ビジネス書大好きMBAホルダーが教える私の学びシェア

本を読んでそこから新しい知識を得たり、学んだりすることが大好き。学びたい、成長したいという意欲のあるビジネスマンの皆さん、一緒に成長しましょう。

製品戦略においてもビジョンが必要。そしてそれは皆で作るもんじゃない。 マイケル・E・マクグラス/プロダクトストラテジー 最強最速の製品戦略

本書は、アメリカのビジネススクールで、ハイテク関連企業の
製品戦略を学ぶ際の教科書として使用されているらしい。

実際の事例を元に分析しており、何をどのように考え、
成功したか、復活したか、失敗したか、が紹介されている。

事例はすでに古く感じるところもあるが、本質的な部分は今でも有効。
経営においても、製品戦略においても、
ビジョンを示すことが重要であることは理解できたが、実践するのは本当に難しい。

プロダクトストラテジー~最強最速の製品戦略

プロダクトストラテジー~最強最速の製品戦略


やはりビジョンは大切

ビジョンには達成すべき目標が含まれていないとだめ。
それを明確にすることこそがビジョンの策定なのだな。

企業には戦略ビジョン策定の優先順位を高くして、まじめに取り組ませる仕組みが必要なのである。戦略なき企業ほど、戦略ビジョンを持っている気になっていて、実際には思いをまとめたようなステートメントしか持たず、達成すべき目標が明確でない。
P.23

顧客の声に気をつける

なんでもかんでも顧客の声に耳を傾ければ良い訳ではない。
顧客自身が自分のニーズを正確に把握しているわけではないから。
顧客の声を聞くだけでは革新的な商品開発は難しいということ。
ウォークマンが無い時に、顧客はウォークマンが欲しいとは言わないから。

市場動向の境界条件を定義するときには、顧客の声に短絡的に依存するのはやめた方が良い。
顧客の声が間違っている場合があるし、この間違った先入観によって、コア戦略ビジョンを捻じ曲げてしまうことがある。
P.69

ブランド名は差別化ベクトルではない

ブランド名は役に立たないという話ではないのでそこは注意が必要。
ブランド名によって差別化できる、そんな差別化の主要因ではないということ。
あくまでも市場でどのように差別化するのか、という考えがあった上で、
強いブランド名を持っていれば、その違いをより強く伝えることができる、という関係。
ブランドがあれば差別化完了、ではないということ。

ブランド名は、一般に主たる差別化ベクトルではない。特に、ハイテク製品ではそうである。
P.221

差別化の話、もろもろ

差別化のチャンスが何も無かったので、インターネットビジネスは、最終的に大衆向けコモディティ市場になった。すなわち、複数の会社が、同じ場所、つまり顧客のコンピュータで、全く同じ製品を販売することになった。より安い価格を求めて、ちょっと遠くまで車で出かけたくなるといった、場所による伝統的な差異さえなくなった。
P.223

ネットビジネスにおける差別化が如何に困難か。
確かにネット系の企業は1つのサービスで長年持続的に
成長をするというパターンは少ない。
よく見ると上場時から稼ぐ事業を変化させている企業も多い。
DeNAとか)
これって、差別化が困難=模倣困難性が低い、ってことの証左なのかもしれん。

差別化戦略とは、できるだけ多く機能を加えることだと誤解している企業もある。よくあるのは、「チェックリスト症候群」で、製品企画担当者は、競合製品に含まれる機能を何でも取り込もうとしたり、顧客が求める機能を何でも取り込もうとする。購買決定につながりそうな機能を照合し、その数を増やすためにチェックリストを使って、顧客をビジュアル化する。そうやってあらゆる機能を含んだ製品をデザインしてしまう。実際に、多くの顧客はこのようには意思決定しない(製品の評論家は、競合製品をランクづけするために、このアプローチを使うが)。
P.227

