学びや思いつきを記録する、超要約ノート

国内MBA2013年入学、2015年無事卒業!読んだ本、記事、などの読書ノート。 忘れないために超要約整理。そんな記録。

企業価値を評価するってどういうこと?バリュエーションのすべてがつまった決定版。 マッキンゼー・アンド・カンパニー/企業価値評価 上巻

コンサルとか、投資銀行とか、その手の仕事をしている人には当たり前なのだろうけど、
そういう現場で働いていない人が学ぶにはピッタリな1冊。
具体的なバリュエーションの方法も解説しているので、
本格的に学びたいというニーズにも応えてくれるし、
そこまで本格的に知る必要は無いって人でも、
算出方法のところがちょっと細かいくらいで、
それ以外の章は物凄くわかりやすくまとまっているので
やっぱりこれを読むのが良いと思う。

まぁ、かなり大部の本なので、腰が引けるかもしれないけれど、
覚悟を決めてこつこつ読むべし。

企業価値評価 第5版 【上】

企業価値評価 第5版 【上】


企業価値の原則

価値創造の基本原則とは、「投資家から資本(株主資本および有利子負債)を調達し、資本コストを超えるリターンで将来キャッシュフローを生み出す場合に価値が創造される」というものだ。企業がより速く成長するほど、より多くの資本をより高い収益率で活用するほど、価値創造も大きくなる。
つまり、価値創造の大きさは、企業の成長率と、ROIC(投下資産利益率:Return On Invested Capital)が資本コストをどれだけ上回るかの組み合わせによって決まる。
(中略)
また、価値創造の基本原則から、企業価値不変の法則が導き出される。企業価値不変の法則とは「キャッシュフローが変わらなければ企業価値も変わらない」というものだ。たとえば、企業が増資して有利子負債を減らしたり、社債を発行して自社株買いを行っても、キャッシュフローは変わらない。このため、価値は創造されず、企業価値も変わらない。同様に、会計上の処理方法を変更しても、実際のキャッシュフローは変わらないため企業価値も変わらない。
P.4 - P.5

この大原則を頭に叩き込んでおけば良い。本質はここ。
WACCを上回るROICを出して成長していくことでキャッシュフローは増大する。
キャッシュフローの増大はすなわち企業価値の増大を意味する。
キャッシュフローに変化を与えない施策は、企業価値に何の変化ももたらさないと知るべし。
目先の株価に夢中になると、企業価値を毀損しかねないリスクがあることを肝に銘じるべし。


経営者として何を重視するのか

投資家が企業価値の創造を評価していることは証明済みだ。しかし企業には、市場の期待に関して一見正しそうな迷信に耳を傾けているところもある。たとえば、会計処理方法を変更したり、手の込んだ金融の仕組みを利用したり、EPS(1 株当たり利益:Earnings Per Share) を向上させることによって、企業価値を創造できると考えたケースがある。
また、企業買収にあたり最も頻繁に聞かれる質問を挙げてみよう。買収によって向こう1~2年間のEPSが希薄化されるかどうかだ。 EPSが重要視されるため、企業買収による価値創造を判断する際に、EPSが重要な指標になると考えられがちだ。しかし、第21章(下巻)で議論するとおり、企業買収によるEPSの増加が価値創造につながる証拠はない。 EPSの増減は価値創造と無関係だ。
なぜ、このような考えが広まっているのだろうか。筆者は、巨額の企業買収を計画した企業や、そのアドバイザーを務めたバンカーと、この点について議論する機会があった。バンカーによれば、「EPSが企業価値と無関係であることはわかっている。しかし、EPSを使った方が経営者と話しやすい」とのことだった。これに対し、経営者もまた、EPSが重要とは考えていないと述べた。経営者は、銀行がEPSを使うので、自分たちも使っているという。さらに投資家も、短期的なEPSの増減は重要でないと答えた。つまり、短期的なEPSが重要であるとはだれも思っていないにもかかわらず、だれもがEPSに注目しているのである。
P.14

EPSと企業価値は無関係。それなのに、EPSをKPIにする企業は多い。
結局その企業が何をKPIに置くかで色々な視点、判断軸が変わってくる。
企業価値に重きを置いた場合、キャッシュフローに影響を与えるドライバーは、
成長率とROICの2つ。逆に言うとそれ以外は企業価値への影響を直接持たない。
例えばEPSが企業価値に必ずしも結びつかない事例が、これ。

