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経営者の仕事はコーディネーション。その第一歩は組織のデザインから。 ポール・ミルグロム ジョン・ロバーツ/組織の経済学 第4章:計画と行動のコーディネーション

専門化と分業が進んだ社会ではコーディネーションが必要となる。
価格はそれ自体がコーディネーション能力を持ち、有効な解決策として機能するが、
唯一の解決策という訳ではないし、万能でもない。
4章に入り、本書のテーマである「コーディネーションと動機づけ」の
コーディネーションについて深く語られ始めた。
相変わらず文章は取っ付きにくいが、丁寧に読むと言ってることはすこぶる面白い。
まず最初に章の終わりにあるまとめを読んでから、その章を通して読んだ方が理解が深まる。
訳文に惑わされたらまとめに戻ると、スッキリする。
まとめくらいわかりやすい文章で本編も書いてくれれば、
眠くなる暇もないくらい面白い本になるだろうな、と思う。

組織の経済学

組織の経済学

コーディネーション問題と解決法の多様性

もっとも一般的なコーディネーション問題は資源配分問題と言われる。
限りある資源を、いかに効率的に配分するか、という問題で、
資源を広く解釈すれば、経済的および業務上の重要な問題は資源配分問題として分類できる。
以下、資源配分問題のパターンを整理していく。


デザイン属性

各変数をどのように結びつけ最適解に至るか、に関する情報が存在しており、
変数同士の組み合わせを間違えると、損害がきわめて大きい、といった種類の問題。
こういったデザイン属性に関する2つの共通した問題にシンクロナイズ問題と割当問題がある。

シンクロナイズ問題は例えるならボートレースに置ける漕ぎ手の問題。
コックスによって各人が適切なペースで動くようコーディネートすることで、
漕ぎ手の個々の努力が最大化される。
全体が各々の役割を最適なタイミングとペースで動けるか、ということ。
仮に、ペース配分を間違え、スタミナが切れたとしても、
各人に一致した行動をとらせることができなかった場合に比べればマシ。
それほど、組織において、行動をシンクロナイズさせることは重要かつ難しい問題。

割当問題は、達成すべき任務が複数あり、
それぞれの任務に1人または1グループを割り当てる必要があるときの問題。
努力が無駄に重複しないような配慮と、確実に各任務が実行されるように調整する必要がある。
対象が人であっても、コストであっても、他に使ったときの費用、
すなわち機会費用も考慮に入れなければならない。


イノベーション属性

組織の現場が入手できない情報に、最適な資源配分が依存する場合、
高度に分権化された意思決定システムは、価格を使う場合でも、組織の運営手順を使う場合でも、
十分な成果をあげられない。
例えば、新製品開発、新市場参入など、あらかじめ情報を持たない未経験の事業を行おうとする際、
このようなイノベーション属性を持ったコーディネーション問題が発生する。
イノベーション属性に対しては、誰かが必要な情報を集め、整理して意思決定者に伝えなければならない。


コーディネーションのシステム比較

状況と問題の種類によって、そのコーディネーション方法は様々である。
中央集権的な組織が有効な場合もあれば、分権化システムが適した場合もあるし、
価格に従うことがベターな場合もあるだろう。
そういった異なるシステムが経済問題をどれだけうまく解決するかを比較するために、
以下の3つの基準を用いる。

  • 情報が正確に、コストもかからずに調達できる場合、そのシステムが効率的な決定を行えるか。
  • 目的達成のためにどれだけの量のコミュニケーションを必要とするか
  • そのシステムがどれくらい脆弱か

規模に対する収穫一定と収穫逓増

規模による収穫逓増と平均費用逓減、という状況に生産者があった場合、
価格が一定であれば、生産者は作れば作るほど儲かるため、無尽蔵に生産しようとする。
つまり、価格はコーディネーションとしての機能を果たさない。

また、生産量に関わらず平均費用が一定でかかる収穫一定の状況では、
生産者はわずかな価格差に極端な反応を示す。
利益が出るのであれば無尽蔵に作ろうとするし、出ないとなれば生産しない選択を選ぶだろう。
これまた、価格では有効なコーディネーションはできないのだ。

こういった状況を解決する手法として、競争入札がある。
供給側は利益が出る価格を入札し、需要側は必要な量をあらかじめ提示、最低価格で調達できる。
これは収穫一定や収穫逓増の状態が存在した場合、競争入札や調達契約といった解決策が
ごく普通に行われることを示唆している。


