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古典には歴史に耐えるだけの価値があることを知る。読まずにわかった気になっちゃダメなんだな。 マイケル・E・ポーター/競争の戦略

5フォースで知られるポーター先生の古典。
これが出版されたのは1980年、30年以上経っても
5フォースのフレームワークは、生きている。

ただ、あのフレームワークだけが独り歩きしているというか、
あの図を見て分かった気になっているような気がする。

かくいう自分も、5フォースの話でなんでこんなに分厚い本になるのだろう?
一体、この本では何が語られているのだろう??
という疑問があって、とにかく一度読んでみようと思った次第。

ちなみに本書の歴史的な位置づけ。

産業組織論の成果を競争戦略論に取り入れ、競争戦略の「ポジショニング学派」を形成したのが、ポーター教授であり、(中略)競争戦略とは、5つの競争要因で自社の業界の構造を分析し、「業界の競争要因からうまく身を守り、自社に有利なようにその要因を動かせる位置を業界内に見つけること」とポーター教授は論じている。
P.469 訳者あとがきより

競争の戦略

競争の戦略


Five Forces 競争状態を決める5つの要因

競争業者:業者間の敵対関係
新規参入業者:新規参入の脅威
買い手:買い手の交渉力
供給業者:売り手の交渉力
代替品:代替製品・サービスの脅威

上記5つの要因が、業界の究極的な収益率、長期的な投資収益率を決める。

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引用元:http://www.itc-sb.com/05_column/sub01.html

5つの力によって何が決まるのか、というところは「業界の収益率」である、という所は大切。
たまに変な解釈というか、違うこと言ってる本とかある。
主人公はあくまでも業界。個別企業の戦略の話ではないのだけど、そこを勘違いしていることが多い。

そしてこの主張はあっさりP.17~P.18の2ページで終了。
では残りの400ページ超で何を語っているのかというと、
5つの要因から業界の構造を分析するその手法を、徹底的に解説している。
どんなデータが必要なのか、どのような観点でチェックするのか、
それを滔々と説いているのがこの本で、
確かにこの部分は経営者にとって教科書となりうる充実の内容。
要するに経営者だとしたら自業界に関して、これだけのことを把握、予測しようと努め、
日々考え続けなくてはいけないのだな、ということが実感できた。


参入障壁

参入障壁の主な要因を7つ上げている。

・規模の経済性
・製品差別化
・巨額の投資
・仕入れ先を変えるコスト
・流通チャネルの確保
・規模とは無関係なコスト面での不利
・政府の政策

いかに参入障壁を構築し、新規参入を防ぐか、
あるいは、参入障壁の穴をどのように探すのか。


5つの競争要因に対する3つの基本戦略

本書では他社に打ち勝つための基本戦略として3つの選択肢を上げている。

1.コストのリーダーシップ
2.差別化
3.集中

この基本戦略のどれか1つを選んで、突き進む必要がある。
2つ以上の目標が成立することは非常に困難だし、目標がぼやけてしまう。

ただ、本書では3つの基本戦略と言っているが、90年以降ポーター自身は、
3つの基本戦略とは言わなくなった。
選択肢は2つ。コストリーダーシップか差別化、このどちらかだと。


競争業者の分析の4つの診断的要素

・将来の目標(すべての管理者レベルでの目標、多元的に把握する必要あり)
・現在の戦略(現在どんなやり方で他社と競争しているか)
・仮説(競争業者自身ならびに業界について、競争業者が抱いている仮設)
・能力(競争業者の長所と短所)

競争業者に関して上記4つの要素を把握できれば、行動が予測できる。
将来の目標や仮説はその把握が非常に困難だが、
競争業者の行動の原動力となる部分であり、重要。



動きの予告

1.同業者に先んじて有利な地位を占める目的で、それに必要な行動を起こす権利の占有を狙う。
2.競争業者が計画している行動の実施を妨げる脅威としての働き
3.競争業者の気持ちを推しはかるテスト

ポイントは、予告は発表したとおりに実行する必要はない、ということ。
予告に対して競合がどのような反応を示すか、ということ自体に価値がある。
対抗策を発表してくるのか、何も反応しないのか。
何も反応してこなかったとしても、競合の中では実際に戦略の変更が検討される可能性もある。


買い手選定のフレームワークと戦略

買い手の質のよしあしを決める基準

買い手の購入ニーズとそれに応える自社の能力
買い手の成長力
買い手の地位(本来有している交渉力/値引きのためにこの交渉力を利用しようとするクセ)
買い手との取引コスト

自分が買い手側だったら、交渉力は利用しまくるけどな。


競争戦略の次元

多種多様な戦略を分類するための切り口が紹介されている。

専門度:製品、顧客層、販売地域の限定度合
ブランド志向度:価格ではなくブランド力で勝とうとする戦略
プッシュ型かプル型か:消費者に直接訴求か流通訴求か
流通業者の選択:流通は自社所有か、どこを利用するのか
品質:製品水準をどの程度にするか
技術のリーダーシップ:技術面でリーダーシップをとるのか
垂直統合:川下統合および川上統合によってもたらされる付加価値の量
コスト面での地位:コスト削減のための設備投資によって生産、流通コストを低減
サービス提供度:製品に付加的なサービスをどの程度つけているか
価格政策:他社と比較して高いか安いか
力:財政力および営業力
親会社との関係:事業体と親会社の関係
自国と事業を行っている国の政府との関係:国際的に活動する企業では重要

1つ1つの戦略次元は、企業によってその詳しさの程度が異なる。
また、高度な分析には他の次元と組み合わせての分析が必要。


戦略別企業グループ

業界内部の構造分析の最初のステップは、すべての主要な競争戦略のとっている戦略の特徴を、これらの次元ごとにあきらかにすることである。この作業によって、業界内の企業を、その戦略次元上での特徴によって戦略グループに分けることができる。
P.183

そして、新規参入業者が加わりたいと思っている戦略グループの特性によって、
参入障壁の要因が変わってくる。
戦略グループマッピングの軸は業界での主要な移動障壁を決める要因を用いる。
ただ、戦略グループの利益率もあくまでもグループの平均値としての利益率に過ぎず、
個々の企業の戦略的優位はほとんど説明しない。

5フォースの限界

あくまでも5フォースは業界の利益率を決める要因。
主人公は業界であって、企業ではない。
逆に言うとそこが限界でもあり、業界共通要因の分析でしかない。
企業分析にはなり得ない。
分析結果そのものよりも、分析を通じて当該業界の
戦略的問題点について理解が深まることがその効果。


競争の戦略

競争の戦略