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時間は自由に使えない、ウェアラブルセンサが明らかにする我々の思い込みと可能性のでかさにしびれた! 矢野和男/データの見えざる手

今まで時間は自由に使ってきたつもりだったし、
24時間の配分は自分の意志次第でどうにでもなると思ってきたけれど、それは錯覚!?

ウェアラブルセンサでモニタリングし続けることから得られた
ビッグデータから見えてくる、普遍の法則。

軽薄なビッグデータ本とは一線を画す内容で、これは相当面白かった。
そしてこれからどういう選択をし、何に時間を使っていくのか、
生き方を少し意識しようと思えた。


時間は自由に使えない

あなたが1日に使えるエネルギーの総量とその配分の仕方は、法則により制限されており、そのせいであなたは意思のままに時間を使うことができないのだ。
p.22

のっけから、こんなことを言われて目が点になった。

実は活動温度の高い人は、高い帯域の活動(動きの活発な活動)にいやでも時間を使わざるを得ない。したがって、原稿執筆のような低い帯域の仕事にあまり時間を使うことができないのだ。つまりこのような人は、長時間机に向かって仕事をすることがむずかしくなる。逆に、活動温度の低い人(すなわち、右肩下がりの分布図の傾きが急な人)は、高い帯域の仕事(比較的活発な動きをともなう仕事)をしようとしても、そのための活動予算が足りなくなりやすいのだ。したがって、これにあまり時間を使うことができない。
P.48

なるほど、だとすると自分は低い帯域の仕事に向いてるんだな。
運動とかもなかなかしようと思わないのは
高い帯域の仕事用予算がさっぱり無いからなのだろうか・・・。


カルノー効率

物質の熱力学と人間活動を対応させれば、熱機関の効率の上限を表すカルノー効率の式を人間の活動にも適用できる。つまり、人間の活動についても効率の上限がある。しかも驚くことに、数学的には、カルノー効率と同じ式が成り立つのだ。我々が見出した人間活動の効率の限界を定める式とは次のようなものである。すなわち、「ある活動を行う際に使われるもっとも活発な動きの値(○○回/分のように表される)と、もっとも穏やかな動きの値の比を1から引いたもの」が人間の活動の効率の上限となる。つまり、その活動が使用する人間の活動帯域の上の値と下の値によって、効率が制限されるというのである。たとえば、原稿の執筆の場合、1分間の動きは50~70回の幅に収まるとしよう。とすると、その効率の限界=「カルノー効率」は、1-50/70 = 0.286となるので、効率の限界は28.6%となる。このことから、1日の活動時間のうち、原稿執筆には28.6%以上を割くことは決してできないと予想される。
P.59 - P.60

長期的には見えざる手に縛られているのかもしれない。
だとすると、時間とは実に有限なものだ、としみじみ感じる。
自分が何に時間を使うのか、もうちょっと意識してみようかと言う気になった。


人は幸福感を何から得るのか

私を含め、多くの人は、ここでいう「環境要因」を向上するために日々努力している。
その結果が、後ほど幸せに結びつくと信じているからだ。しかし、データによれば、これは無駄ではないが、幸福感にはあまり効かない。我々の思い込みの部分が大きいのだ。
それでは、残りの40%は何だろう。それは、日々の行動のちょっとした習慣や行動の選択の仕方によるというのだ。特に、自分から積極的に行動を起こしたかどうかが重要なのだ。自ら意図を持って何かを行うことで、人は幸福感を得る。
そうだとすれば、ちょっとした行動を変えることでハピネスを高めることができる。たとえば、人に感謝を表す、困っている人を助けてあげる、という一見簡単なことでも、実はハピネスは格段に高まるのである。
行動を起こした結果、成功したかが重要なのではない。行動を起こすこと自体が、人の幸せなのである。
「行動の結果が成功したか」ではなく、「行動を積極的に起こしたか」がハピネスを決めるというのは、実は、我々一人一人にとっては、とてもありがたいことだ。成功はなかなか得られるものではない。仮に、いつか得られるとしても、それまでは、ともかく我慢して努力する必要がある、というのが従来の捉え方だったかもしれない。ハピネスにいたるには長くハッピーでない道のりと忍耐の時間が必要だと捉えられてきた。
行動すること自体が、ハピネスだとすると、幸福になるための発想がまったく変わる。極端にいえば、今日、今このときにもハピネスは得られるかもしれない。ただし、それには行動を変える必要がある。
P.69 - P.70

我々が自分の幸福感に影響していると思っている「環境要因」が、
実際幸福感に与える影響は10%程度に過ぎない。
そんなことよりも、習慣や行動の選択の仕方の方が大きな要因。
行動を変える、意思決定の仕方を変える。
これってものすごい大切なこと。