情報効率性の評価

大量の情報を収集、処理することはそれ自体に大きなコストがかかる。
価格に導かれる分権的なシステムは、大量の情報伝達を必要としない点で優れている。
このように、あるシステムが優れているかどうかを判定する基準として、
そのシステムが必要とする情報量を用いるやり方があり、考案者の名をとりハーヴィッツの規準と言う。
このハーヴィッツの規準によって情報量を定義すれば、
事前に最適な配分に関する情報がない資源配分問題に関しては、どのようなシステムも
価格システムよりも少ない情報量で最適な配分に至ることはできない。
つまり、価格システムが有効なときは、従った方が(情報量を最小で済ますことができ)効率的、ということ。

でも、これはデザイン属性の問題に関しては当てはまらないことに注意!
デザイン属性の問題は事前に最適な配分に関する情報が存在しているので、
価格システムよりも少ない情報量で実現できる可能性がある。


コーディネーションと事業戦略

戦略的意思決定にはイノベーション属性がつきものだし、
製造業や一部のサービス業では分権化された意思決定の有効性を
弱める規模の経済性が存在する。
規模の経済性が存在する場合は、価格だけでは効率的な産出水準を決められない。
事業の規模自体が1つのデザイン属性をもつ変数と言える。
事業規模の予測に応じて、あらゆる分野のコーディネーションが変化する。


範囲の経済性

異なる製品それぞれに使用される部品を共通化することによって、
規模の経済性を享受できることがある。
このような場合を範囲の経済性を享受しているという。
範囲の経済性は、規模の経済性よりも、より困難なコーディネーションを必要とする。
なぜなら異なる製品を担当する経営者間のコーディネーションが必要となるからだ。

コア・コンピテンス

企業のデザイン力と製造能力が、異なった製品を生産するための共通のインプットである場合、
その共通インプットをコア・コンピテンスという。
製品を開発することの費用と便益を単独で見てしまうと、見誤る危険性がある。
一見収益性の低い投資や製品に関する意思決定も、将来より収益性のある製品や事業のための
コンピテンスの確保に繋がっているかもしれない。


補完性

ある一連の行動の中で、1つの活動水準を高めた場合、
他の各活動の限界収益が高まる(少なくとも低下しない)ならば、
この一連の活動は補完的だと言える。
この補完性によって、様々な活動の予測が可能になる。
ある活動の水準を高めれば、その活動と補完的な関係にある
活動水準も高めることで、利益は増大するからだ。
これは、逆に言うと補完的な関係にある活動を
同時に高めなくてはいけない、というデザイン属性を発生させる。


経営者の役割

組織に置ける経営者の役割はコーディネーションを確実に行うこと。
そしてコーディネーションの第一歩が、まさに組織作りにあると言える。
どの決定を集権的に行い、何を各人に委ねるべきか、
誰が集権的な決定を行い、それを支援するためにどんな情報を上層部に伝えるか。
あるいは計画実行のためにどんな情報を下におろすのか。
こういった組織のデザイン自体が経営者が行うべきコーディネーションの第一歩だ。
また、いかなる計画も、その計画の細部はデザイン問題ではない。
ゆえに効率的な組織は、計画の細部に関して現場の自主性を認め、局所的な知識を利用しようとする。
でも丸投げではうまくいかない。
経営陣が正しいメッセージを送ることによって初めて、
努力が整合的であることをより確実にし、組織の生産性を大幅に高める。
また、補完性のために下部の意思決定に複数の整合的パターンが存在する場合がある。
この時、どの選択肢を選ぶべきかは、集権的に決定してあげるべき。
特に選択がイノベーション属性を含む場合、集権化がいっそう重要になる!!


雑感

覚悟を決めようと思う。集権的な意思決定がもっと必要。
みんなで考える必要はやっぱりないな、と思った。
特にイノベーション属性の強い問題が多い状況なので、
現場の判断に期待してはいけないのだな、とこの章を読んでしみじみ思った。
自分の立ち位置は意思決定者に必要な情報と選択肢を提供する存在。
私が考え、材料を揃えるから、あなたが決めてくれ、という組織のデザインをより鮮明にし、
スピード感と決定の精度を上げていきたい。
計画実行と実現のための統率役がどうしても不足しているので
そこももっと補わないといかんな・・・
それにしても、常々感じていた疑問や、理想型に対する示唆に富んでいるので読んでよかった。

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