ECが発達し、必ずしも店舗に行かなくても物が手に入る時代。
リアル店舗の役割はどう変化し、どんな可能性があるのか。
豊富な事例や最新の数字をもとに小売の未来を考える本。
学びが多すぎてびっくりした。
名著だよ、これ。
- 作者: ダグ・スティーブンス,斎藤栄一郎
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2018/05/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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アリババすげーって話
2016年11月11日、独身の日に突入した最初の1時間だけで、アリババは何と50億ドル(約5500億円)を売り上げた。表記間違いではなく、確かに50億ドルである。しかもたったの60分間で。
P.40
これ流通額も凄いけど、Googleさん主催のセミナーでゲストに来ていたアリババの人が、
バナー制作のAI化の話をしてたんだよね、これがまたスケールがぶっ飛んでいて衝撃だった。
バナーのデザインとかを機械学習させて、AIによる自動バナー作成を実用化しているという話で、
圧倒的な人海戦術が取れそうな中国で、圧倒的に効率化が進められているという衝撃。
アプローチが正しすぎるし、日本どうすんだって思ったよね。
そしてもうこのECの勢いは止められない。
コミュニティとFacebook
Facebookでコミュニティは作れないよって話。
そこにコミュニティはない。「フェイスブック上にコミュニティを築く」という考え方があるようだが、フェイスブック上で息の長いコミュニティづくりに成功したブランドを未だかつて見たことがない。(中略)投稿にたくさんの「いいね!」がついたり、コメントやシェアの対象になったページがいくつもあったとしても、それはコミュニティではない。
P.74- P.75
直球のFacebook批判なのだけど、さもありなん、という気がする。
コミュニティは重要なキーワードで、ブランドとファンのコミュニティの育成は、
重要なテーマであり続けると思っているんだけど、
それを作りたいなら、その場所はFacebook上じゃないんだよってこと。
あと、もう行き過ぎたデジタル・マーケティングも問題だよね、と。
飲料大手のペプシコ社長、ブラッド・ジェイクマンは、「デジタル・マーケティング」は愚か、「広告」という言葉も忘れるべきだと言ってはばからない。現に、広告という考え方自体、人々が目にしたくないもので、世の中を「汚す」行為を前提としているとジェイクマンは言い切る。
P.79
買い物体験の肝は確実性と偶然性の絶妙なバランス
猿が簡単な作業をするとご褒美がもらえる、という実験で、もっともドーパミンが出たタイミングはどこか、という実験。
猿がご褒美を受け取ったときに脳内のドーパミンが最高レベルに達すると仮説を立てていた。ところが、実際はそうではないことがわかった。(中略)言い換えれば、脳内でドーパミンが放出されるのは、ご褒美そのものではなく、ご褒美への「期待」だったのである。
ここから話はさらに面白くなる。作業をした後にご褒美が毎回必ず与えられた場合、ドーパミンのレベルは平均的になった。ところが、ご褒美が与えられる確率が100%未満になったとたん、サルのドーパミンのレベルが上昇したのである。そしてご褒美が与えられる確率を50%にしたところドーパミンは最高レベルに達したのである。
P.160-P.161
小売業の自滅
消費者が小売を殺そうとしているのではない。小売業者が小売を殺し、消費者はその犯罪の瞬間に立ち会ってしまった無実の目撃者に過ぎない。小売業者が短絡的に売り場面積当たりの売上高に気を取られている限り、買い物客は幻滅させられ続け、小売業者は泥沼にはまっていくのである。
P.182
売上は皆あげたいのだけど、売上高自体をKPIにするとなんかおかしなことがたくさん起きてくる。
意図していようがいまいが、シナジーを生んでいる組み合わせが多々あると思っていて、
画一的なKPIで視野狭窄に陥ると全体最適が損なわれやすいってことをもっと自覚するべき。
売上高は、様々な要因の結果であって、後からついてくるものなんだよね。
売上高につながる要因を、要素を整理して、それらの指標をKPIにしたほうがなんぼかマシなものが出来上がる。
未来型の小売事例として、キッチンやバス、アウトドア用品などを実際に試してから購入できるパーチという店を紹介している。
パーチのスタッフには多種多様な経歴の持ち主が揃っている。製品知識よりも性格を重視している。ムラドによると、製品知識は後から勉強すれば得られるが、顧客を喜ばせる姿勢は不可欠だ。「きちんとした社風、しっかりとした舞台と体験があれば、小売は面白くなります。『売り場面積当たりの価値をどうやって計算するか』なんて話とはまるで違うんです。
P.201
未来のショッピング体験
▶︎身体的な関わり合いや五感に訴える様々な働きかけを通じて、魅力ある明確なブランド・ストーリーを伝える。
▶︎没入型の環境で実際に体を動かして製品を体験できる機会を提供する
▶︎客の話を聞きながら、製品、サービス、別の購入候補などを網羅するブランドのエコシステム全体に誘う入り口の役割を担うここで商品販売について全く触れられていない点に注意していただきたい。もちろん、将来の小売スペースがモノを売らないと言っているわけではない。だが、実店舗内での商品販売は優先事項でなくなるのだ。むしろ、あらゆる販売拠点や販売チャネルでの販売促進につながるような効果的な体験空間づくりこそ、店舗のゴールになる。
P.184
店舗はただの販売スペースではなくなる!
現にイェルプでは、パーチの評価スコアが各地にあるフォーシーズンズ・ホテルのスコアを上回っていると即座に付け加えるあたりから、同社の強豪に対する考え方が垣間見える。つまり、パーチにとって競合とはホームデポやローズといった大手ホームセンターではないのだ、真の競争相手は、分野に関係なく、市場で圧倒的な体験を売りにしている会社なのである。
P.202-P.203
そして、体験こそが価値を持つ。
デジタルとコマース
「そもそもみんな朝から晩まで携帯電話を使っているのが現実です。そんな人々が店に来た時だけ突然使うのをやめると思いますか?」
P.224
だから店舗の中でも携帯を使うことを前提に店舗での体験をより良いものにするためのアプリを用意してるんだって。セフォラの事例。
本当は、誰もデジタル体験など必要としていないのである。小売業者が取り組むべきは、独自性とインパクトと価値のある体験を作り出すことなのだ。そのなかには、支援や実現にデジタル技術が「利用できるものもありうる」というだけの話だ。小売業界の経営者は、デジタルの欠如を問題と騒ぎ立てるのではなく、自社が展開するほとんどの店舗には目を引くような体験が欠如していることを憂え、対策を講じるべきなのだ。
P.303
- 作者: ダグ・スティーブンス,斎藤栄一郎
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- 発売日: 2018/05/30
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