1997~2003 年には、主要企業のEPSの伸び率は、終始、年率11 ~16 %の問で推移した。一見すると素晴らしい。しかし、売上の増加といった価値創造の指標をみてみると様相は異なる。同時期、売上の伸び率は年2%にとどまっており、利益成長をもたらしたのはコスト削減だ。もちろん、コスト削減はよい取り組みであり、初めのうちは生産性向上をもたらす。しかし、コスト削減の機会が乏しくなるにつれて、企業はマーケティングや研究開発のコストまで削減し始めてしまう。2003年には、経営者の多くが、商品やマーケティングへの必要な投資を怠ってきており、経営再建の取り組みが必要だと認めた。そして株価は下落した。
P.15

とにかく目の前の短期的成長に目がくらまないようにしていくことが大切との印象。
とくに会計上の利益とキャッシュフローはまったくの別物。

企業会計上の利益と企業価値を混同している人は多い。そればかりか、企業会計上の利益を増やすことに必死になっている。確かに、企業会計上の利益と企業価値に関連はある。しかし、これらは異なるものであるし、会計上の利益を上げることに集中しすぎると、価値を破壊する場合もある。
P.19

会計は解釈の問題、キャッシュフローが現実、ってのはこういうこと。


ROICと成長率の関係

成長率が一定と仮定すると、ROICが高いほど企業価値は大きくなる。つまり、ROICは高ければ高いほど好ましいということになる。ところが、成長率については必ずしもそうではない。 ROICが高水準にあるときには、成長率が高いほど企業価値は高くなる。しかし、ROICが資本コストを下回ると、成長率が高いほど企業価値は低くなる。そして、ROICが資本コストと同じ場合には、成長率は企業価値に影響を与えない。
世間には、ROICが低くとも成長を目指すべきだという議論がある。成長することで、ROICが増加する、というのがその根拠である。しかしながら、筆者は、それは起業後問もない企業にしか当てはまらないと考える。成熟した企業でROICが低い場合には、ビジネスモデルに問題があるか、業界そのものに魅力的がない可能性が高い。
P.22 - P.23

ROICは高い方が好ましいのは真実。
しかし、成長率は高ければ高いほどキャッシュフローを生むわけではない。
ROICがWACCを上回っている場合のみ、成長率は高いほどキャッシュを生む。
WACCを下回っていた場合は、成長率は低い方がダメージは小さい。

経営に対する示唆は、ROICが高い企業は成長に専念し、ROICが低い企業はROICの向上に専念すべき、ということだ。もちろん、ROICを1%向上させることと、成長率を1%上げることの難しさは同じではない。それは、企業や業界によって大きく異なる。このため、ROICと成長率のどちらを優先させるかについては、分析が必要だ。
P.25

ここまで学んでしみじみ思うことは、日本の企業でROICをKPIにしている会社が
物凄く少ないということ。まぁ、意識してますって口では言えるかもしれないが、
欧米企業と比較して桁違いの差が出ている。
アメリカ中心の資本主義市場で戦っていくにはもう少し経営者の意識も変えないと駄目かも。


自社株買いと企業買収

自社株買いが企業価値を創造しているかどうかを判断するためには、手元キャッシュの他の使い方と比較すればよい。たとえば、ある企業が金利6%で100ドルを借り入れ、その100ドルによって発行済株式の10%を買い戻したとする。6ドルの利子負担が生じるが、法人税の節税効果を35%とすると、利益の減少は3.9ドルである。さらに、発行済株式数も10%減少するため、EPS (1株当たり利益:Earnings Per Share) は約5%増加する。
かくも簡単に、EPSが5%も増加するのは素晴らしいことのように聞こえる。 EPSが5%増加し、しかもPERが変わらないとすれば、この企業の株価は5%上昇することになる。しかし、企業価値不変の法則に従えば、キャッシュフローは増加しないため、このような都合のよい状況は起こらない。確かにEPSは5%増加するが、同時に負債も増加する。レバレッジが高くなった結果、株主が得るキャッシュフローのボラテイリテイも高まるため、株主はより高いリターンを求めることになる。この結果、PERが低下し、EPS の増加分は打ち消される。
ここで、自社株買いそれ自体によってはキャッシュフローが増加しないとしても、経営者がリターンの低い投資にキャッシュを使ってしまう可能性が減る、という議論があり得よう。もしもそれが正しいとすれば、経営者が賢明でない投資が抑制されて、キャッシュフローが増加する結果、価値が創造されよう。別の言い方をすれば、リターンの低い投資にキャッシュが使われるくらいなら、むしろ自社株買いにキャッシュを使った方が、価値創造の観点からは望ましいということだ。しかし、繰り返しになるが、自社株買いそれ自体は価値を創造しない。
P.31 - P.32

