ビジネス書大好きMBAホルダーが教える私の学びシェア

本を読んでそこから新しい知識を得たり、学んだりすることが大好き。学びたい、成長したいという意欲のあるビジネスマンの皆さん、一緒に成長しましょう。

Amazonがしていることを押さえておけば、かなり多くの領域の先端事例に触れられる。 成毛眞/世界最先端の戦略がわかる amazon

とりあえず、買って読んどけって言う本。
著者が言う通り、amazonがしていることを追いかければ、最先端の戦略、事例が見えてくる。
それはECだけではないし、さらに言うなら小売業界だけの話でもない。
クラウドだけでもないし、人工知能だけでもない。
その領域は特定のジャンルにとどまらず、全て突っ走ってる企業だから。

断片的な情報はニュースになっているけれど、
改めて丁寧にまとめられている本書を読むと全体感が見えてくる。

気にして色んな動向をウォッチしている方だとは思うけれど、
それでもこういった形でまとまったものを読むのは有意義だな、と言うのが読後の素直な感想。
とても便利な本なのである。

amazon 世界最先端の戦略がわかる

amazon 世界最先端の戦略がわかる

あらゆる領域で圧倒的に強い

もし、amazonへの富の集中が規制され、分割されたら、って言う文脈で、
ウォール・ストリート・ジャーナルの人が呟いたジョークが面白い。

アマゾンが2025年に分割されるとしたらどうなるだろう。商取引、ウェブサービス、メディア、物流サービス、人工知能(AI)、ゲノム解析・・・・・・分割しても(それぞれの領域で)独占か。
P.55

本当にそうなりそうと思わせるほど、今現在あらゆる領域で先頭集団にいる。
だからこそ、彼らの動向を把握していくことはこの先に起こるであろう変化を推測することに通じる。

物流メモ

年間宅配数の内、再配達される品物は2割ほどだと言われている。数としては、7.4億個に達する。再配達だけで、年間9万人、時間にして1.8億時間が費やされ、そのコストは2600億円にもなる。再配達は、ネット通販会社がこれから解消しなければならない大きな課題だ。
P.98-P.99

こう言う定量的な数字はメモしておくと何かと便利だよね、本書の本質とは関係ないけど、
こう言うのもとても便利な本だなという印象。

ADRS知らなかった!

Amazonダッシュ、とかダッシュボタンは知ってたけどADRS(アマゾンダッシュリプレニッシュメントサービス)は知らなかった。
ダッシュの機能が内蔵された機械で、消耗品がなくなってくると自動でアマゾンに注文するらしい。
洗剤きれそうになったら、届く、とか、プリンタのインク切れそうになったら、届く、とか。そういう感じ。

すでに米国ではそういうプリンタや洗濯機が出ているらしい。
それがスタンダードになったら、すごいね、確かに便利だけど、ものすごい囲い込みだなぁ。

おまけ

この本に興味がある人はアマゾンのすごいルールもおすすめ。

アマゾンのすごいルール

アマゾンのすごいルール

どういった組織でどういった価値観で動いているのか、
中の人だったからこその具体性を持って語ってくれている本。
ものすごく勉強になったんだよね、これも。

amazon 世界最先端の戦略がわかる

amazon 世界最先端の戦略がわかる

出版業界が生んだ名物編集者は文芸担当のような作家つき編集ではなくビジネス書から生まれたってのが今の時代を象徴してる。 箕輪厚介/死ぬこと以外かすり傷

出版業界が生み出したスター編集者、箕輪厚介の処女作。

ビジネス書というか、エッセイというか、そんな感じ。
彼自身が様々な著者と仕事をした上で自分のものにしてきた
マインドセットみたいなもんをまとめた本て感じ。

死ぬこと以外かすり傷

死ぬこと以外かすり傷

彼のサロンとかもそうだけど、
このままじゃダメだ、とか、何か行動したいと思うんだけど、
なんてモヤモヤを抱えている人たちには
場や機会を提供してあげることが刺さるんだなぁ、と。