ビジネスの現場への利用

コールセンターにおける受注率のお話。

当初、出勤者の平均スキルの高い日は受注率が高くなり、逆に、平均スキルが低い日は受注率が低くなるのではないかと予想していた。しかし、データを見てみると、そのような相関はなかった。関係者は、スキルが受注に強く影響すると何の疑問も持たずに考えていた。しかし、計測してみると、それは事実ではなかった。電話での応対には、性格的な向き不向きがあるとも考えられてきた。しかし、このパーソナリティと受注率との相関を調べてみても、相関はなかった。実は、受注は、意外なことと相関していた。
それは、休憩所での会話の「活発度」である。
休憩時間における会話のとき身体運動が活発な日は受注率が高く、活発でない日は受注率が低いのである(図2-2)
P.86

本書にたびたび出てくるが、仮説検証は仮設がなければ始まらない。
そして、結局人にこんな仮説は作れない、ってのが重要なポイント。
だれが休憩所の会話の活発度が相関していると言う仮説を思いつけるだろうか??
ビッグデータは大量のデータから想像もつかない仮説を導き出せる。
そこに大きな可能性と面白さがあるんだな。

それまでばらばらにとっていた休憩をメンバーができるだけ合わせてとるという施策により、最大で20%も生産性が向上した。
P.88

で、実際にこんな驚きの結果が生まれる。
それが何故なのか、という因果がわからなくても、
正しく相関しているのであれば施策を実行することで結果を出すことはできる。

他の事例も必ずしも因果関係が明確になるわけではない。

おもしろいのは、高感度スポットに従業員が滞在することと顧客単価の上昇を結びつける機序が自明ではなく、うまく言葉で説明するのがそう簡単ではないということだ。その場所に従業員がいることで客の店内での流れが変わり、それまで人通りの少なかった単価の高い商品の棚での客の滞在時間が増えたことが寄与しているし、エビデンスもある。
しかし、そのように客の流れを変えるために、問題の商品棚から遠く離れた場所が「高感度スポット」として選ばれたのがなぜなのかは(実際かなり離れている)、直観的にはわからない。また、後に述べるようにその高感度スポットに従業員がいることにより、従業員や客の身体運動の「活発度」も向上したのだが、そのことを説明するのはさらにむずかしい。
このように、実験によって事実が確認された後でも、それがなぜなのかを直観的には説明できないような売上向上要素を、予め人間が仮説として立てることは不可能である。
人間には決して立てられない仮説を立てる能力が、人工知能Hにはあるのである。
P.188 - P.189

ITの効率と非効率

むしろ、ITの導入によって、一見効率化するはずのように見えて、それまで集団の身体運動の連鎖に必要だった要素を排除してしまい、それにより活発度の連鎖的な向上を促す仕組みがなくなって、「生産性」や「クリエイティビティ」を低下させてきた場合も多いのではないだろうか。
生産性向上のためのツールであるITが、むしろ生産性低下の原因にもなりうるのである。
たとえば、過度のメール依存により、本来、直接面と向かって身体運動をやりとりすべき機会が奪われている恐れがある。
さらに、従来は、紙の承認印を上司にもらう機会を通じて、部下は上司の考えていることや優先順位を、身体運動を通して共有できていたのに対し、承認プロセスのIT化によってその機会が失われたりしている。
こういったマイナスの効果を無視したITの導入により、業務の生産性が下かっていないだろうか。
P.100

ウェアラブルセンサのデータを組み合わせることでわかってくるのは、
意外にもアナログなコミュニケーションがプラスに働いている可能性だったりする。
こういうことが裏付けられていった結果、10年後のオフィスとか仕事のやり方は
今と様変わりしたりするのかな。ちょっと楽しみ。


再会の確率

人と対面したり、一人になったりという変化を大量データから解析した結果によれば、再会の確率は最後に会ってからの時間が経過するに従って低下していくのだ。
最後にある人に会ってからの時間をTとすると、再会の確率は1/Tに比例して減少していく。
たとえば、あなたが藤田課長と最後に会ってから、1時間たったとしよう。
このときに再会する確率をPとすると、2時間後にはこの面会確率がP/2、3時間後にはP/3になる。
この法則性が、会社幹部でも、新人でも、営業職でも研究者でも成り立つのである。
一言でいうと、最後に会ってからの時間(期間)が長くなると、ますます会いにくくなる(面会確率が下がる)ことが明らかになった。
そして、それはきれいな反比例の法則に従うのである。
これを「1/Tの法則」と呼ぼう。
P.111

