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組織の目標は、すべて利潤の最大化とは限らない。ポール・ミルグロム ジョン・ロバーツ/組織の経済学 第2章:経済組織と効率性

2章からいきなり、話が小難しくなってきた気がする・・・
本論に入る前の準備段階、一般的にこういう考え方があるよ、ということを
つらつら解説されている感じだが、経済学の教科書にありがちな、
わざとわかりづらく言ってるんじゃないか、と思ってしまう独特の言い回しが懐かしい。


組織の経済学

組織の経済学


経済組織

経済組織とは、その中、もしくはそれを通じて、
個人や集団の経済的目的を達成するように人為的に創られた活動体。
下位の組織のそれぞれは上位の組織を通じて繋がっており、
いちばん上位の組織は経済全体である。
こう捉えることによって、組織が直面する問題の多くが、
経済全体に関わっていることを強調できる。


組織は契約の束

組織とは構成員相互の合意の集合と捉える。
契約を交わす能力があるので、契約条件の変更による
組織の改革や再設計、放棄の可能性もあり得る。
だが、単に法人としての契約能力をもって組織を定義することは、
組織の境界線を間違って規定してしまうので誤り。


組織の明確な境界線をどこに引くのか?

それが「介入からの自由と自主性」を持っているかどうか、という基準が有用。
ソニーは様々な分野の子会社を持つが、大元のソニー・コーポレーションが、
すべての子会社に介入する権限を持っている。
つまり、子会社それぞれが独立した法人であっても、
それらはすべてソニーという1つの組織を構成している。


取引と個人

経済学的組織論の基本的な分析単位=取引。
そしてその取引に参加するのは最終的には個人である。
意思決定を行い、行動するのは組織ではなく個人。
個人の行為が組織の行動と成果を決定する。

また、個人の欲望や目的のみが、倫理的な意義を持つ。
経済組織の有用性は、倫理とは関係ない。
人が意図した目的にいかに役立っているかという点で、人が判断するもの。
組織をどうするかを決定するのは個人なのだ。
ゆえに、個人がまず何よりも基本となる。


効率的とはどういうことか

人々は、効用関数という生活状態に関する評価尺度を持っており、
この効用の最大化こそが人々の経済的目標であると仮定する。
ところが、希少性という問題のため、効用の最大化は、
1人の効用を高めるには他の人の効用を下げざるを得ない状況=トレード・オフを起こす。
以上をふまえ、効率的であるというのは、下記の状態を意味する。

関係するすべての個人の目標と選好を基礎として、
すべての個人がもっと望ましいと思う選択肢が他に存在しない状況

全員がこれ以上望ましい選択はあり得ない、とする究極のトレード・オフが、
経済で言う所の効率的な状態。

ただし、気をつけなくてはいけないのは、誰にとって効率的なのかということ。
「全員」ってだれ?という部分が変化すれば、結論は変わることがある。
ある集団にとって効率的な判断は、もっと大きな集団にとって非効率でありうる、ということ。

では、組織が効率的である、とはどういうことか??


組織の効率性

組織はそれが生み出す結果に基づいて判断されると仮定する。
とすると、簡単な評価方法は結果ごとの比較を行うことで、どちらが効率的か判断する。
しかし組織について結果ごとに比較を行うことは、
前提としてあらゆる考えられる状況においてもっと効率の良い別の組織が存在しなくてはならない。
もっと効率の良い別組織が存在しないなら、その組織が効率的ということになり、
効率性という概念自体が弱くなってしまう。
なので、本書はざまざまな状況を通じて、誰もが平均的に望ましいとする
別の組織が存在する場合に、その組織は非効率であると定義することで、
効率性による判断を緻密なものにしている。

また、十分に話し合うことができ、決定を実行することができるならば、
話し合いに参加した人達にとっては経済活動の結果は効率的になる。
これを効率性原理という。

この効率性原理に基づいて考えれば、効率とは規範や目標ではなく、
説明力や予言力を持った事実解明的な概念になりうる。


コーディネーションと動機づけ

生産活動における専門化と分業は、生産量を増やすというメリットがある。
しかしこの専門化した取引を必要とする生産者は、分業における個々の工程を
同じ目標に向けて協力させるコーディネーションをしなければならない。
また、その上で個々の工程を担当する者たちには、
自分たちの担当する部分をしっかりとこなす適切な誘因、すなわち動機づけが必要になる。

そしてコーディネーションを最適化するには、情報が必要になる。
しかしこの情報は局所的に分散して存在しており、そのすべてを把握できる者はいない。
解決のアプローチは、情報を中央集権的に集めて判断していくか、
意思決定のかなりの部分を必要な情報を持っている者に渡すという分権化したシステムを作るか、の2つ。


コーディネーションを実現するために

経済活動のコーディネートは市場を徹底的に利用することで実現できる。
市場のメカニズムは最低限の情報での判断を可能にしてくれる。
なぜなら価格が必要な関連情報をすべて要約してくれるから。
現代のいくつかの企業においては、製品は1つの事業部から他の事業部へと移転価格で売買される。
各事業部はその業績を持って評価される。
つまり市場のメカニズムを企業内に持ち込んでいるということ。


