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ファイナンスの教科書でこれ以上の物があるだろうか! ロバート・C・ヒギンズ/ファイナンシャル・マネジメント

アメリカのビジネススクールでファイナンスの教科書として使われている本。
分厚い。でも、これがすこぶる分かりやすく書かれている。
ファイナンスの教科書でこれ以上の本は無いんじゃないか?
すべてはこれを丁寧に理解することで事足りると思う。
各章の最後には章末問題が用意され、巻末には解答解説が用意されているという素晴らしい本。
変な話、ファイナンスの授業よりこれ読んで学んだ方が良いんじゃないか、というくらい素晴らしい。

新版 ファイナンシャル・マネジメント ― 企業財務の理論と実践

新版 ファイナンシャル・マネジメント ― 企業財務の理論と実践


二本指アプローチ!

資金運用表を1~2回作成してみることは有益だろう。しかし、そのレベルをいったん超えたら、「二本指アプローチ」を用いることを勧める。すなわち、2つの貸借対照表を並べて、大きな変化のある勘定科目を見つけるために、2本の指をすばやく上から下へ走らせるのである。これにより、読者はティンバーランド社の現金の源泉の大部分が株主資本の増加であり、現預金及び有価証券の増加が主要な現金の使途であると、瞬時に観察できるはずである。
P.16

なんのことはない、指二本で去年と今年の財務諸表を比較しながら流し見するだけのことなのだけど、
とりあえず違いを認識するのにこれほど実用的なものも無い。
理論だけじゃなくて、こういう実践の話も盛り込まれているのが素晴らしい所。

キャッシュ・フロー計算書の下のほうにある「現金及び現金同等物に係る換算差額」である。これが現われるのは次のような場合である。国際的な事業活動を行なう企業は、通常は外貨建ての現預金勘定を持っている。これらの外貨に対する米ドルの価値が変化すると、外貨建て現預金勘定のドル換算額も変化する。たとえば、アメリカ企業が100 万ドイツマルクの預金を持っており、為替レートが1年間で、1.00マルクが0.5 ドルから0.75ドルに変化したとすると、マルク建て預金のドル換算額は50 万ドルから75 万ドルヘ増加する。この25 万ドルの増加がキャッシュ・フロー計算書に「現金及び現金同等物に係る換算差額」として表示される。
P.19

こういう話もまさに実践。
理論だけでなく、使える知識を与えようとしてくれているのが随所に感じられる。

会計上の利益はあくまでも会計上の話

詳しく調べてみると、明らかに大きな利益を報告している企業の多くが、株主資本コストまで含めて考えると、実際には週末にしかプレーをしない下手なゴルファーと同様に、ひどい業績になってしまう。
P.28

財務分析に財務諸表を使用した場合、2つの問題がよく生じる。①会計上の簿価が市場価値と同一になることはほとんどない。②会計上、未実現損益と負担するべきコストが認識されないため、会計上の利益と経済的利益とは異なる。
P.29

会計はあくまでも解釈の世界、キャッシュが真実、とはよく言われる話。
会計上の数字=真実と鵜呑みにすると意思決定を間違える恐れが。
どんなルールに基づいて集計された数字なのか、そのロジックを理解しておくことは重要。
じゃないと、騙される。


ROEROA

経営者の経歴の浮き沈みはROEの浮き沈みと等しい!?
それくらい重要なのがROEという指標。

企業が株主資本を活用している効率性の度合いを表わす尺度であるからである。すなわち、株式として投資された金額の1ドル当たり利益を表わす尺度であり、株主が企業への投資から得られるリターンの率(パーセンテージ)でもある。
P.36

ROE=売上高当期純利益率×総資産回転率× 財務レバレッジこの式により、経営陣がROEをコントロールする際には3つのレバーがあることがわかる。すなわち、①売上高1ドル当たりの利益、つまり売上高当期純利益率、②使用した資産1ドル当たりから得られる売上高、つまり総資産回転率、③資産の調達に使った株主資本の総額、つまり財務レバレッジの3つである。わずかな例外ケースを除き、経営陣はこれらの指標を向上させれば、ROEを上昇させることができる。また、これらの業績のレバーと企業の財務諸表が密接に関連していることにも注目してほしい。売上高当期純利益率は企業の損益計算書の要約であり、総資産回転率と財務レバレッジはそれぞれ貸借対照表の借方、貸方の要約に相当する。これは、このシンプルな3つのレバーが、企業の財務業績の主だった要素をうまく表わしているという証拠だということができるだろう。
P.37

