ビジネス書大好きMBAホルダーが教える私の学びシェア

本を読んでそこから新しい知識を得たり、学んだりすることが大好き。学びたい、成長したいという意欲のあるビジネスマンの皆さん、一緒に成長しましょう。

現場が学んで、やってみようと思えるように平易に書いてあるのがいい感じ。 有村友見/トップ販売員が使っている売れる販売心理術

接客業というのは、望むと望まないとにかかわらず心理的な影響からは逃れられない。
自分も、お客様も。

意識しているかどうかは別として、成功する人にはそれだけの理由がある訳で、
自分に対しても、相手に対しても、心理的にプラスな影響を与えている行動をしている。

それを具体的に書いているのがこの本。

〈完全版〉 トップ販売員が使っている 売れる販売心理術 (Asuka business & language book)

〈完全版〉 トップ販売員が使っている 売れる販売心理術 (Asuka business & language book)

この本がちょうどいいのは、上記のような話を、具体的かつ平易にまとめていること。

結局小難しく書いても、読まないし身にならないんだよね。
相手は別にMBA持ってますとかそういう人たちじゃない訳で。

これなら読んでみな、と渡すこともできるだろうし、
1つ1つ実践していきましょう、なんて使い方もできそう。

そういう意味では非常に現場向きの本。

そもそも自身がポジティブ思考じゃないとダメってことから、
じゃあどうやってポジティブに捉えるかというリフレーミングの話をしたり、
平易なんだけど内容はちゃんとしているからちと感心した。

スタッフに渡してみよう。

〈完全版〉 トップ販売員が使っている 売れる販売心理術 (Asuka business & language book)

〈完全版〉 トップ販売員が使っている 売れる販売心理術 (Asuka business & language book)

点で考えず、点の集合体であるかたまりで捉えるのが肝。アパレルMDの基本をまとめた良書。田村登志子/実戦!リテールマーチャンダイジング

アパレルの基本を学び直そうと思って読んでみた。

アパレルMDの5適

MDが追求するべき5適。しかし言うは易し、行うは難しの典型だけどな。

①適品 シーズンの方針に基づいた最適な商品の開発と構成
②適所 基本コンセプトにおけるターゲットにとって最適な売り場の選択
③適時 販売時期を想定したシーズン内の適切な納期計画
④適量 販売における適正な数量の設定と生産ロットの検討
⑤適価 商品の価値に対する適切な価格設定
P.26

まぁ、これだけ言われても、できたら苦労しねーよ、と言いたくなるよね。
で、これをリテール(小売)の5適だとどうかを考えると微妙に変化が起きる。

①適品 シーズンの方針に基づいた最適な商品の品揃えとその構成
②適所 商品または商品群に対して売り場内の適正な販売場所の設定
③適時 販売時期を想定したシーズン内の適切な商品展開計画
④適量 売り場のFKUに対して適切な商品量と販売に対する商品量の確保
⑤適価 商品の価値に対する適切な価格設定
P.32

うむ。言ってることは正しいと思うが実行するのが難しいのだ。

仕掛け

仕掛けの連打なんだよね、それで常に山が来るようにするんだよ。

シーズン中の売り上げの山と、山を作るための施策をいかにリンクさせるかがポイントです。複数あるMDサイクルの山を連ならせて、一定の売り上げをキープさせるために仕掛けを施します。一つの大きな山(MDグループ)に依存すると、それが作れなかった時のダメージが大きく、立て直しが困難になります。そうならないために、一つひとつのMDグループにおいて、それぞれきめ細やかにしかけを作ります。MDグループ内の商品と連動させたフェアを企画し、山の紹介期に見て欲しいものを実需期に購買してもらえるように、フェアの告知を商材の確保を行います。
P.112