信者ビジネスなんて揶揄されるけど、
それだけで切り捨てるような話じゃないと思うんだよね、オンラインサロンて。
まぁ信者っぽさも無くはないけど、それだけじゃない感じがした。

出版業界には昔から名物編集者ってのがいた。
幻冬舎見城徹なんてその筆頭だったわけだよ。

そして一昔前だと、名物編集者は文芸系の編集者が多かった。
集英社の鳥嶋(マシリト)さんは漫画だけど。

で、箕輪氏はというと彼は文芸編集者でも漫画編集者でもない。
なんならいわゆる作家を担当する編集者じゃない。
彼は、ビジネス書出身。

僕はこれがとても面白い。

今の時代、創造的なクリエイターは新しいサービスとか作って運営してるんだよなぁ、と。
News Picks Bookの著者のラインナップとかも時代の先端で今まさに戦っている才能って感じがする。

この今、すげー頑張ってる人たちを切り取るっていうのがありそうでなかった。
エスタブリッシュなすごい人たちではなくて、現在進行形の人たち。

成功して上がりな人の回想ではなくて、今めっちゃ全力で走ってる人たちの語り。

そういった才能に寄り添って本を編集する箕輪氏はまったくもって編集者だよなぁ、と。
なんか業界の人ほど彼をイロモノ扱いしたりするけど、ものすごく正当な編集者の系譜の中にいる気がするよ。

マインドセット的な煽りとかはとりあえず置いといて、
以下の部分は本当にそういう世の中だよなと思ったのでメモ。

昔のように家族で同じテレビ画面の前に座り、会社や学校で昨日の番組について話題にすることはなくなった。今の人はスマホという小宇宙の中で生きている。スマホは飼い主が見たいものしか差し出さない。ゲームが好きな飼い主にはゲームを、ゴシップが好きな飼い主にはゴシップを。バカはますますバカになる。
P.59

賢いやつはすぐに世界が広がるし、バカはますますバカになる。賢いやつも、バカも両方ドライブかかっていく構造になってるよね。
だからこそ格差は加速度的に開いていく。

そういう世界でどう生きるのか、を突きつけてるんだよ、この本は。

死ぬこと以外かすり傷

死ぬこと以外かすり傷

今年出た小売業界関連本で圧倒的ナンバーワンだよね、これ。ダグ・スティーブンス/小売再生 リアル店舗はメディアになる

ECが発達し、必ずしも店舗に行かなくても物が手に入る時代。
リアル店舗の役割はどう変化し、どんな可能性があるのか。

豊富な事例や最新の数字をもとに小売の未来を考える本。

学びが多すぎてびっくりした。
名著だよ、これ。

小売再生 ―リアル店舗はメディアになる

小売再生 ―リアル店舗はメディアになる

アリババすげーって話

2016年11月11日、独身の日に突入した最初の1時間だけで、アリババは何と50億ドル(約5500億円)を売り上げた。表記間違いではなく、確かに50億ドルである。しかもたったの60分間で。
P.40

これ流通額も凄いけど、Googleさん主催のセミナーでゲストに来ていたアリババの人が、
バナー制作のAI化の話をしてたんだよね、これがまたスケールがぶっ飛んでいて衝撃だった。

バナーのデザインとかを機械学習させて、AIによる自動バナー作成を実用化しているという話で、
圧倒的な人海戦術が取れそうな中国で、圧倒的に効率化が進められているという衝撃。
アプローチが正しすぎるし、日本どうすんだって思ったよね。

chinapass.jp

そしてもうこのECの勢いは止められない。

コミュニティとFacebook

Facebookでコミュニティは作れないよって話。

そこにコミュニティはない。「フェイスブック上にコミュニティを築く」という考え方があるようだが、フェイスブック上で息の長いコミュニティづくりに成功したブランドを未だかつて見たことがない。(中略)投稿にたくさんの「いいね!」がついたり、コメントやシェアの対象になったページがいくつもあったとしても、それはコミュニティではない。
P.74- P.75

