ユーザー・インターフェース(UI)、ユーザー・エクスペリエンス(UX)という言葉が、
ここ数年ネットの記事とかでも盛んに出てきているけれど、
そういったユーザビリティの高いプロダクトやシステムを作るための
解決策や、方法論をまとめた概念として提唱されたのが人間中心設計。(Human Centered Design)
使用する対象が明確な場合は、ユーザー中心設計とも言われるし、
逆に万人にとって使いやすいものを目指す際にはユニバーサル・デザインって話になる。
そして、本書はそのタイトル通り、人間中心設計に関する基本的な考え方や、
調査方法などの各種手法について紹介する本。
- 作者: 黒須正明,松原幸行,八木大彦,山崎和彦
- 出版社/メーカー: 近代科学社
- 発売日: 2013/06/03
- メディア: ムック
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全3巻で、本書は理論寄りでちょっと固い感じ。
続く2巻、3巻は海外、国内の事例紹介になっているので、
こちらも合わせて読みたいと思っているところ。
- 作者: キャロルライヒ,ジャニスジェームズ,黒須正明,八木大彦,山崎和彦,松原幸行,Carol Righi,Janice James,HCDライブラリー委員会
- 出版社/メーカー: 近代科学社
- 発売日: 2013/08/05
- メディア: 単行本
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- 作者: HCDライブラリー委員会,黒須正明,八木大彦,山崎和彦,松原幸行
- 出版社/メーカー: 近代科学社
- 発売日: 2014/07/15
- メディア: 単行本
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多様性
志向性に関する多様性を考慮することは基本なのだけど、
国内だとあまり意識しないのが宗教。
色に関しては全然知らなかったのでメモ。
http://www.e-manner.info/hospitable/custom.html
宗教
現在の日本では、宗教は個人の行動に対して強い影響力を持っていないが、文化圏によっては、現在でも強い影響力を持っている。
禁忌とされる色の使用など、時に注意が必要になることがある。
P.15
ユニバーサルデザインの定義と7つの原則
デザインって感性と論理が高い次元で融合しているものなんだよなぁ、と改めて実感。
ユニバーサルデザインを語るときに必ず引用されるのが、ノースカロライナ州立大学のユニバーサルデザインセンターで活動したMace, R. の定義と七つの原則(1997) である。
彼は、ユニバーサルデザインを「できる限り最大限すべての人に利用可能であるように、製品、建物、空間をデザインすること」と定義し、次の七つの原則を挙げている。(1) 公平に使えること―デザインは、多様な能力をもった人々に使いやすく売れるものであること(Equitable Use)
(2) 柔軟に使えること―デザインは、好みや能力が人によって異なっていることに適応していること(Flexibility in Use)
(3) 単純で直感的に使えること―デザインされたものは、経験や知識、言語能力やその時の集中力の水準に関係なく、容易に使えるものであること(Simple and Intuitive Use)
(4) 情報が知覚できること―デザインは、周囲状況やユーザーの感覚能力に関係なく、効果的に情報を伝えられること(Perceptible Information)
(5) 失敗に対して寛大であること―デザインは、偶然に、あるいは意図せずに何かをしてしまっても、危険な結果や不利な結果に至る可能性を最小に抑えること(Tolerance for Error)
(6) 身体的な努力を少なくすること―デザインは、効率的に、また心地よく使えて、疲労を最小に抑えるものであること(Low Physical Effort)
(7) 接近して使えるように大きさと空間の余裕を確保すること―ユーザーの身体の大きさや姿勢、移動能力に関係なく、接近し、手が届き、操作をし、利用できるよう、適切な大きさと空間の余裕を確保すること(Size and Space for Approach and Use)
P.18
ニールセンのヒューリスティック評価
これはニールセンが考える評価ポイント。
自社のサービスやプロダクトのチェックポイントとしてすぐに活用できそう。
ユーザビリティとユーティリティの話も考えさせられる。
ユーティリティの過剰な重要視は、よく言われる日本のメーカーの
ものづくりが陥った罠の1つなのかな。
単純で自然な対話を行うこと、ユーザーの言葉を話すこと、ユーザーの記憶の負担を最小にすること、一貫性を持たせること、フィードバックを与えること、明瞭な出口を設定しておくこと、ショートカットを用意しておくこと、良いエラーメッセージを提供すること、エラーを防ぐこと、ヘルプやドキュメントを用意しておくことの10項目である。
