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デジタルマーケティングの最新の文脈の上で、技術を理解することが大切だと暗に示してくれる良書! 横山隆治・菅原健一・楳田良輝/DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門 ビッグデータ時代に実現する「枠」から「人」への広告革命

DSP=Demand Side Platform
RTB=Real Time Bit
何のこっちゃと思う人もいるかと思いますが、
最近流行りのWeb広告配信に関する技術。

サイトにアクセスしてきた人のブラウザのクッキー情報を広告配信サーバーに渡し、
この人にいくらで広告を出すかを入札によってリアルタイムに決定するという技術。

これによってどの媒体の広告枠に出すか、という発想から、
誰に対して出すのか、というパラダイムシフトが起きています。

で、このDSP/RTBに関する丁寧な入門書がこれ。
昨年発売され、国内初の解説書だったのではないだろうか。

技術的解説に留まらず、結局その技術で何が実現したいのか、
どういった考え方で今後のデジタルマーケティングに臨むべきなのか、
DSP/RTBがその時にどんな役割を果たしてくれるのか、
といった視点が盛り込まれていたのが素晴らしい。

DSP/RTB知ってるよ、ではなく、それによって何が実現したいんだっけ?
デジタルマーケティングの世界で今どんなパラダイムシフトが起きているんだっけ?
ってことをしっかり考えるためにも読んだ方が良い。

DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門 ビッグデータ時代に実現する「枠」から「人」への広告革命 (Next Publishing)

DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門 ビッグデータ時代に実現する「枠」から「人」への広告革命 (Next Publishing)

「枠」から「人」へ

セグメントやターゲティングに関して、今までの広告の発想は、
どのメディア、どの枠に出すか、だった。
メディアや枠の選定が、セグメントでありターゲティングだった。
でもそれは、あくまでも、自社が戦略上選択したセグメントやターゲットに対して、
多分このメディアの、この枠ならリーチするんじゃないかな、
という予想に基づいたものにすぎないのだけど。

DSP/RTBは、行動ターゲティングを拡張、突き詰めていったものと言える。
ネット上での行動に基づいて「人」を把握し、「誰に」どの広告を配信するかを考える。
あくまでも行動ターゲティングの延長線と言うのは、
「人」というのが個人情報の把握ではないから。
例えば住所やメールアドレス、年齢、購買履歴といったデータをごりごり回してっていう
CRMみたいな話とはちょっと違う。
あくまでもWeb上でブラウザを介した行動データ(サイトの閲覧履歴など)を蓄積し、
それによって、セグメントが切れる状況を作っておくと言うこと。

欧米では既にそういったデジタルセルフな情報を蓄積し、
提供するサービスも盛り上がってきている。

この辺の話は
『ディミトリ・マークス/データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」』でも紹介されていたので、
興味のある方にはこちらもオススメ。

データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」    ビッグデータからビジネス・チャンスをつかむ

データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」 ビッグデータからビジネス・チャンスをつかむ


要するに、「枠」からデジタルセルフとしての「人」に
ターゲティングできる単位が変わってきたということ。
自社の広告に反応し、購買に至るパターンを解析し、
同じパターンにはまる「人」を特定して配信した方が効果は劇的に上がる。
そんなことが、DSP/RTBによって実現しつつある。


「認知」「欲求」「獲得」フェーズによって出し分ける

AIDMAやAISASといった広告の認知モデルが提唱されているのを
聞いたことがある人も多いと思うが、
平たく言えば、広告観て即購入なんてのは滅多にない夢物語だと言うこと。

認知=まずは知ってもらって
欲求=欲しいと思わせて
獲得=刈り取る!

