ビジネス書大好きMBAホルダーが教える私の学びシェア

本を読んでそこから新しい知識を得たり、学んだりすることが大好き。学びたい、成長したいという意欲のあるビジネスマンの皆さん、一緒に成長しましょう。

「私の手本は孫正義さんだ」などと言う人もいますが、その人がどんな場面で、どんな行動をとり、その結果どうなったかを身近で見ていなければ、個別解を見出すための参考にはなりません。 内田和成/リーダーの戦い方

元BCG日本代表の内田和成のリーダーシップ論。
内田氏の本は常に、わかりやすく本質をまとめてくれるのでとてもおすすめ。

最も、それは考え方、捉え方、を教えてくれるものであって、答えそのものを書いてくれるようなものではない。
そもそも唯一の絶対の解などないのだから、ビジネスマンなのにそんなものを求めているとしたら早く反省したほうがいいだろう。

そういう常に変化して、複雑怪奇なビジネスの世界で生き残っていくためにどういう考え方をしたら良いのか、
そのマインドセットや視点、みたいなものを提供してくれる。

結局治部hんに取っての解は自分で考えて見つけるしかないんだ。

リーダーの戦い方 最強の経営者は「自分解」で勝負する

リーダーの戦い方 最強の経営者は「自分解」で勝負する

  • 作者:内田 和成
  • 発売日: 2020/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

なので、このリーダーシップ論も本質的には、自分で見つけろという話になる。
唯一絶対のリーダーのあり方なんてものは存在しない。

ビジネスの状況によっても違うし、そもそも人には得意不得意がある。
その掛け合わせで自分らしいリーダーシップをはっきしていく他はない。

じゃあ、そういう前提の中で、どういうふうに考えていきましょうか、と語りかけてくれるのが本書だ。

・創造ステージ⋯⋯ アントレプレナー(起業家)
・成長ステージ⋯⋯ マーケター
・優位性ステージ⋯⋯ストラテジスト(戦略家)
・効率ステージ ⋯⋯マネジャー
P.39

というように、BCGダイアモンドの企業の成長ステージによって、
必要なリーダー像も変わるというお話。

それと、お手本を持てという話なのだけど、
この指摘はとても重要だと思う。

その際、手本は、できるだけ身近な人であるべきです。「松下幸之助さんのようになりたい」「私の手本は孫正義さんだ」などと言う人もいますが、その人がどんな場面で、どんな行動をとり、その結果どうなったかを身近で見ていなければ、個別解を見出すための参考にはなりません。
P.149

偉人に憧れるのは勝手だけれど、自分と自分の置かれた環境における個別解を探る役には立たないよ、ということ。
これ勘違いしている人がめちゃくちゃ多い気がします。

うちの上司も孫さんのように、、、みたいなの無理です。
無理だし、あなたの上司に孫さんは最適ではない可能性のほうが高い。
あるいは孫さんが上司だったら今の上司と同じことを言うかもしれません。

リアルなケーススタディから学びを得ていかないと、本当に役立つ知恵にはならないんじゃないか。
逆に言うとそう言うマインドセットで臨めば、毎日学びのチャンスに溢れているんだよなぁ。

内田氏はいつも本質的なことを思い出させてくれる。

リーダーの戦い方 最強の経営者は「自分解」で勝負する

リーダーの戦い方 最強の経営者は「自分解」で勝負する

  • 作者:内田 和成
  • 発売日: 2020/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

ブルシットを生み出しているのは、 資本主義それ自体ではありません。 それは、複雑な組織のなかで実践されているマネジリアリズム[経営管理主義]、イデオロギーです。デヴィッド・グレーバー/ブルシット・ジョブ

話題の本。
みんなクソどうでもいい仕事に苦しめられているからだろう。

正直、ちょいと冗長である。
ブルシットはブルシットなので冗長すぎてブルシットな気分が増してくる。

ただ、書いてあることはとても面白い。

経営管理主義が管理をうみ、管理のための管理みたいな
「クソどうでもいい仕事=ブルシット・ジョブ」を生み出す。

最終的な実用的定義=ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完壁に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り籍わなければならないように感じている。
P.27 -P.28

例えば大学にはびこるブルシット・ジョブ。
それを生み出したのは何か??