キャッシュフローは生み出していないというのは確か。
自社株買いは、自社の株価が割安だと判断しているシグナルとなり、
結果、株価が上がる、という説明も別の本ではされていたな。

統合される2社のキャッシュフローの総和が買収前より増加する場合のみ、企業買収によって価値創造が起きる、という点だけ述べておきたい。合併によりキャッシュフローが増加する要因としては、コスト削減、売上の伸びの増加、固定資産や運転資金のより効率的な活用等が考えられる。
P.33

企業買収に関しても、合併してそれぞれが単独の企業だったときよりも
キャッシュフローの総和が増えなければ、企業価値は向上しない。

マルチプル拡大の考え方が正しいとすると、合併予定の企業のPERのうち、高い方が合併後に適用されることになる。しかし、マルチプル拡大を実証的に示すようなデータは存在せず、企業買収を正当化する理屈としては完全に間違っている。マルチプル拡大が間違っていることを、経営者が知らないはずはない。ところが、企業買収を正当化する理屈として、マルチプル拡大が頻繁に用いられているのが実態だ。しかし、キャッシュフローが増加するという確かな根拠がない以上、株式市場は欺かれない。
P.34 - P.35

CDOリーマンショックの話

CDOの長所の1つは、CDOの仕組みを利用することによって、銀行が住宅ローンを貸惜対照表から切り離せる点だ。 CDOを通じて売却された住宅ローンを引き受けるために使われる自己資本が他に利用可能となり、新たな住宅ローンの貸し付けが可能となる。 CDOはこのような目的のために開発され、20年間、問題なく機能していた。
しかし、2005 ~2006 年に発行されたCDOは、まったく異質の欠陥品だった。
(中略)
経験豊富な投資家や銀行家ですら、新型CDOのリスクを正確に評価することができず、より多くの情報を入手できるはずの格付け機関に頼らざるを得なくなった。ところが、格付け機関は、CDOの売り手であり買い手でもある銀行から得られる多額の手数料を失うことをおそれ、CDOの多くに最も安全なAAAやAAの格付けを与えた。こうした複雑なプロセスを経て、リスクの高いサブプライムローンがAAAの証券に生まれ変わったわけだが、これは明らかに企業価値不変の法則に反していた。サブプライムローンのリスクやキャッシュフローに何ら変化が生じない以上、証券化によってCDO のリスクが下がるはずがない。
2006 年、サブプライムローンを借りていた住宅所有者が返済不能に陥ると、住宅価格は下落した。
投資家は、CDOやCMOのリスクが想定以上に高いことに気づき、先を争って売却し始めた。
結果として、CDOやCMOを売却することは不可能となった。ところが、CDOやCMOを保有する投資家や銀行は短期借り入れで資金調達しており、四半期ごとないし毎月(場合によっては毎日)、借り入れをリファイナンスする必要があった。短期資金の貸し手は、担保であるCDOやCMOの価格暴落を受け、リファイナンスに応じなかった。こうして、CDOを保有する銀行はCDOを投げ売りせざるを得なくなり、破綻するか、政府の救済を受けることとなった。
P.36 -P.37

まぁ、後から振り替えれば簡単な話なのだろうけれど、
コンサルの胡散臭さってこういう所にあるよね。
じゃあ、当時ちゃんとやっとけよ、っていう。
後付けで、したり顔で説明するけどさ、しょせん後付けの説明でしょっていう・・・。


