著者曰く、出版敗戦の記録。
このネガティブさがもう少しなくなると、もっと面白いのだけど、
この悲壮感漂いまくりな感じは今の出版業界を思えば仕方ないのかもしれない。
まぁ、業界の人たちがこの人の悲壮感の何分の一かでも持ってくれれば
もう少し色々変わるのかもしれないが。
ブックオフやCCCのくだりでたまに陰謀論めいた雰囲気が出るのが
個人的にはいまいちしっくり来ないのだけど、
それでも、この粒度で情報をピックアップし、整理しているものは他に無い。
出版業界の価値ある記録。
- 作者: 小田光雄
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2009/05
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 67回
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古書事業
平安堂、勝木書店、田村書店、金高堂が古書を中心とする新会社ユービーエスを立ち上げる。
【新刊書店による共同古書事業ということになるが、その後の展開に注目したい。
ほぽ時を同じくして、『平安堂八十年の歩み』が刊行された。
昭和二年の創業から現在に至る平安堂の歴史を、私情をぶつけて語り尽くした一冊で、取次との関係も赤裸々に描かれ、忌憚なき出版流通販売史であり、必読の一冊といえよう】
P.9
新刊書店と古書の業態ミックスとか、書店も生き残りをかけて色々模索している。
この話は結構前の話だけど、このユービーエスという会社、
その後どうなんだろう?と興味を持ったのでメモ。
そして『平安堂八十年の歩み』を読みたいのだけど、日本の古本屋で検索してもヒットせず。
残念。
自由価格本
大阪屋が大阪屋商事を設立し、出版社の絶版、品切れ扱い本、断裁処分本を対象とする「自由価格本流通」を立ち上げる。
P.86
これまた一体今どうなっているんだろう??
自由価格本は何でこんなに盛り上がらないのだろう???
もう少し業界としてちゃんとやった方が良いと思うのだけど、
再販制度から外れるものはそんなにタブーなのだろうか・・・。
文教堂
株価総額からして文教堂GHDの株式を半分以上取得し、子会社とすることも可能だったはずだ。
日販は経営困難になった書店をそのようにして子会社化し、TSUTAYAのFCとならしめてきた。
それを例とすれば、トーハンはゲオと計らい、文教堂を子会社とする選択もあったと思われる。
P.120
日販*CCCのコンビは最強過ぎる。
確かにトーハン*ゲオっていう組み合わせは似ているけれど、
ちょっと見劣りするのは否めないよな。
ただ、早い段階で確かに文教堂とゲオと、みたいな展開してたら
もうちょい面白かったかも??
そしてその後、結局こうなる。
文教堂GHDは昨年一二月にトーハンに対し、約七億円の第三者割当増資を実施したばかりであり、資金繰りの苦しさを如実に示している。今回の第三者割当によって、文教堂の大株主として、これまでのトーハン(五〇万株)、角川GHLD(三七万株)、辰巳出版(一六万株+二万株)に続き、講談社、小学館、文芸社、ゲオが加わったことになる。これに伴い、文教堂は九店での直営レンタルから撤退し、ゲオのFCに加盟し、全面委託する。だから、トーハン、ゲオ、文教堂の関係はこれを機に加速するだろう。
P.170
トーハン*セブン
トーハンが(株)金曜日の古川琢也著『セブンーイレブンの正体』の委託配本を拒否。セブンーイレブンの実質的創業者の鈴木敏文がトーハンの取締役副会長を務めているので、「その不利益になるような商品を積極的に販売することはできない」というのがトーハンの説明。
【日販のタブーがCCC=TSUTAYAであると同様に、トーハンのタブーがセブンーイレブンであることが図らずも証明されたということになろう】
P.132-P.133
図らずもっていうか、両社のつながりは深いだろう。
元々セブンの鈴木さんはトーハン出身だし。
というか出版業界が生んだ近年最大の実業家じゃないか??
その関係もあってトーハン帳合な訳だし、
鈴木氏には取締役副会長をやってもらってる訳だし、
そりゃ委託配本拒否するわな。
でも、まぁそんなことしても無駄っちゃ無駄で、今でもAmazonで簡単に手に入ります。
なので、とりあえず買ってみた。
- 作者: 古川琢也,金曜日取材班
- 出版社/メーカー: 金曜日
- 発売日: 2008/12
- メディア: 単行本
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図書館
大学図書館は一六〇〇館余あるわけだが、これらの専門書を共通して買い支えてくれているのは三〇館ほどではないかと考えられる。もちろん内容、定価、著者の知名度等もあるが、公共、大学図書館合わせて五〇冊売れれば、御の字ということになる。だがこれが現在の「図書館・アーカイブス」の実態なのだ。
P.144-P.145
なんとも情けない話じゃないか。
それでいてベストセラー作品を何十冊と複本するなんて馬鹿げてる。
出店規制って何だったんだ?
八〇年代になって、実質的に出店規制が外れ、またフランチャイズシステムの導入もあり、他業種であっても書店参入が可能になったからである。そのことによって、雑誌や書籍だけでなく、ビデオやCDのセルやレンタルを組み合わせた複合店が書店の主流になっていく。それに加え、前述したコンビニ、ブックオフ、公共図書館の増加です。だから七〇年代に比べ、九〇年代になると、雑誌の書籍の販売流通環境がまったく変わってしまった。
P.194
実質的な出店規制が外れ、っていうのはそれまで一体どんな出店規制があったのだろう??
フランチャイズシステムの導入もあり、他業種でも参入可能っていうのもよく意味がわからない。
なぜフランチャイズだと他業種OKなの??
書籍で儲かる本屋へ
だから今こそ書籍が独立した流通システムを構築し、書籍だけで出版社、取次、書店が利益を上げることができるようにしなければならないのです。それを実行しなければ、雑誌も書籍も双方が出口なしの状況へと追いやられてしまうでしょう。
P.224
雑誌やコミックス、文庫に比べ回転率が圧倒的に低い書籍で
儲けるってのは至難の業。
回転率低い分粗利を上げるしか無いのかもしれないが、
それには買取に基づく責任販売制への移行などが必要。
それでも大概の書店は在庫リスクのコントロール間違えて潰れると思う。
- 作者: 小田光雄
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2009/05
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