貧困層に購買力がないというのは誤り！ 自立を支援しながらマーケットを形成する、BOPビジネスに関する必読書。C.K.プラハラード／ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略

BOP = ボトム・オブ・ザ・ピラミッド、すなわち、ピラミッドの最底辺に
位置する貧困層をターゲットにしたビジネスに関して書かれた本の中では有名な1冊。

前半はBOPビジネスに対する誤解を解きほぐし、何が大切で
どれだけの可能性があるのかを丁寧に解説してくれる。

後半は、実際のケーススタディの紹介、という2部構成。

考えたこともなかった領域なので、新鮮で、意外な事実も多く楽しかった。

増補改訂版が出ているので、購入の際はお気をつけて。

ネクスト・マーケット[増補改訂版]――「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略 (ウォートン経営戦略シリーズ)

先入観を捨てないとダメ

まずは、先入観や固定観念を捨てなければだめ。
当たり前なのだが、おそらく、かなり固定観念に縛られている。
例えば貧困層には購買力がない、購買力がないところに市場は成長しない。
もっともな理屈なのだが、この考え方ではBOPビジネスは成り立たない。
BOP市場の人々はお金がある。そして物凄く数が多い。（世界で40億人）
爆発的に成長する可能性がある。

貧しいがゆえの不利益

貧困層は、貧しいがゆえに、不当な負担を強いられていることが多い。
例えば借金する際の金利は通常の市場金利の53倍！
水道水は37倍！下痢止め薬は10倍の価格で取引されている。

物や情報を満足に入手できず、昔ながらの中間搾取業者が存在している結果、
こういったことが起こっているのだが、大企業のビジネスであれば
この状況を打破することができる。

BOPはブランド志向

貧しいがゆえに、価値も非常に重視しており、
あこがれを感じさせるブランドは、BOPの消費者にとっても大切。

消費力を作る

BOPの消費者にアプローチするには従来とは異なる手法が必要。
BOP市場で近年急速に発達しているアプローチは一回限りの使い切りパック。
量を少なくし、買いやすくする。
BOP市場の消費者は日当で働いており、現金があるときだけ買い物し、
その日に必要なものだけを買う傾向にある。
この傾向に合致したのが「使い切りパック」だが、
これは同時に、BOP市場でのパッケージングの問題も生み出す。
包装をどう考えるか？
小分けにしていった場合、パッケージのごみが大量に出る。
そこら辺のバランスも検討が必要。

BOP市場におけるイノベーション12の原則

・コストパフォーマンスを劇的に向上させる。
・最新の技術を活用して複合型で解決する。
・規模の拡大を前提にする。
・環境資源を浪費しない。
・求められる機能を一から考える。
・提供するプロセスを革新する。
・現地での作業を単純化する。
・顧客の教育を工夫する。
・劣悪な環境にも適応させる。
・消費者特性に合うユーザー・インターフェイスを設計する。
・貧困層にアプローチする手段を構築する。
・これまでの常識を捨てる。

P.61～P.64

で、これらの努力と工夫の結果見つかった成功パターンは、
他の国のBOP市場で横展開できるというのが大きな可能性。

「取引統治力」を培う

・契約の重要性を学ばせる
・契約の不公正を減らす
・自治力を育てる

例えばマイクロクレジットによる融資よりも、貯蓄習慣を定着させる方が先。
また、政府やNGOからの支援に対する依存も打ち切るべき。

ピラミッドからダイアモンドへ

富裕層は常にいるものだが、社会に中間層が
どれだけいるかが経済発展の尺度になる。
ピラミッド型から、中間層が厚いダイアモンド型への変化が望ましい。

ネクスト・マーケット[増補改訂版]――「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略 (ウォートン経営戦略シリーズ)