品揃えと売り場

什器の台数から計算してFKUを算出する。
当たり前なんだけどこれちゃんと計算しないと、店頭あふれるんだよね。。

売り場に「どの大きさの重機が何台入るのか」を確認します。これは、売り場のFKU(フェイス・キーピング・ユニット)を算出することです。
P.195

お客様がストレスなく行き来できる幅は600ミリです。2人がすれ違うことができる幅はその2倍、1200ミリとなります。これは、少しゆったりとした通路幅であり、お客様は必ずバッグを持っていたり、冬場であればコートを着ていたりするため、それを考慮しています。また、お客様が重機に向かって商品を見ている際に、その後ろを他のお客様がすんなりと通れる幅は900ミリとなります。
P.216

定量の適正化

MDは科学である。

「シーズン売上予算」から、「アイテム別予算」を設定した後、アイテム別金額構成比が明らかになります。そこからMDグループへの落とし込みを行い、商品レイアウトで、展開するMDグループの配置を決めます。すなわち、アイテム別予算がMDグループに分散され、売り場における配置が明らかになるということです。
P.204

結局、点で考えないと言うのが重要なことのように思うが、ついつい商品は点で捉えがちになってしまう。

かたまりとは、「点」を集め、集合体にすることです。マーチャンダイジングは、点で物事を語りだすときりがない上に、点の種類によっては間違いを起こしやすくなるのです。
この間違いはとても怖いのです。一度間違えると、また別の点を追いかけてしまう傾向にあり、どんどん深みにはまってしまいます。そのため、点を集合体にして、それぞれのかたまりを扱うようにします。
P.252

CVCに関して総花的な話がボヤーっと書いてある。 アンドリュー・ロマンス/CVC コーポレート・ベンチャー・キャピタル

全然異業種なんだけど、興味あるからお勉強だと思って読んだ。
総論的な本。そして総論的な本よりももう少し実務的な本が読みたいのだけど、
まずは全体像のイメージ掴めればいいのかね。

CVC コーポレートベンチャーキャピタル――グローバルビジネスを勝ち抜く新たな経営戦略

CVC コーポレートベンチャーキャピタル――グローバルビジネスを勝ち抜く新たな経営戦略

立場によるギャップとか人員数とか

まぁ、確かに立場によって視座の高さは違うよなぁ、とは思うが、
これはどういう意識で取り組むべき仕事かってのはわかるだろう、とも思う。

この懸念の原因の1つに、役員クラスの幹部たちと中間管理職の視点の違いがある。役員クラスの幹部たちはスタートアップへの投資で50〜200万ドルを失っても、それがスイスコムのような巨大企業の業績を左右するとは考えていない。一方、中間管理職は50〜200万ドルの損失を出すことを恐れており、大局的な視点を持っていないのだ。
P.47

それと、ある程度規模が大きくなっても、これくらいの人員数が適当という話。
こういうさりげないけど具体的な一節が、後々役に立ったりするよね。

私たちがスイスコム・ベンチャーズを開始したときは戦略事業部の人員を引き継いだのだが、すぐに規模を小さくした。最終的には、45〜65人の規模で働くのが一番やりやすかった。逆に言えば、このことに気が付かないと、非常に非効率なVCとなってしまう。
P.50

報酬体系

成功報酬をインセンティブにして経済的なリターンを得られる投資をするよう仕向ける。
給与体系が固定的な企業だとここが引っかかるんだよね。
別会社にするしかないのかな。

理想的には、経済的な面で動機付けをすることによって、戦略的な投資とともに経済的なリターンを会社にもたらしたことについて、CVCチームに報いるべきだろう。しかしここで問題となるのは、正確な戦略的価値をドルベースで客観的に評価することが極めて難しいという点である。これに対して、経済的なリターンの計測は金銭換算が可能である。したがって、経済的利益を生むようCVCチームに対してインセンティブを与え、利益をシェアすれば、最終的には私たちの顧客が欲しがるような技術を生み出しているスタートアップに投資する体制の構築に繋がる(すなわち戦略的価値の追及にも繋がる)だろう。
P.67

