スティーブ・ジョブスの偉業の1つ、それがPIXARであることは間違いない。
Appleを追い出された失意の彼が、エンターテインメント業界で最高の製作会社のオーナーとなり、
『トイ・ストーリー』で世界的なヒットを飛ばす。
そんな夢のような物語も舞台裏はとても地味で堅実。
本書はジョブスに請われてPIXARのCFOとして招聘されたローレンス・レビーの回想録。
資金繰りから事業計画、IPOまでの物語なのだけど、
センセーショナルな物語というよりは、PIXARが淡々と着実に前に向かっていったことがわかる本。
PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話
- 作者: ローレンス・レビー,井口耕二
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2019/03/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
そもそも、レビーが来た時のPIXARは全く順風満帆な状況ではない。
まだ作品を世に出しておらず、収益源がないわけだからとにかく赤字。
その赤字をジョブスが自腹で補填し続けながら「トイ・ストーリー」を作っていた。
出来上がったらすごいことになる、という予感はありつつも、
それまでどうするんだ?完成するのか?
IPOするにはディズニーとの契約が不利すぎる、などなど課題は山積み。
ジョブスもAppleを追い出されたことからの警戒心か、
やるといっていたはずのストック・オプションを従業員に渡さず、
PIXARの古参の従業員との折り合いも悪い、みたいな状況。
こういう逆境の中でも1つ1つもつれた糸を解きほぐすように仕事しているこの人は、
本当にPIXAR成功の立役者というか、縁の下の力持ちなんだろうな、と思う。
そうやって少しずつ前に進んできていざ IPOの準備をという段になっても
ゴールマン・サックスにもモルガン・スタンレーにもIPOの感じ会社として動くことを断られる状況。
なかなか逆風だらけだけど、最終的には『トイ・ストーリー』のメガヒットが彼らの実力を世界に証明する。
そして、クリエーターを最大限尊重して経営していこうとする姿勢がすごい。
経営側はクリエイティブに口を出さない、というルールを作り、経営とクリエイティブをしっかり分ける。
これって最終的にお互いの信頼関係がなければ成り立たない話なんだけど、
それをちゃんとやってのけたレビーもジョブスも凄い。
ジョン・ラセターの才能はあるけれど、才能を潰す仕組みなんて簡単にできてしまうわけ。
むしろどんな企業にも才能は潜んでいて、会社の仕組みが
その才能の芽を摘み取っていたりするだけなんじゃないかな、と思う時がある。
レビーが描くジョブス像も、伝説的な傍若無人さは感じさせない穏やかな人物で
それはそれで新鮮なのでジョブスのファンも読んでみると面白いかも。
PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話
- 作者: ローレンス・レビー,井口耕二
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2019/03/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る