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経営戦略の理論を経済学のモデルを使って説明するとこうなる。 浅羽茂/経営戦略の経済学

個人的な印象だけど、経営学の話って、中途半端にかじるとなんかフワフワしている印象。
でも本書はそのふわふわを許さない。
なんとなくじゃなくて、経済学的にはこういうことだ、とビシっと説明してくれる。
経済学というもの自体が、色々な前提や条件を捨てた単純なモデルを規定し、
その中で考えるとこういうことが導かれるよね、という話なので、
経済学自体に馴染みがないととっつきにくいかもしれない。

でも物事を単純化、抽象化して思考することはとても大切だし、
どのみち理論は現実をすべて説明できないのだから、
入り口でつまずいて遠ざけるのはもったいない。

そこそこ歯ごたえあるけれど勉強になる1冊なのでおすすめ。

経営戦略の経済学

経営戦略の経済学


なぜ経済学の研究成果が有効なのか

まず、大原則。

経済学の教科書が教えるところによれば、企業の間に大きな業績の差が長期的に存在し続けることは考えにくい。
P.1

でも実際は、企業間に業績の差は存在している。経済学のモデルほど単純ではないみたい。
じゃあ個々の企業の業績に影響を与えているのはなんなのか、
戦略が果たす役割はそれなりにありそう。
でも一言で戦略といっても、重要なのは、その戦略がどういったロジックで、
企業に成功をもたらすのか、という部分。
そしてそのロジックを理解するのに有効だというお話になる。

ロジックを構成する際に市場特性や産業特性が重要となる。どのような市場にいかなる特性があり、それがその市場で競争している企業にどのような影響を及ぼすかを理解する場合には、経済学の研究成果が大いに活用できる。
P.9

ポジショニングやRBVは必ずついて回る話。

まぁ、2大学派みたくなってるので、この話は避けられない。
本書では冒頭にポジショニングやRBVの少し手前にあった議論を
紹介している。
伝統的な産業組織論、修正主義的見方、経営的見方の3つ。
いわゆる産業組織論ってのが非常に経済学的。

企業間の利益率の差異は一時的なもの、あるいはとるに足らないものであり、参入障壁や集中度の高さといった産業要因が重要であるという伝統的産業組織論の考え方
P.11

修正主義的見方と呼ばれるもので、効率的で高い利益率を誇る企業がマーケットシェアを獲得し、市場集中度が高まるために、市場集中度と利益率とが正の相関をもつというシカゴ学派の考え方
P.12

経営的見方と呼ばれるもので、ある企業は、産業特殊的ではない重要な経営スキルを獲得しているために、他の企業に比べてうまく経営されている。だから、企業間の利益率の格差が長期的に存続すると考えられる。
P.13

多角化のお話。

まず、多角化に関するこんなお話も。

この時代に多角化を推進しているのは、JT に限らない。その典型例は、ゼネラル・エレクトリック(GE)である。ウエスチングハウス・エレクトリックの会長が、「コングロマリットは死んだ。 1社をのぞいて……」と発言しているが、その1社がGEなのである。
P.19

と、こんな話をきくにつけGEって化け物だなぁ、と思う。
ジャック・ウェルチとか毎日どんな仕事してきたんだろうとか気になってしまう。

まぁ、選択と集中が叫ばれる昨今ではありますが、
多角化にだって、可能性はたくさんある。
例えばポートフォリオ的な考え方。

株式投資でポートフォリオを組んで投資収益を安定させるのと同様に、収益のピークが異なる事業を組み合わせた多角化を行うことによって、企業は収益を安定させることができるのである。
P.21

他にも、範囲の経済。

範囲の経済とは、1つの企業が複数の事業( 製品) を手がけるほうが、別々の企業がそれぞれ1つずつ手がけるよりも費用が少なくてすむという性質である。
P.21

あと、そもそも資源が余っちゃうから有効活用したい、なんてパターンもありえる。

資源によっては細かな単位に分割することができないので、既存事業を行うのに必要な量を超えてもたなければならない場合がある。たとえば、生産能力、大型の機械、熱源などがこれにあたることが多い。(中略)
他の事業に利用可能な資源が、既存事業の副産物として生まれる場合である。
P.22

で、それらの資源は必ずしも自分たちで使う必要は無くて、
他社に販売することも可能かも?
昔キューピーの人に聞いたけど、アメリカで卵白使うけど卵黄使わない会社があって、
そこからその会社にとって不要な卵黄を安く買ってるって言ってた。
これなんかWin-Winの関係ですね。


垂直統合のメリット

共有できる資源の存在や生産費用の節約が垂直統合をもたらすのは、市場を介した取引に費用(transaction cost)がかかるからであり、垂直統合をすることによって取引コストを節約できるからである。
P.42

取引費用は重要な概念。
これを小さくするために企業は存在する。
そこらへんの話は、ノーベル経済学賞を受賞した
オリバー・ウィリアムソンの著作でしっかり学んでみるのも良いかも??

市場と企業組織

市場と企業組織


国際展開の話の中での内部化理論

技術やスキルといった情報財は市場取引になじまない。ライセンシングによる技術移転には、技術に基づく企業の優位性が散逸してしまう危険性がある。そこで企業は、海外直接投資を行い、情報財の(国際的な)取引を内部化するのである。
P.57

何を内部化し、何を外部化するのか、という議論。

あと面白かったのはリーダー企業のまねをするfollow-the-leader戦略。
ライバルが海外進出したら、自分も進出した方がいい。
お互い成功しても、お互い失敗しても、バランスは崩れない。
でも、進出せずにライバルだけ成功されると自分の地位が危うくなる。

同じ行動をとっている限り、いずれの企業もよくも悪くもならず、競争バランスは崩れないのでめる。この意味で、“follow-the-leader”行動はリスク最小化行動なのである。
P.62

参入障壁の作り方

価格や広告といった視点でどのように参入障壁ができるのかといった話も面白かった。

広告費は固定費なので、規模の経済が働き、供給量が増大するにしたがって平均費用は低下する。
たとえば、1958年から72年までの15年間の売上高広告費比率を計算すると、シェアの最も大きなケロッグが14.06%であるのに対し、ゼネラル・ミルズが18.31 %、ゼネラル・ブースが16.50%である。
後の2社よりもはるかにシェアの小さな新規参入企業の売上高広告費比率は、上位企業に比べて大きいはずである。つまり、大規模な既存企業は、小規模な新規参入企業よりもコスト優位にある。
ゆえに、このコスト格差がBain (1956) の意味で障壁となり、参入が難しくなったと考えられるのである。
P.146

価格戦略ではディシジョンツリー&ゲーム理論みたいな話も。
ここには到底書ききれないので、折に触れ読み返してみようかな。


経営戦略の経済学

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