ブルシットを生み出しているのは、 資本主義それ自体ではありません。 それは、複雑な組織のなかで実践されているマネジリアリズム[経営管理主義],イデオロギーです。マネジリアリズムが根を下ろすにつれ、マネジリアリズムの皿回し――戦略、パフォーマンス目標、監査、説明、評価、新たな戦略、などなど、などなどを維持するだけが仕事の大学スタッフの幹部たちが登場します。 それらは、およそ大学の真価とよべるもの、すなわち教授活動と教育とからは、まったくかけ離れたところで起きている現象なのです。
P.86

そう、この経営管理主義ってやつが諸悪の根元にある。

これに関しては、正直ブルシット・ジョブよりも『測りすぎ』を読むことをお勧めしたい。


仕事にやりがいを求めてしまう

わたしたちのほとんどが、仕事以外の要素で自分を定義するほうを好ましいと考えている。それにもかかわらず、逆説的なことに、みずからの生に究極的な意味を与えてくれるものは仕事であり、失業は精神に破壊的な影響を及ぼすのだといった見解が、ひんぱんに人びとの口からあらわれるのである。
P.312

仕事ってのは、承認欲求や自己効用感を感じさせてくれるものとしての役割が、
普段我々が思っている以上に強いんだろうなぁ。
なので、人生における仕事の優先順位がバグってしまう。

この本読んでいて面白かったのは、人はブルシット・ジョブに耐えられないと言うこと。
完全に無駄な仕事。それは負荷も無く、お金ももらえるならいいじゃないかと思うんだけど、そうじゃないみたい。
何もしないで金もらえるならいいじゃない?と思っても、
いざそう言う立場になった人たちは耐えられなくなってやめていくそうだ。

ブルシットと雇用

ブルシット・ジョブを一層するとどうなるか、、、、
雇用が失われる。保険の営業とか、世の中には、合理的には無くていい仕事が多くある。
何年で無くなる職業みたいなリストが話題になるけど、
それを加速させることは本当はできる、でもなくならない。
なぜならそこには雇用を守らないと失業者だらけになっちゃうと言う政策的な思惑もあると言う話。

でもそれなら、もう徹底的な合理化と富の再配分を見直す方が良い気がするな。
無駄を省いてベーシック・インカム的なものを増やそう、と言う方向に世界が向いていったら、楽しそう。

「君がすぐれたマネジャーなら、部下が君をリーダーにしてくれる。リーダーをつくるのは君じゃない、部下なのだ」エリック・シュミット/1兆ドルコーチ

スティーブ・ジョブスエリック・シュミットラリー・ペイジ
それらシリコンバレーの偉人たちの共通のコーチ、
それがビル・キャンベル。

そのビル・キャンベルのコーチングをエピソードと共にまとめたものがこれ。
悩めるリーダー、管理職に捧げる実用的な本。

リーダーを作るのは部下

そこで語られる内容は結構日本人にはなじみやすいというか、
東洋的というか、儒教っぽいというか、とにかく「信頼」が大切だよね。ということ。

「どうやって部下をやる気にさせ、与えられた環境で成功させるか? 独裁者になっても 仕方がない。ああしろこうしろと指図するんじゃない。同じ部屋で一緒に過ごして、自分は大事にされていると、部下に実感させろ。耳を傾け、注意を払え。それが最高のマネジャーのすることだ」
P.66

1 on 1も親身になって相手に関心を持つこと。リーダーには部下への信頼、部下からの信頼が不可欠。

「君がすぐれたマネジャーなら、部下が君をリーダーにしてくれる。リーダーをつくるのは君じゃない、部下なのだ」
P.67

雑談から始める

必ず雑談をし、その本人に関心を持って接していたらしい。

「人を大切にするには、人に関心を持たなくてはならない」。
P.235

そして上司より同僚との関係が大事というのもさらっと書いてるけどとても重要なこと。
チームで働く、自分よりもチームを優先して働けるようになるには、
同僚との関係が最も重要だからだ。

ビルはムダ(ではない)話をしてから、仕事の進み具合に移った。何に取り組んでいるんだ? うまくいっているのか? 何か力になれることはあるか?
続いて、必ず同僚との関係に話題を移した。ビルは上司や上役よりも、同僚との関係を重視した。
P.85

決着をつける

最適解がどうしても出ない時は、マネジャーが決める。

「マネジャーの仕事は議論に決着をつけることと、部下をよりよい人間にすることだ」とビルは言った。「この方針で行くぞ。下らん議論はおしまいだ。以上」と宣言するんだ」
P.95

