流通に関する入門書。
入門用なのでかなり平易にまとめてくれており、
要するに流通とはどういうもので、どういった変化が起きたのか、
という概要が把握できる。
「理論」はほとんど出てこないが、巻末におすすめの文献リストを付してくれているので、
ここからさらに深掘りしたくなった時、何を読めばいいのかの指針にもなった。
初学者がまず読む本としておすすめ。
ベーシック流通と商業 新版 -現実から学ぶ理論と仕組み (有斐閣アルマ)
- 作者: 原田英生,向山雅夫,渡辺達朗
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2010/02/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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生産者と商業者の利害は一致しない
その意図はともかくとして,消費者の適切な商品選択にとって大きな手助けとなる。この役割を,商業の社会性という。商業者が特定の生産者に味方して,その生産者の商品ばかり薦めるのではないということから,生産者に対する商業の中立性ともいう。商業に社会性・中立性があるということは,商業者と生産者では,基本的にその思考が異なるということでもある。生産者は,あくまで自分のつくった商品を消費者が購入してくれるかどうかということに利害がある。それに対して,商業者の利害は,相互に競争している生産者のものを含めて,取り扱っている商品全体の販売動向である。つまり,生産者と商業者の利害は完全には一致しないのである。
P.19
メーカーと流通はそれぞれ違う思惑で動いている。
当たり前なんだけど、だからこそ流通は大事なわけだ。
メーカーにとって流通をコントロールできたらどれだけ良いだろう、
そういう所から販社だったり、系列化ってのが出てきたんだろうな。
乱売の抑制、価格の維持
メーカーがマーケティング・チャネルを形成した1つの理由は,小売段階での価格をできるだけ維持したいということにあった。そこで,中小小売店をマーケティング・チャネルに組織化し,安売りをする大手スーパーには取り扱わせないというメーカーも現れたO 1960 年代から70 年代前半にかけては,そうした対立があちこちでみられた。しかし, 1970 年代後半あたりから,総合スーパーなどの大規模小売組織も,単なる安売りだけでは消費者の支持が得られない,消費者に魅力のあるアソートメントを提供する必要があると,方針転換し始める。また,小売業全体のなかで大きなシェア(占有率)を占めるようになった大規模小売組織を,メーカーとしても無視できなくなる。そこで,大規模小売組織はむやみに安売りしない,大手メーカーは大規模小売組織に対して優先的に商品を供給する,という両者の妥協が成立するようになってくる。大規模小売組織のシェアがさらに高まると,販売上少しでも有利な場所(たとえば,食品スーパーなどにおける売り場の棚の位置)に自社の商品を並べてもらおうと多額のリベートを提供したり,小売店の広告費を肩代わりしたりといった利益供与がなされたりするようになる。このように, 1990 年前後までは,大手メーカーと大規模小売組織とはイコール・パートナー(対等な協力者)という関係ではなかった。それが,90 年代に入って変化し始めている。
P.88 - P.89
流通の歴史を見ると、ほとんどの業界でメーカー側の狙いは価格統制。
それが販社や系列店へという流れに。
それが大規模小売組織が出てきて、小売り店の売上上位集中度が高まってくると、
小売り側が交渉力を持つようになり、メーカーが無視できなくなる。
大きな流れはこんな感じ。
80年代以降,小売業界においては大規模小売組織の成長とその反面での中小小売商の衰退という構造的な変化が進展した。その結果,大規模小売組織の販売額が小売業の総販売額に占める比率が高まっていった。同時に,大規模小売組織のなかでも上位と中下位との販売額の格差が徐々に拡大していき,大規模小売組織の上位集中化が進展した。なお,このような小売段階の変化を促したもう1つの要因として,大規模小売店舗の出店規制の緩和をはじめとした流通政策の転換を挙げることができる。
P.122
大店法は確かにエポックメーキング。
法律がこんなにも現実世界を変えるのかっていう例だな。
小売段階において大規模小売組織が成長して上位集中化するということは,当然,彼らの仕入量が増大することを意味する。その結果,大規模小売組織は,そうした大量仕入れ・大量販売の力,すなわちバイイング・パワー(購買力)を背景にして,卸売業者やメーカーとの取引交渉を有利に進めることができるようになる。その交渉の内容は,当然,価格面の条件が中心になるが,発注方法,支払い条件,納期・配送方法など多様な側面に及ぶ。そのため,そうした大規模小売組織の要請に応えられるかどうかが,卸売業者やメーカーにとって重要な課題となるのである。
P.124
卸にとっては小売りが強くなられると非常につらい。
卸の部分が寡占状態とかなら耐えられるだろうが、そうでない場合、
一気に卸の合従連衡、淘汰が始まる。
このパワーバランスが再び崩れることってあるのかな。
卸から小売りに移ったパワーがまた卸に戻りましたみたいな事例。
アウトレット
1970年代にアメリカで生まれ急速に成長したアウトレット・モールが,最初にわが国にできたのは93年3月開業の厂マーケットシーン・リバーモール」(神戸六甲アイランド)であった。
P.167
へー、そうなんだぁ!