直球のFacebook批判なのだけど、さもありなん、という気がする。
コミュニティは重要なキーワードで、ブランドとファンのコミュニティの育成は、
重要なテーマであり続けると思っているんだけど、
それを作りたいなら、その場所はFacebook上じゃないんだよってこと。

あと、もう行き過ぎたデジタル・マーケティングも問題だよね、と。

飲料大手のペプシコ社長、ブラッド・ジェイクマンは、「デジタル・マーケティング」は愚か、「広告」という言葉も忘れるべきだと言ってはばからない。現に、広告という考え方自体、人々が目にしたくないもので、世の中を「汚す」行為を前提としているとジェイクマンは言い切る。
P.79

買い物体験の肝は確実性と偶然性の絶妙なバランス

猿が簡単な作業をするとご褒美がもらえる、という実験で、もっともドーパミンが出たタイミングはどこか、という実験。

猿がご褒美を受け取ったときに脳内のドーパミンが最高レベルに達すると仮説を立てていた。ところが、実際はそうではないことがわかった。(中略)言い換えれば、脳内でドーパミンが放出されるのは、ご褒美そのものではなく、ご褒美への「期待」だったのである。
ここから話はさらに面白くなる。作業をした後にご褒美が毎回必ず与えられた場合、ドーパミンのレベルは平均的になった。ところが、ご褒美が与えられる確率が100%未満になったとたん、サルのドーパミンのレベルが上昇したのである。そしてご褒美が与えられる確率を50%にしたところドーパミンは最高レベルに達したのである。
P.160-P.161

小売業の自滅

消費者が小売を殺そうとしているのではない。小売業者が小売を殺し、消費者はその犯罪の瞬間に立ち会ってしまった無実の目撃者に過ぎない。小売業者が短絡的に売り場面積当たりの売上高に気を取られている限り、買い物客は幻滅させられ続け、小売業者は泥沼にはまっていくのである。
P.182

売上は皆あげたいのだけど、売上高自体をKPIにするとなんかおかしなことがたくさん起きてくる。
意図していようがいまいが、シナジーを生んでいる組み合わせが多々あると思っていて、
画一的なKPIで視野狭窄に陥ると全体最適が損なわれやすいってことをもっと自覚するべき。

売上高は、様々な要因の結果であって、後からついてくるものなんだよね。
売上高につながる要因を、要素を整理して、それらの指標をKPIにしたほうがなんぼかマシなものが出来上がる。

未来型の小売事例として、キッチンやバス、アウトドア用品などを実際に試してから購入できるパーチという店を紹介している。

パーチのスタッフには多種多様な経歴の持ち主が揃っている。製品知識よりも性格を重視している。ムラドによると、製品知識は後から勉強すれば得られるが、顧客を喜ばせる姿勢は不可欠だ。「きちんとした社風、しっかりとした舞台と体験があれば、小売は面白くなります。『売り場面積当たりの価値をどうやって計算するか』なんて話とはまるで違うんです。
P.201

未来のショッピング体験

▶︎身体的な関わり合いや五感に訴える様々な働きかけを通じて、魅力ある明確なブランド・ストーリーを伝える。
▶︎没入型の環境で実際に体を動かして製品を体験できる機会を提供する
▶︎客の話を聞きながら、製品、サービス、別の購入候補などを網羅するブランドのエコシステム全体に誘う入り口の役割を担う

ここで商品販売について全く触れられていない点に注意していただきたい。もちろん、将来の小売スペースがモノを売らないと言っているわけではない。だが、実店舗内での商品販売は優先事項でなくなるのだ。むしろ、あらゆる販売拠点や販売チャネルでの販売促進につながるような効果的な体験空間づくりこそ、店舗のゴールになる。
P.184

店舗はただの販売スペースではなくなる!

