14章からは企業と資本の提供者との関係の話に。
古典的なファイナンス理論を概観し、その主な結論を導出する。
この理論の中核は、
・企業を投資が生み出す収益のフローとしてのみ捉える
・投資資金の調達方法は収益には影響しない
という2つ。
この章と次の章は目的と少々ずれているので手短に。
- 作者: ポール・ミルグロム,ジョン・ロバーツ,奥野正寛,伊藤秀史,今井晴雄,西村理,八木甫
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 1997/11
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投資決定の古典的な経済理論
古典的なファイナンス理論では、企業は生産計画の集合であり、
最も利潤の高い計画が選択される。
研究対象はどの投資に着手すべきか、資金をどうやって調達するべきか、
株価やその他の証券価格はどのように決まるのか、ということ。
フィッシャーの分離定理
ある店舗のオーナーが、2店舗目の出店を考えている。
すべての経費を差し引いた利潤Pは、
1年目=P1、2年目=P2、3年目=P3・・・
オーナーが100%個人資金によって投資資金を調達するならば、
投資決定は消費計画に対する個人の選好に依存する。
まぁ、これは当たり前すぎる話。
投資を借入によってファイナンスする場合は、この結論が異なってくる。
たとえば、年率rの金利で開店資金を借りると想定する。
返済完了までは店舗がもたらすキャッシュ・フローの全額を優先的に元利返済に充てる。
この時はキャッシュ・フローからローンを差し引いていくらか手元に残るのであれば、
投資する価値があるという考え方になる。
時間の考え方を入れる場合は、オーナーの機会費用を考慮すればよい。
今、借入金利、貸出金利が同一水準だと仮定する。
これが完全資本市場の一条件である。この時、以下のフィッシャーの分離定理が成立する。
資本市場が完全ならば、投資決定は、投資からの予想収益と利子率にのみ依存する。
個人消費とそのタイミングに関する個人の選好には依存しない。
分離定理によって個人の選好と切り離して考えられることは、企業分析の上で非常に重要である。
これのおかげで、企業同士は投資に着手すべきかどうかについて合意できる。
純現在価値
投資判断には金利を考慮した現在価値を計算する。
未来のキャッシュ・フローを、現在の価値で評価する、という考え方。
その現在価値に対して必要な初期支出を差し引いた値が純現在価値という。
投資するかしないかだけが問題であれば、
純現在価値がプラスであれば、投資するべきということになる。
複数のプロジェクトから1つを選ぶのであれば、純現在価値が最大になるものを選ぶべきだ。
また、金利rのことを資本コストと呼ぶ。
ビジネス上、解決しなければいけない問題の1つがこの資本コストだ。
調達方法や税制度などによって、資本コストの算出は複雑になる。
モジリアーニ・ミラー定理
第1モジリアーニ=ミラー定理
企業の総収益額Xが企業によるファイナンスの決定によって影響を受けないと仮定する。
さらに、投資家は企業の株を担保に企業と同じ条件で借り入れができるとする。
その場合、企業による資金調達構造に関する決定は、企業価値に影響を及ぼさない。
第2モジリアーニ=ミラー定理
企業の総収益額Xが企業によるファイナンスの決定によって影響を受けないと仮定する。
さらに、投資家は企業と同じ条件で、証券の売買ができるとする。
その場合、企業による配当政策は、企業価値に影響を及ぼさない。
要するに収益の分配方法は、企業価値に影響しない、ということ。
収益自体を増やすことでしか企業価値は向上しない。
まぁ、この辺の話はファイナンスの本を読んだ方が良さそう。
効率的市場仮説
ウィーク型、セミストロング型、ストロング型の3つがある。
ウィーク型の主張は、過去の価格には将来の価格変化の予想に
使える情報は残されていないというもの。
セミストロング型は発表済みの公開情報も利用できないという主張。
ストロング型はインサイダー情報でさえも利用できない、すでに株価に反映済みだ、とする主張。
ウィーク型とセミストロング型の仮説は以前は広く受け入れられていたが、
最近の実証研究によるとウィーク型さえも疑問視されている。
ストロング型仮説の重要な意味は、企業のファンダメンタルな価値最大化が
株価の最大化と同値になる、というもの。
これはウィーク型やセミストロング型からは導き出せない仮説。
そしてこの時、経営者の報酬が株価に連動している場合、
経営者は短期的な業績向上を重視して、長期的な利益を軽視するようになるだろう。
前の章のCEOの報酬問題へ繋がる視点。
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