ROEの構成要素は上記の通り。では、何をしてどうやってあげていくかは戦略次第。
理論上はROEは平準化していく、のだけど。

ある企業が平均以上の高いROEを達成すると、そこに好業績を達成したい他の企業が、磁石に吸い寄せられるように参入してくる。その結果として引き起こされる激しい競争が、成功した企業のROEを平均的な水準にまで引き戻すことになる。逆に平均以下の低いROEは、潜在的な競争相手の新規参入を抑制し、既存企業にも倒産や撤退を引き起こし、その結果、時間の経過とともに、生き残った企業のROEは平均的な水準へと普通は回復していく。
P.38-39

この辺の話はまさに業界の利益率=ファイブ・フォースの話。
理論上はそうなのだけど、実際は結構差がついている例も多い。
例えばコンビニ業界の利益率は、コンビニ業界のビリでもスーパーのトップより良い利益率。
コンビニ業界内だけ見ても、セブンイレブンだけが長期間に渡り抜きんでた利益率。
必ずしも理論通りにはいかないけれど、長期で見れば理論に収束していくかもしれん。


総資産利益率ROA

ROAとは、企業が資産を割り当てて活用する際の効率性を測定する基本的な尺度である。これは株主と債権者から提供されている資金に対する利益率を測定するものであり、株主の資金に対しての利益率のみを測定するROEとは異なる指標である。
P.40

ROE株主資本利益率、あくまでも株主資本しか考えてない。債権も考慮に入れたのがこれ。


総資産回転率

流動資産は固定資産と異なり、業績不振の際の資金源となりうるということが挙げられる。一般的に売上高の減少時には、売掛金や在庫に対する投資が減少するので、現金が一時的に自由になり、これを他の用途に使用することが可能となる(資産を処分すれば、資金が得られる)。優良企業では、この流動資産が売上高の変化につれてアコーディオンのように増減し、債権者にとって魅力的となっている。事業の拡大期には流動資産が増大して借入金が必要となり、縮小期には流動資産を削減処分して借入金を返済するための現金を得られることが知られている。このような借入金は、借入金で取得した資産がその借入金の返済財源となることから、自己流動的である(self-liquidating) と言われている。

そもそも資産が多い方が良いという考え方は誤り。
企業の価値は生み出す利益にあり、資産にあるわけじゃない。
資産はあくまでも利益を生み出すための手段。


財務レバレッジ

一般に、カロライナ電力のように予測が容易で安定したキャッシュフローを持つ企業は、インテルのように非常に不安定な市場で事業をする企業よりも、大きい財務レバレッジを用いることが可能である。加えて、商業銀行のように広く分散投資された流動性の高い資産を保有する事業では、他の一般的な企業に比べて、大きな財務レバレッジを用いることが可能である。
P.47

資金調達を借入によって行う割合が増えると財務レバレッジが高まる。
借金には節税効果もあり、借金=悪では全然ない。


比率分析

比率はただある1つの数字を別の数字で除しただけのものである。だから、1つ、ないしいくつかの比率を機械的に計算しても、現代の企業のような複雑な対象に対する重要な洞察が、自動的に得られると期待するのは合理的ではない。比率は推理小説における手がかりのようなものと考えるのがよい。たしかに、1つないしいくつかの比率だけでは誤解を招くかもしれない。しかし、これらを企業経営や経済的な環境についての知識と結びつけると、比率分析で物事が明らかになる。心にとめておくべき第2のポイントは、比率において正しい値は1つではないことである。
P.63

財務分析の基本だけど、比率は比率でしかないことに要注意。
これは数字を見るときに全般的にいえること。
比率に夢中になって実数見えてないってことは往々にしてあり得る。
理想的な割合だったとしたら実数がシュリンクしてても良いの?って話。


成長することのリスクもある

ファイナンスの視点からは、成長が必ずしも好ましいこととは限らない。急激な成長は経営資源の逼迫を招く。すなわち、経営陣がそれを意識して積極的にコントロールをしない限り、破産という結果になりかねない。まさしく、企業の成長は、同時に破綻に直結するという恐れがある。残念ながら、成長が急激すぎた企業もほとんど成長していない企業も、ほぽ|司じ割合で破綻する。それにも増して残念なのは、人々が望む製品を提供することによって市場に受け入れられ、急激に成長した企業が、財務的な視点から成長を適切に管理しなかっただけで、生き延びることができなかったという事実である。
P.123

