裂症 (河出文庫)

千のプラトー 下---資本主義と分裂症 (河出文庫)

千のプラトー 下---資本主義と分裂症 (河出文庫)

逆転クオリア哲学的ゾンビ

人は他人のクオリアを体験することはできない。(P.142)
リンゴを見て「緑」に見えていたとしても、その緑色がその人にとっては「赤」なので。
物理的には全く人間と同じだが、意識もクオリアも持たない存在を仮定した時、
振る舞いが人間と同じで泣いたり笑ったりするが、喜びや悲しみは感じていないとしても、
我々には見分けがつかない。
意識やクオリアを機械が持てなかったとしても、それ自体が機械が人間的に振る舞えない理由にはならない。

平均は終わった

アメリカの格差社会の例として出てきた話だけど、
平均と中央値の乖離が大きい(中央値が平均を大きく下回る)状態に所得格差があるのだという。
これは一部の富裕層への富の集中を象徴しているのだけど、
中間層が崩壊し、平均値に意味がなくなってしまっている。

平均は終わった、というのはタイラー・コーエン『大格差』に出てくるフレーズらしいが、
なかなかのパンチラインだな。

大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか

大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか

大分断:格差と停滞を生んだ「現状満足階級」の実像

大分断:格差と停滞を生んだ「現状満足階級」の実像

大停滞

大停滞

そして調べてみたらこの人、『大なんちゃら』がお好きなのね。
気が向いたら読んでみるのも良いかもしれないけど、格差社会の言説は少々聞き飽きた感はあるな。

認知の歪みというか、錯覚の仕組みを理解しておけば、自らその脳のクセをハックすることができる。 スティーブン・スローマン/知ってるつもり 無知の科学

世の中には知ってるつもりでいて実は知らないことのなんと多いことか。
自分がいかに知らないかを知ることは、人生においてもとても大切な気がするし、
一度それに気がつくと、好奇心に火がついてしまったりもする。

実は知らない、やったことない、わかっているつもりが
誤解している、ということは無数にある。

知ってるつもり――無知の科学

知ってるつもり――無知の科学

誤解のメカニズム

人間は基本的に因果関係で物事を考えやすい。
蛇口をひねると、水が出る、みたいな。
なのでなんらかの因果を推論してしまう。

本書で例に出されているのは、
寒い時に早く部屋の温度を上げようとサーモスタットの目盛りを一気に上げる人は多いけれど、
それは実際にそれによって特定の温度に達する時間が早くなるかというと全く関係無い。

カニズムの多くは、小さすぎたり(たとえば水が沸騰して水蒸気となる原因である分子の変化)、抽象的すぎたり(たとえば貧困の経済的要因)、あるいはアクセス不可能(たとえば心臓が体中に血液を送る仕組み)で観察できない。ワクチンがどのように機能するのか、食料の遺伝子組換えがどのように行われるのかを見ることはできないので、その欠落を自らの経験で補おうとする。それが誤解につながるのだ。
P.87

わからない部分を経験則で補おうとしてしまうから間違えてしまう。
きっとこうに違いない、という推論が全然違ったりする。

ある政策に関する実験(P.197)

ある政策に関して、支持するもしくは支持しない理由を問うと、人は必ずなにがしかの理由を見つけ出してきて、
自分の意見を強固なものにする。
でもその政策がどういった因果関係でどういう結果をもたらすのか、と問うと、
大抵の人は自分がその仕組みを理解していなかったことに気づき、
自分の意見を軟化させる。


環境を変える

まさにこれ、認知の歪みというか、錯覚の仕組みを理解しておけば、
自らその脳のクセをハックすることができる。

ナッジという手法から学ぶべき重要な教訓は、個人を変えるより、環境を変える方が簡単で効果的であるということだ。また認知にはどのような癖があり、それによってどんな行動が引き起こされるかを理解できれば、そうした癖がマイナスではなくプラスに作用するように環境を設計することができる。
P.270

知ってるつもり――無知の科学

知ってるつもり――無知の科学

集合的感情のフィードバックループの話は、なんか怖いな。 エヤル・ヴィンダー/愛と怒りの行動経済学 賢い人は感情で決める

行動経済学が好きだ。
人間の矛盾や錯覚、非合理性の事例がこれでもかと出されていて、
合理的な人間像を覆してくれるから。あるいは思わぬ合理性に気づかせてくれるから。