結局、他のCVCと比べて報酬体系が見劣りすれば、そりゃ優秀な人材来ないよね、っていうこと。
人の金をケチると失敗する。

通常のVCと同じ方針でチームメンバーに報酬を与えること
伝統的な2:20モデルではなく、給与と経費をカバーできるだけの予算と約20%のキャリー(成功報酬)を確保することが重要である。なぜなら、これがないと、そのCVCは投資の才能がある人材を採用・雇用し続けることができなくなってしまうからである。人材こそ重要であり、不適切な人材は全てを台無しにしてしまう。CVCの90%は人材で失敗している。(中略)「昨年破産してしまった会社に投資しても、戦略的なメリットは何も得られない」。CVCがどれだけ存続できるかは、投資よりも多くのリターンを得ることができるか否かに懸かっているのである。
P.76 - P.77

戦略的/財務的

やりたいことは戦略的投資としてのCVCなのでビジネス部門との協調は不可欠だろうな。

CVCが戦略的投資家と財務的投資家のいずれかであるかを区別したいのであれば、投資の承認プロセスに着目することだ。
ビジネス部門のサポートなく投資の承認が得られるのであれば、戦略的投資家ではない。
また、投資先を統合することを意図していないなら、戦略的投資家ではない。投資委員会に誰がいようと、ビジネスサイドの同意やサポートなしに投資ができるのであれば、そのCVCは財務的投資家である。
P.110

大企業感覚からの脱却

この辺の感覚って結構難しいかも。
法務は最初は外の弁護士使ったほうが良いってアドバイスは結構聞く。
本体の法務だとガチガチ過ぎて、自社を守るための契約書作っちゃうから、
合意形成できないし、そんなんだと投資先からも相手にされないそうな。

スタートアップと連携するための正しい仕組みを見つけよう
CVCは、とことんスタートアップをサポートしなければならない。また、スタートアップを締め付けるのではなく、彼らにとって有利な契約を締結しなければならない。大企業との間の契約のように、相手から一方的に何かを獲得したりリスクを相手に押し付けたりするような態度で臨むのは厳禁だ。
P.121 - P.122

CVC コーポレートベンチャーキャピタル――グローバルビジネスを勝ち抜く新たな経営戦略

CVC コーポレートベンチャーキャピタル――グローバルビジネスを勝ち抜く新たな経営戦略

なんてことはない、ひたむきに努力と工夫を続ける人なんだな 松浦勝人/破壊者 ハカイモノ

音楽業界のことはよく分からないし、
なんならあんまりTKブームとかにも夢中にならなかった方なんだけど、
エイベックスは昔から聞いたことあったし、この方の名前くらいは知ってた。

で、その人の本が出たってことでとにかく読んでみたのだけど、普通に面白い。

破壊者 ハカイモノ

破壊者 ハカイモノ

レンタルレコード店のバイトからここまで来たこと、
小室哲哉とか浜崎あゆみとかEXILEとか、誰もが知っているヒットの裏側での苦労や工夫とか、
JASRACから離脱してみたりとか、
経営を学んでみたり、とか
TOEICの試験受けてみたり、とか。

超金持ちでウェイウェイしまくってるイメージよりは、ごく普通の、努力家の姿がそこにある。

MBAの世界とかだとよくあるどんな会社でも再建します、プロ経営者ですって感じじゃないんだよね。
好きな業界でがむしゃらに走ってたらたまたま社長やってるだけって感じのタイプ。

他の人には再現性ないかもしれないけど、そういう人の方が超絶面白い。

ものすごくいろんなチャレンジをしていることがわかったので、
未来型花火エンタテインメント、STAR ISLANDを見に行きたくなったぞ!

