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本当に、リーマンつぶす必要あったのか、益々わからなくなった・・・ ヘンリー・ポールソン/ポールソン回顧録

リーマンショック当時の財務長官ヘンリー・ポールソンの回顧録。
600ページを超える大部の著作。
若干冗長というか、鬱陶しい部分もあるけれど、
読みやすい文章なので、結構さらっと読める。

ポールソンは、元ゴールドマン・サックスのCEO。
CEOを辞して財務長官の打診を受けるかどうか悩んでいるところから始まり、
オバマが選挙に勝利し、政権が交代し退官するところまでのお話。
リーマンショック・コンフィデンシャル』を読んだ時も思ったが、
この人、就任してから本当に危機対応に追われ、ものすごく大変だったんだなぁと思う。
リーマン潰して、かなりの影響は起きたけれど、
全般的に必死に危機を食い止めようとしていたのはわかるし、懸命に対応していた様子がうかがえる。

でも、やっぱりなんでリーマンを潰したんだろう?という所には疑問が残る。
政府が保証してあげれば何とかなったのではないか、とどうしても考えてしまう。
政局に左右されてしまった判断だったような気がしてならない。

ポールソン回顧録

ポールソン回顧録



原因ははるか昔から・・・

リーマンショックへと至る金融危機の原因は、
金融緩和、サブプライムローン、金融機関の相互依存、など
ポールソン就任以前の種が芽を出した形。
だから本当にポールソンは大変だったと思う。
自分のせいじゃないのに、一番きつい所を任された状態。
それでも連銀などとの緻密な連携など、かなり良い動きをしていた印象。
この人じゃなかったら、あるいはもっと悲惨な状態になっていたかもしれない、とは思う。


意外と素直に書いているところも・・・

結構気に食わなかったことに関して率直に書いてたりする。

わたしが当局の行動とその理由を説明したところ、マケインはこれといった発言をしなかったが、ペイリン知事は出し抜けに存在感を発揮した。いきなり「ハンク」と呼びかけてきた。たしかにわたしはみんなから ハンクと呼ばれている。秘書からも、地位にかかわらずあらゆる財務省職員からも。
わたしとしてもそれが心地よい。ところが、会ったこともないペイリンから電話越しにあのように呼ばれると、なぜか神経に障るのだった。
P.34

本書の冒頭でいきなりこんな調子だったのでちょっと面白かった。
ちなみにオバマに敗れたマケインはかなり鬱陶しい。
この回顧録での言動を見る限り、負けるべくして負けたというか、
負けて良かったような気がした。


この危機は世界にとっても大問題

中国は、数千億ドル相当のGSE債を含む巨額の米国証券を保有しているのだから、蚊帳の外に置くわけにはいかなかった。
P.37

ファニーメイフレディマックの成り立ちがいかに入り組んでいるか、ふたりから説明を受けた。
株式を公開してはいるが、国内のモーゲージ市場を安定させて住宅を購入しやすくする目的から、議会の認可のもとで事業を行っていた。二社とも住宅購入者にじかに貸付をするのではなく、主として、期日までのローン返済を保証する保険を売っていた。この保険は証券化されて銀行によって投資家へ販売されていた。州税と地方税を免除され、財務省緊急融資枠が設けられていた。このようなつながりがあるため、ファニーメイフレディマックの証券は世界中の投資家から、アメリカ政府の十分な信頼と信用に支えられているものと見なされていた。
P.84

①金融機関の保有している資産価値が下がる
②追加の保証金を求められる
③危ないという噂で投資家が資金を引き揚げる
④株価も下がって自己資本比率が悪化する
⑤お金必要、でも調達できない
⑥破たんの危機
⑦破たんの危機、と市場に思われると株価一気に下がる。
取り付け騒ぎ状態でまじ破綻。
⑨となると、今度は破綻によって他の金融機関の資産の一部が紙屑になって下がる。
⑩以下繰り返しで連鎖破たん
⑪世界中の金融機関が巻き込まれる

恐ろしい!!


リーマンのCEOも問題はあった

ウィルソンも、とにかく売却を急ぐべきだとファルドを懸命にせき立てたが、ファルドは一株一〇ドル以上での売却にこだわっていた。ベアー・スターンズを下回る条件など決して受け入れられないと。
P.244

こんなこと言ってるから手遅れになった。
状況の認識が少し甘かったのだろう。
買い手がつくうちに進めていれば、あるいは政府の支援もスムーズに行えたかもしれない。
しかし、保証はない、と明言された状態で買い手はつかず、
条件もこだわっちゃったので結局誰ともディールは成立せず死を迎える、という流れ。
潰れないための動き方はいくらでもあったのだということを感じるだけに、なんか残念。

ポールソン回顧録

ポールソン回顧録