愛と怒りの行動経済学:賢い人は感情で決める

愛と怒りの行動経済学:賢い人は感情で決める

感情と身体感覚

胃は脳を除けば、神経伝達物質、特にセロトニンが盛んに活動する唯一の部位である(セロトニンの量が適切でないと、抑うつなどの様々な精神症状が引き起こされる)。消化器系はセロトニンを用いて食物を分解し、栄養素を腸に運ぶ。消化器系は脳からの指令がなくても自律的に活動する唯一の器官系である。ニューヨークのコロンビア大学脳科学者、マイケル・ガーションは、豚の腸を摘出して途方も無い実験をおこなった。腸の一方の端から入れた食物は、何もせずとも反対の端まで送られた。腸に抗うつ薬プロザックを少量注入したところ、消化速度は二倍になったという。
P.21

のっけから感情と内臓の関係についてギョッとする話から始まる。
感情は身体の色々なところに影響しているんだな。
消化不良は悪夢を引き起こすという話もあるらしい。
これなんかは物理的な状態が、感情に働き変えてくるパターン。

最後通牒ゲーム

プレイヤーAが100ドル持っていて、それをBに対していくら分配するかを決める。
Bが承諾すればその通りに分配される。拒絶されたら100ドルは没収、お互い何も手に入らない。

合理的な解としては、Bは1ドルでももらえるならば得するので、拒絶する理由がない。
なのでAはBに対して1ドルのオファーしか出さない。

ところが、これを現実でやると、概ね35%以下の配分では拒絶されることが多いという結果になるらしい。
それはつまり、35ドルもらえるチャンスを捨ててでも、相手が65ドルももらうチャンスをなくす行動に出るということ。

集合的感情

人は周囲にいる他の人の感情へ影響を与えているし、自らも受けている。
集合的感情にはフィードバックループが効いていて、一度一緒に盛り上がり始めると、
どんどん興奮状態になってくる。
逆に一人ではそこまで高揚しない。
サッカーの試合で盛り上がるのも周りのファンと一体になって応援するからだし、
アイドルを目の前にして興奮し、失神するのは他のファンも周りにいるときに限られる。


愛と怒りの行動経済学:賢い人は感情で決める

愛と怒りの行動経済学:賢い人は感情で決める

人間は人間が知覚できるセンサーで知覚しているに過ぎなくて、 センサーが変われば、違う知覚のされ方があるでしょうという話。 落合陽一・清水高志・上妻世海/脱近代宣言

落合陽一、清水高志、上妻世海、三人の鼎談。
フランクな対話の中で、落合陽一が何をどうやって脱近代しようとしているのか、
彼の関心領域とか、何をしようとしているのかが語られている。

脱近代宣言

脱近代宣言

実はきっかけは上妻世海だった。
彼の『制作へ』を買って、読み始めたら、
なんとなく落合陽一に通じる部分あるかも?と思っていたら、
あれ?あの鼎談本に出てるの上妻世海じゃん、
こっち読んでから『制作へ』読んだ方が理解できるかも、と思って読みだした。

制作へ 上妻世海初期論考集

制作へ 上妻世海初期論考集

マイブリッジの馬

走行中の馬の4本の蹄が同時に地面につくのかどうかが賭けの対象になったんですが(以下略)
P.24

微妙にニュアンスが違って、4本全ての脚が離れている瞬間があるかどうかの賭けだったと思うんだよね。

ja.wikipedia.org

コンピューターの知覚

ディープラーニングのGANという手法で学習させているコンピューターに以下の画像を認識させると90%以上の確率でこれは○○である、と認識を騙せる画像がこれ。スクールバスはただのボーダーに見えるけど、コンピューターにはこれがスクールバスに見える。

http://www.evolvingai.org/sites/fish34.cs.uwyo.edu.lab/files/diversity_40_images_label.png

この事例を取り上げながら落合陽一は、人間に知覚できない特徴をコンピューターが知覚している、と言っている。
人間は人間が知覚できるセンサーで知覚しているに過ぎなくて、
センサーが変われば、違う知覚のされ方があるでしょう、と言っている。

犬が匂いを知覚する感覚は人間には想像もできないだろうし、イルカの超音波によるコミュニケーションも人と全く違う。

「空間にそういう構造を、人間に知覚不能なレンジで構成可能か?」と言われたら、それはホログラフィで構成可能です、みたいな。あとは強度の問題なので、「可視光以外でも使えるんじゃないですか」という話になってくるわけです。
P.62

