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面白いんだけど共感しきれないのよね、なぜか。 トニー・シェイ/ザッポス伝説

もうずいぶん前に話題になった本ですが、
今さら読んでみました。

個人的にはこれ読んで、したり顔で
「カスタマー・サービスが大事、ザッポスよ、ザッポス」みたいに言う人がいて
大変迷惑でした、ということで厄介な本だなぁ、という印象だったのだけど・・・。

読んでみたらとても読みやすく、お話としても楽しく読めました。
が、何故だかあまり印象に残らないというか、リアリティを感じられなかった。
ちょっと羨ましいような気もしつつ、どこか現実感がないように感じてしまったのは、
自分の置かれている状況によるものなのかもしれない。

顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか

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トニー・シェイの本気度はわかる。

最初はなかなか苦戦し、利益が出ない。期待していた投資も断られ、倒産の危機。
そこでも踏ん張って、自ら私財を投げ打ってザッポスに入れ込むその本気度合いは凄いと思うが、
トニー・シェイ自らが資産を持っていたからできたことであって、
トニー・シェイじゃなかったら潰れてますよね、とも思う。
一方で、そういった危機を何とか乗り越えられれば目が出るベンチャーというのは
たくさんあるのかもしれない。

EC事業は物流費を筆頭に、比例費が多く、儲けを出すまでが難しい。
また通販事業の常として、いかに新規顧客を開拓するか、
そしていかにリピートさせるかが重要。
ここもなんだかんだコストがかかる。
ある程度の規模まで成長しないと厳しいし、その後もかじ取り間違えると
一気に赤字転落してしまうリスクはある。

そこを乗り越えたことは本当にすごいと思うけど、
乗り越え方が自分の資産ってのがレアケース過ぎるかな・・・。


サービスが先。

年中無休の二四時間体制の倉庫、顧客を驚かせる翌日配達へのアップグレード、そしてUPSのワールドポート・ハブからたった一五分の場所にある倉庫の立地が組み合わさることによって、東部時間の真夜中までにオーダーする数多くの顧客に、注文の品を八時間後に玄関先に届けて驚かれるのです。これが「ワオ!」という驚きの体験を生み出し、顧客の記憶にとても長く残り、友人や家族へのクチコミにつながるのです。
P.242

真っ先に思い浮かんだのが、ヤマトの経営者、小倉昌男の言葉。
「サービスが先、利益は後」
トレードオフの中でどちらを優先するか、という問題。
詳細は
優れた経営者の元で働けることは幸せに思う、大変なことも色々あるだろうけど。 小倉昌男/経営学 - 学びや思いつきを記録する、超要約ノート
参照。

小倉昌男 経営学

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まぁまさにザッポスはサービスを優先し、顧客に驚きを与えることを優先した。
それは素晴らしいのだけど、生き残れたから美談になるのであって、
潰れてしまったら元も子もない。
サービスを優先、顧客志向というのは聞こえはいいけれど、
本当にそこのレベルを上げようとすると短期的には苦しい。
中途半端な気持ちだとただのコスト高になって、真価を見いだせずに終わる気がする。
で、冒頭書いていた、迷惑な本ってのは、こういう覚悟を持たずに
なんとなくサービスの質を上げることを是とする人をこの本が量産した気がするから。


パイプライン

よく企業の多くが、社員は会社にとって最も大切な財産だと言いますが、そのアプローチにはいくつか問題があります。第一に、誰かが会社を辞めると、財産を失ってしまうことになります。第二に、会社が成長しても、社員が入社した時のスキルのまま成長していないと、そのうち社員が役に立たなくなるかもしれません。そうなってしまうと、通常、多くの企業で用いられる解決策は、社外からより経験豊富な人材を雇い入れるというものですが、これが第三の問題をつくることになります。そのような新しい人材は、しばしば企業文化にフィットしないのです。
ザッポスでの私たちの信条は違います。個人を財産として位置づける代わりに、私たちが重点的に取り組んでいるのは、ザッポスの財産として、さまざまなレベルとスキルと経験にわたる、「パイプライン」をどの部署でも築くことです。
P.333

人材の評価と成長システムがいかに重要かはこの本からも感じる。
考え方はまったく同意なのだけど、それをどうやって実践していくのかは非常に難しい。
この話もそういったパイプラインを自分たちにどうあてはめようかと思うと結構難しい。
それとこの本が日本でも受け入れられやすいのは、
昔の日本の企業も社員=家族みたいな共同体としての一体感が強かったんだろうなぁ、と。
色んなところが伝え聞くところの昔の日本企業っぽさを持っている気がする。

確かにそういう組織の方がやりやすいし馬力も出るだろうなぁ。
そういう意味ではこの組織がちょっと羨ましい。


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