投資判断

より一般化して述べると、失敗した場合に企業全体を危機に陥らせるようなプロジェクトは、実行すべきではない。この戒めに従えば、先ほど議論したプロジェクトAを実行すべきかどうかも判断可能である。失敗した場合の2000ドルの価値の喪失によって企業全体が危うくなりかねないのであれば、たとえ60 %の確率で成功するとしても、プロジェクトAを実行すべきではない。同じ理由により、もしも企業の事業継続に問題がないのであれば、リスクを避けるべきではない。たとえば、業績がよく、負債も少ない企業であれば、金利上昇リスクについて気にする必要はない。
P.42

常にリスクは存在している。ゆえに、失敗した時に会社が傾くような投資は避けるべき。
それはちょっとレバレッジが効きすぎの博打になってしまう。


企業価値の算出

企業価値=NOPLAT[1-(g/ROIC)] / WACC - g
この式がDCF法による企業価値評価の基礎となり、各変数は、エコノミック・プロフイット・アプローチにおいて重要な役割を果たす。これらの2つの企業価値評価の方式は数学的には同じであり、詳細については第6章で述べる。
(中略)
バリュー・ドライバー式は、「コーポレート・ファイナンスの真髄(The Tao of Corporate Finance)」を表している。この式によって、成長率、ROIC、資本コストといった経済的価値のキー・ドライバーが、企業価値に実際にどのように関係しているかを示している。企業価値評価に関するすべての要素がバリュー・ドライバー式に表れており、その他のすべては些細な事柄にすぎない。
しかし、実務上、バリュー・ドライバー式はあまり使われていない。その理由は、ROICや成長率を将来にわたり一定と仮定するなど、制約条件が強すぎるためである。キー・バリュー・ドライバーが変化していく可能性がある企業では、将来予測の際に、それを織り込むことのできる柔軟なモデルが必要になる。こうしたことから、実務ではこの算定式を用いないことが多いが、何か企業価値のドライバーであるかに着目するうえでは極めて有用である。
P.46

何が企業価値のドライバーなのかを整理するために理解した方がよい、ということ。

DCF法による企業価値評価のロジックを説明したわけだが、アナリストのレポートやインベストメント・バンカーのプレゼンでは、DCF法による企業価値よりも利益マルチプルの方が多く用いられている。その理由の1つとして、利益マルチプルの方が、投資家に対して簡潔に説明しやすいことが挙げられる。セル・サイド(証券会社等)の代表的なアナリストの1人によれば、企業価値の算出にはDCF法を用いるが、投資家に説明する際には(そこから計算される)マルチプルを使うとのことだ。たとえば、X社はY社よりも成長が速く、利益率が高く、より多くのキャッシュフローを生み出すため、Y社よりもマルチプルが高くなる、という説明をするのである。
P.47 - P.48

まぁ、実務の上では何事もわかりやすい方が好まれるってことだな。
でも、理屈を知っておくことは大切。
専門家にならなくても良いのだけど、専門家に騙されないだけの知識は必要ってことだな。


期待との際限なき戦い

株主に対するリターンが、経営者の業績指標として広く用いられた結果、逆方向のインセンティブが生まれている。株主の日切待との際限なき闘い」にさらされている経営者は、株主に対するリターンを手っ取り早く向上させそうなアイデアに飛びつく可能性があるのだ。その場合、短期的には株主に対するリターンを向上できるが、長期的な価値創造につながる手堅い投資をしない可能性がある。
P.50

企業価値=株価、といった理解が蔓延しているというか、結局経営者のインセンティブが
膨大なストックオプションという形で提供されるので、そりゃあ株価を上げようとするわな。
それも短期的に。そんなんでいいのかは微妙なところ。
で、近視眼的になると、長期的な視点での企業価値ってのは毀損されかねない。

秀でた経営者ですら、市場の期待を上回り続けることは非常に難しい。業績の期待が低い企業の経営者が、少なくとも短期間は、株主に対する高いリターンを容易に達成できる場合があるのも、同じ理由である。株主の期待を、競合と同程度まで引き上げるだけで、株主に対するリターンを上げることができるのだ。
株主の期待値がすでに高い企業にとって危険なのは、競合よりも株主に対するリターンを上げようとすることだ。非現実的な利益の伸びを追求したリスクの高い企業買収を行うなど、本来とるべきでない行動に出る可能性がある。
P.52