こういった段階が常識的に考えても必要。
で、これとDSP/RTBに何の関係があるのって所ですが、

第1段階:完全な新客=認知目的の広告
第2段階:広告接触済み見込み客=知りたい、欲しいと思わせる広告
第3段階:第2段階まで済んだ人に、最後の一押し

こういった出し分けが可能になると言うこと。
誰に、何を出すのか。
ゴールまでのステップを構築し、それにあわせた広告展開をきめ細やかに実現できるようになる。

例えば、まず認知が必要な人に送料無料とかを訴求してもあまり意味がない。
そういった訴求は刈り取り段階で訴求した方が効果に繋がる、といった工夫が必要になってくる。

この話が重要なのは、獲得フェーズ意外の種まき、育成段階も
効率的にWeb広告を使える環境が整ってきたと言うこと。
後述するリスティング広告などはもろに獲得施策としての広告施策。


ロードバケット

広告接触のフリークエンシーをコントロールする手法がロードバケット。
平均して何回広告に接触した人がアクションしているかを分析し、
フリークエンシーをコントロールする。
例えば10回接触した人のパフォーマンスが最大だったら、
配信する回数を10回程度と設定できた方が全体のパフォーマンスが上がる。
「人」に対して10回までは広告を表示する、ということ。
逆に20回表示してもそれはもう意味がないので、
タイミングと頻度をコントロールしましょう、というお話。


リスティングの効果と限界

リスティングは何を検索したか、というアクションに基づいて、
「人」に対して表示できる広告メニューだ。
今まさに検索している人に対して表示できるので、もちろん効果はある。
むしろ極論すればSEMこそがデジタルマーケティングみたいな成長を遂げているし、
今なおここだけ注力している人達も多いと思う。
ただ、忘れてはいけないのは、「獲得できる人の獲得」に留まっている可能性だ。
「獲得数」自体を増やすことが必要なとき、必ずしもリスティングが果たす役割は多くない。

リスティングは費用対効果が高いんです、という話もよくあるが、
これもよく考えれば当然。一部のキーワードが完全なる見込み客を拾ってくるのだから。
その効率は「獲得できる人の獲得」に対する効率に過ぎ無いことを忘れちゃいけない。
もちろん本来獲得できるはずの人を獲得できないリスクはたくさんあるので、
リスティング自体の必要性や重要性を否定するものではない。
効果もあるし、限界もある、というお話。


Heavy Clickerに気をつけろ!!

アメリカの調査で、「Natural Born Clicker」という調査結果が紹介されていた。
1ヶ月間に全くバナーをクリックしないNon Clickerはインターネット人口の68%もいる!
逆に4回以上クリックするHeavy Clickerは全体の6%に過ぎないが、クリックの50%を占める!

Heavy Clickerのクリックをひたすら集めても、正直あんまり意味がないのよ、ってこと。
CTRを重視しすぎるとこの落とし穴にはまる危険があるということを鮮やかに示してくれた。


自社メディアの領域が拡大する

Paid Media、Owned Media、Earned Mediaのトリプルメディアマーケティングにおいて、
Owned Mediaの重要性が今後ますます高まっていくと予想されている。
なので、色々な会社が自社サイトの構築に躍起になっているというわけ。
でも、大抵のOwned Mediaは、

つまり、オウンドメディアは、魂を欠き牙を抜かれたサラリーマン編集者が、下請けマインドで生ぬるい提灯記事ばかりを山盛り掲載していく三流メディアになってしまいがちなのです。
田端信太郎『MEDIA MAKERS』

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体

こんな体たらく。それでもOwned Mediaを持ちたがる理由は何なのか?

1つの理想型として、Paid Mediaで種まきして認知を獲得、
Owned Mediaにソーシャル機能(Earned Media)を取り込んでいき、
育成フェーズを自社媒体で回すって姿を目指しているから。
なんかできそうな気がする感がそこにはある訳です。

まぁ、絵としてはきれいなんだけど、実現するのはそこそこハードルが高いと思うけどね。

DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門 ビッグデータ時代に実現する「枠」から「人」への広告革命 (Next Publishing)

DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門 ビッグデータ時代に実現する「枠」から「人」への広告革命 (Next Publishing)