BCGが生んだ天才によるネットがもたらす大変革を解説した本。
出たのは今から15年前、1999年。リーチとリッチネスという2軸で情報の流通の変化、
ビジネスへの影響を鮮やかに描き出した本書の本質は今なお有効。
当時これを読んでいたら夢中になったかもしれないけれど、
それでも1995年に読んだネグロポンテの『ビーイング・デジタル』が
自分の人生では最強の衝撃だったな。
- 作者: ニコラス・ネグロポンテ,福岡洋一
- 出版社/メーカー: アスキー
- 発売日: 1995/11
- メディア: 単行本
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- 作者: ニコラス・ネグロポンテ,福岡洋一
- 出版社/メーカー: アスキー
- 発売日: 2001/11/16
- メディア: 単行本
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ちなみにこれの簡易版でもあり、日本向けになっているのが、
内田和成『デコンストラクション経営革命』なのだが、こちらの出版は98年。
本書の謝辞にも内田氏が出てくるが、きっと相当貢献しているのだろうな。
98年の未来予想。結構言った通りになってるのでビックリ。内田和成/デコンストラクション経営革命 - 学びや思いつきを記録する、超要約ノート
- 作者: 内田和成
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 1998/11
- メディア: 単行本
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ネット資本主義の企業戦略―ついに始まったビジネス・デコンストラクション
- 作者: フィリップエバンス,トーマス・S.ウースター,Philip Evans,Thomas S. Wurster,ボストンコンサルティンググループ
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 1999/11
- メディア: 単行本
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攻守どちらがやりやすいか
ブリタニカの販売部隊には何十年もの伝統があった。それは競争優位の基盤となり、業界中の羨望の的だった。だが、不幸なことに時代遅れだったのである。新しいメディアービジネスに向けて積極的な戦略をとれば、伝統ある販売部隊を犠牲にすることになる。経営陣は躊躇した。これに対して、マイクロソフトの側には躊躇する理由はまったくなかったのだ。これこそが本質的な変化である。伝統的な競争環境では「防御する側か有利」という例が圧倒的に多かったが、情報の経済原理が変化しつつあるのに伴い、挑戦者側が有利な状況になっている。過去のシステム、資産、考え方に縛られず、「何も失うものがない」ことが優位性をもたらしているのである。
P.10-P.11
マイクロソフトのエンカルタの登場とブリタニカの没落。
象徴的なケースが本書で紹介されている。
挑戦者側が有利な状況が生まれつつある、という整理はなるほど納得。
情報は接着剤
情報と情報を伝達する仕組みは、バリューチェーンをつなぎとめている接着剤のようなものだ。アンドリュー・カーネギーやヘンリー・フォードは、大規模で複雑なオペレーションを調整する際に生じるコストや厄介な問題に取り組んだ。彼らが出した答えは、専用の情報システムと階層的な指揮統制だった。これによって垂直統合されたバリューチェーンが発展した。
P.14-P.15
情報はバリューチェーンをつなぎ止める接着剤!
