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出版社、取次、書店のインセンティブ&ペナルティの必要性は結構前から提言されていた! 畠山 貞/出版販売試論

再販売価格維持制度と委託販売制度によって成立している
現在の出版流通に関して、新たなあり方を模索する試論。

結局現状の返品率であったり、マージンでは書店や取次も立ち行かなくなってきている。
抜本的な解決には流通の構造や制度を見直す必要があり、
返品に応じたインセンティブ&ペナルティなどの考え方が必要なのでは、という提言。

返品率が下がれば書店のマージンが増やせて書店は嬉しい。
取次はマージン減るけど、返品処理のコスト減るからそれはそれで嬉しい。
という、双方ともにWIN-WINになるような取引条件を試算している。

ちなみに著者は中堅取次である栗田出版の元役員の方のペンネームだそうだ。

出版販売試論―新しい流通の可能性を求めて

出版販売試論―新しい流通の可能性を求めて


戦前の本屋

現在、わが出版業界には「どの書店も同じ品揃えで魅力がない」、「書店員に商品知識がない」、「客注が遅い」など読者から批判の矢がむけられているが、例えば戦前と戦後と出版点数はそれ程違わないのに(昭和十年、三〇、三四七点、昭和六十年、三一、二二一点)、なぜ戦前はそのような苦言が少なく、最近は多いのか。実は私は、この「統制会社」の誕生にその原因があるのではないかと思っている。
すなわち「日配」以前の本屋は、「書籍店」と「雑誌店」に分かれ、店の性格付けが明確になされており、それに対応したノウハウを取次も書店も持っていたが、日配誕生以来何でも見計らい配本、割当配本となり、それまでに培われた販売技術が不要となったからである。
P.11

結局書店自身のセレクトによる仕入れが機能しているかどうかって所まで遡っている。
これって一理あるのかもしれないが、そのやり方で市場が伸びたとも思えない。
しっかりとした商品知識を持った書店は理想だけれど、
今やそれはごく一部の書店を除いて望むべくもない。


取扱マージン性

取協石川度治会長は「取扱マージン制」提言の真意として、「売上マージン制は運賃も、荷造り資材費も、設備費も、人件費もすべて安くまかなえた時代につくられた制度」(『新文化』昭和五十五年五月二十七日号)と発言しておられる。
その後『新文化』に、「取協『取扱マージン制』案」(昭和五十五年五月二十五日号)が掲載され、「返品率三〇%以上はペナルティ」と題して以下のような論を展開している。
①昭和五十三年度の取次実質口銭は、年間の総仕入金額に対し五・七五五%であった。
②年間売上率が七〇%未満の出版社には、昭和五十年の取次実質口銭に対して不足する口銭を次年において補填して頂きたい。そして、③返品率に応じた補填率を列記してあり、売上率六五%~六九%未満の出版社には、補填率〇・二%、六〇%~六五%までは、〇・六%という具合に返品率に応じ段階的にアップし、最高は売上率四五%以下の出版社には、納品定価に対し二・五%とある。
P.101-P.102

出版社とのインペナ契約。
ちなみにようやく数年前から、日販が主導で
パートナーズ契約などの返品率に応じたインペナ契約がスタートしており、
返品率の低減に一定の効果を生んでいる。


出版業界の稼ぎ頭は雑誌だった

雑誌の売上げの業界に対する貢献は、大野孫平翁の発言をまつまでもなく、戦後の出版業界の発展に寄与してきたことは諸データをみれば歴然としている。
そして、こうした雑誌の売上漸減の傾向は書店にとってのみならず、取次にとっても「経営の根幹」に係る問題ということになろう。
P.110

書籍は雑誌のついでに扱うもの、という扱い。
というのも、商品の回転率が全く違うので書籍はあまり儲からない。
出版の流通もまた、雑誌を前提に発展しており、
近年の雑誌の売上の崩壊は出版業界の根幹を揺るがす自体になりつつある。


「正味問題はタブー」とは業界で言い古されてきた言葉であるが、この問題について戦後の出版流通史には二つの大きな山があった。
第一の山は出版社・書店間の正味戦争で、長期に亘る激しい応酬の末、昭和四十七年九月一日から一部出版社の商品を店頭から排除する実力行使に出た、いわゆる「ブック戦争」である。
この歴史的経過については『ブック戦争の記録』(松信泰輔榻、有隣堂、昭和五十二年四月刊)その他業界紙に詳しいが、当時の記録を読むと「正味」に対する両者の論争の激しさが伝わってくる。
第二の山は平成二年六月、取協適正流通研究委員会が作成した『書籍の適正流通を目指して』という小冊子を関係出版社に送付したことから始まった。
今度は出版社・取次間の論争といえる。
「ブック戦争」の時には、業界三団体が白昼堂々(こ団体間協議を行ったが、今度は公正取引委員会により団体間交渉が法的に禁じられているので、それぞれ個別交渉をせざるを得なかったため、関係者以外幅広く認知されていない。
しかし当時の業界紙には「流通側に高まる専門書正味の引き下げ要求」として次のような記事がある。
「大手取次-出版社間取引において、取次側か経費を全く吸収出来ない七三掛け以上の出版社だけを数えても三〇〇社を超えている」(『新文化』平成五年十二月二十三日号)。
しかし出版社側からは多くの反論が寄せられ、結果として文庫を除き書籍一般に対し正味引き下げという具体的成果に結び付くことはなかった。
P.114-P.115

医学書などの専門書の正味は非常に高いと言う話は聞いたことがある。
そんな馬鹿な、と思うが逆ざやになるらしい。
取次は出版社とはそれぞれの条件で契約を結ぶが、書店とはほぼ一本の契約。
例えば80で仕入れて、78で卸す、みたいなことが普通に起きているらしい。
ブック戦争のことは全然知らなかったので、ちょっと勉強してみたいが、
Amazonマーケットプレイスにも出ていないみたい・・・。

出版販売試論―新しい流通の可能性を求めて

出版販売試論―新しい流通の可能性を求めて