でもなるべく当事者間で話合わせて最適解を見つけ出させるというプロセスはとても重要。

しっかり議論をすれば、10回のうち8回は、部下が自力で最適解にたどりつくだろう。
だが残りの2回は君が苦渋の決断を下し、全員が従ってくれることを期待するしかない。
円卓には上座がないが、その背後には玉座がなくてはならない。
P.97

偽情報が千五百人に伝わる速度は事実が伝わる速度より六倍も速い 松原美穂子/サイバーセキュリティ

個人情報の流出など、身近なサービスでも事故が起きる昨今m
セキュリティの最前線は一体どういうことになっているのか知りたくて手にとった。

そしたらそこには想像以上の世界が広がっていて、
サイバー空間はある種の紛争状態というか、
狙われたら、なかなか防ぎ切れないほど攻撃は高度化しているという印象。



まるで映画の世界!?

これはもう破壊工作というか、スパイの世界の話ではあるけれど、
こんなことが実際に行われているわけで、しかもテクノロジーは日々進化している。
企業もコンピューターによる制御無くしては成り立たなくなってきている今、
依存度が高まれば高まるほどセキュリティリスクは増しているということでもあるということは、
よくよく認識しておいた方がいいのだろうな。

このサイバー攻撃では、「スタックスネット」と呼ばれるウイルスが初めて使われ、インターネットにがっていない核燃料施設にUSBメモリを介して侵入・感染し、機器の破壊という被害をもたらしました。(中略)ナタンツの施設にあるコンピュータシステムは、インターネットに接続されていませんでした。そのため、CIAとイスラエルはイランの技術者の中に協力者を得て、ウイルスを仕込んだUSBメモリを施設内に持ち込み、そこから感染を広げました。そして〇九年後半〜一〇年初頭に、周波数変換装置サイバー攻撃を掛け、遠心分離機の回転速度を上下させることで過度の負荷をかけたのです。しかも核燃料施設で働いている現場の職員が遠心分離器の異常に気付くのを遅らせるため、攻撃者は、施設のモニターには正常値を示し続けるようにするという手の込んだ仕掛けをしていました。
松原実穂子『サイバーセキュリティ』P.42 - P.43

偽情報は真実の6倍早く伝わる

セキュリティを突破されるようなサイバー攻撃的なもの以外にも、
企業のブランドやイメージを毀損するような言説が流布されると言った
レピュテーションリスクもどんどん高まっている。

例えデマだとしても、信じる人がいるし、デマほど早く拡散するし、
デマでした、という訂正は、デマほど多くの人に届かない。

結局「客観的な事実よりも、 個人の感情に訴える言論の方がたとえ虚偽であっても強い影響力を持つ」というのは
普遍的な真理なのだろうからとても厄介な話。

今、世界で懸念されていることの一つに、SNSを介したデマ拡散による世論の操作やビジネス活動の混乱があります。オックスフォード英語辞典は二〇一六年、「今年の言葉」に「ポスト・トゥルース(脱真実)」を選びました。世論の形成において、客観的な事実よりも、 個人の感情に訴える言論の方がたとえ虚偽であっても強い影響力を持つという意味の言葉です。
 恐ろしいことに、例えばツイッターでも、偽情報の方が事実よりもリツイートされる可能性が高く、しかも、偽情報が千五百人に伝わる速度は事実が伝わる速度より六倍も速いというのです。米国のマサチューセッツ工科大学が一八年に行なった研究で明らかになりました。
松原実穂子『サイバーセキュリティ』P.56 - P.57


成功への抜け道ではなく、多大な努力と挫折の積み重ねの上にできた成功への獣道 アレックス・バナヤン/サードドア

精神的資産の増やし方、とか自分の殻を破るとかって帯に書いてあるから、
内省的な話なのかしらと思っていたのだけど、全然そんなんじゃなかった。

少年が困難や壁にぶつかりまくりながらも前に進むドキュメンタリー。
なので、小難しい話が苦手な人でも楽しめる。

別に楽な抜け道ってことじゃない

ちなみにサードドアの由来をご紹介。

僕がインタビューした人たちはみんな人生にも、ビジネスにも、成功にも、同じやり方で向き合っている。僕から見たら、それはそれはナイトクラブに入るのと同じようなものだ、常に2つの入り口があるんだ。
 「まずファーストドアがある」と僕はマットに言った。
 「正面入り口のことさ。長い行列が弧を描いて読き、入れるかどうか気をもみながら99%の人がそこに並ぶんだ」
 「次にセカンドドアがある。これはVIP専用入り口で、億万長者、セレブ、名家に生まれた人だけが利用できる」。マットはうなずいた。
 「 学校とか普通の社会にいると、人生にも、ビジネスにも、成功にも、この2つのドアしかないような気分になる。でも数年前から僕は、常に必ず⋯⋯サードドアがあることに気づいたんだ。
 その入り口は、行列から飛び出し、裏道を駆け抜けて、何百回もノックして窓を乗り越え、キッチンをこっそり通り抜けたその先に、必ずあるんだ。
アレックス・バナヤン『サードドア』P.334 - P.335

