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今まで読んだファイナンス系の本の中で一番しっくりきた! 石野雄一/道具としてのファイナンス

仕事でファイナンスのファの字も使わない僕でも、
ようやく、なんとなく、ファイナンスの概要くらいは掴めたかな、と思えた1冊。

とはいえ、これでファイナンス系の本も4冊目だから
多少は理解できて当然なのかもしれないけど・・・

でも、ある程度他の本を読んだうえで、
この本に出会えたことはラッキーだった気がする。
著者は三菱東京UFJ銀行(旧三菱銀行)に入行し、10年間勤務した後退職。
2002年5月米国インディアナ大学(MBA課程)修了。帰国後、日産自動車(株)入社して財務部へ。
その後戦略コンサルを経て、現在は独立。
てな経歴の持ち主で、それなりに名の知れた人?なのかな?
MBAの同級生達は結構知ってました。

で、日産時代の実践的なお話を書かれていたりするので、
無味乾燥な教科書という感じじゃないのが嬉しい。

道具としてのファイナンス

道具としてのファイナンス


今まで読んだファイナンスの本

ちょっと振り返っておこう。

[新版]グロービスMBAファイナンス

[新版]グロービスMBAファイナンス

↑初めて読んだのはこれでした。定番。
これはこれで、すごくよくまとまっていた気がする。
もちろん、数式とかよくわからなかったけど、
わからなくても全部理解しようとせずに読むというのは大切な気がする。

パンダをいくらで買いますか?

パンダをいくらで買いますか?

↑これはわかりやすかった。
ファイナンスの中でも企業価値算出=バリュエーションの超わかりやすい入門書。野口真人/パンダをいくらで買いますか? ストーリーで学ぶファイナンスの基礎知識 - 学びや思いつきを記録する、超要約ノート

コーポレート・ファイナンス

コーポレート・ファイナンス

↑教科書チックで難しそうなんだけど、読んでみると意外と読めた。


NPVとIRRの話

プロジェクトの評価に関して、NPVを用いる場合は、割引率を設定しなくてはいけない。
で、この割引率はリスクの度合いと期間に応じて設定されるべきなのだけど、
これが正解、という数字が決まっているわけではない。
なので、実務では割引率の変化によってNPVがどう変化するか、
その感度分析を行う必要がある。

NPVに対し、IRRはNPV=0となる割引率を求める。
すなわち、IRRを越える収益率を出せるならばそのプロジェクトに投資するべき、という考え方。
内部収益率は割引率を使わないで計算できるため簡単ということもあり、
企業の投資判断に活用されている。
割引率に正解がないから、IRRを出して、それ以上の収益率がある事業なのかどうか、
という判断をしていくことは確かにわかりやすい。
ただ、これって収益率だけの話なので、プロジェクトの規模感は反映していない指標。
石野さんとしては、NPVとIRRどちらを使うか、という話だと、NPVを使うべきだと主張している。

NPVルールとIRRルールとで結果が違う場合は、NPVルールに基づいて意思決定を行なう必要があります。企業のゴールは、リターン(収益率)を高めることではなくて、企業価値を高めることです。したがって、企業は、内部収益率が高いプロジェクトを選択するのではなく、NPVの絶対額が大きいプロジェクトを選択しなくてはならないのです。
(P.52 - P.53)

確かに利益率と利益額のどちらを重視するのかという問題。
すべてのプロジェクトに投資できない時、最終判断は利益額の最大化であるべきだとは思う。

それと、IRRを使う時は、
比較する投資案件が他の投資案件よりもリターンが高いこと、
双方のプロジェクトのリスクが同程度であることが条件になる。
リスクが違うプロジェクト同士をIRRでは比較できない。

他に、IRRの弱点としては、プロジェクト期間中の割引率の変化には対応できないこと、
キャッシュフローによっては内部収益率が複数存在したり、全く解が無い場合もある。


期間が違うプロジェクトの比較

NPVには長期のプロジェクトの方が有利となるバイアスがかかっている。
よって、3年のプロジェクトと6年のプロジェクトを比較する場合は、
期間を合わせる必要がある。
あるいは実際よく使われる手法としては、
年金等価額と言われる単年度当たりのNPVで比較する方法がある。

年金等価額=NPV/PV関数(割引率、プロジェクトの年数、-1)


WACC

加重平均資本コスト=WACC
WACCは株主資本コストと負債コストを
それぞれの時価で加重平均することで求められる。
ちなみに株主の方が債権者に比べリスクを取っているので、
高いリターンを求めているため、株主資本コストの方が負債コストよりも高くつく。

ちなみに株主資本コストが最も計算するのが難しく、
計算にはCAPM理論を使って計算する。
負債コストは企業がこれから調達するとした場合の金利
普通社債を発行している場合は流通利回りから推測。
株主資本の時価総額は、株価*発行済み株式数、
負債も時価が原則だが、実務上では簿価で代用する。
実効税率は1円の課税所得が発生した場合に支払う税金額から算出。


株主資本コストの計算

投資家はリスクが高いほど、期待するリターンが高い、というのがCAPMの理論。
期待リスクプレミアム=β*マーケット・リスクプレミアム

E(rE) - rf = β[E(rM) - rf]
rf = リスクフリーレート
E(rM) = マーケットの期待収益率
E(rE) = 株主資本コスト

ちなみにマーケット・リスクプレミアムは前提条件によって
大きく変わる。著者が通ったビジネススクールの教授は、
米国のマーケット・リスクプレミアムは7%とするよう指示があったらしい。
日本だと5~5.5%に設定するのが多いらしい。

イボットソン・アソシエイツ・ジャパンは、日本のマーケット・リスクプレミアムを有料で提供している。
経営者に説明する際には、ある程度の権威付けが必要なので。


βの問題

βの値はイボットソンの他、バーラ・ジャパン、ブルームバーグなどが良く知られている。
βを計算するにあたって、過去何年分のデータを用いるかが問題になるが、
最低5年間のデータは欲しい。ちなみにブルームバーグは2年間しか使ってないらしい。


財務レバレッジ

企業の収益性を表す指標にROAROEがある。
Return on Assets(総資産利益率)とReturn on Equity(株主資本利益率)、
ROEは株主の立場から見た収益性を図る指標。
で、このROEは事業の収益性だけでなく、事業の資本構成からも影響を受ける。
なぜなら、ROE=当期利益/株主資本なので、利益が同額でも株主資本が小さくなれば、
ROEは高くなる。言い換えれば、負債を増やせば、ROEは高くなる。
負債を株主資本で割った負債比率のことを財務レバレッジと言い、
財務レバレッジを高めることは、ROEを高めることにもつながるが、
同時にリスクを増加させるという点も注意。
また、負債には負債の節税効果があり、最終的に投資家(株主、債権者)に渡る
キャッシュフローが節税効果分だけ上回る。


格付期間の格付

格付は本来、企業が発行する債券の償還能力を評価したものであり、
決して企業価値や成長性を評価するものではない。
成長性が低くても、キャッシュフローが安定している方が格付の観点から言えば好ましい。
でも最近は格付の引き上げや引き下げが株価に影響を及ぼすようになってきた。


道具としてのファイナンス

道具としてのファイナンス