現にイェルプでは、パーチの評価スコアが各地にあるフォーシーズンズ・ホテルのスコアを上回っていると即座に付け加えるあたりから、同社の強豪に対する考え方が垣間見える。つまり、パーチにとって競合とはホームデポやローズといった大手ホームセンターではないのだ、真の競争相手は、分野に関係なく、市場で圧倒的な体験を売りにしている会社なのである。
P.202-P.203

そして、体験こそが価値を持つ。

デジタルとコマース

「そもそもみんな朝から晩まで携帯電話を使っているのが現実です。そんな人々が店に来た時だけ突然使うのをやめると思いますか?」
P.224

だから店舗の中でも携帯を使うことを前提に店舗での体験をより良いものにするためのアプリを用意してるんだって。セフォラの事例。

本当は、誰もデジタル体験など必要としていないのである。小売業者が取り組むべきは、独自性とインパクトと価値のある体験を作り出すことなのだ。そのなかには、支援や実現にデジタル技術が「利用できるものもありうる」というだけの話だ。小売業界の経営者は、デジタルの欠如を問題と騒ぎ立てるのではなく、自社が展開するほとんどの店舗には目を引くような体験が欠如していることを憂え、対策を講じるべきなのだ。
P.303

小売再生 ―リアル店舗はメディアになる

小売再生 ―リアル店舗はメディアになる

小笹の羊羹の話は良い話。 三浦崇典/殺し屋のマーケティング

天狼院書店という書店がありまして、個性的な書店として
業界内ではそこそこの知名度を誇っております。
で、そこの店主が自らのマーケティングメソッドを小説仕立てで本にしたのがこれ。

殺し屋のマーケティング

殺し屋のマーケティング


「殺し屋」という営業も広告もPRもできない商売で
世界一を目指すにはどうすればいいのか、という設定の物語。

最強のマーケティングメソッドがここにあるという触れ込みなのだけど、
本書で紹介されている7つのメソッドは綺麗なフレームワークになっている気がした。

本書の良いところは誰でも工夫次第で真似できるよってところ。
天狼院書店自体、資金潤沢な大企業というわけではないし、
あくまでも中小企業でリソース限られてても知恵でカバーできるよ、っていう
身の丈にあった話になっている印象があって、
その地に足のついてる感はすごく良い。

殺し屋のマーケティングはさておき、
7つのメソッドを用いて小笹の羊羹を分析するくだりがあるのだけど、
そこが本書の肝なんじゃないか。

日にわずかしか製造できず、すぐに売り切れて毎日行列ができる小笹の羊羹、
これが小笹のブランドを形作っていて、収益の大半は量産可能な最中であげている、という話。

これには確かにいろんなヒントがつまっているよな。


殺し屋のマーケティング

殺し屋のマーケティング

すごく昔から、当たり前のようにこういうことをやっていた人たちがいたんだってこと。 デイヴィッド・ミーアマン・スコット、ブライアン・ハリガン/グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

結構前に出ていた本で頭の片隅で気になってはいたのだけど・・・
書店でやってたコルク佐渡島さんの本棚、みたいな企画でこれが並べられていて、
いよいよ読むかと思った次第。

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

結局グレイトフル・デッドというバンドがしてきたことは、
ファンを大切にして、ファンと共に活動し、ファンとのコミュニティを作り上げたってことなんだな。

だから今、コミュニティやオンラインサロンと言ったものが
注目されている時代の中で、昔から実践してる稀有な存在として
再度、注目されそうな雰囲気。

まぁ、これは昔からやっていたことであり、彼らにとっては当たり前のことなんだろうけどね。

このバンドは、昔からライブの録音は自由。
ファン同士が録音したテープを交換したりする文化があったりする。
そう言うのがフリーミアムと言う文脈で語られたりしてるわけ。

しかしまぁ、本当にただファンのことを考えて共に活動しているって言う原理原則に
忠実なだけなんだよな。
録音する人が増えて録音用マイクが増えて他のお客さんの邪魔になってきたら、
録音したい人専用の場所をライブ会場に設けてあげたり、とか。
チケットも直販してファンに良い席が渡るようにしたり、とか。