正直最初は誰も何も持ってない、みんなそこから始まるんだけど、
そういう時に人と同じことをしていたらダメだって話。
正面玄関に行儀よく並んでいたって誰も注目なんかしてくれない。

これは別にズルをしろとかそういうことじゃなくて、
サードドア目指して足搔けってこと。

自分の頭で考えて動け、という一方で、そうした結果、
動いた分だけめちゃくちゃ失敗するし、めっちゃ凹む。
そんな等身大の姿がこの本にはある。

成功への抜け道、と帯にあるけれどこれは別に抜け道なんかではなくて、
多大な努力と挫折の積み重ねの上にできた成功への獣道だと思う。

伝え方がすべて

 「お前がわかってないのはここさ」とエリオットが言う。
 「お前はみんなが、自分のやったこと自体に興味を持ってると思ってるだろ。なんせ有名なテレビ番組の話だしな。でも大事なのはそこじゃない。伝え方こそが大事なんだ」
アレックス・バナヤン『サードドア』P.136

自分の経験、考えていること、伝え方がすべて。
エレベーターピッチなんてことが良く言われるけど、
お偉いさんとエレベーターで乗り合わせたとき、その数十秒で、
自分の考えをいかにコンパクトに、そして鮮烈に印象づけるか。

伝え方には工夫しすぎて無駄なことはない。

見えない努力

ウォーレン・バフェットのエピソードは印象深い。

 他の人は報告書の上っ面しか読まないのに、バフェットは小さな活字の上から下まで丁寧に目を通し、一言一句をチェックして手がかりを探すんだ。
 脚注を読むのは天才でなくたってできるよね。選択の問題なんだよ。時間をかけて、努力に努カを重ねて、他の人がやりたくないことまで引き受ける。それを選ぶかどうかだ。
アレックス・バナヤン『サードドア』P.220

皆すべからく努力している。凡人がしないことを、しっかりと確実にやっている。
そういう地道な努力が成功を支えているのは事実で、決して楽ちんルートがあるわけじゃない。
サードドアは、売り出し方が成功の秘訣を教えるよ的な雰囲気をまとっているけれど、
実はその内容はとてもまじめで堅実な真理を自分の体験を通して伝えようとしてくれている。

なので、なんか胡散臭いなと思っていた人こそ読んでみて欲しい1冊。




開発ど素人のマネジメント層に読ませたい名著。 及川卓也/ソフトウェア ファースト

あるべき開発の姿。
最近、システム開発とはどうあるべきかというのを
考える機会が多かったので、書いてることに頷くことが多かった。

そしてここにもOKRが登場していた!!
マネジメントツールとしてはとても良さそう。


狩野モデル

狩野モデルは顧客満足と品質の関係を5つのパターンに類型化したもの。
追求しても仕方のない品質を追求していないか。
色々な機能、サービスを網羅的に追求しても仕方がなくて、
クリティカルなものを見極める必要がある。

自分たちのサービスの何がこだわるべきポイントなのかを整理するのに
この狩野モデルは有益な気がした。
P.79

開発ど素人のマネジメント層に読ませたい名著。

ビル・ゲイツが新刊を楽しみに待つ作家、それがシュミル。 バーツラフ・シュミル/エネルギーの人類史

ビル・ゲイツがその著作をほとんど読んでいると言うバーツラフ・シュミル。
ネットフリックスでやっているビル・ゲイツのドキュメンタリーでも登場していて、
そこで気になって買ったのでした。

人類の歴史をエネルギーを光や熱に変える技術の歴史と捉え、
あらゆる論文を横断しながらエネルギーの人類史を描いていく。

この学術論文に根ざしながら、学問の領域を横断していく人はなかなかいない。

エネルギーの人類史 上

エネルギーの人類史 上

エネルギーの人類史 下

エネルギーの人類史 下

全てをエネルギーとかエネルギー効率の視点で見ていくので、
考えたこともない世界観でとても面白い。

例えば、馬。

ウマは持久性も高く(ウシの1日の労働が四ー六時間なのに対し、ウマは八ー一○時間)、さらに長命でもある。ウシもウマも三、四歳から働き始めたが、通常ウシの勤続年数が八年から一〇年であるのに対し、ウマは一五年から二〇年にわたって働いた。そしてウマの脚は、この動物に独特の強みを持たせる骨格構造をしている。立つことにかかるエネルギーコストがほぼ要らないのである。
バーツラフ・シュミル『エネルギーの人類史 上』P.126

