元マッキンゼー、Yahoo CSOの安宅さんが書く、知的生産のための考え方をまとめた本。
書かれていたことはいちいち納得感のあるものだし、素晴らしいんだけど、
きっとコンサル業界では当たり前のことなんだろうな、とも思う。
- 作者: 安宅和人
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2010/11/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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解の質と問いの質
多くの人は、マトリクスのタテ軸である「解の質」が仕事のバリューを決める、と考えている。そして、ヨコ軸である「イシュー度」、つまり「課題の質」についてはあまり関心を持たない傾向がある。だが、本当にバリューのある仕事をして世の中に意味のあるインパクトを与えようとするなら、あるいは本当にお金を稼ごうとするなら、この「イシュー度」こそが大切だ。
P.26
いかに良い問いを立てられるかがはるかに重要。
間違った課題設定に対する正しい解答ほど悲惨なものはない。
一方で、そのイシューに対して現実的な解答を出せそうか、という難易度のバランスも重要。
どれほどカギとなる問いであっても、「答えを出せないもの」は良いイシューとは言えないのだ。「答えを出せる範囲でもっともインパクトのある問い」こそが意味のあるイシューとなる。そのままでは答えの出しようがなくても、分解することで答えを出せる部分が出てくればそこをイシューとして切り出す。
P.72
解の出ない問い、大きすぎる問いを前に呆然としていても、生産性はなきに等しい。
食べられるサイズに問いを分割し、現実的に解けるもので、解いた時の価値ある問いを探すことが重要。
脳と理解
この脳の話はショッキングだ。
普段から意識して鍛えないと脳はいくらでも劣化するというか、
使わないと使わない状況に対して最適化されていってしまうんだな。怖い。
脳は脳自身が「意味がある」と思うことしか認知できない。そしてその「意味がある」と思うかどうかは、「そのようなことが意味を持つ場面にどのくらい遭遇してきたか」によって決まる。
有名な実験に「生まれたばかりの猫をタテ縞しかない空間で育てると、その猫はヨコの縞が見えなくなる」というものがある。その結果、その猫を四角いテーブルに乗せると、ヨコ線である端が見えないのでテーブルから落ちてしまう。
P.40
ストーリーの組み立てとイシューの分解
イシューに関連するデータを集め、データが出尽くしたらその意味を考え、
ストーリーを組む、というやり方が一般的だけど、これだと全くダメ。考え方は、これと真逆。
劇的に生産性を高めるには「このイシューとそれに対する仮説が正しいとすると、どんな論理と分析によって検証できるか」と最終的な姿から前倒しで考える。
P.107
要するに仮説思考なんだね。
そしてイシューはMECEに分割してサブイシューを作っていくのだけど、
このMECEというのが厄介。もれなく、被りなく、なんだけど、この切り方はいかようにもできて、
ここで意味のない分け方をしてしまうと結論が違ってきてしまう。
売上を分解しようとすると、「個数*単価」「市場*シェア」「ユーザー数*ユーザーあたりの売上」「首都圏売上+関西売上+他地域売上」など、無数の切り分け方ができる。どれも「ダブりもモレもなく」になってはいるが、それぞれの検討が同じ答えにたどり着くことは決してない。
P.109 - P.110
人に伝えるために
WHYの並び立てアプローチ
案件Aに投資すべきだということを人に説明する場合、少なくとも以下の3つの視点は説明が必要。
このWHYを並び立てることで意思決定者に重要な要素をMECEに伝えることができる。
・なぜ案件Aに魅力があるのか
・なぜ案件Aを手がけるべきなのか
・なぜ案件Aを手がけることができるのか
もう一つの型が、空、雨、傘、タイプ。
空が曇っている(課題の確認)
雨が降りそうだ(課題の深掘り)
傘を持って行こう(結論)
必要な情報の粒度を見極める
いたずらに細かく、精度が高ければいいというものではないのだけど、
これまたわからない人が多い。
50なのか、100なのか、300なのか、といった粒度で把握したいときに、
92か105かわからないから答えられないみたいな人。
求められている情報の粒度が全くわかっていない。
概算=正確じゃない、みたいな。
ずれてるとまずい、と誤差を許容できないがゆえに、工数が爆発して無駄な時間を使う。
「数字は細かく取ればいい」というものではない。最終的にどの程度の精度のデータが欲しいか、それをこの段階でイメージする。「50%か60%か」を見極めようとしているときに0.1%刻みのデータは必要ない。
P.162
不連続な差しか認知できない
脳は「異質な差分」を強調して情報処理するように進化してきており、これは脳における知覚を考える際の根源的な原理のひとつだ。そしてこれが、分析の設計において明確な対比が必要な理由でもある。(中略)分析の本質が比較というよりは、実は私たちの脳にとって認知を高める方法が比較なのだ。
P.173
答えを出すことに価値がある問いを立てる
調査、分析の設計の問題なのだけど、それがわかると何がいいのか?
YESならこう、NOならこう、という判断やアクションにつながるのか?
それがないと欲しい答えを探してるだけの話になっちゃうんだよね。
生物学には質問を肯定する結果が出ないと何の役にも立たない実験が多い。このような実験のことをアメリカの科学者はFishing Expedition(魚釣の遠征)という。魚が釣れなければ草臥儲けとなるという意味である。理想的な実験とは、論理も実験も簡単で、どんな結果が出ても意義のある結論ができるものである。
P.182
プレゼンの心構え
どんな説明もこれ以上できないほど簡単にしろ。それでも人はわからないと言うものだ。そして自分が理解できなければ、それをつくった人間のことをバカだと思うものだ。人は決して自分の頭が悪いなんて思わない。
P.222
論点思考+仮説思考+脳科学
基本的にはコンサル脳なお話なのだが、とことんバカでもわかるように噛み砕いてくれているからわかりやすい。
BCGの元日本代表だった内田和成さんの論点思考、仮説思考もこのようなコンサル脳の解説としては秀逸なので、
ぜひ合わせて読んでみて欲しいな。
- 作者: 内田和成
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2010/01/29
- メディア: 単行本
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- 作者: 内田和成
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2006/03/31
- メディア: 単行本
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- 作者: 安宅和人
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