そしてデータベースなんてなかった頃からファンの管理して
顧客データベース作ってたと言うからまぁすごい。

コミュニティとしてのグレイトフル・デッド

ライブは、ファンが自分を表現しリラックスし、祝い、踊り、交流し、楽しむことを許してくれる場だった。そして、ファンにとって最も重要なのが、自分と考え方の似た人々が集まる場の居心地の良さだった。
P.132

この居心地の良さってまさにコミュニティの基本として今も声高に言われているようなこと。

顧客への敬意と配慮

定期購読している雑誌や契約しているケーブルテレビの会社が、新しい顧客を獲得するために割引価格をつけることは多い。すでに定期購読している忠実な客が年間29.95ドルも払っているというのに、同じ雑誌を新たに定期購読する場合は9.99ドルで良いというのは、どう考えても道理にかなっていない。ケーブルテレビも、最初の3ヶ月を無料にしたり、割引料金にしたりしているが、その後契約を継続すると料金が上がるのである。これも変な話だ。こういった割引を提供する企業は、忠誠心のある顧客を遠ざけてしまう。
P.159 - P.160

これは、本当に世の中に溢れている既存のお客さんをないがしろにした施策。
獲得に効果あるんだろうけど、失ってるものもあるんだってことね。
これは考えさせられてしまいます。

お客さんと直接つながろう

インターネットのおかげで、消費者と直接繋がれるようになった。
ダイレクトマーケティングが簡単にできる。
中間業者を排除して消費者に対して透明性を向上させることもできる。
確かにそういう時代。今から何かを始めるなら、直接顧客とつながることを前提にしたほうがいい。
古い流通の業界ほど、チャンス。

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

「ゲームの文脈における発想の進化の道のり」の歴史。 多根清史/教養としてのゲーム史

教養としてのゲーム史ですぞ。
そう、もはやゲームについて最低限の歴史を押さえておくのは教養なのです。

ゲーム史といっても網羅的な通史ではなく、
「ゲームの文脈における発想の進化の道のり」の歴史。

新書なので画面イメージが乏しいのが残念ではあるのだけど、
単なる通史ではない切り口を持った歴史は懐かしいだけで終わらない価値を出せてる。

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)

そもそもゲームに関して

優秀なビジネスマンの皆さん、ゲームしてますか。
任天堂switchは買いましたか?
ゼルダやりましたか?僕はまだできてません。。。

でも Nintendo Laboは買って、子供が夢中になってます。
まぁそんな事はさておき、ゲームやらない人って鈍臭い人多いよねって話が
友人と話していたら出てきて、確かにねーと思ってしまったのです。

確かに、段取り、効率、発想、いくつかの面でゲームは確実に脳を鍛えてくれる気がする。

というわけで、もっとゲーム好きだって公言するエリートビジネスマンが現れてもいいと思うんだよね。
マンガは随分と解禁されてきた気がするけど、ゲームはまだ表舞台で語られない。

勝間和代さんなんかはゲーム肯定派としてポジティブな主張をしているイメージ。

blogos.com

そして私も勝間さんの主張に全面的に賛成!

歴史において何が画期的なのかを語ることの面白さ

レガシーなゲームももちろんたくさん紹介されている。
インベーダーゲームとかパックマンとか。

裏話的なところで面白かったのはインベーダーが全員揃ってる序盤はゆっくりだけど、
数が減ってくるにつけ早くなったのは演出というよりもマシンスペック的な側面が大きかったって話。
でもそれが結果オーライな演出なわけだよね。
昔のゲームって容量や処理能力という制約の中で知恵を絞っているから、
そこにはとてもピュアな人の創意工夫が詰まってる。

スタート直後にインベーダー軍団が一匹もかけていない状態では、描き込むドットの数が多い分だけシステムの負担も大きく、動作も重い。が、インベーダーが倒されて数が減ると、処理能力にも余裕が生じて、移動スピードや攻撃も速くなる。ハードの弱点となるはずの特性が、逆に展開にスリリングな緩急を与えたのである。
P.28