破壊者 ハカイモノ

破壊者 ハカイモノ

人類の歴史に対して、距離を取りながら俯瞰する知的な書。 ユヴァル・ノア・ハラリ/サピエンス全史

各界で絶賛されている『サピエンス全史』、
続編の『ホモデウス』が出たので、読んでみた。

我々、人類(ホモ・サピエンス)の歴史をわかりやすく概観する名著。
概観するとともに、とても客観視している。
歴史に対して、距離を置き、俯瞰し、メタ認知するその姿勢自体がとても知的だ。


サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

火と腸と脳

火を使えるようになって調理できるようになった。
調理が可能になったことで消化しやすくなった。
消化しやすくなったから、腸を短くできた。
腸を短くできたから脳を大きくできた。

調理をするようになったおかげで、人類は前よりも多くの種類の食物を食べたり、食事にかける時間を減らしたりでき、小さな歯と短い腸で事足りるようになった。調理が始まったことと、人類の腸が短くなり、脳が大きくなったことの間には直接のつながりがあると考える学者もいる。長い腸と大きな脳は、ともに大量のエネルギーを消費するので、両方を維持するのは難しい。調理によって腸を短くし、そのエネルギー
消費を減らせたので、図らずもネアンデルタール人とサピエンスの前には、脳を巨大化させる道が開けた。
上巻 P.25 -P.26

虚構(フィクション)の発明=認知革命

集団で見る夢、共同幻想、そういったものが集団をドライブさせているということでもある。
その時々で、集団はある種の幻想に囚われている。それが社会に通底する共通の価値観に繋がっている。
例えば王権神授説も主権在民も、その時々の都合に合わせて作られた幻想に過ぎない。
でも、今この共同体の幻想が分裂しだしている時代なんだろうな。
だからこそ人はすがるものが無く不安を感じたりもする。
そうすると揺り戻しが起こって、わかりやすい物語に加担したくなる。
ナショナリズムとか、わかりやすい物語にね。

だが、虚構のおかげで、私たちはたんに物事を想像するだけではなく、集団でそうできるようになった。聖書の天地創造の物語や、オーストラリア先住民の「夢の時代(天地創造の時代)」の神話、近代国家の国民主義の神話のような、共通の神話を私たちは紡ぎだすことができる。そのような神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。
上巻 P.40

古代コミューン説

父親が単一の核家族という形態が当たり前ではなかったという指摘。
このような古代コミューン的な仕組みはそれはそれで合理的だが、そうであるならば、
複数の能力(遺伝子)を取り入れるタイプの進化はなんで起きなかったんだろう。
そういう生物っているのかな??さすがにいないのかしら。
複数の精子を取り込んで1つの子供になっていく、みたいなのは現在の生物にはありえないことなんだろうな。
むしろそれが不可能だからこそコミューン的な発想になるのかもしれないが・・・。

子供は単一の男性の精子からではなく、女性の子宮にたまった精子から生まれると信じられている。良い母親はなるべく複数の男性と性交するようにする。妊娠中はなおさらだ。そうすれば、自分の子供は最も腕の良い漁師だけでなく、最も優れた語り部や、最強の戦士、いちばん思いやりのある恋人の素質(と、彼らによる世話)を享受できるからだ。これが馬鹿らしく思えたら、心に留めておいてほしい。近代的な発生学が発展するまでは、赤ん坊がいつも多数ではなく単数の父親によって母親の胎内に宿るという確証はなかったのだ。
上巻 P.61

農業革命は、史上最大の詐欺

この辺のくだりは刺激的。
狩猟民族から農耕民族への変化を基本ポジティブな進化として捉えてきたが、そうではないのだ、と。
小麦に人類は騙されたとする言説は非常に面白い。
小麦の世話をさせられる人類。それによって小麦は繁栄した。
小麦の栽培には手間がかかり見返りも少ないはずなのにそこから何を得たのか。
個としてのリターンが少なくても、種としての人類には意味があったというのがこの人の説明。
単位面積当たりの収穫量が増えることで人類は数を増やせた。
種にとっての最大の成功が数を増やすことなのだ、と。ただ、それは個人の幸福とは別の問題。

種としての人類の表向きの成功が、個体の多大な苦しみと密接につながっていた、という歴史観
面白いよね。

平均的な農耕民は、平均的な狩猟採集民よりも苦労して働いたのに、見返りに得られる食べ物は劣っていた。農業革命は、史上最大の詐欺だったのだ。
では、それは誰の責任だったのか?王のせいでもなければ、聖職者や商人のせいでもない。犯人は、小麦、稲、ジャガイモなどの、一握りの植物種だった。ホモ・サピエンスがそれらを栽培化したのではなく、逆にホモ・サピエンスがそれらに家畜化されたのだ。
上巻 P.109