結局市場の期待を上回り続けることなんて不可能だと悟ることが大切。
じゃないと市場に振り回されてしまう。
でも、本当にそこが割り切れる人がどれだけいるだろうか、とも思う。
雇われ社長の難しさでもあるな。

株主に対するリターンの要因分解を行う目的は以下の2つである。第1に、経営者や取締役そして投資家は、株主に対するリターンが変化した原因を理解することにより、より正確に経営を評価できる。たとえば、ウォルマートの株主に対するリターンが、ターゲットより低くはあっても、高い期待に応えた業績を反映したものであることを知ることは重要だ。第2に、株主に対するリターンの要因分解を行うことにより、将来の目標を設定しやすくなる。たとえば、ターゲットの経営者が高い株主に対するリターンを達成し続けられるとは考えにくい。なぜならば、PERをウォルマート等よりもはるかに高い水準まで引き上げなければならないからだ。
(中略)
株主に対するリターンの要因分解により、業績変化が株主に対するリターンにどの程度影響を与えているのかを正確に理解するには、資本収益率を以下の4つに分解する必要がある。
1.成長によって創造された企業価値から、成長に必要な資本を差し引いた額:この値は、利益率の向上と資本生産性を反映し、一定期間における企業の業績の変化を示す
2.仮に1.によって示された成長がなかった場合の株主に対するリターン:対象期間の最初における、時価総額を反映する
3.企業業績に対する株主の期待の変化(PER等のマルチプルの変化によって測る)
4.金融レバレッジが株主に対するリターンに与える影響
P.55, P.57

ROICに関する実証分析

・ 1963~2008 年のROICの中央値は10%程度であり、全期間にわたってほぽ一定であった。しかし、ROICは企業によって大きな差があり、全体のROIC が5 ~20 %の範囲にあったのは、全体の半数であった。
・ROICの中央値は、業界によって異なるが、企業規模は関係なかった。特許やブランドカなどの持続可能な優位性に依存する産業(たとえば、製薬やパーソナル用品)では、ROICの中央値が高く(15~20%)、一方、製紙や運輸、電気・ガス・水道などのインフラ産業では、比較的ROICが低い(5 ~10%)傾向にあった。
・業界間、同一業界内でROICに大きなバラつきがあった。 ROICの中央値が高い業界もあるが、業界内の最高値と最低値の差は非常に大きい。業界のリターンの中央値が低くても、高いリターンを得ている企業(ウォルマート、インテルなど)もあれば、その逆も然りである。
・ROICはかなり安定して推移し、特に次章で扱う成長率と比べるとその傾向は顕著である。 ROICの中央値のランキングは時を経ても変わらず、構造変化などを受けて(たとえば、軍需産業における過去10年の統合など)大きく上下する業界はほんのわずかだ。個別企業のROICは、時間を経て徐々に中央値に回帰するが、大きく変わることはほとんどない。1995年にROICが20%超だった企業の半数は、10年後でも、少なくとも20%のROICを上げていた。
P.80

業種・業界によってROICの振れ幅が違う。
ある業界で一番低い企業のROICが、違う業界の最高値よりも高いなんて事が起こりうる。
とは言え、総じてアメリカの企業はROICが高く、投資効率を意識し、
キャッシュフローを最大化しようとする経営が行われていることがわかる。
この本には出てこないけど、別のデータで日本企業のROICと比べると
愕然とする差がそこにはある。
すべてがアメリカ型経営万歳、と言うつもりは無いけど、彼我の差に愕然、
これはヤバイんじゃ無いのかな。

まず、ROIC分析では、のれん代を含む場合と含まない場合の両方を考える。のれん代を含むROICは、買収時のプレミアムを考慮したうえで、いかに企業が効率的に価値を創造しているかを測るものである。一方、のれん代を含まないROICは、企業が本来もつ競争力を測るものである。 ROICの構成要素を深掘りして分析することで、業績を統合的に把握でき、また、どの要素の影響が大きいかを理解できる。
P.191

