名著と名高い『組織の経済学』に取り組むことにした。
私自身、現在の組織のあり方に対して、このままじゃいかん気がする、と思いながらも
じゃあどうすりゃ良いんだ、ということに対しては明確な答えを持っていない。
(何となくのイメージはあるけれど・・・)
という状況でこの本に出会えたことは非常にラッキー。
1章ずつ丁寧に、学びや気づきをまとめていこうと思う。
- 作者: ポール・ミルグロム,ジョン・ロバーツ,奥野正寛,伊藤秀史,今井晴雄,西村理,八木甫
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 1997/11
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 28回
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業績給制度
最もわかりやすい実力主義。
業績を数値化し、その評価がボーナスと連動。
個人にとっての最大のインセンティブとなる制度。
確かに個人のモチベーションは保ちやすいと言えるが、これが全体最適化というと弱点も多い。
投資銀行のソロモン・ブラザーズにおいて、この制度は部門間の協力を促進させはしなかった。
他の部署にとって有益な情報を得たとしても、その情報を共有する動きが生まれなかった。
そんなことをしても、自分たちには何のメリットもなかったからだ。
結局、会社全体の成長よりも、自分たちの部課の業績の最大化=個人のボーナスの最大化に走り、
他部署の利益を横取りするといった、会社の機能を麻痺させるような結果を引き起こしたりもした。
業績給制度がまったくないのも問題だ。
いま勤めている会社は完全年功序列で完全固定給与体系、評価、査定一切なし、という
共産主義的な会社なのだけど、さすがにそれじゃこれから先ダメだろ、と思う。
とはいえ、業績給だけだと、組織の全体最適は実現しない。
持ち株制度
前述した業績給の弱点に対処したのがこの制度。
個人のボーナスが決まるとその一定割合が控除され、ソロモンの株式の購入に当てられた。
この株は市場から調達されるので、企業の株式資本額は変わらない。
購入された株は信託管理され、5年間は引き出せない。
これによって、その年の個人の報酬が、5年後の会社の業績(=会社の株価)と連動する。
長期の展望と協力を促し、社員と株主の利害を一致させる。
ラチェット効果
与えられた目標に対して、今期、目標を上回る成果を上げたとする。
その結果、何が起きるか?
来期、さらに高い目標を与えられるという「報酬」しか生み出さない。
つめ車(ラチェット)が1つ上へ動くように、期待される業績が高い水準へ引き上げられて固定される。
ゆえに、この目標を上回る成果を上げるインセンティブは存在しない。
それどころか、この目標はギリギリ達成くらいが丁度良く、
合理的な説明が可能であれば、故意に失敗して次の目標を低くさせた方が楽だ、
というインセンティブが働く。
こういった逆効果を持ったインセンティブ・システムが
経済全体の生産性を低下させたのが共産主義。
情報を持つ者に権限を
成功例に共通するのは、情報を持つ者に意思決定の権限を委ねる傾向。
すぐれた決定を行うのに必要な情報を持つ者に権限を委譲することは、
すぐれた組織の設計にとって重要なことではあるが、その権限に基づいて意思決定をする者が、
組織の目的を共有していなければ、ほとんど役に立たない。
で、この問題を調整するのがインセンティブなのだ、と。
インセンティブは個人の目的と組織の目的を調整する手段なのだ。
経済学の言葉で言えば、権限委譲とインセンティブは補完的。
つまり、それぞれが、他方の価値を高めている。
のっけから、身につまされる話ばかりだ。
業績給制度も持ち株制度もない。つまり、インセンティブは何もない職場だ。
インセンティブが皆無ということはモチベーションを保てる方が不思議と考えた方が良い。
ゆえに、ただ高い目標を提示されているようにしか現場には認識されていない可能性が高い。
大多数のスタッフにとってはラチェット効果だけが機能している状況かもしれない。
まぁ、冷静に考えればそれは当たり前のこと。こんなに最低な組織も珍しい。
正直者が馬鹿を見る組織体制は、絶対にうまくいかない。
変革のタイミングを常に探っていきたい。
- 作者: ポール・ミルグロム,ジョン・ロバーツ,奥野正寛,伊藤秀史,今井晴雄,西村理,八木甫
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