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学びや思いつきを記録する、超要約ノート

国内MBA2013年入学、2015年無事卒業!読んだ本、記事、などの読書ノート。 忘れないために超要約整理。そんな記録。

モラル・ハザードは必ずしもすべてが悪意に基づく行為ではない。 ポール・ミルグロム ジョン・ロバーツ/組織の経済学 第6章:モラル・ハザードと業績インセンティブ

MBA 人材系

決定的な情報を持っている人が、意思決定者と利害を異にするとき、
正しい情報が、完全かつ正確に報告されないかもしれない。
6章は、そんなモラル・ハザードの問題をがっつり扱う。
完全に個人的な勉強ノートになっているが、これは確かに名著だな。

組織の経済学

組織の経済学

モラル・ハザードの概念

モラル・ハザードとは、行動を実行する側の人間が、他人の利益を犠牲にして
自己利益を追求することから発生する、契約後の機会主義の一形態。
この種の不当行為は、3章に出てきた新古典派モデルでは想定されていなかった。


保険と不正行為

モラル・ハザードという用語は、保険業界から生まれた言葉。
保険加入によって、保険会社の負担が増える方向に人々の行動が変化する傾向を指していた。
例えば、保険加入したことで、今までよりも注意しなくなるかもしれない。
(何かあっても保険があるから大丈夫、みたいな思考)
そして、保険会社がそれを禁じようとして、契約に望ましい行動を明記することができても、
日々契約事項が順守されているのか、判断するすべはない。


効率性に与える効果

モラル・ハザードは、互いに利益をもたらす合意到達への障害となり、効率性を損なうことが多い。
健康保険の場合、医者に行っても費用がほとんどかからないならば、
治療による便益が治療費を下回るような非効率な場合でも、
とりえあず医者に行くようになってしまう。
その行動がどのような場合適当なのか、という見極めと過剰利用の防止が
できるなら問題にはならないが、実際不可能、もしくはコスト超過に陥る。

経済学的な説明の仕方をするなら、
保険は、加入者にとって価値あるもの(治療や、
最新の注意を払わされずに済むこと)のコストを引き下げる役割を果たす。
その引き下げによって、追加購入に対する支払いが、限界費用を下回るので、
非効率なまでに過剰購入してしまう事態が起きる。
そう考えると、行為自体は悪意に根差したものではない。


モラル・ハザードのコントロール

モラル・ハザード問題の発生には3つの条件が必要。

  1. 人々の間で利害が相違している
  2. 異なる利害を持つ各個人を動かすだけの同意し、取引をする理由がある
  3. 合意事項が守られたかを判定し、契約事項の実施を強制することが難しい

これらの条件をもとに、対策を考える。


モニタリング

発生条件の3番、「合意事項が守られたかを判定し、契約事項の実施を強制することが難しい」への対応策がモニタリング。
すなわち、モニタリングや検証に注ぎ込む資源を増やす方法。
不適切な行動が起きる前に、それを察知して防ぐ、という考え方にも通じる。
企業は監査役による監査が終わるまでは財務報告書を公表できない。
健康保険会社は患者に対して、不要、もしくは過剰な医療処置ではないかと思った際に、
別の医者の意見を聞くように患者に求めることができる。
労働者はタイム・レコーダーによる勤怠記録を義務付けられることが多い。

モニタリングは優れた行動に報酬を与える場合にも利用される。
が、金銭による報酬が絡むと、約束違反というモラル・ハザードを引き起こす可能性がある。
報酬を支払うはずの当事者がモニタリングの結果を曲解して(難癖をつけて)支払いを渋るかもしれない。
業績の判断記述が記述しにくく、測定しづらい場合は特にそうなりやすく、主観的な判断になりやすい。

モニタリングのためには情報ソースの整備が必要だが、
時には費用がかからずにできることもある。
利害が対立する当事者間の競争を通じて情報を得るという方法だ。
例えば、競争しあう相手が、自社製品の利点を説明する際に、
競合製品を引合いにだし、その欠点を教えてくれることがある。


明示的なインセンティブ契約

モニタリングがまったくコストに合わないこともある。
が、結果が観察できるならば、良い結果に対して報酬を支払う形で、
望ましい行動を導くインセンティブを与えられる場合がある。
すべてを把握できなくても、結果を把握できればOKという考え方。
例えば、機械の保全作業員の注意や技能は計測できなくても、
結果的に機械が故障している時間の比率を測ることはできる。
機械の故障が作業員の精度に完全に相関しているならば、
結果だけ見ていればいいという考え方。
確かに考え方としては正しいのだけど、
現実ではそこまでシンプルな相関関係がある場合は非常にまれで、
多くの要因が関わっている。


