ビジネス書大好きMBAホルダーが教える私の学びシェア

本を読んでそこから新しい知識を得たり、学んだりすることが大好き。学びたい、成長したいという意欲のあるビジネスマンの皆さん、一緒に成長しましょう。

具体的かつビジネスに即した形でデータ分析を扱う入門書は貴重! 上田隆穂、田島博和、奥瀬喜之、斉藤嘉一/リテールデータ分析入門

やってる人はみんなやってる。
で、やってない人はまずやりたい。
そんなデータ分析がPOSなどを通じて集まる購買データ(=リテールデータ)分析だろう。

本書はリテールデータの分析に特化した入門書。
こういう目的でこういう分析をしてみよう、みたいなのが
とても具体的に示される。

もちろん物足りない点もあるけれど、これだけ実際のビジネスに即した形で、
データ分析の手法、その分析をするために必要なデータの形まで解説してくれる本は
これまで無かったように思う。

実際にビジネスの現場で周りにデータサイエンティストなんていないし、
でも、なんかこの領域に可能性を感じている世の一般的なビジネスマンには
とても有用なんじゃないかな。

リテールデータ分析入門

リテールデータ分析入門


データ分析ベースのCRMは万能じゃない。

反復来店は、感情的コミットメントや認知的努力を削減する動機づけといった消費者心理によっても引き起こされる。特に、感情的コミットメントは競合他社へのスイッチをよく防止し、より安定的な反復来店を生み出す。また感情的コミットメントは他の消費者へのポジティブな口コミの発信もよく引き起こす。ID付きPOSデータに基づくCRMの注意点は、計算的コミットメントをよく高めるけれども、感情的コミットメントを大きく高めることは期待できない点にある。
P.64

感情的コミットメントを高めるためには、企業に顧客志向が根付いていないとダメ。
クーポン発行などだけでは感情的コミットメントは醸成されないことは肝に銘じておかないと。
実際、その壁を越えていかないと真のリピート率向上には至らないんだろうな。

また、顧客がリレーションシップを望まない場合、
企業側からそういった顧客にアクセスすることは顧客の離脱を招いてしまうリスクすらある。

ちなみにどうすりゃ感情的コミットメントを作れるの?って話に関してはこんな感じ。

感情的コミットメントをつくり出すために小売業者に求められるのは、支払価格や推奨する商品をパーソナライズすることではなく、顧客1人1人の自分史において多かれ少なかれ特別な存在になることである。
P.67

ECの分野はどんどんパーソナライズ、One to One、マーケティング・オートメーションだと
騒がれているけれど、そういうのはいずれみんなやるんだろうし、差別化要因にはならない。
顧客にとって特別なお店としていられるか、究極的にはそこがポイントなんだろう。
じゃあ、どうやってそのリレーションを作っていこうか。
悩ましいけどね。


会員が店員!

紹介されていたPFSCの事例がめっちゃ面白かった。

ブランド・アタッチメント形成の究極の企業事例として挙げられるのは、アメリカ・ニューヨーク、ブルックリンにある会員制のスーパー(生協)、「パークスロープフードコープ(Park Slope Food Coop:以下PSFCという)」であろう。PSFCの店内には、近郊でとれたオーガニック野菜や珍しい種類の果物などが、ホールフーズマーケットの約半値以下で売られている。このPSFCの会員になるための条件の1つは、4週間に一度、2時間45分店で働くというものである。なんと、この店で食品を安価で買うためには、労働しなければならないのである。それにもかかわらず、PSFCには15000人以上の会員が登録しており、わざわざ郊外から1時間以上かけてこの店にやってくる会員もいるという。PSFCでは、会員が店員を兼ねることで、人件費の削減や、安値での買い物を可能にしているだけでなく、ワークシェアをすることによって、会員同士のコミュニティが形成されたり、自分がPSFCのオーナーであるという所有意識を持たせたりすることにも役立っているという。
P.153


リテールデータ分析入門

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