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利権渦巻くウォール街での改革はそれなりの覚悟と力がないと一瞬でつぶされそう。 アーサー・レビット/ウォール街の大罪

アメリカの証券取引委員会=SECの委員長を8年間務め、
様々な制度改革に奔走したアーサー・レビットの回顧録。

小口投資家を守り、公正な市場を目指した改革は、
時に既得権益を守りたい業界からの反発を招く。
その内幕を実名をあげて記載している回顧録なのだが、
既に結構昔の話だし、特に証券業界で働いているわけでもないので、
個人的にはそこのセンセーショナルさはよくわからなかった。

ただ、まぁ利権が絡むとあの手この手で圧力がかかったりするものなのだな、ということはわかる。
たぶん、相当煙たがられていたのだろうが、
エンロンの倒産事件などはまさにこの人が警鐘を鳴らしていたような不正のオンパレードで、
不正を見て見ぬふりをすることの危険さを痛感する。

ウォール街の大罪―投資家を欺く者は許せない!

ウォール街の大罪―投資家を欺く者は許せない!



証券会社の手口

基本的には売買における手数料収入で儲けるのが証券会社。
なので、持ってないやつに買わせて、持ってるやつに売らせる。
とにかく売買の回数を重ねれば顧客の資産がどうなろうと儲かる。
今でこそオンライン取引で営業を介さずに自由に売買できるけれど、
証券会社の営業にとって個人投資家なんてそんなもんよ、
というのは肝に銘じておいたほうが良い。
そもそも営業の評価が手数料売上ベースなのでこういうことが起きる。
顧客にどれだけ儲けさせたか、という評価軸があれば、
もっとまともな関係が築けたのだろうけど・・・。


インサイダー情報

アナリストに対する選択的な情報開示、を禁じたのがこの人の功績の1つ。
情報をリークして好意的な記事やレポートを書かせ、株価を上げる。
これは暗黙の了解的に業界にはびこっていた。
時には何の材料もないのに株価が急変し、数日後発表される、なんてことも。
そういったインサイダー情報の横行を厳格に禁じた。
当たり前のように思えるが、実際は大目に見ろよが当たり前になってることを
改革するのは非常に大変。


数合わせ

会計事務所と企業の関係に警鐘を鳴らしたのもこの人。
監査が監査たり得ていない。
監査する側が企業と強い利害関係で結ばれている状態では、監査が正常に機能しない。
不正を見逃す温床になる。
ひどいパターンだと、資料を作る作業と、監査する作業を同じ事務所で請け負っていたりする。
自社の仕事を自社でチェックして監査機能がうまく機能するわけない。
この最悪なパターンがエンロン事件。


コーポレート・ガバナンス

社外取締役は取締役会に対するチェック機能を果たし、
時にはCEOの暴走を止めなければいけないのだけど、
実際、そういった役割を果たせているケースは少ない。
大概CEOの知り合いなどで、CEOに追随する機関になってしまっている。
それでよいのか?という問題提起。
まぁ、これも理屈はそうだけど、実際は難しいよね、とも思う。
ちなみにレビットさんはアップルの社外取締役のオファーがあったけど、
自分の講演の資料見せたら無しになったそうだ。
あまりにもアップルの現状とレビットさんの主張が乖離していたかららしい。
例えば、こういった取締役会のあり方とか、そういう点に関して。
ちょっと面白エピソードだった。

ウォール街の大罪―投資家を欺く者は許せない!

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