まぁ、ほんまかいな、と思うところもあるが、
確かにそんな気がする、という納得感もあるところが面白い。
メールの返信とかもこの法則が当てはまるらしい。
要するに、会わないでいると、会えなくなる、、、なるほど。


フロー状態

具体的には、フローの頻度の多い人は、やや速めの身体運動の頻度に関して、ある5分間とその次の5分間とを比較したときに、その頻度の変化が少ないということが明らかになった。フローになりやすい人は、やや速めの身体運動を継続する傾向が強いのだ。これは、身体の継続的な速い動きが、目の前の行為への集中を深めていくということと、集中する人は身体が継続的に速く動くことの両方を示している。
P.130 - P.131

これ読んだ時に真っ先に思いついたのは貧乏ゆすり。
貧乏ゆすりしている人ってフロー状態なんじゃないかな。


偶然と必然

人生や社会で起こる出来事は、ほぼすべて、必然と偶然の混ざりあったもので、偶然の要素を取り除けることはほとんどない。
したがって、多くの出来事が確率的な事象である。
運が重要なのだ。しかし、我々は往々にして、「偶然」と「必然」という対立する概念で物事を二分したくなる。偶然に左右される現象はコントロールできないこと、必然はコントロールできることと分類してしまう。そして、必然をコントロールすることに力を注ぎ、偶然はコントロールできないとあきらめている。そして、これが合理的な判断だと思いがちだ。
だが、この偶然の要素をともなう現象も、確率をコントロールすることは可能だ。野球でもバッターが必ず打つとは期待できない。
しかし、打率が2割のバッターよりも打率が3割のバッターを起用することで、出塁の確率を向上することはできる。
P.136

偶然はコントロールできないと思う合理性って確かにあるな。
偶然の確率をコントロールするって言う考え方は成立する気がする。
これは重要なポイントだな。


従来のデータ分析との違い

従来、データの分析(アナリティクス)は、演繹の得意なコンピュータを使って分析者が行ってきた。このような分析のできる専門家は「データサイェンティスト」と呼ばれ、現在もっとも注目される新たな職種の一つと期待されている。しかし、そこには大きな問題があった。データ分析は、本来「帰納的」な仕事である。しかし、その「帰納的」な仕事に、「演繹用」に作られたコンピュータを使わざるを得ない。このギャップを埋めるために、データ分析では、人が適切な「仮説」を設定しなければいけないのだ。
実際に、人は適切な仮説を設定できるだろうか。今回店舗の実態を見てみよう。データは、顧客、店員、棚、商品、時間、行動など大量、多様である。データの属性の選択肢がありすぎて、仮説をどうやってつくったらよいのかわからない。膨大なデータにどんな現象や法則性が含まれているかは人間には想像しようがない。実は、仮説などつくりようがないのである。
それでも無理を承知で人が仮説をつくろうとすると、関係者が簡単に想定できることやすでに知られていることになってしまう。本件で専門家が行ったように、関係者へのインタビューやこれまでの経験と勘から仮説をつくらざるを得ない。それをデータで検証するという手順にならざるを得ない。
P.191 - P.192

従来の分析のあり方をコンパクトに説明してくれている。
ビッグデータが注目されているのは、帰納と演繹のミスマッチを越えられる可能性があるから。

この10年の研究で明らかになったビッグデータを活用するためのポイントは3か条の原則にまとめられる。実は、これに反することを実行して我々は痛い目にあってきたのだが、この原則に沿って進めるようになってうまくいくようになったのだ。
ビッグデータで儲けるための3原則」は、以下のものである。
第1の原則 向上すべき業績(アウトカム)を明確にする
第2の原則 向上すべき業績に関係するデータをヒトモノカネに広く収集する
第3の原則 仮説に頼らず、コンピュータに業績向上策をデータから逆推定させる
P.201

このデータから逆推定させるってのが従来の分析とは大きく異なるところ。
その結果、思いもよらない仮説にたどり着くかもしれない、ということ。
では、それを一体どのようなことに活用していくのか?

従来のサービスでは、人の作業を技術が代替し「人を楽にすること」が価値だった。大量のデータを活用した「アフェクティブ・サービス」では、これを超え「人々の潜在力の発揮」を支援する。これには、従来の単なる「便利さ」を超え、「生きる意味」「信念」「夢」までを理解し、その実現を支援するサービスへの深化が求められよう。そのためには大量データにもとづく定量的な人間科学が重要な要素になる。
P.227

楽にすることから潜在力を引き出す方向へ、というパラダイムシフト。
まさにパラダイムが色々なところで変わりつつあることを教えてくれた1冊。