個人の欲望も想像上の秩序から生み出される

想像上の秩序というのは、共同体に共通する価値観、幻想、夢、虚構、そういったもの。
◯◯がしたい、という個人の欲望もまたそういったシステムの影響を免れない。
そしてそのような秩序から生み出される個人的欲望こそが秩序をより強固にする原因に他ならない。
これは本当によくできた仕組みだよな。
個人が欲望に従い、自由(だと思って)に実現する欲望、それがシステムを再強化するループ。

たとえば、今日の西洋人が一番大切にしている欲望は、何世紀も前からある。ロマン主義国民主義、資本主義、人間至上主義の神話によって形作られている。忠告を与える友人はしばしば、「自らの心に従うように」と言う。だが、心は二重スパイで、大抵その時代の支配的な神話の指図に従う。
上巻 P.148

男女の区分

農業革命以降はほとんど、男性が良い目を見てきた。
上巻 P.184

この男女の区分、ヒエラルキーも社会的、文化的に形成された強固な虚構なんだよね。
この虚構もまた違う形にアップデートされようとしているけれど、
人類がその発想に至ったのはごく最近の話。

夫が妻を強姦しても、罪を犯したことにはならなかった。それどころか、夫が妻を強姦しうるという発想そのものが矛盾していた。夫ならば、妻の性的支配権を掌握していて当然だったからだ。したがって、夫が妻を「強姦した」と言うのは、自分で自分の財布を盗んだと言うのと同じで、筋が通らなかった。そのような考え方は古代の中東だけに限ったものではない。2006年現在で、夫が妻を強姦しても起訴できない国が依然として53カ国もあった。ドイツにおいてさえ、強姦法が修正され、夫婦間の合歓という法律のカテゴリーが設けられたのは、1997年だった。
上巻 P.184 - P.185

純正の文化などない

イタリアンのレストランではトマトスパゲッティが食べられて当然だと思っているけれど、カエサルも、ダンテもそんなもの食べてない。
トマトはメキシコ原産、イタリアの純正な文化、ではない。というか、純正な文化なんてものは今やないに等しい。
ナショナリストの妄信の類なんだろうな。そして正しい知識を持つことは重要よね。

私たちは相変わらず「純正」の文化ということをしきりに口にするが、独自に発展し、外部の影響を免れた古代の地元の伝統からなるものを指して「純正」というのなら、地上には純正な文化は一つとして残っていない。過去数世紀の間に、全ての文化はグローバルな影響の洪水で、ほとんど原形をとどめないほどまで変化してしまったからだ。
上巻 P.210

一神教の恐ろしさ

まぁ、共同幻想、虚構が持つ恐ろしさ。

ちなみに、ヴァザーリフレスコ画はこんな感じ。

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1572年8月23日、善行を重視するフランスのカトリック教徒が、人類への神の愛を強調するフランスのプロテスタントの諸コミュニティを襲った。聖バルトロマイの大虐殺と呼ばれるこの襲撃で、24時間足らずの間に5000〜10000のプロテスタントが殺害された。フランスからこの知らせを受け取ったローマの教皇は、喜びのあまり、お祝いの礼拝を執り行ない、画家のジョルジョ・ヴァザーリに命じて、ヴァチカン宮殿の一室を大虐殺のフレスコ画で飾らせた(この部屋は、現在、観光客は立ち入り禁止になっている)。その24時間に同朋キリスト教徒に殺されたキリスト教徒の数は、多神教ローマ帝国がその全存続期間に殺したキリスト教徒の数を上回った。
下巻 P.18

