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出版業界のキーパーソン、紀伊国屋書店社長が語る! 高井昌史/本の力

紀伊国屋書店の社長、高井氏の本。

彼のキャリアや、今の出版業界に対する提言など。
まぁポジショントークの類は置いといて、
紀伊国屋の話や図書館業界の話は面白かった。

本の力

本の力

Amazon問題

最たる問題は、不公平課税です。後述するように、現行の法制度では、アマゾンなどが海外から提供する電子書籍、紙の洋書については、日本の消費税は適用されません。国内事業者は八%のハンデを背負った状態で、海外事業者と同じスタートラインに立たされているのです。
P.19

洋書も多く取り扱う紀伊国屋書店にとっては、確かに洋書の課税問題も大きな問題。
電子書籍の課税に関しては、見直されるらしい、と新文化に出ていたけれど・・・

ちなみにリアル書店を悩ませるこのAmazon、海外の対抗策として
以下のようなものが紹介されていたのだけど、これが結構面白い。

アマゾンの本拠地アメリカにおいても、アマゾンに対抗し、成果を上げている例もあります。
たとえば、世界第三位の規模を誇る出版社のアシェットは、アマゾンへの出荷数を制限しています。
以前、アメリカの紀伊國屋書店の店頭視察を行った際、新刊がかなりの冊数、平積みになっている光景を目にしました。
ほとんどがアマゾンに配本されてしまうはずなのに、なぜこれだけ店頭に置いてあるのか不思議に思い尋ねたところ、意外な答えが返ってきました。
「アマゾンでは品切れなので、いま書店でしか買えない」というのです。
P.80

消費者にとっては不便な話だけれど、
結局物が納品されなくなると売れないんだよね、通販なんて。
在庫の確保こそが肝で、売れ筋まわして貰えなくなったら干上がってしまう。
消費者の利便性を無視した施策ではあるのだけど、
なりふり構わ無ければここまではできるはずってのは確か。

で、実際最近、人気の新刊がすぐ売り切れになっていることが増えた気がする。
業界がそういう方向に仕向けたのかと思うかもしれないけど、
実際はアマゾンが機械的な仕入れしかしなくなったみたい。
まぁ、いちいちこれが売れそうだとか仕入れの調整なんかしてられるか、と
言うことなのだろうけど・・・
で、結果は売り切れ続出。
問題はそのときに消費者がどの程度書店へ向かうかだよなぁ。
必要に迫られているときは行くのだろうけど、
不要不急のものも多いからなぁ。
しかも書店に行ったところでそこに売ってるかどうかはわからず・・・
まぁ、なかなか厳しい業界だな。


紀伊国屋書店と図書館業務

図書館の新設が決まり、その収書を一括して紀伊國屋書店に任せていただいた場合、蔵書の選択はもちろん、購入された本にラベルを貼り、貸出カードを入れ、装備を全部整え、そのまま並べられる状態にまでして納品します。
つまり、紀伊國屋書店の担当者は図書の分類ができなければいけない。そのため、外商担当者は皆、図書分類法で定められた日本十進分類法を学びました。0が総記、100番台が哲学、200番台が歴史、300番台が社会科学……私もいまだ諳んじることができるほどです。
P.39-P.40

紀伊国屋書店は法人営業が強いことでも知られる書店。
結局、選書、分類、納品、すべてをワンストップでできる
この能力は相当模倣困難性が高い。
専門性の高いスタッフ教育の賜物。

そして、図書館には図書館の役割がある。
その意義をしっかりと考えて運営されていたのだな、というエピソードもよかった。

小林氏は、「市立図書館は住民サービスだから、万人向けの良書を置けばいい。しかし県立図書館は、研究者を始め、他市からもいろいろな方が勉強に来る場所だから、その期待に応えうる本を集めなければいけない。市立図書館と同じようなことをしていてはいけないのだ」との信念のもと、なんとも格調高い県立図書館をつくり上げたのです。
実際に開館後は、宇都宮大学教養部(仏語)の鍄井佑士先生という方も、「このような蔵書は宇都宮大学にもないし、北関東では、どこを探してもないだろう」と驚かれたとの話を聞きました。実際に足利図書館は、学者や研究者がわざわざ足を運ぶような、県の文化力を支えうる図書館となったわけです。当時は、館長も図書館員も、みな理想の図書館像があり、高い理念を掲げて本を集めていた。
それがよくわかるエピソードではないかと思います。
P.47

今は結局ベストセラーを数十冊購入し、利用者のニーズにこたえ、
貸し出し冊数を増やすことが、図書館の価値だと言うようなよくわからん状態。
ハリー・ポッター数十冊買うのが地域の図書館のあるべき姿だとは思えないんだよな。
で、行き着く先がTSUTAYAによる図書館運営。
そっちの路線だとしたら、貸与に対する利用料を図書館に請求するとか、
違う形を模索したほうが業界のためになると思う。

本の力

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