創意工夫の純度が高いんだよね、今は別にそういう制約がシビアじゃないから
作るときの頭の使い方が違う気がする。
それでも任天堂は常に原点回帰の気持ちで頭使ってるイメージだけど。

そして、パックマンの革新性がとてもわかりやすく書かれていたのが個人的にはとても印象に残った。
ただのゲームとしてではなくて、構造的な革新性とかを整理できるかは、対象が何であれ重要なこと。
こういう視点で見られるかどうか、できない人は何に対してもできない。

パックマンって漠然と敵を食べるイメージだったけど、あれはあくまでも「パワーエサ」を入手すると発動するモード。
それまでは敵から逃げるゲームなんだけど、アイテム入手を機に追いかけるゲームへ転換する。

「パワーエサ」はただの量的な「パワーアップ」とはわけが違う。敵を撃ち落とすシューティングにおける「パワーアップ」は、単発だった射撃が二連装に、弾丸が貫通力のあるレーザーとなって単位時間あたりに倒せる敵の数が増えるーーと「量的」な変化にとどまる。使用前・使用後で「撃つゲーム」という本質は揺るぎもしない。
だが、パワーエサを食べる前は「追いかけられる」ゲームだったのが、使用後は「追いかける」ゲームに転じている。
P.47-P.48

そして本書を読んでいたら、無性に昔のゲームがやりたくなってしまって、
とりあえずニンテンドークラシックミニが欲しくなった。

それぞれファミコンスーファミのミニチュアサイズの筐体で、代表的なソフトが数十本内臓。
HDMI端子でテレビにつなぐだけで遊べるという代物。
ファミコン版はあっという間に売り切れたけど、2018年再生産の予定との噂。
ただ、コントローラーもミニチュア化されてしまったため捜査はしづらいという難点があるのがファミコン版。
ここが改良されたバージョンが出ることを期待してファミコン版は様子を見ている。

スーファミ版はコントローラーだけは原寸大で製作してるので問題ないらしく、
迷わず購入してしまった。子供達と一緒にレトロゲームに興じてみるのも面白そう。

ゲームの歴史

他にもゲームの歴史的な本、
読んでない本多数だけど、かなり出始めていて気になってる。

家庭用ゲーム機コンプリート ガイド

家庭用ゲーム機コンプリート ガイド

現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から

現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から

任天堂コンプリートガイド -玩具編-

任天堂コンプリートガイド -玩具編-

僕たちのゲーム史 (星海社新書)

僕たちのゲーム史 (星海社新書)

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)

マーケターは「ことば」にも敏感であれ。インサイトを落とし込んだ「ことば」が欲望を顕在化させ、市場を生み出す。 嶋浩一郎・松井剛/欲望する「ことば」 社会記号とマーケティング

本書は、広告業界のクリエーターとしても著名で、博報堂ケトルのCEOでもある嶋さんと、
一橋大学ビジネススクールでことばが市場を作るプロセスに関して研究してきた松井さんの
お二人が、実務家と研究者それぞれの立場から社会記号に関して語る本。

社会記号なんて言われると小難しそうに感じるけれど、なんてことはない、
皆が日常的に触れている「ことば」たちのこと。
例えば、加齢臭、草食男子、女子力、イクメン、などなど。

生まれた時には辞書に載っていないのに、社会的に広く知られるようになり、テレビや雑誌でも普通に使われ、見聞きするようになることばのこと。
P.6

言わば、消費者のインサイトを見事に表現した「ことば」のこと。



欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)

欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)

インサイトを見つけることの難しさと雑誌の力

インサイトを見つけることが重要なことは言うまでもないことだけど、
じゃあどう見つけるのよっていうそこが問題。
だって、インサイトを見つけることはとても難しいことだから。

なぜ難しいのかと言うと人は自分の潜在的な欲望をそう簡単には言語化できないから。
そのくせ、今までなかったようなものでも、目の前に現れた途端、そう、これが欲しかった!ってなるのです。