IBMのハードウェアからコンサルなどを含むサービス、ソフトウェアへの大転換は、
こういった企業価値創造型の経営としてもお手本のような事例。
計算してみるとROICがめちゃくちゃ高いが、それでも膨大なのれん代が含まれている。
こののれん代を外すともっととんでもないことに。
ちょっと化け物じみていて呆然とする。

ROIC = NOPLAT / 投下資産

ゆえに、ROICの向上には分子を増やすか、分母を減らすか、2つのアプローチがある。


株主価値

いずれも正確に計算すれば結果は同じだが、株主価値は計算しづらい。株主に帰属するキャッシュフローを適正な資本コストで割り引くのは困難だからである(この問題についての詳細は、本章後半のエクイティ・キャッシュフロー法の項を参照)。したがって、株主価値の評価には、企業価値を先に算出して有利子負債の価値を除く方法が適している。
P.117

株主価値は企業価値を算出して、そこから有利子負債を除くアプローチの方がやりやすい。
そこから導き出される理論株価と現実の株価の比較から、
自社が市場にどの程度評価されているかもわかる。


WACC

余剰現金と有利子負債は営業フリー・キャッシュフローに何ら影響を与えないため、事業価値への影響はない。有利子負債・資本構成は、WACCを通じてのみDCF法による事業価値評価に影響を及ぼす。したがってWACCの調整のみが、価値評価を変えるのである。
P.241

MM理論との関係は難しいところだけど、現実的には色々あってWACCは変動する。
で、WACCが変動すると割り引く率が変動するから、実は価値評価に影響を与えるということ。


PERではなく、企業価値、EBITAマルチプルを用いる理由

PERは広く一般に浸透しているものの、2つの大きな欠点がある。第1にPERは有利子負債・資本構成によって変わる。第2に、EBITAと異なり、純利益には事業以外の損益が含まれる。このため、企業価値への影響がないにもかかわらず、現金支出を伴わない償却や減損といった事業以外から発生する損失が計上されると、純利益が大幅に減少し、結果として表面上PERが高くなる。
本書は事業の価値に影響を与えるドライバー(ROIC、成長率、営業フリー・キャッシュフロー)に焦点を当てて、検討を加えている。これに対して、ROA総資産利益率:Return On Assets) やROE(株主資本利益率:Return On Equity) といった伝統的な経営指標は、事業そのものの業績に有利子負債・資本構成の影響も加味している。 PERも同様で、事業の業績に、有利子負債・資本構成や事業以外の収支も包含している。こうした点を勘案し、PERの代わりに企業価値に基づくマルチプル(つまり、有利子負債と株主価値の和に対するEBITAの比率)を活用すべきである。
P.363

ちゃんと明確な理由があるのよ、ってこと。


市場は最終的には実体を評価する

・経営者が、アナリストの期待EPSを達成したり、四半期ごとの収益の動きをスムーズにすることに、多大な労力を払う場合がある。しかし実際には、株式市場は収益の予測可能性や安定性といったことを重視しておらず、株価は長期の経済的ファンダメンタルズによって決まっている。
・株式市場は、異なる会計基準の裏にある経済的実体を完璧に見抜くことができる。したがって、経営者は、株価が新しい会計ルール(たとえば、オプションやのれん代の扱い)による影響を過度に気にするべきではない。こうしたルールの変更は企業の本質的な経済性には影響しないのである。
・投資家は形式よりも実体をみている。よって経営者は、自社株を分割するか、単一市場もしくは複数取引所に上場するか、主要市場の株価指数に名を連ねるか、といったことに気をもむ必要はない。
それらが株価に実体的な違いを生むことはなく、企業の本来価値に何ら影響するものではない。
P.405 - P.406

これまた、経営者として大切なものは何か、見誤っちゃ駄目だよってこと。
市場に良く思われたいが為のテクニックは本質的な話じゃない。
企業の価値はキャッシュフローなんだということ。
そしてキャッシュフローは成長率とROICで決まってくる。
どちらを向上させていくのか、どういった順番で、どういう方法で、
そのための戦略を考え実行していかなくてはいけない。

もう上巻だけで随分お腹一杯な感じでしたが、
学びの多い1冊だった。

企業価値評価 第5版 【上】

企業価値評価 第5版 【上】