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結構昔の本だけど、今に通じる部分も多いし、これからどうしていくべきなのかを考えるきっかけにもなる。国領二郎/オープン・アーキテクチャ戦略

国領さんは慶應の教授ですけど、プロフィール見たら電電公社で働いてたことあるのね。
実務家出身なんだと思ってちょっとびっくり。
ガチガチの学者っぽい雰囲気だったので・・・
この本の奥付の日付は1999年、今とは家庭のネット環境も全然違う。
でも日本で、インターネットがビジネスでどうこう言われだしたのはこの時期なのかもしれない。

オープン・アーキテクチャ戦略というのはこういうこと。

ネットワーク技術の特性を最大限活用し、その価値を最大化する「オープン・アーキテクチャ戦略」を提唱したい。これは、自社の持つ情報をより積極的に公開、発信し、他者の多様な情報と結合させることによって、情報価値の自己増殖現象を発生させ、その価値を自社の利益として取り込んでいく戦略のことである。
P.1

というわけで、結構先進的なことを言ってる。
そしてこのコンセプトは今でも大切なんじゃないか、と。


オープン・アーキテクチャの拡大要因

第一に、機械の情報処理・伝達能力が飛躍的に伸びているのに対して、人間の認知能力は限られており、認知能力やコミュニケーション能力、さらには(認知能力を必要とする)信頼などが希少資源となっていることだ。この希少な人間の認知能力資源を節約し、人間の生産性を最大化するための工夫が、知をカプセル化(モジュール化)してモジュール同士を結合させるオープン・アーキテクチャ戦略の優位性を生み出している。
第二に、情報の非対称性の「逆転」現象である。情報の非対称性とは取引主体間で持っている情報量に差がある状態のことで、従来は、売り手のほうが商品の品質や市場価格などについて多くの情報を持っているのに、買い手のほうはあまり持っていないといった状況が一般的であり、それが取引形態に影響を与えていた。ところがインターネットなどの手段によって、何か、どこで、いくらで売られているかといった情報がかなり広範に行き渡るようになるにつれて、消費者側も多くの情報量を持つようになってきた。一方、企業側では顧客情報が市場戦略上、重要な意味を持つようになっているが、消費者に関する情報は簡単には流通しないし、プライバシー保護の観点からは流通させるべきでもない。そこで、ネットワークを活用し、より消費者に近い立場で顧客情報を持つことが、競争優位に立つためのカギとなっている。結果として、チャネルは販売代理から購買代理を旨とするようになる。
第三は、情報が媒体(紙など)の制約から解放されたことである。すなわち、無視できるほど小さなコストで運んだり加工したりすることが可能となった。このことによって情報が本来持っていた性格が表面化する。最も重要なのは、情報は複製するコストが限りなくゼロに近いことである。固定費のかたまりで変動費がない。経済学者風に言えば、限界コストがゼロである。これが情報を結合させることによって生まれる連結の経済性と相まって、情報を公開し他者の情報と結合させる戦略を有利なものとしている。
P.23 - P.24

以前読んだ『ソーシャルな資本主義』でも重要な概念だった、
信頼っていうキーワードとかは既に出ている。


匿名経済から顕名経済へ。社会のあらゆる所で、大きな変化が起きている! 國領二郎/ソーシャルな資本主義 つながりの経営戦略 - 学びや思いつきを記録する、超要約ノート

無償デジタル財の提供という現象がオープンーアーキテクチヤ戦略の文脈で重要なのは、それが多くの主体が持つ情報を結合させる活動に大きく寄与するからだ。情報を有償で販売しなければいけないときには、複製を排し、限られた相手にしか情報提供できない。ところが情報に対して対価を取らなくてもよいとなれば、話は簡単だ。インターネット上で「コピー可」として提供すると、情報提供者の変動費はゼロで世界中に提供される。しかも伝播のスピードは速い。
P.72

まぁ、これは一般的なネットの特徴。


コンテンツ創作のパトロンモデル

広告収入を主たる収入源とする戦略をとったときには、競争戦略はより多くの視聴者に見てもらうこととなり、どれだけ良質の情報を無料で提供できるか、というところが焦点となる。
パトロンを得て無償提供するというのも、同じ範疇に入れてよいだろう。この形態の歴史は古い。中山信弘著作権に関連して、このことを次のように述べている。「たとえば、源氏物語の時代においては、創作者にはパトロンかおり、創作者は複製者(当時は手書きをした者)から対価を徴収する必要性がないのみならず、むしろ他人による複製を歓迎する傾向にあった」。複製されることで多くの人間に読まれ、作者としての名声が上がれば、より有力なパトロンからより多くの援助を受けられる、という構図である。一見まったく奇妙に見える行動が、裏には合理性があり、人間の歴史の中では初めての出来事ではないというところが示唆に富んでいる。
P.86

まぁ、アートとかそうだな。あとスポーツもあるな。
企業がパトロンになってオリンピック目指しますみたいなのもあるな。
絵画とかは複製で儲けるモデルではないからな、パトロンや画商との関係で成立するような気もする。
が、書籍系は複製で儲けるモデルがかなり強固に存在しているからなぁ。
まぁ、パトロンモデルは成功しても、自立できない点で作家のメリットが低すぎるのかもしれないな。


認知の限界が与える影響

存在する情報量が人間の認知能力を超えていることが、人間の行動や組織化の構造を決定しているという考え方である。インターネットは人間の認知能力をはるかに超える情報を提供し、そのアンバランスを拡大させている存在と言える。ハーバート・サイモンの理論では、認知限界を超えた情報の中で、人間は最善の手段ではなく、満足できる水準を設定し、それを実現する代替案は受け入れるという行動をとる。ボータル・サイトが自分の満足できる代替案への道案内を効率的に行ってくれるなら、もっと時間をかければもっと条件のよい話があるということがわかっていたとしても、その時間を惜しんでポータルを選ぶということである。
P.125

まぁ確かに最善の結果にたどり着けるとは思っていないかも。
時間をかけて探すと言っても、今やポータル・サイトというよりは検索エンジンだよな。
もはや検索エンジンに引っかからないコンテンツは、存在しないに等しい状況になってしまっているわけで。