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最低限のことは知っといた方が良いよなと思いながら何から学べば良くわからん人へぴったり。 雨宮美季・片岡玄一・橋詰卓司/良いウェブサービスを支える利用規約の作り方

ビッグデータなんて言葉がまことしやかに語られるようになり、
今や個人の閲覧履歴なんかブラウザに仕込まれクッキーから把握されまくり、
EC使えば購買履歴を取られ、どこに行っても広告が追いかけてくる。

そんな時代だから、サイト運営者も昔では考えて
いなかったようなデータの使い方をしたくなってくる。

そこで、課題となるのが利用規約。
取得したデータをどういった目的で使うとか、
ここに明示してあったりする。

ちゃんとやっとかないとせっかくのデータも活用できない、何てことも。

また、将来起こるであろうユーザーとのトラブルを想定しておくことも大切。
あと、資金決済法、消費者契約法特定商取引法、など関連法規に準じた対応が必要。
こうなるともう訳分からなくなってくるが、
この本はポイントを的確にまとめてくれているので、
さっと読んでおくだけで、気を遣うべきところがわかるはず。
法務部門がしっかりしてて規約作ってくれるという会社も少ないと思うので、
会社に1冊持っておくのがオススメ。かなり良書なのではあるまいか。

良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方

良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方


理不尽な条項は無効になる

読まないで同意していたとしても、
消費者契約法によって理不尽な規約は無効になる。
「例えば一切の責任は負いません」と書いていたとしても、
すべてが免責になるわけではないということ。

ユーザーがそんな規約は無効だ!と思った場合、
ただクレームをつけているだけでは無効にならず、
あくまでも訴え、裁判所に消費者契約法に基づきその規約は無効、という
判決を受けなくてはいけない。
言うまでもなく、個人でそこまでやるのは相当ハードルが高いことなので、
逆に企業側はそう言った免責事項を規約に記載し、
規約に書いてありますから、という主張をすることになる。

ちょっとこれは、世の中の制度がユーザー側に不利な気もする。


プライバシーポリシーに関して

個人情報の取り扱いは非常に難しい問題になってきている。
従来の個人を特定できる情報という定義においてはその範疇に入らない情報でも
企業のマーケティング活動には十分であり、ネットの普及によりそういった情報の取得は容易になってきた。
例えばクッキーから取得できるブラウザの閲覧履歴情報はプライベートな情報。
だけどこれは従来の解釈では個人情報には当たらない。
suicaの利用データの販売に対して批判が巻き起こったように、
そういった自分の利用履歴の活用をネガティブにとらえる論調は根強い。

慶應義塾大学國領二郎教授のソーシャルな資本主義は、まさにこの辺りのことを書いてある本。
興味のある方には是非一読を勧めたい。

本書を紹介したエントリはこちら。

匿名経済から顕名経済へ。社会のあらゆる所で、大きな変化が起きている! 國領二郎/ソーシャルな資本主義 つながりの経営戦略 - 学びや思いつきを記録する、超要約ノート

いたずらにこう言ったデータの利用を規制するのは、個人的にはよくないことだと思っている。
アメリカでは当たり前のように活用され、分析や活用に関する技術も進歩しており、
こういったデータ解析分野への取り組みが遅れると、
この分野でまたもや日本が遅れを取るような気がしてならない。
でも現実はsuicaの時点であの批判のされようなので、なかなか理解を得ていくには時間がかかりそう。

また、何をプライバシーにかかわる個人情報として捉えるのか、という点に関して、
総務省からスマートフォン プライバシー イニシアティブという提言が出されている。
これは知らなかったので要チェック!