リスク負担の問題

例えば、企業の総売り上げは販売員の努力だけではなく、他の多くの要因に依存している。
よって、結果だけに基づいた報酬制度は、販売員の所得をランダムな要因に依存させることになる。
しかし、ほとんどの人々は、自分の所得がランダムな要因に依存するのを好まない。
人々はリスク回避的であり、平均所得は高いが、コントロールできない不確実な所得よりも、
額は少なくても確実な所得を好む。
したがって、このリスクを受け入れさせるためには、不確実な所得の平均値を引き上げる必要がある。
雇用主側にとっては、この余分な所得額がインセンティブ報酬の利用に伴うコストになる。
また、労働者の給与を業績と連動させることは、
リスクについて無関心な企業の所有者から本来リスク回避的な労働者へのリスク移転であり、
社会全体にとって、リスクに対する総費用の増加を意味する。


リスク費用とインセンティブの便益

効率的なインセンティブ契約の設計には、
インセンティブから得られる便益とリスク負担の費用をバランスさせる必要がある。
インセンティブ契約の背後にある基本的な考え方は、目標の一元化の達成にある。
利己的な行動が設計者の望む行動に近づき、個々人の目的を設計者の意図にほぼ合致させるように、
有効に変形することによって、利害対立を除去することになる。


保証金

一部の業界では、一定の業績、あるいはパフォーマンスを確保するために、
保証金を預かるのが一般的となっている。
細湯金は不適切な行動が発見された時には没収されるので、
インセンティブを与える非常に有効な方法になりうる。
しかし、不正行為によって得られる利益が大きく、発見の確率が低い場合、
必要な保証金額は高額になり、個人では支払えなくなる問題が生じる。


年齢/賃金パターンと定年退職

従業員が十分な保証金を預託できない状況下で、企業が年功を積んだ従業員には
自らが生産する価値以上の給与を支払うという約束をしたと仮定する。
この時、キャリアが浅い時期には、限界生産物価値を下回る支払いしかしないことにすれば、総支出は変わらない。
ところが、約束された高賃金は、従業員にとって不誠実な行動で没収される保証金と同じ役割を果たす。
つまり、年齢に応じて右上がりになる年功序列型賃金体系は保証金と同等の効果を発揮するのだ。
この時同時に必要なのが、定年退職規定だ。
自らの生産物の価値よりも高い給与をもらえるようになると辞める理由がなくなるため、
強制的にやめさせる規定が必要になる。それが、定年退職。


インフルエンス活動と所有の統一

2つの組織が共通の指揮下に入ると、どんなコストが生じるのか?
なぜ合併した組織は、もともと個別にできていたことのすべて、あるいはそれ以上のことができないのか。
存在するとすれば組織の効率的なサイズとはどの程度か?
すべての経済活動を単一組織でできないのか?
第2章での議論から、何もかも1つの組織に持ち込むことは、非効率なまでに高額の取引コストが伴う。
では、そのコストとはなんなのか?
非市場的な内部組織に伴う取引費用を明らかにする作業はあまり注目されてこなかったが、
現実の組織内では事業部制度のような創意工夫がなされてきた。


所有の統一と選択的介入

2部門が互いに独立して運営されると効率的になるとする。
しかし、そもそも、この2つの組織は1つの組織として運営されたとしても、
適切な形で本部が選択的介入を実施すれば、目的は達成できたはず。
とすると、選択的介入を適切に行えれば効率的な組織の大きさには限界がない、ということになる。
では、なぜ現実にはそうならないのか??
インフルエンス活動がその答えの一部になる。
組織による決定が、組織を構成するメンバーやグループに対する利益配分に影響を与えるとき、
インフルエンス活動が組織内に生じる。
影響を受ける個人やグループは利己的な利益を追求し、決定が自分の利益につながるように画策する。
これらのインフルエンス活動によってもたらされる費用をインフルエンス・コストと呼ぶ。


介入に対するインフルエンス

選択的介入政策が持つ基本的な難点は、
決定を下すための情報収集を行う介入力のある意思決定者が必要、という根本的な点で、
これ自体も組織にとってはコストになる。
意思決定者の給与とそれを支えるシステムのコスト、両面だ。
つまり、どのような説明が可能かというと、
かつて別々だった2つの組織を本部経営陣の下に置いた時、
インフルエンスの範囲は広がり、インフルエンス・コストは増大する。
このコストがマネージできる範囲内であれば問題ないが、
インフルエンス・コストが超過した場合、無理やり1つの組織でやっていく必要性はなくなる。
組織を分離し、インフルエンス・コストを抑えた方が効率的、という説明が成り立つのだ。


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