そして情報の経済原理は物質のそれとは全く違う。
モノの経済原理は、「効率的な市場」という概念と矛盾しない。農場も工場も、競争市場において互いに競争する。一方、情報の経済原理が必要とするのは、「不完全な市場」である。ある情報の発信者が、何らかの手段(著作権、特許、単なる秘匿など)で他人がその情報にアクセスするのを制限できなければ、当初の投資を回収できる利益を得るのは絶対に無理だろう。
他人が何の制限もなくコピーできるとしたら、そんな情報を持っていても何の価値もない。制限があれば、情報の独占が生じる。いずれにせよ情報を扱う場合は、農場や工場の場合とはまったく勝手が違うのである。物理的なモノの経済原理と純粋な情報の経済原理とは、このように根本的かつ質的に異なっている。
だが、情報が物理的なモノに埋め込まれている場合は、この二種類の経済原理が結びつくことになる。
モノ、情報がそれぞれ他方に結びつけられているせいで、それぞれの「純粋な」ロジックに従えなくなってしまうのである。だが、両者の比重は変化しつつある。ここ何世紀かのあいだに、惰報の経済原理は着実にモノの経済原理の束縛から逃れつつある。これは情報を伝えるうえで、よりモノの比重が少ないメディアが開発されたためである。
P.22-P.23
情報がモノの経済原理の束縛から逃れつつある。
これは見事にその通りになってきたし、現在進行形で進行中。
そしてこの情報革命が既存企業を脱構築してしまう
●わずかなデコンストラクションでも既存企業には大きな損害を与える。
デコンストラクションは、既存企業にとって最も耐えがたい部分を攻撃してくるからだ。
●新規参入組が最大の競争優位を得るのは、既存企業がデコンストラクション後のビジネスの定義に則って競争することを嫌がる場合である。
●デコンストラクションのあとに続くのは「再構築」である。
新たなビジネスの定義は古い定義の残骸から生まれてくる。
●新たな機能、産業、競争機会として「ナビゲーター」(案内役・窓口)が出現する。
既存の産業の多くにおいて、最も多くの価値を手にするのは「ナビゲーター」である。
●バリューチェーンのデコンストラクションが始まったら、「統合されたビジネス」という時代遅れの定義にしがみつくよりは、何か一つを選んで集中したほうがマシである。
P.94
バリューチェーンの脱構築は既存企業の最も痛い所から生じる。
しかし、これまで作り上げてきたバリューチェーンが崩れていくのは確かに恐ろしい問題。
プレイヤーによってはバリューチェーン上の自分の存在価値自体が消えてしまう場合もある。
情報革命でモノの経済原理も変わる
デルは根本的に新しいモノの経済原理を実践している。その柱となるのが、「プル」から「プッシュ」へという製造パラダイムの根本的転換である。デルは需要を予測するのではなく、単に需要に対応する。サプライヤーに指示を出すのではなく、自社のネットワークを自由に覗いてもらい、そこで見つけた兆候に対応してもらう。予想外の変動に対する緩衝材として在庫を用いるのではなく、そもそも在庫が必要な理由である製造の遅れをほぽ完全に解消してしまった。
P.119
デルが実践したやり方は、モノづくりにおけるパラダイムシフト。
クッキーベースの情報取得に言及
インターネットの根底をなす通信プロトコルは匿名性のものだが、ブラウザーにはユーザーのマシン内部に組み込まれた「クッキー」と呼ばれる、ユーザーの活動について詳細な情報を記録し、サイトに再送信できる仕組みがある。原理的には訪れたサイトやページ、入力した情報、マウスの動きなどをすべて追尾・記録し、ホストーサーバに転送することができる。
このデータを使えば、(人口統計データや各個人の意見ではなく)行動に基づいた消費者情報により、消費者へのメッセージや提案を絞り込むことができる。こう考えるとインターネットでは、ターゲットを絞り込んだメッセージを郵送料ゼロで届けることができるということになる。
P.220
すでにこの時にこういった可能性に言及していたことに驚き。
今流行りのDMPなんてまさにこれだからな。
今読んで、ここがいちばん衝撃でした。
ナビゲーターとの戦い
●リーチが拡大するにつれて、売り手側の情報リッチネスの高さが持つ価値は上昇する。
なぜなら、それこそが注目を集め、多くの競合他社のなかから頭角を現わす方法だからだ。
だが、ナビゲーター側の情報リッチネスが売り手側に追いつくにつれ、その価値は減少していく。
P.241
売り手側はナビゲーターとの戦いが生じる。
むしろ自分がナビゲーターになれるか、とかも考えた方が良いのだろうな。
このナビゲーターっていう立ち位置とCRMで言う所の購買エージェントってのが
自分の中でリンクしている。
ネット資本主義の企業戦略―ついに始まったビジネス・デコンストラクション
- 作者: フィリップエバンス,トーマス・S.ウースター,Philip Evans,Thomas S. Wurster,ボストンコンサルティンググループ
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 1999/11
- メディア: 単行本
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