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所有とは残余利益をコントロールし、請求できること! ポール・ミルグロム ジョン・ロバーツ/組織の経済学 第9章:所有と財産権

確固たる財産権に裏打ちされた所有制度は、
資産を創り上げ、維持し、向上を目指すインセンティブを
人々に与える上でもっとも普遍的かつ有効な制度。
この章は、資産効果の不存在を前提として、
価値最大化原理に基づいた分析をする。

組織の経済学

組織の経済学


所有の概念

所有の概念の経済分析には2つの問題がある。
残余決定権の帰属と、残余利益の配分。
どちらも分析の出発点としては有益だが、企業を対象にした際に、曖昧さが残る。

残余コントロール権

経済分析の上では、資産を所有するということは、残余コントロール権を意味する。
残余コントロール権とは、他人に割り当てられていない資産使用法についての決定権のこと。
これは、諸々のコントロール権をすべて記述した
完備契約が不可能であることから派生している。
自動車のような単純資産は残余コントロール権としての所有という考え方はわかりやすいが、
大組織のような複雑な対象に関しては不明瞭だ。
所有に伴う権利関係は、国や時代によっても変遷するので、問題を複雑にしている。

残余利益

法の上での所有という概念は、コントロール権以上の要素が含まれている。
従来、企業の経済分析においては、収益が所有概念の基礎とされてきた。
企業の所有者は、企業に発生するすべての純利益を受け取る権利を与えられた者。(=残余請求者)
この純利益が他のすべての人に支払いが行われた後の残り、すなわち残余利益であるとされる。
残余コントロールと同様、残余利益も完備契約のもとでは発生しない概念。
そしてこれも残余コントロールと同様に、企業を対象に考える場合、曖昧さの残る考え方。
企業が債務不履行になった際は、債権者が残余請求者だし、経営者も残余請求者になりうる。
昇給や昇進といった形で労働者にも残余利益の配分はされているという解釈も成り立つ。


残余コントロールと残余利益との結合

所有のインセンティブを与える効果を考える上でキーになるのが、
残余利益と、残余コントロールとの結びつき。
残余請求者が1人で、残余コントロール権も持っているならば、その請求者の受取価値最大化は、全員の総価値最大化と同じ。
ということは、自己利益を追求する収益最大化行動がそのまま効率的意思決定となる。
逆に、費用や収益の一部しか負担あるいは受領しない意思決定者の行動は非効率となる可能性が高い。

レンタカーの事例を考えると、
借手はレンタル期間中の残余コントロール権を持つが、残余請求者ではないため、
丁寧に扱おうが、乱暴な運転をしようが、負担する費用は変わらない。
自家用車の場合は、残余コントロール権と残余請求権の両方を持っているため、
自分の行動結果の損失も利益も、自ら享受する。

つまり、残余コントロール権と残余利益という所有の2つの側面を適切に組み合わせることで、
所有者に資産価値の維持向上を図る強いインセンティブを与えることができる。


コースの定理再考

競争市場均衡モデル
→市場が完備で、市場での行動が競争的で、需給が一致したなら、それは効率的な結果!
→現実には、この前提は困難。

効率性原理
→無費用で交渉できて、その決定を実現できるならば、交渉の当事者にとってより効率的な方向に向かう。

コースの定理
→当事者同士が交渉により、効率的な合意を形成し、その選好が資産効果の不存在を満たすならば、
合意により実現する活動自体は、それぞれの交渉力や当初の資産配分に依存しない。
 効率性評価のみが活動の内容を決定する。
→交渉でき、合意を実現できるという前提は、簡単な話じゃない。
限定合理性、私的情報、行動の観察不可能性に起因する費用は無視できない。

ということをふまえた上で、それでも大丈夫、問題無しだったとしても、
明確で実効性のある財産権が存在するかどうかで、効率的な合意が成立するかどうかが変わる。
他のすべての条件を満たしていても、財産権がなければ、効率性の達成は望めない。