これは単なるメモ。
直取引
すでに外資系小売企業や国内資本の大規模小売組織との間で,卸売業者を介さずに,メーカーから直接仕入れを行おうとする動きが広がりつつある。
P.178
これは新たな流通不要論。
たしかに大規模店、もしくは大規模チェーン店が増えてくると、
調達は本部一括、メーカーと直取引でとにかくコストを抑える、ってのはそうなるよな。
卸としてはそういう動きを取る小売りに制裁措置がとれれば良いのだけど、
もはやそんな力は残っていない、ということか・・・
卸の生き残りの道
従来,標準的な食品スーパーと加工食品卸との関係の場合、食品スーパーの加工食品の仕入額構成比は20%程度で(仕入額構成比がもっとも高い分野は生鮮食品),そこに少ない場合でも数社,多い場合には十数社から数十社に及ぶ卸売業者が取引関係をもつのが一般的であったといわれる。
隣接分野の菓子や酒類,日用雑貨品においても,状況はほぼ同様である(なお,酒類については,免許制度がしかれており,卸売販売は卸売免許がないと,小売販売は小売免許がないと行えない)。
これではいずれの分野においても,1卸売業者当たりの小売との接点は,わずか数%にも満たないことになる。
こうした卸売業者からみた販売依存度の高さと,小売側からみた仕入依存度の低さというアンバランスによって,卸売業者は大規模小売組織に対して不利な状況に置かれることになる。
たとえば,情報という側面からみても,卸売業者は自社取扱商品に限っての商圏内情報や地域間比較情報はもてるにしても,競合品を含めた商品部門単位,あるいはそれより下位の分類である商品カテゴリー単位の情報はもてないという制約を負わされる。
これに対して,アメリカの食品スーパーの場合,大手のほとんどはチェーン本部がメーカーとの直接取引によって商品調達を行っているが,中堅以下になると,グローサリー・ホールセラーと呼ばれる卸売業者がチェーン本部の機能を補完し,1社でおよそ80 %の商品をフルライン・一括供給するのが普通である(残りの20 %はメーカーからの店舗直送など)。
その意味で,わが国の加工食品業界における大手卸売業者の動きは,従来,商品別・地域別に形成されてきた流通システムを切り崩して,アメリカ型のグローサリー・ホールセラーヘの脱皮を図るものということができる。
P.199 - P.200
中小小売りが撲滅されない限り、そこに向けた卸としてのニーズは存在するということか。
ただ、イオンが手がける小型スーパー「まいばすけっと」みたいなもんが、
全国に広がっていくと中小小売りも駆逐されてしまうのではないか、という懸念も出てくるな。
ベーシック流通と商業 新版 -現実から学ぶ理論と仕組み (有斐閣アルマ)
- 作者: 原田英生,向山雅夫,渡辺達朗
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