成長時の財務のかじ取りがいかに重要かということ。
ここがぐちゃぐちゃだとやりたいこともできない事態に陥る。

持続可能な成長率の等式で重要なのは、g*だけが、この4つの比率の安定的な値に見合った売上高の成長率であるということである。売上高の成長率力g*以外の値をとった場合には、この4つの比率のうち少なくとも1つには変化が生じなければならない。この意味するところは、もし持続可能な成長率を上回る率で企業が成長するときには、経営の改善(売上高当期純利益率または総資産回転率の向上)を行なわなければならないか、財務方針の変更(内部留保率または財務レバレッジの増加)を準備しなくてはならないということである。
P.128

やはり大切なのは、変数が何かを知ること。


市場の評価

調査当時、ダウ・ジョーンズエ業株平均か史上最高の1万ドルに迫る勢いであったにもかかわらず、市場が自社の株式を正当に評価していると認識していたのはわずか3分の1にも満たず、過大評価されていると考えていたのはわずか3%であり、なんと69%のCFOが過小評価されていると考えていた
P.138

理論上は完全市場を想定しているので、市場の価格はすべてを織り込み済み。
だけどこれまた現実はそううまくはいかないもので。
ただ、これだけ過小評価されているという思いが多いのはちょっと面白い。
本当に過小評価されているのだとしたらそれはCFOの責任であり、もっと適切な情報開示をし、
市場とコミュニケーションを取らなければいけないはず。
あまりにも自分の責任を棚上げにするような話で面白い。
一方で、聞かれれば過小評評価されている=もっと評価されてよい、と答えて
ポテンシャルを暗示せざるを得ないっていうのもあるかも。

折り込み済みかどうかでいうとM&Aに関してはこんなロジックがある。

1960 年代から1970 年代の初頭における企業買収・合併への賛辞とは裏腹に、これまでの研究から、成長のための買収は配当よりも明らかに有効性に欠ける戦略であることがわかってきている。買収の対象になりうるような企業の株価は、すでに将来のその企業の高い成長見通しを織り込んでいるケースが多いため、買収のために高額のプレミアムを支払うと、並以下の投資となってしまう。
P.147

株価に将来の成長性も織り込まれているから、買収時にプレミアムをつけると投資効率が悪化する、ということ。
これもロジックとしてはおっしゃる通り。
ファイナンスって合理的な人間、合理的な世界っていうありえないものを前提としているけれど、
その上で突き詰めて考えられているロジックの1つ1つは結構面白い。
なんか美しさすら感じる。


社債や株など金融商品の話

長い間、投資家は社債をきわめて安全な投資対象であると考えてきた。利息収入が明記されており、発行会社が倒産する可能性は低いからである。しかしながら、この考えはインフレーションが気がつかないうちに確定利付証券に与える重大な影響を忘れた議論と言わなければならない。
P.160

インフレが激しいと、利息も元本も価値が根本的に変わってきてしまう。
高インフレ化では社債はかなりリスクが高い。

機関投資家の多くは「投資適格」の格付け(通常はBBB一以上)を持たない社債への投資を禁じられている。結果として、これまでは格付けの低い企業は市場における資金調達がきわめて困難であった。投資適格の格付けを得られていない社債のことを投機的格付けの社債、ハイ・イールド・ボンド(高利回り債)、もしくは単にジャンクボンドと呼ぶ。
P.161

この話は格付けがいかに大切かをよく表している。
投資不適格認定されると、途端に資金調達が難しくなる。
リスクを低減させるための知恵なのだろうけれど、
いつの間にかルールに振り回されているような感がなくもない。

続いて、優先株式の話。
優先株式って何が優先なのか??

優先株式による配当は、次の2つの点において魅力的である。 1つは、優先株式への配当が普通株式への配当に先立って行なわれるという点である。優先株主への配当金の支払いが完了するまで、普通株主にはまったく配当金が支払われない。2つ目は、実際にはすべての優先株式は累積的(cumulative) だという点である。優先株式への配当金が未払いとなっている場合には、その未払額の支払いが完了するまでは、普通株式への配当を再開することができない。
P.169

ずばり、上記の通り、配当が優先される。
優先株式への配当が済まないと普通株式への配当ができない、というものすごい優先されっぷり。
ただ、1つ覚えておいた方が良さそうなことが・・・

経営者にとって重要なことは、社債の利息が税務上損金処理できるのに、優先株式への配当はできないということである。
P.170

こうなると社債による調達が魅力的に見えてくる。
それとファイナンスのわかるやつが1人、しかも優秀なのがいないと、
同じ経営をしたとしても、成果が違うんだろうなぁ、としみじみ感じる。


市場の効率性

市場に新しい情報が流れた際に、どのような反応をするのか?

