ビジネス書大好きMBAホルダーが教える私の学びシェア

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サービスの企画や立ち上げに関わる人には学びが多い一冊。 中村耕史/「少し先の未来」を予測する クックパッドのデータ分析力

筆者はクックパッドの膨大なデータを閲覧することができるサービス「たべみる」を
大幅にリニューアルし、データサービス事業を立ち上げた人物。

データ分析の手法などの話ではなく、
サービスの開発と立ち上げの紆余曲折が語られており、
非常に面白かった。

たまったデータをうまくマーケティングデータとして活用してもらうことは
できないかなぁ、と漠然と考えている人は多いと思うのだけど、
そのもやもやとした構想もこうやれば形になるのかと参考になった。

「少し先の未来」を予測する クックパッドのデータ分析力

「少し先の未来」を予測する クックパッドのデータ分析力


そもそも売り方があるのね

「たべみる」は2007年10月に、インテージの競合にあたるマクロミルというマーケティング会社を独占販売代理店としてサービスの提供が開始されていた。
P.26

これはリニューアル前のサービスの話だけど、販売はマクロミルなどの調査会社を
代理店として使うんだね。たしかに餅は餅屋だものね。
こういうサービス考えるときはこういうデータに需要ありますか?ってな話含めて
調査会社と話をするのはありなんだな。


データの質が根本的に違う

確かに、ただの「結果」データの蓄積ではない。
自分たちのデータの価値や特異性をしっかり理解しているのは
素晴らしいことだし、数時間後の未来が読めるデータってそうそうない。

これらの多くのデータが示すのは僕たちの行動の「結果」だ。
「僕は昨日、カルボナーラを食べた」。
「水曜日に本を2冊買った」。
「吉祥寺から電車に乗って恵比寿で降りた」など。
Suicaなど交通系ICカードの場合は、そのデータの特性上、
「昨日も今日も銀座駅で降りました」ということから、
「明日も銀座駅で降りるでしょう」と、推量することはできる。
でも、行動する人の「欲求」が見えるわけでぱない。
単純に、「昨日の延長線上に今日がある」というだけだ。
「たべみる」は違う。
クックパッドの検索データで見られるのは、数時間後の未来だ。
P.32

というわけで、データのリアルタイム性と、
ニーズの経年変化をわかりやすく把握できる、
というのをサービスの売りにする。

新しくデータサービスを導入するとなれば、期待されるのはこれまでわからなかったことがわかることだ。
たとえば、昨年に比べて今年はどうか、あるいは3年前と比べた今年は? といったニーズの変化だ。
だからリニューアルにあたってまず最初に決めたのが、経年変化を捉えやすくすることだった。
P.66

使い勝手と価格問題

使って貰わなければ始まらないので、価格問題は非常に重要。
しかも年間契約だったりするので、予算に盛り込んで貰わないといけない。
だからこそ、開発もここまでに見せられるものを用意しないと、といった制約があったり、
そういう凄く全うなビジネスとしての裏話が色々書いてあるのも勉強になった。

これまで使っていたデータサービスは継続してもらって、さらに「たべみる」を追加で導入してもらう。
ほかのデータとの併用も可能な価格帯のサービスメニューを用意することが適切だと判断した。
P.67

結果、作った価格プランが3つ。
こういう具体的な話は勉強になります。

「Price=価格」は、3つのプランを用意した。
「たべみる」の価値はこれまでにないものだという自信を持っていたし、より高い価格でサービスを提供できればそれだけ収益も増える。
とはいえ多くの企業に使ってもらうことが優先的に考えるべきことだ。
また、先の市場分析から「限られた調査予算内」で「追加購入」が可能な範囲という制約条件もあった。
このような場合、同じような目的で利用されているサービスよりも低価格にすべきというのがセオリーだ。
したがって、価格は以前からあった月額15万円のサービス機能を拡張したうえで残し、データをほぼリアルタイムで見られるようにした月額25万円のプラン、そしてサービス改変の成果を最大限享受できる月額35万円のプランの3つを用意した。
P.154 - P.155

データのクリーニング

この類義語をまとめるという機能はとても素晴らしい。
サイト解析ツールとかでも類義語でまとめる設定とか
できるようになったらいいのに、と常々思っている。
こういうのが自然とできていると、ものすごく使い勝手がよく感じるし、
支持を得られるのだろうなぁ。

「たべみる」では、検索窓に入力されたテキストデータを単に集計するのではなく、類義語は類義語としてまとめて集計を行なうようにしている。
この類義語辞書ぱクックパッドがレシピ検索サービスを提供する歴史の中で独自に充実させてきたものであり、表記ゆれや漢字とかなが交じったキーワードだけでなく、「作り置き」や「常備薬」といった意味の近さにも配慮したうえで、違和感のない結果を返すことができている。
P.93

許容範囲は10秒

集計から結果が返ってくるまでの時間、確かに10秒くらいでできたら凄い良いよね。
実際自分が仕事で使っている各種のツールだと、10秒で結果返ってくるのはあまりない。
今後外部向きのサービス考える時は参考にしたい。

ウェブ・ユーザービリテイ(ウェブの使いやすさの研究)の第一人者であるヤコブ・ニールセンが行なった調査によれば、一般的には、応答速度が0.1秒以内であれば瞬時に応答がめったと印象を持ち、1.0秒以内であれば瞬時ではないがユーザーの思考が途切れることなく許容され、処理を待っている印象を持つことはあまりないという。
「たべみる」は通常のウェブサービスとは少し異なるため、動作速度に対するユーザーの寛容度は比較的高いと考えられた。
実際、他社が提供するソーシャルメディア分析や販売データの分析ツールでは、速くても数秒、処理によっては数分の処理時間が必要となるものがほとんどだ。
前述の調査でも、10秒までなら「もっと速くならないか」という気持ちにはなるが注意力は続くとされている。
P.97 - P.98

各種指標の作り方。

筆者自身が元々調査会社出身と言うこともあり、
指標の設け方が、使う側にとってわかりやすくなっている。
使う側にいた経験がない人だと、なかなか難しいんだろうな。

1000回あたりの検索頻度にするもうひとつの理由は、利用企業の人にとってのわかりやすさだ。
もともと小売業でよく使われる指標に、PI値(レジ通過者1000人あたりの商品購入率)やTI値(1000食あたりの食卓登場頻度)、といった数字があった。
PI値(Purchase Index)は、「レジ通過客の1000人当たり何人がその商品を買ったのか?」という購買指数だ。
TI値(Table Index)とは昔から食卓日記調査で使用されており、あるメニューや材料の食卓登場頻度を表す。
これも1000食あたりの値となっている。
つまり、食に関連する指標は何%という値ではなく、1000 回あたりという考え方がすでに浸透していたのだ。
P.111

1000回当たりっていう考え方もマッチ度の話も、実に腑に落ちる。

ほかに「マッチ度」という指標も便利に使われている。
クックパッドでは単に「カレー」というメニュー名1語の検索だけでなく「ナス×カレー」のように材料との組み合わせ、もしくは「カレー×リメイク」という行動との組み合わせ検索も行なわれている。
マッチ度とは、指定した語-たとえば「カレー」-が検索されたとき、何%の割合で「なす」や「リメイク」といった語が組み合わされているのかを示す数字だ。
P.113

サービス作る側の人は、サービス内容がデータじゃなかったとしても、
この本から学ぶことは多いと思う。
サービス立ち上げの諸々をまとめて公開しちゃいましたって感じなので。

「少し先の未来」を予測する クックパッドのデータ分析力

「少し先の未来」を予測する クックパッドのデータ分析力