南極大陸横断に挑むも流氷に阻まれ漂流、そこからの奇跡の生還。
極限状態過ぎて、この状況に置かれたら自分は間違いなく死ぬと思う。
南極大陸横断は失敗に終わったものの、それを上回る偉業なんじゃないか。
リーダーシップとは何か、といった視点でお勧めされることも多い本なのだが、
読んでみるとお勧めされる理由が良くわかる。
1914年12月、英国人探検家シャクルトンは、アムンゼンらによる南極点到達に続いて、南極大陸横断に挑戦した。しかし、船は途中で沈没。彼らは氷の海に取り残されてしまう。寒さ、食料不足、疲労そして病気…絶え間なく押し寄せる、さまざまな危機。救援も期待できない状況で、史上最悪の漂流は17ヶ月に及んだ。そして遂に、乗組員28名は奇跡的な生還を果たす―。その旅の全貌。
書誌データより
そしてこんなに素晴らしい本が絶版というのが非常にもったいない。
マーケットプレースであれば手に入るので、ぜひ。
リーダーはものすごく孤独。
ましてや極限状態においてすべての責任が一人の肩にかかってくる。
シャクルトン自身は、隊員だちと親しく交わりたいと思っていた。そのためにさまざまな努力もした。食事でも衣類でも、すべて他の隊員と同じ扱いにするよう強く主張していた。これみよがしに進んで下働きの仕事も引き受けた。たとえば雑用係、つまり鍋に入れたシチューを調理場から自分のテントまで運ぶ当番もこなした。また、時折調理人がボスの分だからという理由で食事の内容に差をつけたりすると、ものすごい勢いで怒った。だが、それも空しい努力だった。彼はやはり。“ボス”だった。彼のまわりには常に目に見えぬ障壁、よそよそしさがあって、他の隊員たちとは一線を画していた。計算してやっていることではない。ただ彼は、自分の地位とそれに伴う責任を一瞬たりとも忘れることはなかった。他の隊員たちは、何とか生活さえできれば、心身を休めたり、気を紛らしたりする機会はある。が、シャクルトンには、休息も逃げ道もなかった。責任はすべて彼にあり、隊員たちの誰を前にしても、シャクルトンはそのことを自覚せずにはいられなかった。
P.152
その重責につぶされず、やりとげたシャクルトンの強い意志には感銘を受けざるを得ない。
リーダーが崩れたら、メンバー間の対立も生まれただろうし、
個々人が機会主義的に動くことでチームが崩壊していたかもしれない。
でもそういった行動こそが生存確率を下げてしまうわけで・・・
その統率力たるや尋常ではない。
漂流後の状況が順調だったわけではない。
むしろ絶望的な状況。
一行はマーク・タイム・キャンプに座り込み、自分たちがどれほど力を結集させようとも、現在直面している状況はとうてい克服できるものではなく、自分たちがここではいかに微細な生き物であるかを、幻滅と畏怖の気持ちで受け入れるしかなかった。隊員たちの中にあったのは、屈辱感よりもむしろ、恐怖の念だった。
P.173
読んでるこちらがあきらめたくなる状況。
それでも隊員が必死に耐えられたのはリーダーのおかげなのだろう。
写真家の星野道夫が厳寒のアラスカでオーロラを撮るために
1ケ月の単独キャンプ生活をした時の座右の書がこれだったらしい。
確かにこの本には自分を奮い立たせるものがある。
- 作者: アルフレッドランシング,Alfred Lansing,山本光伸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/06
- メディア: 文庫
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