科学とイデオロギー

同時に、できることは禁じても必ずやる奴が出てくる。
世界が常に1つのイデオロギーに支配されているわけではないから。

科学は自らの優先順位を設定できない。また、自らが発見した物事をどうするかも決められない。例えば、純粋に科学的な視点に立てば、遺伝学の分野で深まる知識をどうすべきかは不明だ。(中略)自由主義の政府や共産主義の政府、ナチスの政府、資本主義の企業は、全く同じ科学的発見を全く異なる目的に使うであろうことは明らかで、その内のどれを選ぶべきかについては、科学的な根拠はない。
つまり、科学研究は宗教やイデオロギーと提携した場合にのみ栄えることができる。
下巻 P.88 - P.89

AIとか脳とか

このプロジェクトの進捗ってどうなんだろうね?
もう13年経過しているはずだけど。

2005年に始まったヒューマン・ブレインプロジェクトは、コンピューター内の電子回路に脳の神経ネットワークを模倣させることで、コンピューターの中に完全な人間の脳を再現することを目指している。このプロジェクトの責任者によれば、適切な資金提供を受けたなら、10年か20年のうちに人間とほとんど同じように話したり振舞ったりできる、人口の脳をコンピューターの中に完成させられるという。
下巻 P.256

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

テクノロジーや自然環境、国際紛争まで幅広い分野の“いま”を切り取ったルポ。 トーマス・フリードマン/遅刻してくれて、ありがとう

『フラット化する社会』の著者の最新作、というわけでとりあえず買った。
ちょっと、表紙が地味すぎるよね、というのが読む前も読んだ後も感じることなんだけど、
まぁ、それは良いとして、上巻はテクノロジーの進化とそれによる変化のルポ。
いくつかの具体例を交えながらの話は結構面白い。

下巻になると政治と紛争の話が増える。
私にとっては途端につまらなくなる。
でもそれがアメリカで生きる人々と、ガラパゴス日本で生きている自分の
興味関心の乖離なんだろうな。

自分のグローバル感覚の無さも浮き彫りになったような気がする。
ただ、別にそれでも自分は困らないし、インターネットの普及によっても、
別に世界はフラットになっていないのかもしれないとすら思う。
だって、そういったグローバルでの紛争や貧困を自分ごととして捉えられるような状況ではないから。
結局、国や地域は、分断されていることの証左かもしれない、なんて思ってしまった。

変化が早すぎる

私たちはテクノロジーの変化がものすごく早い世界に生きている。
過去の人類の歴史を振り返ると、それは早すぎるほど早い変化。
数百年スパンで起きてきたような変化が数年で起き続けているような、
そんな変化大爆発みたいな世の中になっている。

あらたなかたちの安定は、動的な安定にならざるをえない。自転車に乗っているときのように、じっと立っていることはできないが、動き出せばかなり楽になる安定のかたちがいろいろある。
P.65

”パドルを水に入れたままにしなさい”と聞いた初心者は、パドルを舵にするのだと思って誤って解釈し、パドルを艇尾のそばで水に入れて抵抗を発生させ、それで舵を取ろうとします。これはきわめてまずい位置です・・・・・・
急流で安定を高めるには、急流と同じ速さか、あるいはもっと早く進むことが重要です。パドルを水に入れて抵抗を発生させたり、舵に使ったりするたびに、勢いが失われ、転覆の危険が増します。
P.349

コネクテッド・カウ

常時接続された乳牛の話が面白かった。
大規模酪農場での繁殖率を改善するプロジェクトなのだけど、
乳牛は発情から人工授精の完了までの期間が極めて短いんだとか。
21日ごとに12〜18時間ほどしかなく、主に夜間。
これをいかに効率的に管理し、発情を検知するか。

富士通が編み出した解決策は、無線接続された歩数計を取り付けること。
発情すると、歩数が大幅に増えるのでそれで検知できるようにしたらしい。
こういう事例紹介はすこぶる面白い。

宅配でのセンサー利用

車、1台に200個のセンサー、ドライバーは完全に監視下におかれてる。

配達車には200台のセンサーがあり、ドライバーがシートベルトを締めているか、どれくらいの速度で走っているか、いつブレーキをかけているか、似合いとの境のドアは開いているか、車は前進しているか、バックしているかを知らせてくれます。通っている通りの名前や、停止してアイドリングしている時間と移動している時間の比率もわかります。
P.94