なので、いわゆるアンケート調査のようなもので、消費者の真のニーズが見えるかと言うとそう単純な話じゃない。
潜在的な欲望はなんとなく感じている暗黙知なので。

でも、そういった暗黙知を言葉に落とし込むのが上手い人たちがいる、と。
それが雑誌の編集者たちなんだよ、と嶋さんは言う。

確かに女性誌は時にその軽薄な紋切り型を揶揄されながらも、
イクメン、イケダン、シロガネーゼ、美魔女、などなど数々の「ことば」=「社会記号」を生み出してきた。

確かに部数は落ち続け、雑誌=オワコン、みたいなイメージがあるけれど、
実際、優秀な雑誌編集者は一流のマーケターですよ、と。
それはターゲットメディアとしての読者層の変化に敏感だから気付きやすいんじゃないか、と。

確かにそう言われると、「社会記号」を生み出す巧みさは雑誌の方がテレビなどよりも勝る部分がある気がする。


サピア・ウォーフ仮説

われわれは、生まれつき身につけた言語の規定する線にそって自然を分割する。
P.99

これは要するに、世界の認識は言葉に規定されると言うこと。
人は名付けられることで認識できる、名付けられないものは認識できない。

例えば虹が7色なのは、虹を赤橙黄緑青藍紫の7色と日本語では認識しているから。
エスキモーは白の表現が多様と言うのも彼らは雪の中で多様な白を名付け、認識仕分けているからで、
僕らにはそれが全て白としてしか認識されない。

だからこそ、暗黙知的な潜在欲求も、名付けられることで一気にフォーカスされ、顕在化され、
「ことば」によって市場ができていく。
これがインサイトをうまく「ことば」に落とし込めた時に起きている現象。

こうしたインサイトの発見の重要性はマーケティングの研究においても指摘されていて、
松井さんはマーケティング研究の大家、石井淳蔵の言葉を紹介している。

定量は過去、定性は現在、予兆は将来
P.187

ちなみにこの有名な一節が含まれているのは『マーケティングの神話』と言う本。

マーケティングの神話 (岩波現代文庫)

マーケティングの神話 (岩波現代文庫)


社会記号の伝播

本書では社会記号がどのように世の中に伝播して行くのか、と言う話もしているのだけど、
メディアがどのように取り上げ、伝えていくのか、その過程の話がリアルで面白い。

メディアは、複数の同じメカニズムを持った事例があると分かったときに、初めて現象として命名するということです。
P.200

だからこそ、社会記号の1社独占は市場を成長させるという観点からはよろしくない。
で、結局メディアにしても、流通にしても、社会記号が担保されているのは実はサラリーマン的な感覚なんじゃないか、と。

メディアの側も、小売店で棚をつくる側も、そうした発想の根底にサラリーマン的な感覚があるのが面白いところですね。メディアの人が現象を報じるときに、上司から「それは本当に流行っているのか?」と突っ込まれないように横並び事例を必要とするのと同じで、流通の側もクラフトビールが売れているから棚をつくってお客さんにもっとアピールしたいけど、一社だけでは説得力が乏しいから、いくつも同じカテゴリーの商品を並べて、「ほら、クラフトビールはいっぱいあるでしょう? 本当にブームなんですよ」とプレゼンテーションする。そういうサラリーマン的としか言いようがない感覚によって、社会記号は担保されているということが分かります。
P.201

マーケターは「ことば」にも敏感であれ

結局、マーケターは数字だけでなく、「ことば」にも敏感でなくてはいけない。
石井淳蔵の名言=「定量は過去、定性は現在、予兆は将来」はすなわち、
マーケターには全て必要だよね、ってことなんだと思う。

定量も定性も、両方できた上で、予兆を掴めるか。

ビッグデータ機械学習、AIと定量的なデータがもたらす未来の話題が
盛り上がっている現在なだけに、それも重要だけどそれだけじゃないぞ、という
基本を示してくれた気がした1冊だった。

欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)

欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)