人間の知覚以外の方法で世界を記述する、そういう考え方があるんだなってことが知れた。

脳の成長

みなさん実体験として、小さい頃に天井を見ていると顔がたくさん見えていたでしょう。だけど今はもう見えないですよね。いつから見えなくなってしまったかは、もう覚えていないと思いますけど、大人になると見えないんですよ。それは脳が発達したからなんです。脳が発達する前の子供は、明らかに事前に導入された特徴量で動いているんです。それをぼんやり見ているから、変なところに顔が見えるとか言い出したり、なにか怖いとか言い出したりするんです。
P.137

特徴量の検出問題と説明されるとなんかすごく納得。

最近一番面白かったのは、赤ちゃんが泣いている時の音声の周波数というのは結構高めなんだけど、その周波数帯の音が鳴ると彼も泣くんですよ。周りで誰かが泣いていると勘違いしているのかもしれない。「君が聞いたのはただのテクノだよ」みたいな。でもその区別がつかない。
P.138

このエピソードも面白い。
人は脳の成長とともにだんだん特徴量の検出精度が上がっていって、
違いを判別できるようになっていくんだね。

脱近代宣言

脱近代宣言

自分の価値観で生きることはとても大切。幸せかどうかを決めるのは他人じゃなくて自分。 池田達也/しょぼい喫茶店の本

twitterでなんとなく話題になっているなぁくらいの気になり方だったのだけど、
読んでみようと思って読んでみたら、しょぼい喫茶店ができるまでと、できてからの
試行錯誤が素直に綴られたドキュメンタリーだった。

しょぼい喫茶店の本

しょぼい喫茶店の本

週価値に失敗し、留学も途中で挫折、
やることなすこと中途半端で続かない。
でもそんな自分が一番嫌いなのは自分、と言う
自己肯定感崩壊スパイラルみたいな人生から、
自分らしく生きることへの開眼、喫茶店の開業と物語は進んでいく。

これって喫茶店開業を通じた再生の物語。
でも一応一通り読むと、こうすれば喫茶店できるのかってことはわかる。
茶店が大変だってこともわかる。

思ってたよりも良いお話だったので、
ちょっと応援したくなる。

自分の価値観で生きることはとても大切。
幸せかどうかを決めるのは他人じゃなくて自分。
自分次第で同じ状況でも幸せにも不幸にもなれる。

これがわからないと、物や金にいくら恵まれてもきっと不幸なんだと思う。

本書はそれを実践して、人生のどん底から再生した人の物語。
飾らずに書かれていてリアリティーがあるから説得力がある。

就活などに象徴されるいわゆる普通のレールに乗れなくて、
それに凹んでいる人たちに本書が届くと良いな。


しょぼい喫茶店の本

しょぼい喫茶店の本

共感をどう作るかってのはSNSに限らず、全てのサービスやプロダクトのマーケティングに必要な視点だよね。ゆうこす/共感SNS

ゆうこすのSNS虎の巻。

ゆうこすはとても頭がいい。
とても戦略的にSNSを使っている。
そう言うことがよくわかる本。

共感SNS 丸く尖る発信で仕事を創る

共感SNS 丸く尖る発信で仕事を創る

タグのつけ方1つ取っても、ユーザー目線。
ユーザーが検索するならなんて打つか?
そこからタグを考える。

ちょっとしたことなのかもしれないけれど、
ちょっとしたことでもユーザー目線で思考できることこそが
成功の秘訣なんだろうな。

あとゆうこすは共感をどう作るかって言う視点で考えている。
共感が応援に変わるから。
この共感をどう作るかってのはSNSに限らず、
全てのサービスやプロダクトのマーケティングに必要な視点だよね。

結局彼女は正しい目的意識=共感を生み出す、に対して、
投稿と言うアクションごとにめっちゃPDCA回して今に至ってる。

人脈は必死に作るって言うくだりも、ガッツというか、営業魂を感じるな。
見城徹に憧れていたゆうこすが彼に初めて会うとき、
著作にプッチを着た女性が好きと書いていたのを思い出し、
エミリオ・プッチを買って臨んだっていうエピソード、すごいよね。

そこまでやる必要ある?とか斜に構えたことはいくらでも言えるし、
大抵のやつはそういうことごちゃごちゃ言ってやらないんだけど、
それでもやり切ることの凄さなんだよな。

共感SNS 丸く尖る発信で仕事を創る

共感SNS 丸く尖る発信で仕事を創る