GitHubでとオープンソース

マイクロソフトが.NET(ドットネット)と呼ばれるテクノロジーを開発し、ソースを公開。
マックやLinuxでも動くようにすると宣言したところ、
GitHubのコミュニティがマック版を一夜にして作り上げてしまったという話。

オープンソースコミュニティのパワーを物語るエピソード。

地球環境自体も激変

テクノロジー分野だけの話ではなくて、環境面でも激変しているという話。
こう言うのはなかなか自分ごとにならないけど、こうやって定量化されるとぞっとするね。

グリーンランド氷床の誘拐は加速しているという。「2003〜2010年に解けた氷の量は、1983〜2003年の倍であるだけではなく、20世紀中に失われた総量に相当する。
P.290

でも、対策がうまく効いてるものもあるらしく、
オゾン層はフロンを世界的に禁止してから工業化以前のレベルの
5%以下の消失というレベルまで回復しているらしい。

しかし、人口はわずか30年の間に20億人以上が増える予想がある。
人々が都市部で暮らし始め、経済的にもミドルクラスになってくると、
環境への影響は幾何級数的に進む。

未来の工場

近未来、労働が機械に代替されていく世界を風刺したジョーク。

未来の工場で働いているのは、1人の人間と1匹の犬だけだ、人間は犬に餌をやるためにいる。犬は人間が機械に触らないように見張るためにいる。
P.342

貧困の救世主はニワトリ

ビル・ゲイツは財団の活動を通じて、ニワトリの飼育が貧困の救済にかなり有効であることを学んだらしい。

極端に貧しい暮らしをしている人々がニワトリを飼うと、暮らし向きが良くなることが、はっきりとわかった。それどころか、私がそういう立場だったら、必ずそうする--ニワトリを飼う
下巻 P.86


いま子どもに必要なのは英語でもプログラミング教育でもなく教科書が理解できるだけの読解力 新井紀子/AI VS. 教科書が読めない子どもたち

数々の賞を受賞しているので今さら言わなくても良いようなことなのだけど、名著だ。
評判が良いのはわかっていたけど、なんとなく後回しにしてきたのだけど、
いよいよ読んでみたら、本当に面白かった。もっと早く読めばよかったて言うくらい。

AIとか機械学習万歳本が溢れている中、この本は冷静に今のAI、機械学習にできること、
できないことを見極めようとする話をしてくれる。
闇雲に夢を煽らない。むしろ数学者として、今の手法の延長線上には限界がある、と言う。

今のままではシンギュラリティは来ない、でも、上位20%程度のことはこなせてしまう。

AIは万能じゃないよ、人を超えるなんて夢のまた夢だよ、
でもね、人間もまた思った以上にポンコツかもしれない・・・
っていう厳しい現実がここにはある。

子を持つ親としては、厳しい現実だと思うが、
せめて、人としての読解力は身につけさせたいな。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

一学年に子どもの数は約100万人。半分の50万人がセンター入試を受験します。その上位20%に東ロボくんが入ったのです。ホワイトカラーを目指す若者の、中央値どころか平均値をAIが大きく上回った。この先、労働市場はどうなるのか。どうすれば、東ロボくんに負けた80%の子どもたちに明るい未来を提供できるのか。そのことと真剣に向き合わなければならない、そう決意しました。
P.62

数学は4000年の時間をかけて、論理、確率、統計と言う表現手段を獲得しました。けれども、反対の言い方をすると、数学が説明できるのは、論理的に言えることと、確率・統計で表現できることだけだということです。つまり、先述のとおり、数学で表現できることは非常に限られているということです。
P.117