こういう話は日本企業には耳が痛い話かも。
あれも、これもと欲張っていくと結局誰のための商品なのかが
わからなくなってしまう。


特許による保護

特許による保護が得られる場合、特許は競争を締め出してくれるので、差別化ベクトルの理想的な継続手段となる。重要なことは、適切な特許戦略を選んで、そのカバーする範囲を決め、完璧を期すことである。競争相手に対してできるだけ広い防御壁を打ち立てるために、特許は、できるだけ広い範囲をカバーすべきである。
P.232

特許はとてもわかりやすいけれど、
逆に手の内をさらす行為という指摘もあったことを思い出した。
本当に重要な技術は特許申請しない、という選択があることも
頭の片隅に置いといた方が良い。


ヨーロッパのモバイル事情

1988年には、欧州には18の携帯電話用ネットワークがあり、互換性のない六つの規格の下で100 万人以上の加入者があった。もともと、1970年代末に、スカンジナビアンPTTがNMTを展開。各国でバラバラの規格(NMT-450 とNMT-900)が生まれた。TACSは、米国の800-MHz AMPSシステムの改良版で、英国やアイルランドで使われた。仏マトラ社が開発したラジオコム2000は、フランスで使用された。1985 年にジーメンスが開発したC-450は、ドイツで使用された。 RTMS はイタリアの規格で、COMVIKは、スウェーデンで使用された独自ネットワークである。1988年の欧州携帯電話業界のように、標準化にバリエーションを許すと、グローバル製品を設計したり、マーケティングを行うのが非常に難しくなる。製品は、意図的に技術仕様の全く違っているものになった。
P.292

こんなに企画が乱立していたなんて知らなかったのでメモ。
ユーザーにとっては良いことなさそうだけど、
この無駄の多そうな規格の乱立のおかげで成立していた企業も多いのだろう。
細かな規格の違いや仕様の違いに対応しなければいけないこと自体が参入障壁になりうるから。


カニバリゼーションの検討

本当に共食いが起こるのは、既存製品が計画した切り替えより前に、後継製品に切り替えられるといった順番通りではない移行や利益を維持したままの移行ではないときだけである。いつ共食いを避けるべきか、どの共食いが良いのか、これをうまく理解できないと企業は戦略ミスを犯す。
P.312

新製品の利益率が既存製品を大幅に下回っていたりすると、
製品の発売自体が会社の業績を大きく下げてしまう事態にもなりかねない。
共食いにも良い共食いと悪い共食いがあるということを考えておかないといけない。


最近の投資基準が変わってきているということ

現在に至るまでベンチャーキャピタリストたちは、新規ベンチャーの参入障壁の設定能力をよく検討し、長期的に成功を維持できないと判断した場合には投資しなかった。1990 年代の終わりには、新規株式公開(IPO)の機会が急増し、投資基準も変わってきた。新規ベンチャーは、以前よりもはるかに早く上場するようになった。初期の成功やその可能性のみでも上場する十分な理由になった。
P.376

ある種、言い方は悪いが上場がゴールになってしまっている傾向がある。
それは起業家にとっても、投資家にとっても、それが目標になってしまっていると言うこと。
あまり健全な話ではないと思いつつ、それでもチャンスが増えることは良いことだとも思いつつ。


ビジョンはみんなで作るものじゃない。

ビジョンを作るには幅広い視野が重要になる。とはいえ間違ってはならない。戦略ビジョンはコンセンサスで作られるのではない。コンセンサスによりビジョンは薄まり、必要以上に複雑になってしまう。CEOは皆の意見を聞き、ビジョンの代替案を評価し、最終的なビジョンを作り上げ、そしてそれを全員に説く。
P.429

経営者は孤独だと言うこと。だから意思決定はとても難しい。
一生懸命考えたところで皆がすんなり賛同してくれるわけでもない。
意見を聞くことは否定していないが、最後は一人で決めなくてはいけないのだろう。

プロダクトストラテジー~最強最速の製品戦略

プロダクトストラテジー~最強最速の製品戦略