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なんか、意外と終身雇用で年功序列ってよくできてるんじゃないの?と思ってきた。 ポール・ミルグロム ジョン・ロバーツ/組織の経済学 第11章:内部労働市場、職務配置、昇進

先進諸国ではほとんどの人が雇用主と長期の雇用関係にある。
現在の企業で昇進を重ねていくことを、労使双方が望んでいる。
そのような雇用関係の場合、企業の内部に労働市場があると考えられる。

組織の経済学

組織の経済学

内部労働市場

内部労働市場は雇用主と長期雇用の従業員とからなる。
ひとつの企業内に異なるカテゴリーの労働者を含む
複数の内部労働市場ができることもある。

必ずしも企業の全従業員が内部労働市場に属しているわけではなく、
経済を1次部門と2次部門に分けて考える。
内部労働市場は1次部門にはほぼすべて当てはまるが、2次部門には存在しない。
2次部門は昇進を約束しない短期的な雇用関係が特徴で、
賃金は完全に市場の力によって決定される。
肉体労働などのブルーカラーや特別な訓練を要さない
パートタイム労働者などが2次部門の対象となる。
一方、たいていのホワイトカラー、技術、経営、
専門分野に関する職は1次部門に属する。

たいていの人が2次部門よりも1次部門を選好するので、
労働市場の様々な部門に人を割り振ることは、
正義や公平の問題として扱われることがある。
ところが、さまざまな部門が要求することには大きな違いがあり、
それぞれに対し誰もが適格者なわけではない。
よって公平性の問題であると同時に効率性の問題でもある。
人々の配分が、効率性を反映かつ促進するのか、
公平性を根拠に効率性を損なうのか、という点に現実的な問題がある。


内部労働市場における給与

内部労働市場の典型的な特徴の1つは、
賃金の決定を外部労働市場と切り離している点にある。

この点に関して、内部労働市場では賃金は個人よりも仕事に付与されると言われる。
従業員の賃金は個々の生産性や機会費用よりも、
その人に割り当てられる仕事によって決まる。


内部労働市場の理論的根拠

内部労働市場における長期的雇用関係の効率性には
少なくとも3つの明確な要因が寄与している。

・企業特殊的人的資本への投資が有利になる
・効率性賃金契約の効果が強まる
・長期的目標への従業員の貢献を評価する能力が高まる

企業特殊的人的資本はその企業でのみ役に立つ能力であるから、
この能力を有した労働者はどこよりも今の企業で働くことが効率的となる。
さらに長期的雇用はこの能力の形成を促進する。

また、人々が長期的な視野に立つ場合、効率性賃金、評判メカニズム、
暗黙の不完備な契約などの効果は高まる。
そしてそのような長期的視野は長期的雇用で促進される。

また、雇用関係が短い人は、長期的業績を測定できず。
長期的なインセンティブを提供することは難しい。
インセンティブを短期的なものしてしまうと、
長期をないがしろにして目先の業績目標に力を注がせることになる。
結局、長期的業績を測定できないことは、
あらゆる種類のインセンティブを弱めることにつながる。


昇進政策

昇進は組織の中で2つの役割を果たしている。

・人々を組織の成果と成功に最も貢献しうる役職に割り当てるのに役立つ。
・インセンティブと褒章としての役割を果たす。

ヒエラルキー上層の仕事は、より高い水準の知識と技能を要求するとともに、
成功することは大きな意義を持つが、失敗はより高くつく。
なので、誰をその役職に就けるかは非常に重要な問題になる。
しばらく働いた後であれば、その人をどの仕事に割り当てるのが
適しているかを判断することができるが、
採用したばかりの人を直ちに判断するのは難しい。
結果、ヒエラルキー下位で働いている人を昇進させることは、効率的なメカニズムとなる。
また別の場合には、上位の仕事に必要な資質は組織内での経験を通じてのみ獲得できる。
この場合も昇進が効率的なメカニズムとなる。


インセンティブと褒章としての昇進

昇進がインセンティブの手段として重要な役割を演じていることは明らか。
だが、インセンティブと褒章の手段としての昇進と、
仕事というその役割とが、重大な摩擦を引き起こすこともある。
現在の仕事の褒章としての昇進は、
組織内の人間は1回余分に昇進しすぎるというピーターの法則につながる。
不適任なレベルまで昇進し、残りのキャリアをそこで過ごす、ということ。


トーナメント

労働者は相対的な成績に基づいてランクづけされ、
勝者が昇進し、敗者は昇進の対象から外される。
このシステムはトーナメントとなる。
トーナメントにおいて必要な業績情報は、相対的な序数的情報であり、
絶対的な奇数的情報ではない。

多くの仕事を迅速かつ正確に行うことを求める人に仕えている秘書Aと
電話応対だけしか求めていない人に仕えている秘書Bのどちらを昇進させるべきかは
簡単に判断できるが、業績給を求めようとして、
二人の仕事の差を数値化しようとすると困難な作業になる。

外部との競争の激しい、赤字部門を立て直した取締役Aと、
安定的な部門で何もしなくても黒字を出し続けてきた部門の取締役B、
出世させるべきはAだろうが、AとBに異なる金銭インセンティブを
伴う業績に基づいた契約を結ぶことはきっと難しい。

つまり、あるグループの中でどの人が優秀かを相対的に選別することはできるが、
絶対評価を下すことは非常に難しいのだ。


仕事に付与される給与

業績に基づいた昇進政策は、昇進と同時に昇給を必要とする。
このことはヒエラルキーの中で給与が高まっていく理由を説明するが、
なぜもっと個人の業績と給与が連動しないのかを説明するものではない。

給与が仕事に付与される理由のひとつは、
業績や生産性の正確な測定がきわめて難しく、
十分詳しく記述することさえも難しい点にある。
こうした状況で仕事の業績に応じた給与を支払うことは、
実際には場当たり的な支払い方式と変わらない。

各従業員と個別に給与交渉を行う方法も考えられる。
しかしこれは、交渉のコストが極めて高く、非効率なものになりかねない。
交渉者に企業の利益の極めて優れた代表者となるようなインセンティブがないと、
さまざまな問題が起こってくる。
しかし、適切なインセンティブを与えるとしても、いったい誰に与えるのが最適なのか。
どうやって見抜けるのだろうか??