総務省|「スマートフォン プライバシー イニシアティブ −利用者情報の適正な取扱いとリテラシー向上による新時代イノベーション−」の公表

まぁ事業者側もいたずらにビビる必要は無く、
利用目的を明示し、適切な活用をすれば問題ない。
適切な活用はユーザーの利便性を向上させるはずだから。


個人情報の共同利用

想定されるのはグループ会社などの間で共同利用する場合。

a)共同利用する旨
b)共同して利用される個人データの項目
c)共同して利用する者の範囲
d)利用する者の利用目的および当該個人データの管理について責任を有する者の氏名または名称
(P.34)

これらを本人に通知し、容易に知り得る状態に置く必要がある。
容易に知り得る状態に置くために、プライバシーポリシー上に記載することが多い。
また、共同利用を停止する機会を与えることも十分留意すること。

共同利用とはちょっとずれるが、業務委託先への開示を明記することも忘れずに。
例えば通販事業であるならば、配送業者へ開示しないことには荷物が届かない。


特定商取引法

有料サービスや商品の販売を行っているサイトには、
特定商取引法に基づいた表示が必要。

1.販売価格(税込表記)
2.送料並びに購入に付帯する費用(振込手数料・代引き手数料など)
3.代金の支払い時期並びにその方法
4.商品の引き渡し時期
5.返品に関わる条件
6.事業者名商(氏名)、住所、電話番号、メールアドレスなど連絡先
7.営業時間・問合せ受付時間・休業日など
8.責任者氏名
9.申込に有効期限がある場合には、その期限
10.不良品・破損時の対応
11.販売数量の制限やその他特別な販売条件があるなら、その内容

インターネット広告協会::特定商取引法に基づく表記の書き方と、特商法における返品の可否についてより

ウィーン売買条約

国際的な動産売買に関する条約。
そのようなサービスを提供している場合は、
規約にウィーン売買条約は適用しない旨を記載しておいたほうが良い。
それが無いと、日本は批准しているので適用されるらしい。


コンテンツの権利関係の明確化

ユーザーが書き込んだ投稿の著作権は何も規定がなければユーザーに帰属する。
ゆえに勝手に利用できない。
トラブルを未然に防ぐために、ユーザーの投稿があるウェブサービスは権利の所在を明らかにしておくこと。
著作権の扱いに関してはいくつかパターンがある。

・サービス提供のために目的の範囲内で変更等の許諾を取る
・無制限・無償で利用する許諾を取る
・著作権を譲渡してもらう

下に行くほどハードルは高く、自由度は高い。

ちなみに著作者人格権は著作者から譲り受けることのできない権利なので、
あらかじめ行使しない旨をユーザーと合意しておく。


禁止事項の設定

ちょうどいいペナルティを設定しておくこと。
以下の3段階がお勧めらしい。

1.情報の削除・利用履歴の巻き戻し
2.サービスの利用の一時停止
3.サービスの利用の永久停止

契約違反者による再登録の拒絶を明記しておくことが大切。
違反者による別アカウントの再取得も禁じることができる。
また禁止事項にはその他当社がNGと判断した場合、というのを書いておくこと。
想定外の違反行為にも対応できる。


ポイントや仮想通貨を扱うならば資金決済法を理解すること

資金決済法の対象となるのは、前払式支払手段と言われるもの。
あらかじめ一定のポイントを仮想通貨として購入し、仮想通貨を使ってサービスを受ける場合。
購入料金によってポイントが付与され、ポイントに応じて値引きが受けられるパターンは、
前払式決済手段ではないという判断。

また、前払式決済手段だったとしても、そのポイントが6か月以内の有効期限であれば、
資金決済法の対象にはならい。
オンラインゲーム等のポイントが有効期限6か月以内になっているのはこういった理由による。

でもこの辺も結構勘違いしている人多い気がする。
そもそも前払式決済手段じゃないポイント制度で6か月以内じゃないと、とか言ってる人いたな。


遅延延滞金

遅延延滞金の利息って14.6%が多いのだけど、
365で割ると0.04%になるからってのが理由らしい!
BtoCで定められる上限値でもある。
BtoBであれば消費者契約法に縛られないので、18.25%(365で割ると0.05%)ってのも可能。


秘密保持規定

ユーザーとの間でトラブルが発生した際に、
そのときのやり取りを秘密に扱って欲しいという場合は、
利用規約の中に秘密保持に関する規定を入れといた方が良い。
まぁ、本当にこじれた場合は秘密保持もへったくれもなく、晒されるとは思うけれども・・・。
そうなった時に規約違反だって指摘できる根拠にはなる。

良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方

良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方