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日本とアジアの関係の変化を産業構造の変化と絡めて教えてくれる良書! 関満博/フルセット型産業構造を超えて 東アジア新時代の中の日本産業

地方経済が専門の学者なのだが、
ひたすら現場主義で机上の空論とは無縁の人。
筆者の講演を聴いたことがあるが、
徹底的に現場主義でパワフルな方だった。

本書は結構古く、絶版なのだが、
著者の代表作でもある。

確かに若干古くはなったが、国内に全ての産業を持っていたフルセット型から、
徐々にアジアへ進出し、国内だけで完結しない
産業構造になってきた変化を丁寧に追っている。

もし中国やアジア展開に関わっている方なら、
この人の著作は片っ端から読んだ方がいい。



日本の東アジア展開

80年代の展開は産業の空洞化の懸念はあったが、
まだ単純組み立て系の分野における安くて豊富な労働力を求めた進出だった。
しかし、90年に入ると、基盤的技術部門に拡大し始める。
これは日本の技術集積構造全体に大きな影響を与えた。


3K職種の忌避

大田区や川崎の中小工場の集積が崩れている。
世界トップレベルの加工技術を持っていたのに後継者がいない。
いわゆる3K労働が忌避され、若者が入ってこない。
筆者はこれを非常に危惧しているが、おそらくこの状況は変わらず現在に至る。
そして、失われた技術はもの凄く多いのだろう。
NHKスペシャルでもやっていたが、高速増殖炉もんじゅの部品も
大田区の町工場の技術無くしては作れないらしい。
でも、この技術は後継者がいないという理由で失われていく。
問題は多数あるが、単純に所得の低さも上げられるのだろう。
世界トップレベルの技術に対してトップレベルの報酬があれば、きっと廃れない。
その辺も、正当な評価を得られていないようでとても残念なことだと思う。


アジアとの相互依存

アジア唯一の近代工業国家という時代は終わり、
これからは東アジア諸国との相互依存関係の中で展開していく。
フルセット型の産業構造は既に崩れ、東アジア全体での
技術トランスファーや相互依存、という視点が必要。


大企業の基盤技術の内部化

大田区の町工場が廃れる中、大企業は基盤技術を内部化してきている。
ただ、内部化しておけば町工場無くても良いかっていうとそうじゃない。
大企業の中で囲われている基盤技術は、社会化されない。
大田区の町工場はその先端的な加工技術が公共財としてさまざまな企業で利用できた。
内部化はそう言った動きにはつながらない。

また、内部化することで大企業の硬直が進むという指摘も。
持っている技術の中でしか発想しない、とか。