不適切に設定された財産権と共有地の悲劇

共有資源の問題、公共財の問題、フリー・ライダー問題、共有地の悲劇、などの問題は、
取引不可能、不確か、あるいは帰属が明らかでない財産権から発生している。

海洋漁業の経済学

来年も魚が獲れるためには、獲り尽くしてはだめ、繁殖に必要十分な量を残さなければいけない。
が、実行力のある漁獲高制限無しに、漁業権を多人数に与えれば、
回復不可能なほどの乱獲が起きる可能性がある。
近代漁法によって一度に大量に魚を獲ることが容易になってきており、それだけ乱獲の危険性は高まっている。


集団所有アプローチ

地域の漁船団の構成員からなる漁業組合にコントロール権を与える方法。
漁業に携わることを許可する認可権、総漁獲量の決定、
漁期や時間制限、漁網のメッシュ・サイズ規制など、様々な制限を決定する権利を与える。
利点は想像しやすいが、問題点は、下記の点。

密漁者の締め出しに相当な費用がかかること
・収穫の分配法が自らの漁獲を手に入れる場合、乱獲へのインセンティブが働く
・全体の漁獲高の比例配分の場合、自分はなるべく楽をしようとする
・運用ルール(規制の設け方)に関して合意が得られない可能性がある


単独所有アプローチ

単独個人に与えたらどうなるか。
乱獲を防止するインセンティブが働くのはわかる。
問題は、
・誰に権利を与えるのか、毎年交代だと次年度へ残すより自分で乱獲してしまう
・権利をオークションにかける方法もあるが、価値は相対的なもので数値化できず、非効率が生じる

取引不可能なかつ不確かな財産権

カリフォルニアの水資源利用がこのケースに当たる。
一部の農民には配水費用がどんなに高くても、安価で大量の水を使用できる権利が与えられている。
なぜより価値の高い用途へ水が用いられないのか??
それは、水を自由に譲渡する権利が与えられていないから。
取引不可能な財産権は非効率を生み出し、制度変革の必要性の認識へつながる。
が、変革によって得られる利益が大きければ大きいほど、今度はその利益配分問題が発生する。


交渉費用とコースの定理の限界

コースの定理の前提は、効率的な合意に到達し、それを実行するための費用が十分に低い、というものだった。
が、実際には、効率的な合意の達成と実行には費用が発生する。
この交渉費用の発生原因を知ることで、3つの効能が期待できる。

・非効率性が生じやすい場合を識別できる
・慣行や制度を説明するのに役立つ
・法と経済学という新しい理論の基礎になる


取引に対する法的障害

取引に対する最も目立つ障害は法律的なもの。
そもそも合意を決定し、書き下し、履行することから費用が発生する。
この費用がもたらされる利益に対して割に合えば、成立するし、逆ならば成立しない。
この取引費用を節約するために、政府など別の組織形態に解を求める。


資産所有パターンの予測

所有権の与えられ方によって、契約の効率性に影響を及ぼす。
不完備契約、交渉費用、モラル・ハザード、インフルエンス・コストは
すべて非効率性発生の原因になりうる。

資産の特殊性とホールドアップ問題

資産のもたらすサービスの価値が、ある用途に限定されている場合、
資産が特殊的である、という。
例えば特定の工場の輸送のためだけに施設された鉄道、など。
2つの資産がともに同用途で特殊性度合いが高い時、2つの資産は共同特化の関係にあるという。

特殊性と共同特化はホールド・アップ問題を引き起こす。
資産が一用途に関して特殊的であるため、
例えば値下げしないと輸送をトラックに切り替える、といった脅しが可能になる。
鉄道会社にしてみれば、本当に切り替えられたら資産の価値が無くなるため、
要求をのまざるを得なくなる。
これ自体は総価値に影響しないが、問題はこうなることを恐れて
本来効率的な投資が敬遠されてしまい、結果総価値が減少してしまうこと。
一般的に、資産の特殊性問題は、所有によって解決できる。
両方の資産を一人が所有してしまえば、ホールド・アップ問題は起こらない。


人的資本

労働者は自分に関する所有権を誰かに譲り渡すことはできない。
人的資本という資産の譲渡が不可能だとすると、企業は誰の利益のために経営されるべきか?


複雑な資産の所有

企業は誰のものか、を考える。
名目上は株主が企業を所有していることになっているが、
株主の権利は意外と少ない。残余に関しての権利はほぼ持っていないと言える。
残余コントロール権に関しては取締役が持っていると考えられるが、
彼らもコントロール権だけで、残余請求権は持っていない。

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