この価格調整プロセスに要する時間はどれくらいであろうか。オクラホマ大学のルイス・エデリントンとジェイ・ハ・リーは、定期的なニュースリリースに対する市場の反応に関する研究において、その答えを出している。さまざまな金利外国為替市場における価格の変動を取引ごとに検証した結果、価格の変動はニュースリリースが行なわれてから10 秒以内に始まり、基本的には40 秒以内に完了している。金融市場での取引でニュースによって儲けようと思うならば、ぐずぐずしてはいられないのである。
P.182

わずか40秒で市場に織り込まれるということ。素人が情報で儲けようとするのは無理がある。


マーケット・シグナル

企業はその行動を通じて市場にメッセージを送ることができる。

ここで設問を逆にして、ハープリッジ社の業績見通しが暗く、将来のE B I Tが低下しそうだと考えたときに、どの資金調達を勧めるか考えてみよう。このシナリオでは、カバレッジの点から有利で、業績水準が低いときに相対的にEPSが高くなるという理由により、明らかにエクイティ・ファイナンスが選択されることになる。それでは、ある企業に詳しい人が、将来の見通しが明るいときにはデッド・ファイナンスを選択し、暗いときにはエクイティ・ファイナンスを選択するとすれば、新株発行の発表により、投資家に何を知らせることになるだろうか。そのとおりである。経営陣は自社の将来に懸念を抱いており、安全な調達手段を選んだのだというシグナルを市場に送っていることになる。
P.231

逆に自社株買いをするということは、経営者は自社の見通しに対して楽観的であるというシグナルを発する。
だから株価が上がる。理論的には市場に流通する株の量が減るからあがるわけではないってのがよく誤解されている。
理論的には、あくまでもシグナリングの効果。


DCF法と投資の意思決定

プロジェクトや企業価値の評価におけるスタンダード。

独立した投資の場合は、NPV、BCR、IRRという3つの評価指標は同じ投資の意思決定を導く。しかし、相互に排他的な投資の場合、必ずしもそうなるとは限らない。これまでに挙げた例は、すべて独立した投資であることを暗黙の前提としていた。投資評価を複雑にする2つ目の要因は、資本制約である。これまで、魅力的な投資機会すべてに投資できるほどの資金が、企業に潤沢に存在するという暗黙の前提のもとに話を進めてきた。ところが、資本に制約がある場合には、資本予算に超過できない一定の限度額がある。
P.270

互いに独立し、資源制約もなければ、どの指標でも同じ意思決定に至れるのだが、
現実の投資案件は、相互に排他的な場合も多いし、そもそも投資できる資金には限りがある。
資金に限りがある場合、いかに率が良くても額の小さい案件よりは、率が悪くてもNPVがでかい案件の方が企業価値は上がる。
そこら辺、よく理解して使わないと痛い目を見そう。

また、やろうがやるまいが(With-Without)かかるお金は投資の意思決定とは無関係。
サンクコストが無関係なのと同じように。

With-Without の原則投資が行なわれた世界(With )と投資が行なわれなかった世界(Without )があるとする。この2つの世界の間にあるキャッシュフローの差異が、投資の意思決定に関連するキャッシュフローである。もし、両方の世界で同一のキャッシュフローが生じるならば、そのキャッシュフロ-は投資の意思決定に無関連である。
P.271

ここで問題となるのは、社長の給与、法務部や経理部の費用といった新規投資に直接的には関連しない費用が、投資の意思決定に関連するかどうかということである。 With-Without の原則に単純に従えば、社長の給与が新規投資によって変わらないのであれば、それは無関連である。法務部や経理部の費用についても同様である。これは明快である。変化がなければ関連がないということである。しかしながら、新規投資によってこれらの費用が変わらないと言い切れるだろうか。実際問題として企業が成長するに従って社長の給与は増え、法務部や経理部も大きくなるというのが否定できない現実であろう。問題は、このような費用を配賦するかどうかということではなく、事業の規模に応じてそれらの費用が変わるかどうかということである。
P.278-279

会計的に配賦される費用は投資の意思決定とは無関係!
ただ、そういった本部コスト的なものが、プロジェクトによって増加するのであれば
その増分だけは見てあげないといけない。


WACCは下がるのか?

割安な負債を増やし、割高な株式を減らすことによってWACC (KJ) を下げることができると思った人もいるであろう。すなわち、レバレッジを高めることにより、資本コストを低くできるという考え方である。これは、レバレッジに対する理解が不完全なために起こる間違いである。第6章で見たように、レバレッジを高めれば、株主のリスクは高まる。そうすると、株主はリスク回避的であるため高い投資収益率を要求する。
P.318

結局株主資本コストが上昇しバランスされる。WACCのコントロールは非常に難しい問題。


新版 ファイナンシャル・マネジメント ― 企業財務の理論と実践

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