Siriなどの音声インターフェイスは意味を理解しているわけではない。

意味を理解してリアクションしているのではなくて、統計と確率のアプローチで、
からしい応答をしているだけ。その精度は上がってきているけれど、意味は理解していない。

現在の情報検索や自然言語処理は、基本的に論理で処理させることは当面諦めて、統計と確率の手法でAIに言語を学習させようとしています。つまり、文章の意味はわからなくても、その文書に出てくる既知の単語とその組み合わせから統計的に推測して、正しそうな回答を導き出そうとしているのです。そして、統計の元になるデータは、多くの人が日々Siriに話しかけることでどんどん大きくなり、それを用いて自立的に機械学習を重ねることで、その精度が上がっていく仕組みになっています。ただし、その精度が100%になることはありません。確率と統計には、そもそもそんな機能がないからです。
P.122

AI神話の元は人の脳も電気回路だから

確かに脳みそが電気回路である以上、人間も世界を0と1に還元して認知、思考しているはずなんだけど、そのメカニズムはわからない。
わからないけど似たようなメカニズムが作動しちゃうことって有り得ないのかな、と
素人は思ってしまうが、、、、。

脳のシステムはある種の電気回路であることは間違いなさそうです。電気回路であるということは、onかoffか、つまり0と1だけの世界に還元できることを意味します。基本的な原理は計算機と同じかもしれません。それが、「真のAI」や「シンギュラリティの到来」を期待させている一面はあると思います。けれども、原理は同じでも、脳がどのような方法で、私たちが認識していることを「0,1」の世界に還元しているのか。それを解明して数式に翻訳することができない限り、「真の意味でのAI」が登場したりシンギュラリティが到来したりすることはないのです。
P.165

AIに勝てそうな分野の知性が低い

今の子どもたちは教科書が性格に読めない。読解力がない。
これはもう悲惨な現状といわざるを得ない。

「同義文判定」にしても「定義から具体例を考える」にしても、中学生の半数以上がサイコロ並みなのです。そして、高校に入った後は、その能力は伸びていないのです。
P.258

サイコロ並み、つまりまったく役に立たないということ。
サイコロ回してこれかな?って答えてるのと同じレベルの精度。

私たちのRSTの全国調査で明らかになったのは、日本人の決定的な教科書読解力の不足です。読解力こそ、AIが最も苦手とする分野であることは、この本の中で再三述べてきました。しかし、残念なことに多くの人が、AIに対して優位に立てるはずの読解力で、十分な能力を身につけていません。さらに、日本の教育が育てているのは、今もって、AIによって代替される能力です。
P.272

上記のような状況なので、このままだとどんどんAIに代替されてしまう。
読解力と偏差値は非常に高い相関があることもわかっているらしい。
英語でもプログラミング教育でもないのよ、大多数に必要なのは読解力。

統計、確率万歳という盲信は危険

データの特徴を増幅させるからね、そのデータの特徴に上位集中したりするんだよね。
レコメンドエンジンが売れてる商品ばかりお勧めするのと同じような感じ。
決して正しくも万能でもない。
(それでも読解力のないサイコロ並の人間よりはマシかもしれないが・・・・)

自動車保険や生命保険の保険料、就職活動で面接まで辿り着けるか否か、教員の解雇の基準、さらには容疑者が再犯をしそうかどうかまで、ビッグデータ解析が使われ、人間の判断の「支援」をしています。それは数学に基づく「客観的な評価」だと信じられています。ですから、多くの人は、機械による統計的な判断に疑問を持つことなく受け入れてしまいます。けれどもそれは大変危険な行為です。
なぜでしょうか。(中略)ディープラーニングのような統計的なシステムでは、「教師データ」に基づき過去のデータを分析して判断しているに過ぎません。「過去の判断」を踏襲するだけなのです。社会が歪んでいれば、その歪みを増幅してしまう。教師データの設計者の価値観が正解データやアノテーションの設計に反映されてしまうのです。数学者に女性が少なければ、「将来つくべき仕事」として、ビッグデータに基づくAIは女子高校生に対して「数学者」という選択肢を決して推薦しないでしょう。
P.284

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

AI vs. 教科書が読めない子どもたち