『ファスト&スロー』や『スタンフォードの自分を変える教室』に続き、
またまた人の心理に迫る本を読んでみた。
今あげた2冊よりもずいぶん古く、原初の初版は1988年、日本語訳は91年に刊行されている。
その後、読者からのレポートコーナーなどを加筆した第2版が、これ。
初版から20年以上たっても古びない名著。
- 作者: ロバート・B・チャルディーニ,社会行動研究会
- 出版社/メーカー: 誠信書房
- 発売日: 2007/09/14
- メディア: 単行本
- 購入: 111人 クリック: 1,196回
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返報性のルール
何かをもらったら、お返しをしなければならない、という返報性のルールは、
社会生活の根本ルールとして私たちに刷り込まれており、
このルールに従わない人はひどく軽蔑される。
一方、このルールは非常に強力なので、悪用する人も多く、
必ずしも自分が望んで受けた好意である必要はないところがポイント。
先に何かを与えられた気持になってしまうと、お返しをせずにはいられなくなり、
結果相手の望む行動をとってしまう、ということ。
が
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック、拒否したら譲歩法
返報性のルールを活用したパターンとして、
相手に断られたら先に譲歩する、という交渉術がある。
最初に譲歩して、その見返りに相手の譲歩を引き出す、という作戦。
承諾誘導のプロは確実に拒否される大きな要求を突き付け、
(本来獲得したかった)小さな要求に譲歩することで、相手の承諾を引き出す。
コミットメントと一貫性
ほとんどの人には自分の言葉、信念、態度、行動が一貫したものでありたい、
あるいは他人からそう見られたいという欲求がある。
したがって、承諾誘導の世界では最初のコミットメントを確保することがカギとなる。
コミットメント(自分の意思や立場を明確にすること)をしてしまった後は、
そのコミットメントに合致した内容に対して同意しやすくなる。
一貫性を保つために、最初のコミットメントに行動や判断が誘導されてしまうということ。
なので、承諾誘導のプロは小さな承諾を得ようとする。
そして一度承諾させた後に様々な要求をしていくのだ。
正しい理由を探してしまう
人はコミットメントしてしまうと、その決定に固執してしまい、
その裏付けとなる理由を探して正当化しようとしてしまう。
自分に自分が縛られてしまうパターン。
これによって、コミットメントが生じた状況が変化したずっと後でも、
その効力は持続することになる。
「ローボール・テクニック」が有効なのも、
一貫性を保ちたいがために承諾を繰り返してしまうことによる。
「ローボ-ル・テクニック」というのは、最初に承諾を引き出すための有利な条件を提示し、
承諾させた後にその有利な条件を取り外してしまうやりかた。
自動車販売などで、安い価格で購入を承諾させるのだが、
最後には計算間違いだった、と言い出して有利な条件を取り除いてしまう。
チケット販売の例
チケット販売時に価格が載っていないことがある。
電話で価格を問い合わせようにもなかなかつながらない。
やっとの思いでつながった時、それが多少割高であろうとも、
もう購入を決意している。
また、つながりにくい電話は希少性の演出でもある。
やっとつながった自分はラッキー、と思わせる演出的側面がある。
玩具販売の例
おもちゃの売上は例年1~2月に落ち込む。
クリスマスで買ってあげた直後だからだ。
そこでおもちゃメーカーがとった作戦は、クリスマス時期に売れ筋の
超人気商品にわざと品切れを起こさせること。
クリスマスに手に入るかどうかわからない時、親は子供に対して、
手に入るかわからないけど頑張ってみる、クリスマスに手に入らなくてもきっと買ってあげるから。
というコミットメントをすることを期待されている。
で、実際手に入らずクリスマスには何か別のおもちゃを買ってあげることに。
そして2月、その親はおもちゃ屋で偶然買ってあげられなかったおもちゃの在庫と出会う、という仕組み。
彼らは機会損失しているのではなく、品切れを起こすことで売上を伸ばしている。
社会的証明の原理
人がある状況でどう行動するべきか、を決める際に重要なのが、
他の人がどう考えているか、どう行動しているか、ということ。
他人を模倣することの強力な効果は、寄付や購買行動など様々な領域で確認されている。
多くの人が寄付した、あるいは買っているなどと言うことで、
その人の承諾を誘導することができる。
不確かさと類似性
自分がどう行動すればよいのか判断に迷っているという不確かさ、
自分と似ている人がどうしたか、という類似性、
この2つが社会的証明の力が強く働いてしまう条件。
社会的証明の事例
舞台におけるサクラは有効だし、テレビでは録音された笑い声が多用され続ける。
これは笑い声が多用された方が面白く感じてしまうことが証明されているから。
また、自殺報道があった後は、自殺者が急増するウェルテル効果という現象が起きる。
これも自分と似た境遇の人物が自殺したことで、自分も自殺しよう、という発想になってしまうから。
また、集合的無知という恐ろしさもある。集団監視の中で、助けを求めても誰も助けてくれないことは想像以上に多い。
誰かほかの人が助けるはず、とか誰も動かないからきっと大したことない、といった
社会的証明の力が働いてしまう。
自分が助けを求めるときは、ある一人を指名して、助けてと呼びかけること。
不特定多数への呼びかけでは黙殺される可能性が高い。
好意
人は好意を抱いている人物に対してYESという傾向がある。
外見的、身体的魅力はハロー効果と呼ばれるプラス効果を生み、勝手に好感度を上げてくれる。
身だしなみに気をつけろっていうのは理にかなっている。
もう1つが類似性、人は共通点が多い人に好意を抱く。また、お世辞も有効。
褒められて嫌な奴はいない。
また、好ましい事象と自分を結びつけることで良い印象を与えることもできる。
例えば、まったく因果関係はないのに良い知らせを伝える人は良い印象になるし、
悪い知らせを伝える人は悪い印象になる。
権威
人は権威者の言うことは盲目的に信じてしまいがち。
また権威は実体がなくても、シンボルに反応してしまうことがある。
シンボルとは、肩書、服装、装飾品の3つだ。
そして、誘導された側は、自分の行動における権威者の影響力を過小評価する傾向がある。
実際は権威に誘導されているのに、自覚はほとんどないのだ。
- 作者: ロバート・B・チャルディーニ,社会行動研究会
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