ビジネス書大好きMBAホルダーが教える私の学びシェア

本を読んでそこから新しい知識を得たり、学んだりすることが大好き。学びたい、成長したいという意欲のあるビジネスマンの皆さん、一緒に成長しましょう。

色々な企業の成功事例が詰まった、アイデアの宝箱のような本 三谷宏治/ビジネスモデル全史

もはやビジネス書のヒットメーカーになりつつある三谷さんの新作。
昨年の経営戦略全史に続き、今度はビジネスモデルの歴史を概観する。

その業界、その企業、その競争状況、などいろいろなものが絡み合って成功しているわけで、
単純にうまくいってる会社のビジネスモデルをぱくれば良いと言うわけではない。
それでも、色々な業界、企業のビジネスモデルを知り、引き出し増やしておくことは有益。
自業界の課題は他の業界にアイデアが潜んでるってこともあるし。

というわけで、相変わらず脅威のわかりやすさで書かれた本書はとてもお勧め。
あと分厚さに躊躇している方がいたとしたら気にする必要なし。
厚めの紙使って嵩増し&ページの使い方がとても贅沢なので、ページはどんどん進みます。
でも、読み終わったときの充実感とか達成感は薄い本よりもある、というとても素敵な演出。



気になったところをメモ

アクセンチュアの世界主要70社調査(2001)や、IBMの765社調査(2006)もそれを裏付けました。「産業構造か、利益構造か、企業構造を変えなくては、成功はない」のだ、と。
特にIBM調査は「企業構造において外部との連携やパートナーシップに熱心な企業の業績が高い」ことを示しました。これこそビジネスモデル論、最大のヒット作である「オープン・イノベーション」に通じるインサイトでした。
P.63

オープン・イノベーションって今更ながら自分の組織でどうやって実行しようか考えてるところ。
もっと、もっと、外と組んでいきたい。

彼は消費者(特に富裕層)が、デザインが単調(黒一色)なT型フォードには飽き足らなくなっていること、自動車が必需品からファッション品に移りつつあることを見抜き、商品の多ブランド化とファッション化を推し進めました。
ファッション化とはつまり、毎年の流行りで新しいものを買う、ということです。
GMは毎年、商品をモデルチェンジしては大量の広告宣伝を打ち、消費者の手元にある車を「時代遅れ」にする、計画的陳腐化というマーケティング手法を取り入れました。
P.95

最近服が売れないって言うのはこの業界あげての計画的陳腐化が弱くなってきているからなんだろうな。
ユニクロがあれだけ売れるのもベーシック回帰の流れがずーっと、じわじわ、続いているから。
でもそうなったのも、新たな流行やトレンドの発信力が弱くなってるっていうアパレル企業側の問題ももちろんある。
進む価格破壊の中で、工数かかる複雑なものづくりとか割高な素材とかも
使いづらいってのもあるような気もするし。。。
消費者の嗜好も分散してきていて、ビッグトレンド化しにくいってのもあるかもしれない。
なんてことを考えてたらワールドの事例が紹介されていて面白かった。

ワールドで紳士服ブランドの「タケオキクチ」(1984)や「ドルチエ」を立ち上げた寺井秀藏(1949~)は、ちょうどその卸事業が最高益を挙げた頃、強い危機感を持ちました。「卸事業にはロスやリスクが大き過ぎる」と。
そのきっかけはたまたま読んだ、鈴木敏文のインタビュー記事でした。
鈴木はそこで、「超優良企業といわれる7-11でも、見た目の利益以上に、表に見えないロスがある」と語っていました。
寺井は「7-11すらそうなのか」とショックを受け、自社ではどうかを調べ始めました。そこで、卸との商習慣に縛られた、大きなロスやリスクを見いだしたのです。
受注はシーズンの半年前の展示会での受注で決まってしまいます。流行の読みが当たっても追加の発注には応じられず、外せば大量の在庫が余って大赤字。売り方も納入先にお任せで大した工夫もできません。
91年、経営企画本部長になった寺井は、独自のプル型SPA構築に向けた「SPARCS構想」を打ち上げました。「1週間サイクルで顧客ニーズに即応する」ための、「納期4日の国内工場による多品種少量生産システム」と「週次でのマーチャンダイジング(MD)仮説検証サイクル」を目指すものでした。
P.177

これを当時実現したってのは並大抵のことではないよな。
OZOCやUNTITLEDがその象徴的なブランドのようだけど、
でも、今はこれが崩壊してるんだろう、とも思った。
「納期4日の国内工場による多品種少量生産システム」これじゃ価格で勝てない。
生産国が中国や東南アジアになった時点でこのスピード生産の前提が崩れていそう。
ビジネスって難しい。

ロングテールの影響は、売上よりむしろ利益にありました。
「売れない」商品であるテール商品は、従来は書店の棚をムダに占める赤字商品でした。
しかしネットショップであれば、テール商品の在庫は全米で1冊(もしくはゼロでも)で構わないので大したコストにはなりません。
日本と違って本の再販制度がないアメリカでは、定価で売れるテール商品はとっても儲かる商拓なのです。
P211 - P.212

ついつい日本の再販制度をデフォルトで考えてしまうのでまったく盲点だった。
確かに再販制度無ければ、テール商品は利益貢献度の高い商材って扱いになるのね。

そしてジョイの法則はちょっと笑ってしまった。

〈ジョイの3法則〉
1 頭のいい社員は仕事をしない
2 もっとも頭のいい人間の大半は、企業のためには働かない
3 よって、イノベーションはよそ(企業の外部)で生まれる
つまり、「非定型で創造的な一部の業務」を担うべき優秀な人材ほど、辞めてしまって企業の中には囲っておけない、というのです。
「だから、そういった人材を外部流出させないよう気をつけよう」とジョイは言いたかったのですが、結局、サン・マイクロにもそれは起こってしまいました。
だから?
だから、企業はイノベーション創出に向けて、必然的に多くの外部者たちとのコラボレーションを図らなくてはならないのです。
組織を開いて、ネットワーク化しなくては、簡単には存続できないのです。
もし、コースの定理が正しく、かつ、ハイエクの主張やビル・ジョイの法則が正しいならば。
P.304 - P.305

まさに仰るとおりだよなぁ・・・と。

あと時間をしっかりかけて人材育成をするという点では村田製作所の仕組みが素晴らしかった。

この100人の「若き意思決定者」たちは、ただ選ばれたわけではありません。
村田製作所が組織として10年をかけ育成した「意思決定のプロ」なのです。
まずは各部門で活躍しコミュニケーションカに長けた若者を候補者として選び、数年から10年かけて複数部門を経験させていきます。
開発、製造、企画と。
その中から適性を判断してようやく「意思決定者」として指名します。
P.407

こういう時間のかかることは、競合が真似したくてもすぐに真似できない。
模倣困難性をもったすごい能力になるよな。