このように、評価法を適用したときにユーザビリティが高いといえるのは、発見される問題が少ないことを意味しており、ネガティブな面を少なくすることが高いユーザビリティを持つことと考えられてしまうことにつながった。
そうしたnon-negative な面でのユーザビリティは商品性につながらないという理由から、ユーザビリティ活動の普及には今一歩拍車がかからない状態が続いた。
他方、機能や性能を意味するユーティリティはpositive な製品の魅力につながるものであるため、当時の企業における関心はユーティリティ重視の方向に傾いてしまっていた。
P.24
経験マーケティング
経験価値とかの話。
Schmitt (1999) は、伝統的なマーケティングが、機能的な特性と便益に焦点をあてており、製品カテゴリーや競争を狭い領域の中で行っており、顧客を合理的な意思決定者ととらえており、分析的で計量的、言語的な方法と手段を用いてきた、と見ている。
その結果、ネガティブな面としては、測定や分析の正確さにこだわり、現場を考えず、顧客の真のニーズに焦点を当てずにきてしまう傾向があった。
これに対し、経験マーケティング(experiential marketing) では、顧客の感覚や感情、精神への刺激によって引き起こされる経験に焦点化すること、特定の商品に注目するのではなく消費状況全体を考察すること、顧客を合理的であると同時に情緒的な動物であると捉えること、そして方法やツールについては折衷主義をとることを特徴とする、と述べている。
P.46
そんでもって、顧客満足とかCRMに対する批判。
これ、一理あるよな。
ただ、CRMって狭義には取引が焦点なのかも知れないけど、
ある程度システマチックに仕組み化できたから普及したんだよなぁ、とも思う。
まぁ、この手の話は使い方次第だし、欠点を知りながらいかに使うかだよな、とは思う。
なお、2003 年の著書では、Schmitt は伝統的なマーケティングアプローチから、マーケティングコンセプト、顧客満足(CS:Customer Satisfaction)、CRM (Customer Relationship Management) を取り上げて批判している。
つまり、Kotler(2000) の言うマーケティングアプローチは、顧客のニーズに焦点を当て、顧客を満足させるということだが、実際にはエンジニアリング中心であり、また顧客よりも製品マーケティングに焦点を当てたセールス志向であるという。
また顧客満足は、機能や性能に焦点をあてており、顧客そのものを見落としており、経験に焦点をあてた方がプロセス志向的であるという。
さらにCRMは、顧客データベースを活用していながら、取引そのものに焦点をあててしまっており、顧客との関係構築を重視していないという。
P.46-P.47
フィッツの法則とヒックの法則
人間工学の分野の話。
画面操作に関するものがフィッツの法則、選択反応時間に関するのがヒックの法則。
こういうのも数式で法則化されてるんだね、というお話。
フィッツの法則(Fitts 1954, Fitts and Peterson 1964) は、人間のポインティング動作に関するもので、概念的にいえば、遠くにある目標ほど時間がかかり、サイズが小さい目標ほど時間がかかる、というものである。
P.169
ヒューマンエラーとその対策
人は間違うものだから、間違えた時のリカバリーも設計しておくという話。
こういうのって人の創意工夫が詰まってる感じがして、とても面白い。
フォールトトレラントと関係した考え方として、エラーを犯してもシステムが安全側に作用するように設計するフェールセーフ(fail safe)という考え方がある。
水道の蛇口には、水を出すためにレバーを下げるタイプと、レバーを上げるタイプがあるが、重力という自然法則を考慮した場合、万一の場合には後者の方が優れている。
また、運転者に不測の事態が発生しハンドルやペダルから手足を離した場合に列車が自動停止するような仕組みは、デッドマンブレーキ(deadman brake) と言われる。
また誤った操作をしようとしても危険な状態にならないように設計することをフールプルーフ(fool proof) という。
たとえば自動車で、ギアがドライブの状態の時はエンジンキーが有効にならないような設計は、予期しない発進による事故を防ぐのに役にたっている。
また誤った操作をしてしまった後、それをもとの状態に戻すundo という機能は、たいていのコンピュータのアプリケーションに備わっている。
P.172
- 作者: 黒須正明,松原幸行,八木大彦,山崎和彦
- 出版社/メーカー: 近代科学社
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