立ってるだけならエネルギーコストがほぼ要らないってすごい。
人は立ってるだけでも疲れるのに⋯⋯。

さらに大航海時代もエネルギーの視点で見るとこうなる。

ヨーロッパでは、中世後期になって四角形の横帆と三角形の縦帆が併用されてから、初めて船首をできるだけ風上に向けながら帆走できるようになった。時とともに、帆船の帆はますます数が多くなり、掲げられる位置も高くなり、調整も色々と利くようになった。(中略)帆船は比類なく効率的な風エネルギー変換機になった。加えて、この組み合わせをさらに圧倒的に強力にしたのが精密な重砲の搭載だった。一四世紀と一五世紀のあいだに西ヨーロッパで発達した砲艦は、前例のない長距離拡張の時代へと突入していった。イタリアの経済史学者カルロ・チポラが、これらの船の特徴を的確に言いあらわしている(Cipolla, 1965, 137)
本質的にはコンパクトな装置であり、比較的少人数の乗組員で、前代未聞の無生物エネルギーの塊の移動力と破壊力を操作できる。ヨーロッパの唐突かつ急速な勢力拡大の秘密は、すべてここにあった。
バーツラフ・シュミル『エネルギーの人類史 上』 P.322

こんなのもこの本を読む前は得られなかった視点。

そして農作物もまた、エネルギーの産物であり、
農業のエネルギー源が何かというとそれは太陽エネルギーではなく、石油なのだ、と。

地球の収容力は耕作中の土地の面積に比例し、太陽エネルギーの使用によって高効率を達成することができた、と。残念ながらこれは嘘だ。なぜなら、産業人はもはや太陽エネルギーから作られたジャガイモを食べないからだ。彼が食べるのは、一部が石油でできたジャガイモだ。
バーツラフ・シュミル『エネルギーの人類史 下』 P.149 - P.151

我々が食べているのは石油でできたジャガイモ!
石油でできた服を着て、石油でできた灯のもと、石油でできた本を読み、、、、
それが良い悪いではなく、エネルギー源とエネルギーの変換効率の歴史のなかで、
今ってそういう時代なんだよっていう話。
そしてそんな石油に関するあまり知られていない事実。

(なぜかこの事実は注目されていないが、)西欧の政府は石油から OPECよりも多くの利益を上げているのだ。たとえば二〇一四年の石油1リットル当たりの代金は、その四十七パーセントがG7諸国への税金で占められ、産油国の利益はおよそ三十九パーセントにすぎない。
バーツラフ・シュミル『エネルギーの人類史 下』P.203

ちゃっかりと都合のいい仕組みになっているんだね。
そして、エネルギーの効率的な変換が人類を進歩させてきたのに、
必ずしも人は合理的にエネルギーを使わない。
その最たるものが自動車なんだそうな。
これは自動車メーカーとしては非常に辛い指摘。

 多くの人が都市でも自動車を運転したがるのは、自動車を使う方が早いと思われているからだが、これはエネルギーの不合理な使い方の完璧な一例である。自動車を購入する(あるいはリースする)費用、その後の燃費、維持費、保険代を稼ぐのに必要となる時間を計算に入れると、アメリカの自動車の平均速度は、一九七〇年代諸島で時速八キロメートル未満となり混雑度合の増した二〇〇〇年代初頭では、高く見積もっても時速五キロメートルで、一九〇〇年以前に乗合馬車が出していた速度とほとんど変わらず、さらに言えば徒歩とだって変わらない。しかも、「油井から車輪まで」の効率が一〇パーセントをゆうに下回ることを考えれば、自動車はいまだに代表的な環境汚染源だ。
バーツラフ・シュミル『エネルギーの人類史 下』P.312

エネルギーの無駄が多すぎる移動手段。
都市部では電動自転車がいいのかも?なんて思ったのでした。

しかし、エネルギー視点で見た世界というのは新鮮だった。
世界はいろんな視点で見ることができる。


エネルギーの人類史 上

エネルギーの人類史 上

エネルギーの人類史 下

エネルギーの人類史 下