さらなる可能性としては、個々の管理者に給与の決定責任を負わせる方法だ。
現場の管理者のほうが、部下の能力や貢献度に関する情報を多く得やすい。
管理者に適切なインセンティブを与えられれば、この方式はうまくいく。
が、管理者の仕事ぶり自体が測定困難な場合は、
そのような動機づけを達成することは難しい。
管理者に損益に関する責任がなければ、過度に気前よく振る舞うかもしれない。
業績の最も悪い者以外の誰かに低い評価を与えることは
彼らにとって極めて困難であり、不愉快な作業である。
結局たいていの従業員の評価が高くなってしまい、評価制度そのものが意味をなさない。
一方で、部下の評価を低くつけたとしても、今度は部下の成長自体が自分の評価指標であった場合、
自分で自分の評価を貶めることにもなりかねない。
さらに部下の昇進や配置換えが管理者の評価指標に入っていないと、
管理者は本当に有能な部下を隠したいと思うだろう。

給与水準を決定する自由裁量を与えることを避けるもう1つの理由はインフルエンス・コストだ。
同じような仕事には同じような額が支払われるという前提が崩れると、
従業員たちは他の従業員との比較を行い、より高い給与を求める活動を始めるので
インフルエンス・コストは極めて高くなる。

よって、内部労働市場における給与決定の一般的なシステムは、
仕事上の業績を明確に測定すること、および給与の決定に関して
現場の管理者の裁量に委ねることが難しいことに対処するものと見なせる。


システムとしての内部労働市場

企業が直面する本質的な問題として以下の2つがある。
第1は、仕事の実際の業績が管理者には把握できるが、第三者には立証できない時に、
従業員に努力の動機づけを行う問題だ。
第三者には立証できないならば、明示的契約で
給与と業績を結び付けることは不可能だろう。
第2の問題は、成果を上げることがどのくらい難しいのかを、
個々の従業員だけが知っているために生じる。
より有能なものがより高いレベルの成果を上げることが必要となるので、
従業員たちにそうするように仕向けることが問題になる。
内部労働市場の特徴を備えたシステムは、理論上これら2つの問題を同時に解決する。

・正規の仕事からなるヒエラルキーと新入社員のポジションが定められる。
・それぞれの仕事には給与水準とその仕事に就く者に要求される業績基準が付与される。
・高いレベルの仕事には高い給与が提供され、高い成果が要求される。
・必要な水準の業績を達成できない労働者は解雇される。
・決められた業績を上げている労働者は次の期も雇用される。
・雇用されるものは全員新入社員のためのポジションに配属される。
・仕事ぶりの優れたものは昇進する。

上記システムにおいて従業員はどのような行動をとるのか?
仕事の要件が、従業員の能力にとって過大な要求でなければ、
その仕事に定められた水準を満たすべく懸命に働くだろう。
そうしないと、解雇されてしまうから。
さらに、与えられた基準を満たすことは能力のあるもののほうが容易だ。
よって、高水準の仕事をこなすほうがやりがいのあることと思うようになる。
逆に能力のない人はそう思わないので、一定の均衡が図られる。
自分の能力に合った段階まで、昇進を目指して働く動機を与えられる。
身の丈に合ったレベルに達すると、継続雇用に必要な水準の業績を上げようとするが、
それ以上の成果を出して昇進しようとはしなくなる。
これによって、能力のあるやつ、見込みのあるやつと
そうでないやつが従業員自らの行動によって区分される。


インフルエンス・コスト、インセンティブ、職務配置

現在の仕事での業績インセンティブを提供し、
最も有能な人物を鍵となる仕事に割り当てるという
2つの目的を果たすために昇進を利用する場合、極めて重大な問題がある。
1つの仕事で業績を上げた人が、昇進に最適任ではないかもしれない。
したがって、昇進と業績インセンティブを分けるという方法が思い浮かぶが、
こうしたアプローチにはもっと問題があることはすでに述べた通り。

昇進が過去の業績だけでなく、昇進後の業績見込みにも依拠している場合、
候補者は資格認定づくりや、意思決定者の認識を操作しようとする
インセンティブを持つことになる。
これらはすべてインフルエンス・コストとして、組織の業績を低下させる。


テニュアとアップ・オア・アウト

テニュアは大学教授の終身雇用、
アップ・オア・アウトはある段階で昇進できなかった場合、
解雇になる制度のこと。

なぜテニュアが必要なのかは、新たな人材を採用する際に、
自分の身分が保証されていない場合、優秀な人材の選抜をせずに、
凡庸な人材を選ぶインセンティブが働いてしまうから。
ものすごく優秀な若者を選ぶことで自分の地位が脅かされる場合、
教授はその若者を選ばないだろう。

一方、アップ・オア・アウトのルールの機能は、
組織に新鮮なアイデアや展望を持った人を外部から採用できるようにすること。
さらに、上位のランクに適した候補者を組織が注意深く評価できるように、
下位の仕事で、絶えず人の動きを起こすこと。

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