自分から歩み寄ってこない頑健さを感じる見るからにまじめそうな表紙。
渥美俊一は日本にチェーンストアという業態を根付かせることに尽力した人。
新しさもポップさも無いけれど、原理原則はこうなのである!と基本に立ち返らせてくれる。
そして、原理原則は古びないのね、ということもわかる。
若干堅苦しいけれど仕入れに関わる人は読んでみても損のない1冊。
- 作者: 渥美俊一
- 出版社/メーカー: 実務教育出版
- 発売日: 2010/03
- メディア: 単行本
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売上高も純益高も品揃えのあり方で決まってしまう!
- 商品の売価
- 商品の品質
- 商品の数量
- 商品の演出
- 商品の分類
- 店舗の面積
- 店舗の位置
(P.16)
上記7つのポイントが重要なのは誰でもわかる理屈。
であればなぜ、売上高が伸び悩んだとき、この点に関する反省が行われないのか?
販売促進とか広告とか、特売とか接客対応の強化とか、そういったものの対策ばかり
議論され、根本的なところに議論が及ばないことが多いよね、というお話。
トレンド、ホット、クラシック
新製品のことをトレンド商品といい、トレンド商品の中から少数の売れ筋ができ、売れはじめてマス・マーチャンダイジング化したのが、ホット商品である。トレンド商品が売れはじめたときには、いち早く取り上げねばならないが、売れないためにホット商品にならないトレンド商品も多いため、トレンド商品の扱いには十分な検討を要する。(P.64)
そしてホット商品が、常に売上が取れるように定番化したものをクラシック商品と言う。
あくまでもマス狙いであればトレンド品の扱いには気をつけろ、と。
あたりが見えたトレンド品だけ扱えばよいということ。
それをブランドイメージだのといって、安直に飛びついてはいかん。
不要な品は、不要だ!
商品は大別すると次の2種類がある!
- 知られている品、関心のある品、必要な品
- 知られていない品、関心のない品、不要な品
で、当然、不要な品は要らないから仕入れる必要はない!というお話。
これは当然なのに、あえて言っているのはなぜか?
それは現場を見ると徹底できていないから。
そしてさらに上記1番に当たる必要な品たちはさらに2つのグループに分けられる。
それが、
- 売る品
- 見せる品
ただ、この見せる品に対しての誤解が多い。
見せる品は、これから売上が向上していく品、そうなるように仕掛ける品という意味。
ところが、日本では見せる品がデッド・ストック品であったり、
あまりにも値が高い特殊な品を陳列したりしている。これは見せる品じゃない!
お客様にとって選びやすいかどうか、選ぶ楽しさと探す苦痛は違う
渥美さんの考える選びやすさとは、
目的の商品を探しはじめたときに、
あっという間に候補となる2、3商品が見つかること。
そしてその2、3商品がどれも最良の値打ち品に見えるので、
そのうちの1つに絞るのを思い惑うことを、比較購買の楽しさと表現する!
しかーし、実情は全然違う。
最初の2、3商品を選ぶことに時間がかかる。
探したり、待ったり、迷ったり・・・これは選ぶ楽しさではなく、探す苦痛だ!
客送別の分類
- 性別
- 世代
- 家庭内での立場(主婦、学生、など)
- 世帯あたり人数
- 住所
- ライフスタイル
- テイスト
- 所得
- 学歴
- 年齢
(P.119-120)
日本で重視されがちだけど、のめりこんではいけないのは、
所得、学歴、年齢の3項目!
それらは、確かにライフスタイルやテイストに影響を与える要素だが、
切り口として重視するべきなのは、ライフスタイルやテイストの方。
所得や学歴、年齢で切っても、その中は同一にもならないし、比例もしない。
特に年齢は細分化しすぎると意味なし。
ライフスタイルやテイストを重視すれば、そこには待ってくる年齢層は
10歳~20歳くらいの幅を持つことはざらにある。
原価と売価
仕入原価にコストや期待利益をのせて売価を作るという考え方は間違っている。
正当な売価を決めて、それに見合う仕入原価の商品を探す!無ければ作るのである!!
多様化なんて言葉を言い訳に使うな!
たとえば、「多様化」というコトバが、最近の消費傾向であるとか日本人独特の購買傾向であるとする考え方である。しかし昔も今も、外国も日本も、先進地でも後進地でも、売れ筋は常に品目数の10%もない。せいぜい2~5%にすぎない。それを多様化と一括して表現してしまうのは、少なくとも現場の技術問題としてみれば、まったくの怠慢によるものだ。
つまり、多様化とは売れ筋が何かを見つけていないときのごまかしコトバなのである。確かに、100人の人がいれば、好みは10通りはあるだろう。しかし決して100通りではないし、またチェーンストア志向の際の考え方は、そのうちの3~5通りで80人以上を満足させようというものだ。(P.244)
いやー、これは耳が痛い。マスをつかめる最大公約数がなんなのか、
それを常に考えないといけない。
これはマス向きの雑誌編集も同じこと。
ターゲットが狭いものを作る方が実は楽で、大部数のマス雑誌の企画作りのほうが
よっぽど難しいという話を新人時代にされたことを思い出した。
マス向け小売業の商品構成も同じなのだな、というお話。