取引費用分析

市場がそれだけで十分な働きをするなら、企業なんて要らないのでは?
実際そうなってないのはなぜなのか?
こう言った基本的な問題を最初に提起したのがロナルド・コース。
コースによれば、取引には費用がかかる。
しかもその取引費用は、どのような取引かによって異なる。
なので、この取引費用をもっとも節約できる組織様式が採用されていく。
そして実際には、取引費用とはコーディネーションと動機づけに必要な費用。

調整費用

コーディネーションに関わる費用とは何か?
それは、価格と取引の詳細を決定し、潜在的な売り手と買い手を出会わせ、
現実に取引を実行させるための費用。
例えば、証券取引所の運営にかかる費用はコーディネーションのための費用だ。
分散する情報を集め、階層組織の上部に伝達し、それらの情報を使って計画を決定したら、
その決定を今度は実施責任者に伝えなくてはいけない。
その一連の流れを実現するための直接費用であり、
実際に行われた際の時間的な費用も含まれる。
そこまでやっても情報がすべて十分かつ正確とは言えず、
調整不良が生じるが、それも取引費用に含まれる。

動機づけ費用

動機づけに関わる費用は2つ。
1つが「情報の不完備と非対称に関する費用」だ。
取引の当事者が、その取引を決定するための情報を十分に持っていない。
本来、双方ともに利益となる取引だったとしても、
情報を待たないが故に、だまされることを恐れ成立しないかもしれない。
もう1つが「不完全なコミットメント」による費用。
約束が果たされるかはわからない、ということ。
それによって利益を生む取引が行われずに終わることがあり得る。


取引の5つの特性

資産の特殊性

パン屋でパンを買う時は売手も買手も双方ともに投資はしてない。
パン屋はかまどに投資するかもしれないが、それは多数の客にパンを売るため。
でもある会社がボーイング社の部品製造を請け負ったらどうなるか?
ボーイングのこの案件のためだけに設備投資が必要になるだろう。
この場合は、一定以上の発注が確定していないと投資には踏み切れない。
こう言った特殊的投資を必要とする取引には、投資者を保護する契約や慣行も必要。

頻度と継続期間

取引には一度きりの物もあれば、長期間に渡って継続的な取引もある。
長期間同じ取引が繰り返される場合、双方ともにこの取引を効率化しようとするだろう。
結果、取引費用を大幅に削減することができることがある。

不確実性と複雑性

契約時に不確実性と複雑性があるパターン。
例えば開発の契約。開発時点で完成するかわからないという不確実性がある。
そのため、契約時にそうなった際のことも考慮に入れて契約しないといけない。
飛行機メーカーとサプライヤーの関係においても考量する必要があるのはこれ。
特殊的投資に対する不確実性のリスクを低減しない限り取引はできない。
必然的に、複雑性を増すことになる。

業績測定の難しさ

取引の履行内容を測定できないと、インセンティブも与えられない。
それを可能にすることで、責任を明確にし、努力を引き出し、よりよい結果を得られる。
例えば何人もの運転手が運転したタクシーが壊れても、乱暴な運転が原因かはわからない。
測定できないことは管理できないのだ。
この場合、1人1台固定にすれば、個人ごとの差が測定できるようになる。

他の取引との連結性

取引には独立した取引と連結した取引がある。
取引が別の取引に依存しているケースでは、
全体がしっかりとコーディネートされないと大変な損失に繋がる。
部品が納期に届かなくては、製品は組み立てられない、ということ。


資産効果

実際に行われる選択は、意思決定者の資産額に依存する。
貧しい人は、豊かな人なら何ともないリスクを避けようとするだろう。
こういった資産額の変化に基づく選択の変化は、資産効果と呼ばれる。
一般的に、個人の意思決定においては、資産効果が存在することが多いが、
組織の分析においては、資産効果が無視しうるほどに小さいと仮定することは妥当な場合が多い。
そして、資産効果がない場合、資源配分が効率的になるのは、
当事者たちの価値が最大化される場合に限られる。
よって、資産効果がなければ、当事者たちの経済活動は価値を最大化するように決定される。
コースの定理


組織の目的

組織の目的は利潤の最大化と言われるが、本当にそうか?
本書の多くの部分では、組織は実現しようとする目標を持たない、と考える。
組織の意思決定や行動は、メンバーの行動を適切にコントロールするための
インセンティブ・システムに反応した利己的な人々の戦略的な相互作用の結果、あるいは
関係者の利害を調整しようとする試みの結果のいずれか。
価値最大化原理が適用できる場合のみ、組織の目的は利潤の追求になりうる。

利潤の最大化

企業の目的は利潤の最大化とよく言われるが、全然そんなことない。
企業の所有者が、その企業の顧客、あるいは原材料の提供者だった場合、
その企業の目的が利潤の最大化では困る。
また、不確実かつ長期にわたる投資も、遠い未来の収益を
どれだけ重視するのかは人それぞれなので、見解が分かれる。
他にも、相互保険会社や生協など、利潤の最大化が目的ではない組織は多い。

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