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価格は人々を動機づける! ポール・ミルグロム ジョン・ロバーツ/組織の経済学 第3章:コーディネーションと動機づけにおける価格の役割

価格とコーディネーション

3章では、市場が高度なコーディネーションをどのように
実現しているのかを説明する中心的経済モデル「新古典派市場モデル」を説明する。
経済は、消費者であり、資源の供給者である個人と生産単位(企業)によって構成されている。
そして資源配分の問題は複雑であり、誰であれ
1人では効率的な資源配分を決めることはできない。
新古典派の経済組織の問題とは、人々が首尾一貫した決定を行い、
効率的な計画のそれぞれの担当部分を推考する誘因を与えるように、
必要な情報を提供することである。
新古典派モデルは、適切に決定された価格体系によって
この組織の問題が解決することを証明する。
そして、ある条件の下で価格は、利用可能な資源を
効率的に使用するために必要なすべての追加的情報を提供する。

新古典派の理論部分の説明は、相変わらずややこしく、わかりづらいけれど、
後半戦になって事業部制と移転価格など組織の話になってくると俄然面白い。

組織の経済学

組織の経済学

厚生経済学の基本定理

  1. 生産者は自らの利潤を最大化する
  2. 消費者は自らの効用を最大化する
  3. 各財の需要と供給を一致させるよう価格が決まる

上記3つの条件を満たす場合、結果として起こる財の配分は効率的になる。
つまり、生産者と消費者が効率的な選択を行うためには、価格という情報だけで十分。
コーディネーションはそれだけで達成される。
また、各消費者と企業は、自らの利益を追求すればよい。
誰もそれを制限されることなく、財は効率的に配分される。
これが、厚生経済学の基本定理。


私有制経済の新古典派モデル

個別消費者

消費者が持っている様々な財のリストをEとする。
このリストEはこの消費者の資源賦存量という。
また、市場で売りたいもののリストをSとする。
買いたいものをBとし、それぞれの価格がPだとする。
また、ある企業の株を持っている割合をF、配当がDだと配当金による所得がFDだけ増える。
となると、以下の式が成り立つ。

PB<= PS + FD

要するに自分が売れるものと配当による収益よりも安ければ買える。
そして、基本定理においては、消費者は常に欲しいものが無くならないと仮定される。
つまり、効用を最大化する消費者は常に所得のすべてを何かに支出する!

PB= PS + FD

という式が成立する。


企業

企業あるいは生産者の場合は、生産されるもののリストがO、
生産のために投入されるリストがI、とする。
生産物の価格Pが所与とすると、産出物からの企業の総所得はPOとなる。
他方、労働者に払う賃金などの支出、すなわち投入費用はPIである。
よって、企業は利潤(PO - PI)を最大化する生産計画(T)を選択する。
企業が支払う配当Dは利潤(PO - PI)と等しいとされる。


価格は人々を動機づける

新古典派モデルにおける価格は、関係者たちに何をなすべきかについての情報を提供する。
消費者と生産者は、状況変化への効率的な対応を決定するのに
価格が変化した理由を知る必要がない。
また、競争均衡価格が与えられると、消費者は最善と考えるものだけを購入し、
企業はもっとも利潤の高い品だけを生産する。
人々の目的がバラバラでも、実現される行動には一貫性があり、
いかなる資源も無駄にされない。価格は人々を動機づける!


新古典派モデルと組織論

新古典派モデルが現代経済のすべてを説明できていると考える人は少ない。
むしろ、このモデルは、市場と価格が経済を効率的な結果に
導くために必要な条件を明らかにする試み、と解釈するべき。
歴史的に見ると、企業は市場が非効率な結果を生み出すことへの対策として組織されたケースが多い。
こういった市場とは別の仕組みを説明するためには、市場の失敗を検討しなくてはならない。


市場の失敗

規模に関する収穫逓増

ある種の財にとって、競争均衡が存在しない場合がある。
生産プロセスにかなりの規模の経済が存在する場合だ。

  • 機械の購入に1000
  • 生産量の限界は200
  • 単位当たりの労働と原料費は5

財の生産に対するコストが上記の場合、
1単位生産した時のコストは1005
200単位生産したときのコストは10
になる。生産量に応じて規模の経済が働いているケースと言える。

この時、消費者は100単位までは単位あたり16を支払うがそれ以上は必要ない。
企業は価格が10を越えれば、200単位生産する。それ以下だと生産しない。

でもこの2つの需要と供給の曲線は交わらない。(均衡点を持たない)

ちなみにこのケースには価値最大化という解がある。
100生産し、消費者に手渡せば、1500のコストで1600の価値が生める。
これ以外のケースはこれ以下の価値しか生まない。
ただ、問題は価格情報だけでは企業にとって100の生産を行うインセンティブを与えられないこと。
価格情報に加え、100買うよ、という需要の情報があって初めて判断できる。
企業には価格情報に加えて、数量情報も必要というお話。


外部性

外部性とは、ある経済主体の活動が、価格システムを通じないで、
他の主体に及ぼすプラス、あるいはマイナスの効果のこと。
工場のばい煙は近隣住民の環境を悪化させるかもしれないし、
雇用が生まれ、地価が上昇するかもしれない。
外部性による非効率が生じるのは、意思決定主体がすべての費用と便益を計算に入れないために起きる。
他の人々に帰属する費用と便益を考慮に入れないってこと。


市場の欠落

外部性の問題は市場の欠落とも言える。
外部性は個々人が購入あるいは販売したいと思っている財(負の財も含む)に対応する。
が、それらの財は競争市場で取引されないので価格がなく、市場システムは配分を決定できない。


サーチ、マッチング、コーディネーションの問題

新古典派モデルでは誰もが価格がいくらで、どこで、いつ、財を売買できるかわかっていると仮定される。
が、現実的には売手と買手はお互いの存在すら知らないので、探索活動(サーチ)を行わなければいけない。
サーチや情報交換は高価なので、マッチングするまで続けない。


組織内部での価格システムの利用

多くの組織では、その内部でコーディネーションや動機づけのための手段として価格システムを利用している。
奥の事業部制企業では、関連情報を多く持ち、事業活動を実際に行っている部門に
意思決定の責任を委ねることで、権限の分散をはかってきた。
権限を分散するときは、重要な意思決定をする人が、適切なインセンティブを持ち、
お互いに整合的で首尾一貫した計画が実現されることを保証することがきわめて重要になる。


事業部制企業における移転価格

事業部にとって、事業部間取引の評価に使われる移転価格は決定的に重要。
移転取引量が一定であれば、移転価格は会社全体の利潤には影響を与えないが、
各事業部の業績を左右する。
移転価格が市場よりも高ければ、調達側は市場から調達したいと考えるだろうし、
移転価格が市場よりも低ければ、供給側は市場に供給したいと考える。
企業全体にとって利潤を生む限界的な取引が事業部には利潤を生まない可能性がある。
これは企業の意思決定や、事業の評価を謝らせる危険をはらんでいる。


移転価格と市場価格

前述した問題を解決できるパターンとして、市場価格=移転価格にすればいいという考え方がある。
ただ、それは外部に完全競争的な市場が存在することが前提となる。
言うまでもなく、そういった条件が揃うことは滅多にない。
そもそも外部に完全競争的な市場が存在するなら、企業は自社供給のために垂直統合する理由がない。
そういった市場がないから、事業部が形成され、企業内部での取引=移転価格が必要になる。
と、同時にこの移転価格の決定が非常に困難になる。

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