15章では古典的なファイナンス理論に
3つのアイデアを加えて理論の拡充を図った。
現実は古典的なファイナンス理論が言うほど単純じゃないということ。
まず、経営者や貸手、株主はそれぞれ違う利害を持つ。
よって、金融構造はそうした利害の相違や経営陣の決定に対して影響を与える。
第2に、経営者はより多くの情報を持っているため、
経営者の決定は、株価に影響する。
第3に、金融証券は企業の利益の一部に対する請求権ではなく別の権利も与えられる。
権利と収益を組み合わせれば、総価値を高めるインセンティブが作れる。
読み物としては面白いが組織論からは、ずれてる。
この辺はコーポレートファイナンスの本を読んだ方が良さそう。
- 作者: ポール・ミルグロム,ジョン・ロバーツ,奥野正寛,伊藤秀史,今井晴雄,西村理,八木甫
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 1997/11
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 28回
- この商品を含むブログ (27件) を見る
コーポレートファイナンス
1980年代になると企業の金融構造、所有、コントロールに関して、
劇的な変化が生じ、コーポレートファイナンスという分野が
緊急課題として浮上してきた。
大口投資家に株式を集中させて効果的なコントロールを図る金融構造の組換えが行われた。
自己資本に対する資産の比率=レバレッジを高めるので、
レバレッジド・バイアウト(LBO)と呼ばれた。
こういった流れの中で特に注目されるのが
敵対的買収とマネジメント・バイアウト(MBO)だ。
MBOでは経営者が自社株購入によって所有とコントロールを得る。
結果、非上場となることが多い。
敵対的買収の場合は、企業の事業部がバラバラに
他社に売られるというバストアップを伴うことが多かった。
これらの活動はすべて、モジリアーニ=ミラーの法則に疑問を投げかける。
負債の功罪
キャッシュ・フローリスクの増大は、価値を債権者から、
株主へと移転させる傾向を持つ。
なぜなら、儲かれば株主に還元され、
失敗すれば債権者がリスクを負う構造になるから。
したがって株主が経営をコントロールしている場合は、
過大なリスク負担を促進する恐れがある。
また、高水準の負債と営業赤字が続くと債務超過に陥る。
債務超過に陥ると、収益が上がっても
他の債権者への返済へつかわれるため、
新たな投資家にとってメリットがない。
こうなると、新たな資金調達が困難になり、
利潤を生み出す投資案件を抱えていたとしても困難になる。
よって債務超過は、過少投資につながる。
債務は請求額の削減に同意する債務再交渉によって解決する場合もあるが、
失敗すれば破産リスクが発生する。
実際消えてなくなるのではなく、再編成されるだけだとしても、
破産は企業運営に関して極めて破滅的な状況をもたらす。
このリスクを回避するために、貸手は非公式に債務変更に応じることもある。
一方、負債には、収益を企業内に留保させずに投資家に還元するという利点がある。
これによって経営者が内部留保を好き勝手に
無駄遣いするというリスクを回避できる。
その他
ベンチャーキャピタルの話や委任状獲得競争の話などは面白い。
ゴールデン・パラシュートの話などこの辺は昔見たNHKのドラマ「ハゲタカ」を思い出した。
こういう話を分かりやすくドラマ化していたんだな。
- 作者: ポール・ミルグロム,ジョン・ロバーツ,奥野正寛,伊藤秀史,今井晴雄,西村理,八木甫
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 1997/11
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 28回
- この商品を含むブログ (27件) を見る